新聞記事
2023年03月14日
【3/24開催・参加型Webセミナーのご案内】
~課題と対策を本音トークしませんか?~
コロナ以降、リアル開催が難しかったWebセミナーを、久しぶりに開催いたします!自社ホームページの集客力や更新頻度、リニューアルといったサイト運営に加え、ネット広告の活用やSNS、YouTubeの動画配信などの周辺課題を感じている方々を対象にした、フリートーク・参加型の勉強会です。
参加された会社さまのホームページや、お悩み事を洗い出し、具体的な課題と改善策を明らかにしていきます。自社のことも他社さんのことも、皆さんで課題解決に向けてざっくばらんにお話しませんか?トークの後は、個別相談会の時間もご用意しています。
開催日時 2023年 3月24日(金)
トーク&ディスカッション 14:30~17:00
個別相談会 17:00~18:00(ご希望の方)
弊社代表の白井と、Webメディア局マネジャーの栗原が司会進行を務めます。
「厳しい受注をどうやって好転させるか」
白井 康永
株式会社 北海道住宅新聞社
代表取締役
iezoom運営責任者
「各社の事情に合ったピンポイントのweb戦略」
栗原 史朗
株式会社 北海道住宅新聞社
Webメディア局
マネジャー/エディター
会場 札幌エルプラザ(札幌市北区北8条西3丁目)2階 環境研修室1
参加費 お1人様2,000円(飲料・お菓子をご用意いたします)
※オンライン配信はございません。会場にお越しください。
※座談会形式のため10名様限定となります。定員に達し次第、お申込みを締め切らせていただきます。ご理解・ご了承のほど、よろしくお願いいたします。
お申込み方法
WEB申し込みフォームにてお申込みください。
https://www.iesu.co.jp/seminar/
お問い合わせ
株式会社 北海道住宅新聞社 Webメディア局〔北海道Webシステム研究会〕
〒060-0909 札幌市東区北9条東2丁目2-3 JPT北9条ビル2階
(受付時間 平日8:00~17:00)
TEL 080-3008-4919(担当:松下)
~お気軽にご参加ください!お待ちしております~
2018年12月05日号から
地震による建物被害リスクをどのように軽減するか
北海道住宅新聞 12月5日号
北海道胆振東部地震を体験して、地震や災害に対してはじめて向き合うようになった。冬季に停電が続いたらどうするか、地震による住宅の損壊リスクはどういうかたちで軽減するか。
地盤の良さ、耐震性を高めること、そして地震保険もひとつの方法だ。
建物の大規模損壊に対するリスク分散としては、保険は本当に最後の砦になるはず。しかし火災保険に付帯する地震保険は、最大でも契約額の半額しか支給されない。
ところが、地震保険とはまったく別に、新耐震基準を満たしていれば、新築でも既築でも加入できる「地震補償保険」という保険商品が発売されている。
リスク軽減方法のひとつとしてユニークなこの保険を紹介した(1,2面)
床下から虫が出てきて大騒ぎ。カビを食べることで繁殖する虫についての報告を掲載した(5面)
札幌の工務店が開発した規格住宅が、秋田県内でモデルハウスとして公開されたトピックなども紹介した。
2018年09月07日
北海道胆振東部地震、それに続く北海道大停電
9月6日(木)朝3時ころに発生した北海道胆振東部地震、それに続く北海道大停電では、皆さまにご心配をおかけしました。幸い、当社および社員一同は全員無事でございます。
社内の被害も今のところほとんどございませんが、今だ電力が回復しておりません。
このため、本日、9月7日は臨時休業いたします。
まずはお見舞いのお礼と臨時休業をご報告申し上げます。
会社付近の一部道路の写真を白井のコラムにあげました。
https://www.iesu.co.jp/column/2018/09/07072057.html
2018年03月05日号から
ジワリ押される地場企業、攻勢に出る
北海道住宅新聞 3月5日号
北海道十勝(とかち)地区。畑作と酪農で経済基盤が安定しており、圏域の中心商業都市の帯広、隣接する音更、幕別、芽室の各町に加え、圏域全体に活力があるのが大きな特徴だ。
住宅業界はこれまで、マイナス20℃以下に下がる極寒気候と、地域に溶け込んだツーバイフォー工法などによって、大手ハウスメーカーの入りこむ余地は限られていた。
それが少しずつ変わってきた。土地手配力と企画商品で、子育て世代のニーズにこたえた大手が徐々に足場を築きつつある。
危機感を覚えたのは地場の有力会社だ。
地場企業の取組を取材した(1,2面)
そもそも建売住宅・企画型住宅が伸びる傾向は、十勝に限ったことではない。北海道全体の5割近くを占める札幌圏は、ここ数年、ハッキリと建売住宅の成長、企画型住宅メーカーの好調が見て取れる。住宅会社はこの流れにどうフィットすれば良いのか。4面にまとめた。
工事量平準化のためには避けられない冬季施工
職人不足対策、住宅の品質安定、安定利益の確保-。これらを実現するのが通年施工体制だ。その際に必要になるのが冬季施工のクオリティーだ。 今回は、品質確保の面で気をつけたいことをまとめてみた(8面)。2014年10月05日号から
気密住宅を啓もうする1冊 日本住環境・北村氏の著書
日本住環境㈱常務の北村忠男氏が、このほど2冊目の書籍「住宅づくりの新しい常識 高気密木造軸組住宅をもっと知ろう」を出版した(発行所=幻冬舎ルネッサンス)。快適で省エネな高断熱・高気密住宅を全国に広めたいと願い、エンドユーザーにもわかりやすく住宅性能についてまとめた。
札幌出身の同氏は、気密資材の提案・販売の仕事を通じて全国の工務店と家づくりを語りあい、高気密住宅への誤解や誤った技術がまだぬぐい切れていないことを知る。この書籍では、気密化の必要性から書き起こし、高気密住宅を建てる前のポイントなどをまとめた。また、結露や換気など関心の高いテーマも、それぞれ章を立てて解説している。
四六判279ページ。定価は本体1300円+税。購入は全国の書店、インターネット通販へ。
2014年09月25日号から
子育て世代向けセミナー好評 カフェ話と簡易気密工法 あったかリフォーム倶楽部
市民向けの啓もうセミナーとリフォーム事業者向けの断熱リフォーム技術提供を行っているあったかリフォーム倶楽部(繪内正道会長、北大名誉教授)は、9月6日㈯、札幌市東区で、同会として初の取組となる子育て世代向けリフォームセミナーを開催。用意した30席がすべて埋まる盛況だった。
同会がこれまで12回開催してきたセミナーは長年住み慣れた家を快適にするための方法で、対象はシニアだった。今回は、中古住宅を購入・リフォームして初めてのマイホーム生活を始める子育て世代を想定し、中古住宅購入前のチェックポイントと、内装工事といっしょに行う断熱改修を説明。参加者からは質問も飛んだ。
中古住宅購入と同時に行うリフォームは、あまり予算がない場合も多い。これまで断熱住宅受注がメインの会社は、新築並みの断熱・気密性を保証できるフルリフォームか、気密に手をつけないかのどちらかしか選択肢を示さない場合が多い。講師を務めた高杉昇氏は「工務店側の事情は、簡易な気密改修では効果を説明・保証できず、不安だから、本格改修以外の提案を行わないのだと思うが、一方消費者側はちょっとでも暖かく快適になればいいと考える人もいる。技術的には、充てん断熱工法の改修は壁内に気流止めを入れればよいわけで、その工事費を積算するとさほど費用は必要ない。もちろん、耐震診断など建物チェックを行って現状を把握することが前提だが、クロスの張り替えと同時に気流止め施工を行えば、省コストなリフォームも可能だ」と語る。
メインのセミナーの前には、戸建住宅をフルリフォームして1階でカフェを開業したオーナーによるリフォーム体験記のトークが行われた。
【写真】
上:たくさんの参加者で埋まった会場
下:気流止め施工の方法
2014年09月05日号から
中古住宅を魅力的に ショップ型リフォーム店「夢パーク」オープン
総務省が今年7月に発表した昨年10月時点の空き家率は全国で13.5%と過去最高。住宅は余っており、既存ストック=中古住宅の活用を真剣に考える時期が来ている。そんな中、中古住宅を魅力的に再生するための店がいくつも集まった「夢パーク」が9月6日、札幌にオープンする。
壁紙を自分で選んで施工する
夢パークは、住宅の内外装などを手がける(株)アスペックコーポレーション(本社札幌市)の矢野哲夫社長が創業40年目の新事業として企画した。DIY施工用の輸入壁紙や雑貨などを扱う小売店「ウォールデコKABEYA」、不動産部門「札幌ホームデザイン」、リフォーム部門「リフォー夢工房」、DIY施工の研修施設「体験工房」、カフェからなる。住宅インテリアの提案と、物件の仲介、リフォームなどを1つの会社で対応できる「住宅のワンストップサービス」が売りだ。
「ウォールデコKABEYA」は、リアルな木目調、幾何学模様、装飾的なデザインなど、多彩な輸入壁紙を取り扱っている。全てがDIYでも施工可能だ。さらに、施工部材、DIY可能な塗り壁や黒板塗料、インテリア雑貨なども販売。
これら輸入壁紙は、幅が50cm程度と国内メーカーの製品にくらべて幅が狭いので素人でも扱いやすく、施工も突きつけで重ね代を考慮する必要がないため、割付がしやすい。また、長さは1m単位で販売するため、壁だけでなく家具やテーブルに貼るなど、いろいろな活用法が考えられる。
日本では、壁紙は「プロにまかせるもの」という認識で、インテリアコーディネーターが助言し、選んだものを職人が施工するのが一般的だった。一方、欧米では壁紙のデザインバリエーションも豊富で、自分で選んだ壁紙をDIY施工することも珍しくない。
そこで、日本でも「壁紙を選べる楽しさ」「自分で作りあげる楽しさ」を提案し、インテリア好きな女性などをターゲットにした店作りを行った。そこから、新しい需要・客層を発掘しようという考えだ。
そして、同じフロアに中古住宅を扱う不動産店「札幌ホームデザイン」を構え、リノベーションを前提とした中古住宅の紹介などを行う。DIYが苦手なお客でも、インテリアを選んで「リフォー夢工房」に施工を依頼することもできるため、幅広い客層に対応できる。
2014年08月25日号から
北方型の新制度「きた住まいる」 登録メンバーの募集開始 履歴システムも全面運用
道建設部建築指導課では、住宅事業者の参加登録制度や、既築を含むすべての住宅を対象とする履歴保管システム・北海道住宅履歴システムを柱とした北方型住宅の新制度「きた住まいる」を今月25日からスタートした。
北方型住宅は、平成2年から認定制度を開始。平成17年には基準の全面的な見直しを行うとともに、住宅履歴の登録・保管システムである北方型住宅サポートシステムを立ち上げた。その後も北方型住宅ECO基準を追加するなど、見直しを行ってきたが、今回、北海道の住宅にふさわしい省エネ性・耐久性を確保しつつ、多様なユーザーニーズへの対応を図るために制度を一新した。
住宅事業者の参加登録制度は、一定の性能要件等を満たす住宅会社や設計事務所を"きた住まいるメンバー"として登録し、道のホームページ上で公表。建設実績やBIS・BIS-Eの人数なども掲載することで、ユーザーに業者選びの参考としてもらう。
登録要件は、①住宅性能表示の断熱等対策等級4以上の省エネ性能、劣化対策等級3以上の耐久性能、新耐震基準以上の耐震性能の確保②BIS・BIS-Eによる設計・施工③住宅履歴の記録・保管―を基本ルールとして守ること。登録申請にあたっては、これらの基本ルールを満たす住宅の設計・施工を行った実績を証明する書類として、北方型住宅登録・保管書の写し、北海道R住宅サポートシステムの入力画面の写し、長期優良住宅認定書の写しなどの提出が必要。
このほか、BIS・BIS-Eのいずれかが在籍していること、住宅会社は建設業許可を有し、住宅瑕疵担保履行法に基づく瑕疵保険への加入または保証金の供託を行っていること、設計事務所は建築士事務所協会に所属していることも要件となる。
登録に必要な提出書類等は道のホームページからダウンロード可能。登録料などの費用はかからない。
ネット上で登録物件を公開可能
北海道住宅履歴システム(http://www.h-rireki.jp)は、新築・既築や性能を問わず住宅履歴情報を登録・保管できるシステム。誰でも利用可能だが、きた住まいるメンバーの登録業者は、登録した住宅の特徴や、耐震性・断熱性・耐久性の3段階評価、暖房エネルギー消費量などを表示した"北海道住宅ラベリングシート"を自動作成し、インターネット上で公開することができる。このラベリングシートは「子育て世帯向け」や「ゼロエネルギー」など、ユーザーがキーワードごとに検索可能。登録・保管料は、8月12日現在でまだ決まっていない。
なお、既存の北方型住宅認定・登録制度については、地域型住宅ブランド化事業で利用しているグループがあることや、道内市町村独自の補助制度等で要件になっているケースがあることから、当面の間はこのまま存続することになる。ただ、将来的には「きた住まいる」に統合する方向で検討するという。
問い合わせは道建設部建築指導課建築企画グループへ(☎011-204-5577、担当/田村・中村)。
ホームページ・http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kn/ksd/kitasmile-member.htm
2014年08月15日号から
とうほく走り描き 第二回 吉田裕一さん(吉田建築研究所)
普段のマラソン練習は、片道7㎞の通勤ランが中心である。もちろんそれだけでは足りないので、土日には少し長い距離を走りたい。お客様の内覧会などのイベントがあると練習の良いきっかけになるので、走って見学にうかがうこともしばしばある。「走ってきました」と言って顔を出すと、自然と会話も盛り上がり営業効果もあり。走る営業マンの真骨頂といったところだ。
10年続く「マイスタープロジェクト」
100㎞マラソン完走から一週間、この日も㈲吉田建築研究所が設計した住宅兼店舗の内覧会があり、片道12~13㎞の道のりをゆっくりと走ってみた。半分以上は、歩いたかもしれない。長い距離を「歩く」のも良い練習になる。左右の体のバランスを考えて、まっすぐ少し大股で歩くことで、ランニングのフォームを整える効果があるようだ。
会場に着くと、吉田先生の愛車ランチア・デルタが停まっている。他のブランドにはない、「どこかにありそうでいて、誰の真似でもない。ほのかに醸し出される軽快なデザインに魅かれる」とのこと。住宅設計にももちろん通じるところがあり、まわりに流されず独自性を貫くという意味で「あえて孤塁を踏む」という言い方をされていたが、デザインポリシーを強く持ちながら、仰々しくない、威圧感のない仕事ぶりにファンも多く、わたしもその一人である。
吉田先生の仕事を特徴づける活動に「マイスタープロジェクト」がある。2004年にスタートし、技術に特色のある地元の専門工事業者やメーカーと協力し、元請制度と完全分離発注の中間のようなスタイルの取り組みで、弊社も参加している。毎年確実に実績を重ね、今回の建物で32件目のプロジェクトになる。
今回は、公共物件などでも実績のある「㈱シェルター」のKES工法による躯体、柔らかな曲線のアイアンの階段手すりにほどこされた、「郷自然工房」の漆塗り、「㈱ホルツ」によるオリジナルキッチンなどがマイスターたちの仕事だ。弊社の天然スイス漆喰カルクウォールも、正面外壁に採用いただいた。
マラソンの練習にウルトラCはなく、日々コツコツと少しずつ工夫をして走ることで走力がついてくると思っている。マイスタープロジェクトの活動も10年。目を見張るような派手さはないが日々の仕事の積み重ねが、32件のデザインの結晶となって、仙台の街を彩っている。
http://www.y-aa.co.jp/(吉田建築研究所)
筆者:中島信哉
リボス自然塗料、天然スイス漆喰カルクウォールなどを扱う㈱イケダコーポレーションの営業として15年。現在は東北6県と北海道を担当。仕事のかたわら始めたサインペン画やマラソンが話題に。
連載第1回はこちら>>
2014年07月25日号から
欠陥住宅訴訟から学ぶ トラブルを避ける3つのポイント
建物が傾いたなどの被害がないのに賠償命令、築後10年を経過しても欠陥に対して責任を負うなど、最近の住宅関連訴訟の傾向は大きな変化を見せている。一方で、建築側が被害者となるモンスタークレーマーも増えている。トラブルを避けるために必要な3つのポイントを探った。
瑕疵に対する責任は10年で終わらない
住宅の欠陥・瑕疵を争点とする住宅関連訴訟は、医療訴訟と並んで勝訴が難しい専門訴訟と言われてきた。構造や設計、積算などに関する専門的知見が必要になる一方、請負などの契約で交わされた性能レベルがいわばあいまいであるため、、原告側が住宅会社の過失や損害を立証することが非常に困難だからだ。しかもかつては判決まで平均10年程度かかるなど、長期化が避けられなかった。ユーザーの精神的・経済的な負担は大きく、訴訟を起こすこと自体、相当な覚悟が必要だった。
その流れが変わったのは、(一社)日本建築学会による2000年の司法支援建築会議設立からだと言われている。同会議は最高裁判所の要請によって設立したもので、建築の専門家が建築紛争の調停・鑑定に協力。紛争解決の早期化に貢献してきた。
国は消費者保護の観点から、2000年には秋田の第3セクターが千葉で分譲した欠陥住宅の問題、いわゆる秋住事件をきっかけとして、10年間の瑕疵保証を義務付けた品確法を施行。2009年には姉歯事件をきっかけに瑕疵保険加入を義務付けた。欠陥住宅訴訟でも、業者側の瑕疵担保責任で建替費用相当額の賠償を認めた2002年の判例や、建築士の名義貸しを行った建築士の賠償責任を認めた2003年の判例など、消費者に有利となる先例的な判決も目に付くようになったと言われ、最近では札幌で建物の揺れなどを理由に建替費用を設計事務所に請求した裁判で、建て主が全面勝訴する例も出てきている。
ただ、それでも瑕疵保証が10年間義務化された対象は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分のみで、スガモリは雨漏りとして保証対象に含まれると判断されているが、道内の住宅トラブルで多いとされる落雪や結露などは対象外。万が一、構造・防水に瑕疵があっても、引き渡し後10年を過ぎれば、住宅会社の補修責任はなくなると考えられていた。
損害なしでも不法行為が問われる
ところが、ここにきて状況はさらに大きく変わってきている。
続きは、以下のページから伝言欄に「7月25日号の見本も希望」とご記入の上、試読紙をお申し込みください
https://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/
2014年07月15日号から
新連載・東北走り描き 1
サインペンと画用紙を手に、日々東北・北海道を走る中島信哉さん。建材販売のかたわら、画家や音楽家としても異彩を放つ同氏が、月1回の連載で東北のユニークな人・会社を描く。
初回は、自己紹介を兼ねて6月の2日間を描いた。
仕事づくり、フラワーショップとともに
6月7日?、岩手県盛岡市の左官材料販売店・合資会社小原商店さんの展示即売会がありました。年に1回、40年ほど前から続いているそう。社長は3代目です。自分は初参加でしたが、10年以上続けて出展している常連担当者も。
即売会とはいうものの、ガツガツと売ってやろうという雰囲気ではなく、盛岡の老舗そば屋さんの仕出しや、焼き鳥(うまかったなぁ)コーナーもあり、終始なごやかムード。朝からにぎわう場内には、もう引退されたかというご年配の方もいれば、熱心にコテなどを品定めする若い職人さんも大勢いました。
なじみの職人さんたちとのつながりを大切にする小原社長は、地元の異業種と組んで左官の仕事づくりにも取り組んでいます。展示会にも、盛岡の人気フラワーショップで外構工事も手がける「time flow」さんが出展。左官に「花」を添えながら、エクステリアからインテリアまでトータルで提案するビジネスを模索しています。
経営もマラソンもリラックス!?
翌8日は「岩手銀河チャレンジマラソン100㎞の部に出場。友人から誘われ震災があった2011年から走り始め、以来3回のフルマラソン経験はあるものの、ウルトラマラソンは初めてでした。記録13時間54分でなんとか完走。長い距離を走り終えて感じたのは、「リラックス」が大切だということ。余計な力を入れずスピードも気にせず淡々と走るとゴールが見えてくる。長い上り坂もだらだら歩かず、ときどきピッチを上げて小走りしたり、給水所ではボランティアの人たちとたくさんしゃべったり、心も体もうまくチェンジオブペースができたのがよかったかもしれません。
走り終わった後は、両足はパンパンに疲れましたが、上半身は不思議と走る前より軽く柔らかく、気分も爽快になっていました。
長く続く会社は、心地よくリラックスした雰囲気があるものです。ゆったりとかまえながら、少しずつ新しいことを取り入れる小原商店さんの展示会は、ウルトラマラソンとも印象が重なりました。
リボス自然塗料、天然スイス漆喰カルクウォールなどを扱う㈱イケダコーポレーションの営業として15年。仕事のかたわら始めたサインペン画やマラソンは、話題づくりにも役立っています。営業マンとして「健康」と「センスを磨くこと」は必須だと思うので(を言い訳に)、仕事も趣味も楽しんでいきたいと思います。次回は仙台から。
[写真]
小原商店の展示会と小原社長
中島信哉 100㎞マラソンにて
2014年06月15日号から
拝啓 おやじ殿 工務店2代目が語るおやじのこと、これからの工務店のこと
事業承継は現社長の仕事。では、後を継ぐ側の後継者は現社長をどういう目で見て、これから何をしたいと考えているのか。増税、少子高齢化に伴う工務店経営への不安もあるはず。父の日にちなみ、父である社長を継ぐ2代目、3代目の思い、父への思いを取材した。
中小企業白書(2006年版)によれば、年間29万社が廃業しており、そのうち後継者不在を第一の理由とする廃業が7万社にのぼると推定されている。
続きは、以下のページから伝言欄に「6月15日号の見本も希望」とご記入の上、試読紙をお申し込みください
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2014年05月25日号から
PM2.5と室内換気 健康への影響も心配
微小の粒子状物質・PM2.5が問題視されるようになって約1年半。健康への影響が心配され、換気メーカーも対応を進めてめている。
花粉より小さく、呼吸器系・循環器系に影響も
PM2.5とは大気中に浮遊している非常に小さな粒子のことで、主にボイラーや焼却炉などのばい煙発生施設が排出源。家庭内の喫煙や調理、ストーブなどからも発生する。大きさは2.5mmの千分の1で、髪の毛の太さの30分の1程度。肺の奥深くまで入りやすいことから、肺ガンや呼吸器系・循環器系への影響が心配されている。
国ではPM2.5の環境基準値を、1年の平均値で15マイクログラム/m3以下、かつ1日の平均値で35マイクログラム/m3以下と定めており、さらに「注意喚起のための暫定的な指針」では、健康への影響が心配される濃度基準を1日平均値で70マイクログラム/m3としている。同指針は法律に基づくものではないため強制力はないが、1時間あたり80?85マイクログラム/m3を超えた場合に、都道府県等が一般市民に対して不要不急な外出や、長時間の激しい運動を控えるよう注意を促すよう勧めており、道内ではPM2.5の測定局がある札幌や旭川、函館など7市で、必要に応じ市民に注意を行うこととなっている。
日本でPM2.5が問題視されるようになったのは、中国の大気汚染が原因と言われている。中国でPM2.5などによる大規模な大気汚染が断続的に発生した昨年1月に、西日本で環境基準を超えるPM2.5が観測されたからだ。この時は消費者の健康被害に対する不安が増したのを背景に、近畿以西で空気清浄機の販売台数が急増。(一社)日本電機工業会の統計によると、同年1?3月の空気清浄機出荷台数は前年同期比3割増を記録した。
大陸からの飛来だけが原因ではない
ただ、PM2.5は以前から日本でも常に大気中で観測されており、濃度は工場の排煙や自動車の排気ガスなどの影響も考えられるほか、気象条件によっても変動する。今年3月には室蘭で85マイクログラム/m3を超えるPM2.5が観測され、市が注意喚起を行ったが、原因はPM2.5の濃度が高い大気のかたまりが遠くから運ばれてきて市内を覆ったことと、地域の工場や家庭などから発生したPM2.5が、ほぼ無風状態だったために滞留したことの2つが重なったためだった。
もっとも、高濃度になる原因にかかわらずPM2.5が、空気汚染物質として広く認知されるようになったのは確か。住宅会社もアレルギーやぜんそくを患っていたり、化学物質に過敏反応を起こすユーザーに対し、今のうちから対応策を準備をしておいたほうが良さそうだ。
外気フィルターで給気を浄化
これまで室内空気汚染の主な原因物質だった、ホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)。これらの物質の多くは住宅に使われる建材や家具などから放散されるため、VOCを放散しない、あるいはほとんど放散しない建材を選択し、換気をしっかり行うなど、2003年に施行されたシックハウス新法に則った対策を行うことで、健康リスクを低減することができた。
しかし、PM2.5は屋外で発生し、大気中に浮遊しているため、PM2.5の濃度が高かった場合、換気によって室内空気質を悪化させてしまうことが考えられる。そこで対策としては、室内に外気を給気する時に、PM2.5を除去することが基本となり、換気メーカーでも昨年から今年にかけて、PM2.5を捕集するフィルターを用意する動きが加速している。
例えば日本住環境とジェイベックでは、今年に入りそれぞれ自社の第3種換気システム用給気口に装着することで、PM2.5などの有害物質を軽減する高性能フィルターを発売開始。いずれも静電気の力を利用して、空気中の微粒子や花粉などを捕集する。
第1種換気のメーカーも、パナソニックが昨年9月から熱交換ユニット本体の給気側に微粒子用フィルターを搭載した製品を販売開始したほか、LIXILも対応フィルターをオプションで用意した新製品を今年4月に発売。また、健康住宅を追求する工務店グループの「いやし健康増進住宅研究会」では、全国の会員に対し、高性能フィルターと抗酸化コート剤、床下活用の全熱交換型換気システムなどを組み合わせることで、PM2.5を原因とする大気汚染問題に対応した室内空気環境改善システム「きれいな空気の家『四季風』」の技術提供を昨年から開始している。
1種換気組込み型の外気清浄機など新たな提案も
このほか、喫煙室用の空気清浄機などを製造・販売するトルネックスでは、第1種熱交換換気システムの外壁給気口と熱交換ユニットとの間に取り付けることで、PM2.5や黄砂などの汚染物質を除去する、電子式集じんフィルター方式の外気清浄機を開発。昨年10月に東京で行われたジャパンホームショーに出展し、注目を集めた。化学工業メーカーの住友スリーエムも、PM2.5など微粒子物質の濃度を低減する丸形給気口用フィルターを昨年から販売しているが、今年からは角形給気口用のフィルターもラインナップに追加するなど、換気システムを扱っていないメーカーからPM2.5対策の提案製品が出てきていることにも注目したい。
2014年05月05日号から
パッシブハウスの誕生と普及
生みの親・ファイスト博士招きシンポ
ドイツ・パッシブハウス生みの親であるヴォルフガング・ファイスト博士を日本に招いて4月18日東京でエネルギーシフト・シンポジウムが開かれ、住宅の断熱化に取り組む全国の300人を超す関係者が集まった。主催は(一社)パッシブハウス・ジャパン。
4時間半にも及ぶ長いシンポジウムは、同社団理事で環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長、ファイスト博士、東京都市大学・宿谷昌則教授、同社団代表理事の森みわ氏が講演し、その後パネルディスカッションが行われた。ここではファイスト博士の講演から要旨を紹介する。
主役は断熱
暖房をほとんど使わずに快適な室内を実現する「パッシブハウス」の最初のアイデアは、27年前(1987年)にスウェーデンで生まれ、中国で建てられた。これを参考に1991年、ドイツで3階建てのタウンハウスを建築したのが最初だ。アメリカの研究者のアドバイスもあり、パッシブハウスを研究に終わらせることなく、一般住宅に普及させることを目的に、省エネルギー・快適性・実現可能な価格を目指した。
研究によってわかったことは、1m2あたり10W/hの暖房負荷になると、暖かさの主役は断熱となり、暖房専用の設備は不要になることだ。暖房設備を削減することで大きなコストダウンが可能となり、省エネ・快適性・コストのバランスがもっとも良くなる。
ただし、これを実現するためには極めて高い気密性能を前提にした高性能な熱交換換気と、断熱壁体並みの断熱性能を持つ開口部が必要だ。熱交換換気は、排気から回収した熱を効率よく給気に渡すと同時に、少しだけ給気を加温して暖房器を兼ねる。また開口部は日射取得と断熱のバランスを地域によって検討する必要があるが、ドイツや北海道では最低限、トリプルガラスと高断熱な枠材が必要だ。
パッシブハウス実現のためには、これらの建材開発がひとつのポイントになってきた。そして、中小企業がじつにたくさんの断熱建材と熱交換換気などを開発し、商品化している。断熱材だけでも製造メーカーを100社を数える。これはパッシブハウスのもうひとつの効果でもある。パッシブハウスが普及する過程で、建材価格も下がってきた。
パッシブハウス基準の意味
1m2あたり10W/hの暖房負荷とは、年間の暖房負荷で1m2あたり15kWhというレベルになる。これがパッシブハウスの基準となっており、設計者は、建設地においてどのようなプランと仕様にすれば基準をクリアできるかを検討しなければならない。そのとき、ツールとなるのがPHPPというソフトだ。日本では「建もの燃費ナビ」として設計アシストができるようになっている。
〈写真〉
講演するファイスト博士
パッシブハウスは公営住宅、学校、幼稚園、オフィスビル、プールにも採用されている(ファイスト博士のスライドより)
2014年04月15日号から
新年度の補助・基準・税制など
○地域型住宅ブランド補助
○地域優良リフォーム補助
○ゼロエネ住宅補助
○高性能建材導入促進補助
○木材利用ポイント
○創エネ・省エネ設備補助
○スマートウェルネス住宅補助
○減税措置
表をクリックすると拡大します。
続きは、以下のページから伝言欄に「4月15日号の見本も希望」とご記入の上、試読紙をお申し込みください
https://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/
2014年04月05日号から
住宅の取説ビデオ制作
複雑な使い方をわかりやすく 十勝・紺野建設
紺野建設(十勝・清水町、紺野宏社長)は施主向けに、設備機器の使い方、メンテナンス方法などを中心にした「取説ビデオ」をこのほど作成し、DVDにして手渡した。顧客サービスの一環として、今後引き渡す住宅には1戸1戸個別に制作する予定だ。
10年前、20年前と比べると、住宅の設備機器は自動制御や多機能化が進み、便利になった反面、引き渡し時の取扱説明に要する時間が長くなっている。説明する住宅会社側も大変だが、それを聞く施主側も聞いた内容をすべて理解し、記憶するのは難しい。
そこで紺野社長は暖房、換気、水回り設備などの取扱方法を動画で説明する「取説ビデオ」を制作して施主に手渡すことで、後で取扱方法やメンテ方法がわからなくなってもビデオを見れば施主が自力で解決できると考えた。
当初は一般的な設備の使い方をDVDで制作したら、あとはコピーして施主に渡すことを考えていたが、仕様は施主によって大きく異なるため、邸別に制作することにした。まずは引き渡し時に施主に対して行う説明場面をそのままビデオ撮影し、後から編集してDVDにした。
今回引き渡した住宅は、パッシブ換気と第1種熱交換換気を併用しており、換気部材の役割説明や注意事項を念入りに、また熱交換換気のメンテもきちんと説明する必要があった。キッチンは安全センサー付きガスコンロと多機能ガスオーブンで、こちらも注意事項が多く、説明が必要だった。
パッシブ換気部材や食品庫、レンジフードのお手入れなどの説明は紺野社長や工事管理担当の山本義和さんが行い、暖房・給湯や換気は設備工事会社が、キッチンのガスコンロはガス会社が、ブレーカーや配電盤の説明は電気工事会社が行った。全体は19のチャプター(小項目)からなるが、再生時間の合計は約30分ほどに抑えている。
ビデオ撮影は、業務で使用しているタブレットPCで行うなど、特別な機材は使用していない。ただ、引き渡し時の説明場面をそのまま撮影しているため、カメラアングルが難しかったり、屋外の説明では音声がうまく聞き取れないなどの問題も見つかった。また、わかりやすくするために随所随所に文字テロップを付け加えるなど、編集作業に少し時間がかかったという。
DVD制作を担当した山本さんは、「次からは、DVD用の説明を別撮りすることで見やすさ、わかりやすさが改善され、制作の手間も軽減できると思う。既に次の制作予定も入っており、今後も作っていきたい」と話している。
2014年02月05日号から
札幌版次世代モデル展示場 グランドオープン
札幌版次世代住宅モデル展示場が、去る1月25日、札幌市東区の分譲地・ウェルピアひかりの内にグランドオープン。無暖房住宅に近い性能の"トップランナー"認定を含む11棟のモデルハウスが来場者を迎えた。
続きは、以下のページから伝言欄に「2月5日号の見本も希望」とご記入の上、試読紙をお申し込みください
https://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/
2013年06月25日号から
2013年上半期を振り返る 着工増も駆け込みの気配なし 8月以降に集中するとの声も
2013年も早半年が過ぎた。この間、国は改正省エネ基準の告示や、住宅ローン減税の延長・拡充、木材利用ポイントなど新たな補助事業の創設を実施。一方、住宅会社は来年4月に消費税増税を控えて駆け込み需要の刈り取りが重要になるところだが、実際に駆け込みが目立つという声はほとんど聞こえてこない。ただ、例年より道内の住宅着工量(1?4月)は増加傾向にあり、住宅会社からは今年後半に向け、大工や外注業者の確保、建材値上げなどへの対応が急務との声も出ている。
続きは、以下のページから伝言欄に「6月25日号の見本も希望」とご記入の上、試読紙をお申し込みください
https://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/
2013年06月15日号から
津波被害受けた古民家を再生中 港町に再びにぎわいを 福島・いわき市 中之作プロジェクト
2011年3月11日の東日本大震災で床上浸水し、80歳を過ぎてそこに暮らしていた所有者が解体しようとしていた築200年以上の住宅を再生、「清航館」と名づけてレンタルスペースとし、地域復興の足がかりにしようという取り組みが始まっている。
福島県南部の太平洋岸に面したいわき市中之作(なかのさく)地区。江戸時代から続く歴史ある港だが、4㎞ほど南には小名浜(おなはま)港があり、こぢんまりした中之作は、古き時代の味わいを残していた。気候は温暖、5地域(旧Ⅳ地域)区分となる。
震災による津波は中之作も襲った。海岸沿いの住宅地は一段高い場所に位置しており、5mを超す津波を受けて床上50㎝程度まで浸水したものの、幸いにして建物構造には大きな被害がなかった。ただ、室内は建具が散乱し、津波の恐ろしさを物語っていた。
震災後、高齢化が進む中之作地区では、旧家を所有している高齢者たちが建物の解体をはじめた。解体に対する補助金が出たこともあるが、背景には進学や就職で家を出て行った跡継ぎ世代が戻ってこないことが原因だった。
中之作地区では、震災・津波は解体のきっかけに過ぎず、家を壊す本当の理由は、そこに住むべき住民の世代交代がうまくいかないことだった。
冬も暖かい古民家に
いわき市内で設計事務所を営む豊田善幸さんは、震災前に趣味の自転車でよく中之作地区を通り、また「清航館」の改築相談も受けていた。震災後、土地建物を所有者から譲り受け、再生工事をスタートした。
建てたのは、江戸時代の船主で廻船問屋も営んでいた豪商で、築200年以上と想定されている。木造2階建てで延床は70坪。低く構えた2階からは中之作港と太平洋を一望することができる。
豊田さんの計画は、「清航館」を調理場つきのレンタルスペースとし、地域の会合などに使ってもらうほか、落語会などのイベント、食事付きのワークショップなど地域活性化の核になる施設として運営すること。
そのためにも、『冬は寒くて行きたくない』古民家ではなく、断熱・気密にしっかりこだわった暖かい民家にしたいと考えた。
2間グリッドの伝統工法
建物構造はとてもシンプルで、8寸(24㎝)角の柱が2間(3.6m)間隔に並び、その柱に梁の高さ30㎝を超す鴨居(かもい)が差し込まれて留まっている。石の基礎に柱が乗ったこの構造で、震度6弱の揺れと津波によく耐えた。
200年の間には何度も改修が行われており、オリジナルがどうだったかをつかむことはかなり難しい。また、断熱・気密を行うために当然のことながら窓や壁、小屋組にはこれまでにない改修を加えることになる。ただ、デザインしすぎず、これまでの200年がそうだったように、ずっとこの地にあったような意匠にしたいと豊田さん。このため開口部については木製にこだわった。
2012年に土塗り壁の施工を参加型イベントなどで終え、地震で崩れた瓦の除去と断熱のための新しい小屋組を行って瓦を載せ直し、今年1月末には外部足場がいったんはずれた。その後木製サッシを取り付け、外部工事がほぼ終了。訪問時は床断熱工事をほぼ終え、隣接して蔵があった東側の解体が行われていた。
断熱は屋根が既存の小屋組の上に200㎜、壁が土塗り壁の外側に100㎜、床は床下に100㎜。いずれもグラスウールを使用。
* *
改修工事の資金は、有志からの募金や企業などの補助金で捻出。運営は、任意団体で立ち上げ、今年2月にNPO法人に認可された中之作プロジェクトが行っている。代表の豊田さんは「予算の関係で、2階の工事や厨房などは間に合わないが、来年3月にはとりあえず完成の予定だ。ここが最初にきれいになり、にぎわいがよみがえって震災復興の第一歩になれば」と語っている。
同プロジェクトの問い合わせや募金は事務局へ(tel0246-38-4848)。
[写真 上から]
・港に面した「清航館」。外観はきれいにお化粧直しが済んでいる
・室内の一部。正面床の間の脇に2階へ上る隠し階段がある。手前は氏神様をまつる神棚、8寸柱と鴨居も見える
・2階の床の間は螺鈿(らでん)貼りに加え、漆加工の模様が浮き上がる。隠し階段からも2階は特別な空間だったのではないかと想像される
・施工を終えた塗り壁の前に並ぶ、中之作プロジェクトを支える豊田さん(中央)、公私ともに豊田さんを支える千晴さん(左)、NPOの事務をするとみーさん(右)
2013年06月15日号から
編集長の目 土間下断熱は必要か?
土間下の断熱なしで普及開始
北海道で壁の断熱厚とともに最近関心を集めているのが、基礎まわりの断熱だ。
基礎断熱工法は北海道で開発され、本州へ広まった。布基礎の外側に断熱し、床下全体を保温空間とすることで地盤の熱容量を生かしつつ、床まわりの気密納めを大幅に簡略化できることが主に在来軸組工法を採用するビルダーから評価されたためだ。床下を収納スペースにすることもできる。
基礎断熱をする場合、布基礎とともに土間下も断熱するべきか否か。ヨーロッパ・スウェーデンの図面を見ると、土間下に厚い断熱を施していた。カナダ・R-2000マニュアルでは、布基礎から90㎝までの室内側土間下に断熱すると、とても効率的だと書かれていた。昭和60年代のことだった。
基礎断熱を普及させる際、北海道では、土間下の断熱は必要ないという指導がされた。断熱すれば冬季の暖房負荷を軽減できるが、夏場に地盤の涼しさを室内に取り込むことができなくなること、数年経過すると冬季の熱損失もおちついてくることがその理由だった。また、新工法普及の障害となるコストアップを最小限に抑えるため、土間下断熱をあきらめた面もあったかもしれない。
床下の熱損失とカビのリスク
それがここへ来て『土間下断熱をしたほうがよい』という話が徐々に強くなっている。
Q値計算ソフトでシミュレーションすると、基礎まわりの熱損失を減らそうと布基礎部分の断熱をいくら厚手化してもほとんど効かない。次世代基準(Q値1.6W)を超す高断熱化を目指すとき、基礎とは別の断熱方法が必要になっていることが一つ目の背景。
そもそも基礎断熱は、初年度床下がかびやすい。床下に暖房器を設置しない場合、夏場で床下温度は床上より3~5℃低くなる。ところが土間下全面に断熱すると、カビっぽさがなくなると言われている。床下のカビを防ぐには土間下全面断熱したほうがよいというのが第2の背景。
そして、最近の熱解析の結果、基礎断熱の場合は土間下の断熱が有効であることがわかってきたことが第3の背景にあるようだ。
先日室蘭で開かれたNPO新住協の研修会で室蘭工業大学・鎌田紀彦特任教授は、超高断熱住宅Q1.0-X住宅を推進するに当たり、言葉を選びながら土間下断熱をしたほうがよいと述べていた。
納めとコスト増をどう解決するか
さあ、この問題をどうやって前に進めていくのか。
コスト面を試算すると、押出スチレンフォームB3種50㎜を20坪の土間に敷き詰めたら40枚。7万円以上の費用増になる。
工法はどうか。ベタ基礎のように底盤が平たいときは断熱材を敷き込みやすいが、布基礎工法だと最も熱が逃げやすいとされる基礎と土間の取り合いの断熱がいい加減になりやすい。
断熱性を維持しながら最大限のコスト抑制を実現するために、どのような土間下断熱工法が考えられるのか。そもそも土間下断熱でどの程度の熱ロス抑制が実現するか。夏場の冷熱は使えないのか。これまで日本の断熱住宅をけん引してきた第一人者とともに、ここはぜひ若手研究者のがんばりに期待したい。先人の功績の上に新しい成果を積み上げるのは、後に続く人たちの仕事だと思う。
床下の環境面から考えると、土間下断熱をした方がカビ被害を避けることができる
無暖房・矩計
無暖房住宅(スウェーデン)の断熱構成
屋根:U値0.08W
壁 :U値0.10W
土間:U値0.088W
窓 :U値0.85W
2013年05月15日号から
これから要注意シーズン 気密良くてもアリ侵入 青山氏が調査・解明
新築引き渡し後、間もない時期に「家の中にアリが出た」と苦情の電話が入るケースが増えている。アリが不快だということのほか、「気密性がいい建物のどこから侵入したのか」「どこかジメッとした部分があるのではないか」、すなわち気密性や腐れといった不具合があるのではないか、という不安が背景にあるはずだ。
防腐処理や害虫駆除で有名な㈱青山プリザーブは10年以上前からアリ問題に取り組み、このほど同社課長の青山達哉氏が日本ペストロジー学会に論文を提出した。
同社ではこれまで、新築住宅に侵入するアリは主にトビイロケアリと呼ばれる小さな黒いアリで、シロアリとは無関係であること、トビイロケアリによる人間への実害はなく、不快感を与えるだけ。また室内にエサを求めているわけでも木材の食害もないこと、基礎や外壁断熱材として使われるポリスチレンを好んで、巣を作る例もあることなどを調査し、報告している。
今回の青山氏の研究は、アリが侵入した住宅と気密性能の相関関係を明らかにするもの。札幌とその近郊で調査した446棟を精査したところ、アリが侵入した住宅の気密性能が悪いという傾向は統計分析上もまったく認められなかった。侵入家屋の平均C値は0.48、侵入していない家屋の平均C値は0.44となっている。
青山氏によると「アリの侵入は築後6ヵ月以内が多く、1年以内の侵入報告がほとんどだ。これは想像だが、まれに冬場の屋外から侵入するアリは、工事中に捨てコンのすき間などに閉じ込められて、そこから出てくるのではないか。季節的には、6~8月の侵入例が多い」という。
アリの防除は、殺虫剤でじゅうぶん駆除可能であり、壁・床を剥がす必要は無い。また断熱材の継ぎ手をテーピングするだけでかなりの侵入を防げるという。
詳しくは同社へ(☎011-882-1722)。
[写真上]コーラ飲料に集まるトビイロケアリ
[写真下]土間コン部に閉じ込められたアリが春と勘違いして冬季に出てきた例。築1年以内。写真正面は内側の基礎断熱材
「クロアリ」関連記事
住宅内にクロアリが侵入する事例を最初に報告した記事
寄稿・前編 トビイロケアリ(黒アリ)が 新築住宅に侵入する事例について (株)青山プリザーブ 青山 修三
(2008年・平成20年7月15号 北海道住宅新聞)
前年記事の続報(2009年07月15日号)
この記事はWebにアップしておりません。ご希望の方は試読紙のお申し込みからお問い合わせください。
リフォームで壁をはがしたらアリ
シロアリ駆除剤を使うべきかどうか(2010年02月25日号)
クロアリが出たときどうするか
状況説明より、共感と誠実な対応(2010年06月25日号)
気密性が良くてもアリが侵入
「アリの侵入は築後6ヵ月以内が多く、1年以内の侵入報告がほとんど..」(この記事)
2013年01月01日
2013年 あけましておめでとうございます。
新しい年はいつも希望に満ちています。
夜明け前は暗く、いずれ日の出が来ることなど想像もつきませんが、日はまた昇る。
ここ数年、1月1日の初日の出は札幌・手稲山で迎えております。初日の出が拝めた年もあれば、強風でNGの年もありました。今年は雪雲がかなり厚く、当初から期待できなかったのですが、日の出から1時間、ついに1月1日の太陽が!!
ご来光を拝みながら、今年も北海道住宅新聞などの活動を通じ、よりわかりやすい情報発信を続けていこうと決意を新たにいたしました。
また白井ならびに当社の活動によって、たくさんの出会いやよろこび、感動を皆さんと共有することを目標にしたいと思います。
2013年もよろしくお願いいたします。
株式会社北海道住宅新聞社
白井康永
2012年12月05日号から
書評 『失敗しない事業承継の知恵』 吉川 孝 著
吉川先生とは、2009年に発刊された前著「なるほど!正しい事業承継」がご縁で講演と原稿をお願いし、その後はフェイスブックでつながっていたが、このほど新刊書籍がでた。非常に実践的内容で、事業承継に関係する方は、まずはこの本を読むことを強くお勧めする。
吉川先生は税理士で、経営コンサルの仕事もするうちに、事業承継こそが仕事人生の仕上げとして最も大切だと考えるようになったという。最近は優良な企業も承継できないために解散になったり、次世代へのバトンタッチそのものがうまくいかなかったりという事例を知るにつけ、事業承継が無事終わることが未来への架け橋になると見極めたのだ。
前著は、事業承継の何たるかもわかっていない小生にとって、とてもよい教科書になった。しかし、実践部分の記述は薄く、いわば総論編だった。
新刊は、実践から入って全体を見る構成になっており、忙しい現経営者・次世代経営者が読むには最適だと思う。そして全体が知りたいと思ったときに、前著を手にとってほしい。
なんだかんだ言っても、事業承継の中心テーマの1つが税金対策であることは間違いない。それは節税という面もあるが、むしろ会社の株式をどうやって次世代に引き継ぐかが大きなポイント。そこに焦点を当てながら、本当は最も大切な経営の承継についてしっかりとした説明がなされている。
対象は北海道だけではない。内容は中小企業に特化しており、むしろ全国の中小企業に読んでほしい。
本紙編集長
定価:1,200円+税
ISBN978-4-89115-273-4 C0034
2012年09月15日号から
高断熱化の仕様など学ぶ
県のガイドライン制定きっかけ
青森・三沢市
青森県・三沢地域の住宅性能を考えるセミナーが地元建材店の協賛などによって9月7日、同市内で開かれ、地元工務店を中心に40名ほどが集まった。
青森の太平洋側に位置する三沢市は、南の中心都市・八戸とは独立して内陸の十和田市と共通の経済圏を形成する。人口4万人あまりに加え、米軍関係者が1万人暮らす基地の街でもある。
住宅地は敷地が比較的広く塀も少ない北海道以上にアメリカ的な景色が広がる。大手が拠点を構えておらず、地元と十和田の業者が担い手になっている。
住宅性能面では、市内はⅡ地域で次世代基準が1.9W/㎡・K。ただ、この春に青森県が「青森型省エネ住宅ガイドライン」を示し、推奨基準として県内一律にQ値1.4Wを示したことから、地元業者の断熱に対する関心が高まっていた。
講師は本紙編集長の白井康永が務め、北方型住宅に学ぶ高性能住宅の手法と注意点と題して、北海道の断熱の現状と札幌版次世代住宅基準、青森型省エネ住宅ガイドラインを解説。その上でQ値1.4Wをクリアするための仕様についていくつかの例を示した。
Q値を上げるための①壁断熱強化②熱交換換気③窓のトリプル化のうち、最初はめんどうに見えるが①壁の断熱強化が意外に簡単で坪単価も1~1万5000円アップ程度で済みコスト面でも有利と説明。最後に、国の政策が断熱規制の義務化とネットゼロエネルギーの方向に進んでいることを解説した。
参加者は3時間の講演を最後まで熱心に聞いていた。
2012年06月21日
【お詫び】サーバー障害によりサイトが一時停止しておりました
当サイトをいつもご利用いただき、ありがとうございます。
まずは弊社よりお詫びを申し上げなければなりません。
当社が契約しているレンタルサーバー会社で大規模な障害が起き、サイトが見られない状態が続いておりました。楽しみにしていたみなさまに、深くお詫び申し上げます。
【障害の発生】
6月20日(水)17:30頃
【サーバー会社側の対応】
大規模な障害につき、復旧を優先するためにサーバー内のデータを全てリセット(初期化)し、データがほとんどない状態になりました。6月21日午後1時過ぎにサーバー会社側からの発表があり、これに対して弊社ではローカルに保存していたバックアップデータを使って復旧作業を開始しました。復旧作業には数時間を要しました。
【障害の仮復旧】
6月21日(木)17:30頃
※障害が発生した時点から仮復旧するまでに弊社宛にメールを送られた場合、メール自体が消失している可能性が高いので、恐れ入りますが再度送り直しいただくようお願い申し上げます。
【現時点での不具合】
バックアップデータには写真データがほとんど含まれていないため、現時点では写真データが多数抜けた状態になっております。また、バックアップデータは5月2日時点のデータのため、ここ1ヶ月半ほどのデータが復旧されておりません。
【この後の対応】
写真データの復旧、5月以降の記事データ復旧作業は最長数日間かかる見込みです。みなさまには引き続きご迷惑をおかけしますが、もうしばらくお待ちください。
2012年06月05日号から
外野席
1001号のトップ記事は、夏の暑さ対策となりました。暑さ対策・冷房に断熱が有効であるという内容。
じつは、窓開け換気のときでも、断熱住宅は計算よりかなり有利です。ただ、日射遮へいができていないと、室内の過熱によって断熱性能の優劣など問題にならないほど暑くなってしまいます。
日射遮へいができていると、外気温が落ちるにつれて室温も低下を始めます。しかし、断熱の悪い住宅は2階の天井からの輻射熱がハンパないのです。これは経験されている方も多いのではないでしょうか。わが家の経験では、2階に熱気だまりができるものの輻射熱はかなり抑えられ、通風や冷気導入がうまくいくと下階同様に涼しくなります。
こういった現象を体感していても、これまで論理的に説明することができなかった。鎌田先生は、この問題に本気で向き合い、論点を整理したと思います。ボクは6月1日広島での講演が、今後の日本の住宅環境を変える一歩になってほしいと願います。
国や学者が何を言おうと、いい住宅、施主が支持する住宅があれば、必ずその技術は広まるはず。そう思います。
2012年06月05日号から
1000号発行のごあいさつ
1984年の創刊以来 2012年6月5日号をもちまして本紙は1000号を迎えることとなりました これも ひとえに皆様方のご支援ご鞭撻の賜物と深謝申し上げます
これを機に 社員一同いま一度初心にかえり 皆様方の御期待にお応えできますよう邁進いたす所存でございます
今後とも何卒倍旧の御高配を賜りますよう 伏してお願い申し上げます
2012年6月5日
株式会社北海道住宅新聞社
代表取締役 白井康永
社員一同
6月5日号は記念特集です。
すべてのページをダウンロードできるようにいたしました。
ぜひご覧くださいませ。
分割ファイル
2012年03月05日号から
最新の2020、2030年人口推計
子育て世代大幅減 シニア世代は変わらず
厚生労働省所管の国立社会保障・人口問題研究所は先ごろ、最新の将来人口推計を発表した。2010年の人口が1億2806万人、これが2030年には1億1662万人となり、住宅取得世代である30代人口は1828万人から1228万人へ600万人、30%以上も減少する。
30代人口が8年後に2割減
日本の人口がすでに減少をはじめたのは知っての通りだ。日本政策投資銀行の藻谷浩介氏は、デフレの原因が人口減少による需要の縮小であると主張しているが、原因である人口減少を止めることはできないとされる。
特に住宅業界で重要となる一次取得世代と60歳前後のリフォーム世代の人口推移はどうか。
30代人口は、2010年には1828万人。これが2020年では440万人あまり減って1386万人、さらに2030年には1228万人に減少する。
今から8年後は、およそ20%の減少、18年後はおよそ30%の減少。この間に消費税が上がる可能性が高い。
では55~64歳人口の推移はどうか。2010年段階では団塊世代がすっぽりと入っているため人口は非常に多く、1884万人。30代人口と同じ水準だ。これが2020年になると、団塊世代の高齢化に伴い360万人あまり減って1516万人。しかし2030年は再び増加し1762万人となる。
団塊世代を抱える2010年時点よりは減少するが、この年代は一次取得層ほど急激に減少しない。むしろ安定している。
戸建てを必要とする子育て世代は今後大幅に減少するが、終の棲家を修繕したい、あるいは老後に向けて住み替えたい世代は、今後20年にわたって減少しないことがわかる。
北海道
自然減に加え人口流出
以上は全国統計。しかし、北海道や東北は全国平均よりも人口減少が急激に起きており、また市町村別人口を見ると、背筋が寒くなる推計が示されている。
都道府県、市町村別の推計は、最新の資料がまだ発表になっておらず、前回の2008年推計となっている。
北海道は、2010年人口が552万人。これが2020年に516万人、2030年には468万人に減少する。後述する札幌が2030年に人口が10万人減。すなわち札幌を除く北海道の人口は、2010年の361万人から2020年には10%減って326万人、2030年にはさらに10%減って287万人へと激減することになる。
現在の住宅取得世代と言われる30代の人口は、2010年のおよそ74万人から減少し、2020年で58万人、2030年には47万人。すなわち、今から18年後の2030年には、一次取得層人口が3分の2以下に減少しているのだ。
一方、現在の定年退職前後の世代である55~64歳人口は、2010年が88万人、2020年が66万人に減少、のち2030年には少し増えて69万人。全国平均よりも2030年時点の回復が小さいのは、人口流出が想定されているからだ。
札幌各区
増える中央、減る南
札幌の2030年推計は、全市で181万人。2010~2015年の191万人をピークに減少に転じ、2010年比で95%、すなわち5%の減少となる。
区別に見ると、中央区だけが増加し4%の伸び、それ以外の9区は減少となる。減少区の下げ幅はまだら模様だ。最大の下げ幅が南で16%減。次いで厚別、手稲、清田となっている。
人口は中心部に集中すると考えられ、郊外ほど減少する予想となっている。札幌の中でもハッキリとした色分けができてくる。
その札幌市も、人口構成を見ると相当に深刻だ。
30代の人口は、2010年のおよそ29万人をピークに減少し、2020年で25万人、2030年には20万人を割りこむ。すなわち、今から18年後の2030年には、一次取得層人口が3分の2に減少しているのだ。
一方、55~64歳人口は、2010年が28万人、2020年が24万人に減少、のち2030年には再び増えて28万人。全国平均とほど同じ傾向だ。
道内市町村
道東が比較的底堅い
道内他都市では、2005年人口を基準にした2030年の増減率で成長予想が北広島101%、音更106%、東神楽102%の3市町のみ。90%すなわち減少率が1割以内にとどまるのが千歳98%、恵庭99%の2市に、芽室96%、中標津96%、幕別92%をあわせて合計5市町。逆に減少率が高いのは、主要都市では小樽65%、室蘭69%、釧路68%、函館72%の4市だ。
2012年02月05日号から
空知・石狩北部で記録的豪雪
OB客の除雪SOS急増
昨年末から空知地方や石狩北部を襲った豪雪は、鉄道や高速道路を寸断し、路線バスも一時全面運休に追い込まれるなど、市民の暮らしに大きな影響を与えた。この状況に地場の住宅会社も、工期の遅れやOB客からの除雪依頼の急増など、これまで思いもよらなかった事態に直面している。
岩見沢など過去最高
雪の行き場ない状態
今回の豪雪によって1月16日の最深積雪は空知管内の岩見沢で194㎝、石狩管内の新篠津村で213㎝、石狩市厚田で169㎝と、3地点で過去最高を記録。この日は高速道路が札幌・旭川間で断続的に通行止めとなり、JRも運休や遅れが出たほか、道路の除排雪も追いつかず、岩見沢市内を運行する高速バス・路線バスはすべて運休。その2日後には災害派遣で道内の陸上自衛隊が岩見沢と三笠で排雪作業を開始し、1月の終わりになってようやく日常の暮らしを取り戻しつつある。
「まちなかにこれだけ降ると、除雪した雪の置き場所がなく、道路の除排雪も遅れていくのは当然。国道とその他の道路がぶつかるところは除雪の20?30㎝くらいの段差ができているほか、歩道に寄せた雪の山の上を人が歩いて走る車を見下ろしていたり、道路がすり鉢状になってバスがすれ違いできない光景を見たのは、かなり久しぶり」。
こう話すのは岩見沢に本社を置く武部建設㈱の武部英治専務。同社ではOB客からの除排雪依頼が1月25日時点で60件を突破した。例年はこの半分以下と言い、人手が足りずにやむなく断るケースも出てきているそうだ。巨大な雪庇が落ちて外壁・窓に損傷を与えそうな住宅や、高齢者世帯の住宅は、現場より優先して除排雪したという。
車のために除雪が増える
また、岩見沢市在住の建築家・中村欣嗣《よしあき》氏は「道路の除排雪が間に合わず、雪が高く積み上がっているため標識が見えなくなったり、消火栓やバス停の立て看板、ゴミステーション、信号の押しボタンが埋まるといった問題が出てきている。住宅に目を移すと、1世帯あたりの車の保有台数が増え、除雪が必要な面積や接道の長さが増えたために、排雪しなければならない雪の量が昔に比べて増加していることがわかる」と話す。
降雪量や積雪量の問題だけでなく、住宅づくりや暮らし方の変化も除排雪環境悪化の一因になっているという指摘だ。
何をするにも時間かかる
このような状況の中で、地場の住宅会社は日常の業務をどうこなしていたのか。
武部建設では年をまたいで施工中の現場が市内にあるが、職人の移動や建材納入にかかる時間が従来の倍くらいかかったりしたほか、1日のうち半分は除雪という状況が続き、生産効率は2分の1程度にダウン。1月20日前後になってようやく落ち着いた。
「郊外の現場だったから排雪や車の駐車スペースを確保できたものの、これが住宅密集地だったら車が停められず、現場近くから歩いて行かなければならなかったり、建材などの配送もできなかった可能性がある。札幌のまちなかだったらお手上げ状態では」(武部専務)。
このほかにも、「毎日除雪だけで終わってしまい、工事が全然進まなかった」「建材販売業者が配送をストップした」などという他社の話も聞こえてくる。
巨大な雪庇対策が必要が心配
地場住宅会社の間では、この豪雪による住宅への被害も懸念されている。代表的なのは巨大化した雪庇の落下による外壁・窓・外構部材の破損や電線の切断、屋根の積雪荷重による建具の動きの不具合などだ。
雪庇対策としては軒先ヒーターや衝立て状の専用部材を設置することが考えられる。ただ、通常の降雪であれば効果的なこれらの対策も今回ほどの大雪になると、軒先ヒーターの部分がかまくらのように中空状態になった雪庇ができた住宅や、衝立て状の専用部材が雪に押されて折れ曲がった住宅も何軒かあったとのこと。
武部建設・武部専務は「岩見沢は道の条例で垂直積雪量が160㎝となっているが、当社では200㎝で計算して梁のサイズを決めているほか、住宅の配置・形状に応じて軒先ヒータなど雪庇防止部材を適切に設置したり、雪庇が隣家の敷地内に落下しないように軒先から隣地境界線まで150㎝のスペースを取るといった対策を行っている。今後もこれらの対策を強化していきたい」と話している。
また、今回の豪雪地域の状況を見た限りでは、①屋根に安全に登ることができる配慮②雪庇がかぶらない位置への電線引き込み③軒先の雪庇を安心して落とせる配置計画などもポイントとして挙げられるだろう。
写真
①豪雪メイン...積雪量と雪庇を見ると、いかに豪雪だったかがわかる(中村欣嗣氏提供)
②豪雪雪庇...岩見沢市内の多くの住宅では建物東側に巨大な雪庇が発生。道路の除雪でできた雪山とくっつきそうな住宅もあった
2012年01月25日号から
2012年住宅着工予測
道内微増で3万3千戸
全国は90万戸に届かず
〈前文〉
今年・2012年の全道住宅着工は、不安要素があるものの、全体で微増、持家に関しては踊り場の一年となり微減。戸数としては、総体で1・8%増の3万3100戸、持家は4・5%減少の1万1500戸と予測する。全国は6%程度の成長となるものの90万戸には届かず、88~89万戸と予測する。
総体としては横バイ
消費税アップ前の踊り場
〈本文〉
昨年・2011年の1~12月住宅着工は、全道が3万2518戸、全国が83万9565戸(未発表の12月実績を前年並みと仮定)。いずれも対前年比で成長したものの全国の伸びは3%台にとどまった。東北地方を中心に東日本大震災の影響もあったが、成長に力強さが見られなかった。
一方の北海道は、全国平均を上回る2ケタ成長の12%増。2009年を底に、2年連続で回復してきた。震災による建材納品の遅れや一時的なマインドの低下もあったが、遅れた分はすべて年の後半に集中し、トータルで当初予測通りの伸びとなった。
昨年の動きを踏まえて2012年をどう見るかだが、北海道については大きな流れは横ばい。消費税率アップ駆け込み前の踊り場状態と言えるかもしれない。
今年の着工を予測する上で、次の要素を考える必要がある。
▽全体景気について
①建設関係を中心に、震災復興需要等によってお金が動き出している。
②道内の建築関連雇用のだぶつきが調整され、人件費は若干強含み。
③全体経済は、消費支出の停滞予測もあり弱い。
▽住宅業界のプラス要素
①消費税率アップへ向けて、緩やかに上り坂。
②エコポイントなど住宅取得支援政策の続行。
③もう少し続きそうな団塊ジュニアの住宅取得。
④徐々にリフォームが回復。
▽マイナス要素
①家計の可処分所得は減少に転じる(ただし住宅購入によってローン減税が受けられる)。
②全体景気は停滞、個人の所得も上がらず。
③厳しさ増すローン審査(銀行側の事情もある?)。
④昨年後半から大手メーカーの着工が息切れしている。
(以降は見本紙・試読をご請求ください)
(伝言欄に「1月25日号から希望」とお書き添えください)
https://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/
2012年01月05日号から
外野席
新年あけましておめでとうございます。今年は外野席強化を目標にがんばりますので、おつきあいください。
日本の省エネ、省CO2の根拠となってきたCOP3京都議定書の達成が、ほぼ不可能となった。きっと、震災がなかったとしても達成できなかったと思う。未達成に悪びれるふうもない。マスコミの取り上げ方もきわめて小さく、過去のことみたいな扱いだ。
政府の真剣度がここに来てハッキリわかった。やる気はナッシングだったのだ。そのことはもう良い。ただ、この先も、京都議定書の未達と同じように、ズルズルと現状追認のエネルギー政策が続くのではないかと大いに心配される。断熱や省エネは、国ではなく地方政府が推進したほうが前進するのかもしれない。
2011年12月28日
年末年始の休業につきまして
今年も北海道住宅新聞およびウェブサイトをご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
当社は明日29日から年末年始のお休みに入ります。年始は、1月10日からの営業となります。
なお、編集長コラム札幌良い住宅フェイスブックでは、この間も随時発信を続けて参りますので、ときどきお越しくださいませ。
みなさま、よいお年をお迎えください。
株式会社北海道住宅新聞社
代表取締役 白井 康永
2011年12月15日号から
インタビュー 2012再生 第3回
代表 小西彦仁さん
トータルの設計力を磨く
2009年に「愛国農場の家」で「バーバラ・カポチン国際建築ビエンナーレ賞」(イタリア)の最高位である国際建築賞に輝き、北海道を代表する建築家として活動している札幌市の小西彦仁さん。
そんな小西さんにこれまでの仕事ぶりと来年2012年をどう占うか聞いてみた。
当社は1997年暮れ、独立間もない小西さんが設計した「中庭の家」を取材した。南面も北面も採光するためにパティオ(中庭)を導入するという斬新なプランが印象的だった。
空間と建物で魅せる
いごこちのいい美容室に
―これまで美容室の設計が多いようですが、リピート受注できる秘訣があるのでしょうか?
小西 実は同じ経営者のお店を設計しています。最初に設計したのが2号店にあたる店舗で、その後新規で出店や建て替えがあるたびに私に指名が来ました。美容室も私もともに仕事が増え、成長したのだと思います。
私の基本的な考えは、「店舗も住空間の快適さが必要」です。斬新なデザインや凝ったインテリアを採用しても、冬寒かったり、暖房費がかさむような建物設計では意味がありません。また、建物や空間自体が魅力的でなければならないと考えています。
美容室は女性客が多く、滞在時間が3~4時間と長いことも特徴です。ですから、店内で快適に過ごせるかどうかはお店の客入りにも影響してくると思います。
美容室のお客さまから住宅の設計依頼が来るケースもあります。2009年にイタリアで国際建築賞をいただいた「愛国農場の家」も、施主の奥さまがその美容室の顧客で、美容室の建物に興味を持っていただいたのがきっかけでした。おかげさまで、十勝では宣伝をしていないにもかかわらず、毎年お仕事をいただいています。
新しい農村景観を
別棟とは見せないデザイン
―農家の住宅も手がけられていますが、どんなことを提案するのですか?
小西 これまでは、農家の方が家を建てようと考えると、マチの住宅展示場まで行き、参考にしていました。
そして建てられる家も1階はリビング中心の間取り、2階は広い個室というプランが多かったようです。しかし、ムダなスペースも多く、農家の生活実態、農村文化とは離れたプランニングです。
農家の方からお話をうかがうと、30代あたりを境に考え方に大きな差があることがわかりました。30代以下は、プライバシーを重視しますし、それ以上の方は大家族制に慣れているのでいっしょに暮らしたいと思う。こうした違いを受け入れた新しい農家住宅を提案したいと思いました。
農家にとって、家の窓から見える畑や田んぼは風景や景色ではなく『仕事場』です。若い奥さま世代からすると、早朝から夜まで大家族が顔を合わせて働き、休みの日もなかなかない。そんな中で家にいるときは自分の時間がほしい、仕事場である外の畑などを眺めたくないという方もいます。また、農家が代々続いていくには、子どもが「跡を継ぎたい」と積極的に思える環境が必要です。そのため、子世代のプライバシーが保ち快適に過ごせるという要望を取り入れながら、2世帯が一つ屋根の下に暮らすという暮らしのかたちも重要視したプランにしました。
「愛国農場の家」では、外観上は5つのモジュールに分かれ、外からはどこが親世帯、子世帯が住んでいるかわざとわかりにくい形にしました。内部では、明確に子世帯と親世帯を分けてプライバシーに配慮しました。
こうした新しい試みは、お施主様の理解がないと実現しませんが、快く取り入れていただき、形になったことで、農家住宅の新しい提案が残せたと思います。
2012を「読む」
二極化が進行
―2012年以降、住宅市場はどうなると思いますか?
小西 二極化の傾向が進むと思います。ユニクロ的な、規格化された高品質で低価格な住宅を求める方、そしてオーダーメイドのオンリーワンの家を求める方です。
設計事務所はもちろん後者でしょう。私はお客さまの要望通りではなく、要望以上のプランを提示してお客さまに喜ばれたいと思っています。
また、東日本大震災が契機となり、住宅の環境性能も重要になると思います。ヒートポンプ機器などを取り入れればそれでOKではなく、断熱性能の向上なども考える必要があります。さらに、建築家として住空間も含めトータルで快適な家を提案したいと思います。
一方で景気に懸念材料があります。それは消費税の増税です。住宅で3%や5%の増税というのは金額に換算するとたいへんな事です。
私が独立したのは1996年ですが、翌97年に消費税が5%に上がり、その後一時的に仕事がパタッと止まった記憶が今も甦ります。当時は独立したばかりでほんとうに焦りました。
駈け込み需要もその後の需要激減も、対応するのがやっかいな問題です。できれば、住宅は増税の対象から外してほしいし、税率が一律になるのがやむを得ないなら、建築する住宅の条件によって補助金を出したり減税するなどの措置がないと、住宅業界は今後大きく景気が冷え込むのではないかと心配です。
【写真】
小西彦仁さん
イタリアの建築賞を受賞した「愛国農場の家」
O house.jpg O house(2010)
ALAMODE CHERIR.jpg ALAMODE CHERIR(2011)
2011年11月15日号から
円山動物園に学ぶ快適で省エネな環境設計 後編
札幌市立大学デザイン学部 斉藤雅也准教授
冷房しないほうが快適!?
私たち人間にとっても、暑い日の路面からの強烈な照り返しは非常に不快。立っているだけで頭がクラクラします。
これは、かつてのオランウータン「弟路郎」の住まいと同じ温熱環境になっているのです。壁や天井、照明などから放射される熱のせいで設定通りの冷房効果が得られません。
温放射の影響を適度に抑えるには、建物の断熱・気密性能を高めることが基本。その上で、日差しを建物の外で遮り、室内を加熱させないことが重要です。さらに通風を図るのが夏場対策の基本です。これだけで湿度の低い北海道の夏は十分爽やか。
日射遮へいをした風通しの良い部屋の方が、冷房した部屋より快適という実験結果もあります。そして、冷房しない部屋は冷房空間より室温が高くても、ずっと快適に感じるという驚くべき結果が出ています。
エアコンの効いた空間は居心地が良さそうですが、快適に涼しい場所は意外に少なく、冷房の周りは寒く、離れると暑いという経験があると思います。断熱と日射遮へいが不十分なまま冷房に頼ったためなのです。
冷房に頼りすぎてはいけない
類人猿館は当初、屋外放飼場全体をある程度、均一な温度にする案があったそうです。
最終的には「暑いところと涼しいところを造って選択できるようにした方がいい」という飼育員さんのアドバイスを重視。植栽でところどころに日陰を作る現在のプランを採用しました。「弟路郎」の動線も日向と日影を交互に移動しながらのびのびと暮らしていることがわかりました。
適度な温度ムラがある環境のなかで、自分でそのときいいに場所を選んで暮らすのは、動物だけでなく、人間にとっても悪いことではありません。エアコンの効いた部屋に朝から晩まで閉じこもると、むしろ問題です。
ふだん冷房した部屋で過ごす人は冷房をあまり使わない人と比べて総じて低体温。発汗・放熱によって体温をコントロールする機能が正常に働かなくなり、汗をかけない体になるのです。
冬も夏同様、まず建物を高断熱・高気密にして外壁や窓面の冷たい放射を防ぐことが大前提。暖房はパネル式セントラルなど低温の放射熱でマイルドに暖めるタイプを選びます。「周壁温度は高く、室温は周壁温度と同じくらいかやや低めに」が上手な暮らし方。高断熱・高気密住宅は室内が18℃くらいでも快適に過ごせます。
創エネ、節約以外の第3の選択
原発の是非や自然エネルギーへの転換をめぐって各方面で議論が交わされていますが、ほとんどがサプライサイド(エネルギー供給側)の話。「今ある電力をいかに適切に使うか」というディマンドサイド(需要側)の問題については『節約』以外の対策が打ち出されていません。
家庭で電気を節約することは確かに大事。でも「我慢」だけで暑さ寒さを克服するのは体に負担がかかります。
電力を必要とするアクティブな技術(暖房・冷房)と、必要としないパッシブな技術(断熱や日射遮へい)を上手に組み合わせれば、快適さや健康を犠牲にしないで省電力が実践できるはずです。
人気のグリーンカーテンに家族みんなでチャレンジするのも楽しそう。
最後に
「エクセルギー」の概念
「省エネ」とか「暖房エネルギー消費」という言い方をしますが、エネルギー自体は消えてなくなるわけではありません(エネルギー保存の法則)。増えもせず減りもせず、太陽からのエネルギーは、地球に入り、最終的には地球を出て宇宙空間に放出されています。そこで熱力学の世界では、エネルギーのもっている資源性を「エクセルギー」と呼びます。
化石エクセルギー消費を少なく(省エネ)するにはシステムの効率を高めると同時に、冬であれば、建物の内部から屋外に熱が伝わりにくく、逃げにくい構造にしなくてはなりません。そのための技術が「高断熱・高気密」です。夏は「高断熱」に「日射遮蔽」が加わり、通風できることが鍵になります。また、「エクセルギー」概念によって、住まいの断熱・蓄熱・日射遮蔽がサプライサイド(供給側)の規模をかなり小さくできることもわかります。
今回は「エクセルギー」の概念について詳しい説明ができませんでしたが、それについてはまた改めてまとめてみたいと思います。
※9月3日に小樽市で開かれたNPOパッシブシステム研究会の市民セミナーでの講演記録に基づいて、講演者である斉藤先生が加筆・修正した。
写真
札幌ファクトリーの施設を中心に曇りの日に撮影。曇っていても壁面や道路の過熱がよくわかる。一方、壁面緑化された部位は温度が低い。寒冷地の都市のデザインでも、緑化は大きな意味がある
出典:宿谷昌則編著、エクセルギーと環境の理論-流れ・循環のデザインとは何か-改訂版、2.3体温調節システム(76-84ページ)より抜粋(井上書院、3400円+税)
2011年11月05日号から
円山動物園に学ぶ 快適で省エネな環境設計 前編
札幌市立大学デザイン学部 斉藤雅也准教授
ガマンと節電の夏
福島第1原子力発電所の事故による電力不足が心配された今年の夏。
節電一色の空気の中、本州ではエアコンの使用を控え、気合いで暑さを乗り切った方も多いと聞きます。そして、いよいよもう1つの電力需要ピークである冬を迎えます。
電力不足や計画停電によって太陽光発電や蓄電池に注目が集まっており、一方、節電方法としてはガマンや節約が話題の中心ですが、基本となるのは住宅性能のはず。
建物の断熱・気密性能がしっかりしていて、日射遮蔽や通風などパッシブな技術を取り入れれば、夏も冬も快適に乗り切ることができるのです。そのことを円山動物園の動物たちが教えてくれました。
動物園の動物たちが教えてくれる
札幌市立大学は円山動物園と2006年から動物舎デザインを中心にさまざまなプロジェクトを協働で実施しています。その中で斉藤准教授は、自身の専門である建築環境学に基づいて、動物舎の温熱環境のデザイン監修をされました。
生息地の気候(光・温熱・空気環境など)を忠実に再現した展示が話題の円山動物園「は虫類・両生類館」。約60種類ものワニやヘビ・トカゲの仲間たちが生き生きと暮らしています。
紫外線を放射するランプのそばで気持ち良さそうに甲羅干しをしたり、水に潜ったり。孵化や冬眠をガラス越しに間近で見ることも出来ます。
太陽光による自然暖房や昼光照明、円山地域の季節風を利用した高窓換気など電力消費を抑えたパッシブな建築手法も積極的に採用しています。
動物園という小世界で、いわば逃げ場のない動物たちの命を守るには、年間を通じ生育に適した光・温熱・空気環境を維持することがとても重要です。
建物は外気温の変動に大きく影響されないようコンクリートの外側に断熱材を施工。暖房は強制対流型ではなく、極端な温度ムラや乾燥を招くことが少なく、繁殖にも適した低温放射型のシステムを使用しています。
高断熱・高気密なシェルターを外断熱工法で造り、穏やかな温放射で室内を温める。これを「温房」と呼んでいます。ヒトが住む住宅と同じ考え方です。
オランウータンが熱くて動かない
オランウータンの弟路郎(ていじろう)が住む「類人猿館」の屋外放飼場も3年前、大がかりな改修工事を行いました。
以前は夏になると、奥の日陰でじっとしていることが多かった弟路郎。熱帯雨林の森に棲む動物で暑さには強いオランウータンがなぜ動かないのか。じつは"熱くて"動けなかったのです。北緯43度の札幌でも夏の日射で50℃に達する、コンクリート床からの放射熱が原因でした。動かないから、見学に来た市民も素通りしていました。
今の住まいはコンクリートの床を土にかえ、強い日差しを防ぐ木陰をつくりました。土と芝生の庭はコンクリートと違い、歩けないほど熱くなることはありません。高い樹木もあります。
「森の聖人」と呼ばれるオランウータンにとって暮らしやすい光・温熱環境になってからは、樹上を移動する姿が見られるようになりました。
屋外施設ですので空気温(外気温)は以前とそう変わりません。何が変わったかと言うと、壁面や地面といった周壁の表面温度(放射温度)です。これは私たちの住む世界も同じで、夏季の住まいは、空気温度を低くしなくても、強い温放射の影響を抑えることで、環境の質は格段に向上します。
以上のことは、熱力学の「エクセルギー」という概念※によって得られた知見です。夏、外気温が30℃を超えるとき、「人体のエクセルギー消費速度(熱的なストレスを表わす)」が最も小さくなるのは、室温26℃の冷房室ではなく、適度な風が通り、壁面温度が28℃ほどの通風環境であることがわかっています。
愛嬌タップリの生活ぶりを見ようと長時間、足を止める人も増えました。木陰のクールスポットが来場者にも心地いいようです。
※9月3日に小樽市で開かれたNPOパッシブシステム研究会の市民セミナーでの講演記録に基づいて、講演者である斉藤先生が加筆・修正した。
画像
オランウータンの屋外放飼場、上がビフォー、下がアフター。床表面が60℃に加熱している改修前に比べ、改修後は温度が下がっている
画像
サイイグアナの展示スペース。高温のランプとその周辺で温度差をつくりだした
2011年08月25日号から
取材ノート
2代目社長の苦労
取材で工務店のトップインタビューがここ数年で30社以上あった。3代目、4代目という人は少なく、2代目という人が多かった。創業し、がむしゃらに突っ走ってきた先代と違う悩みや課題があるように思えた▽「経営の近代化」「フランチャイズへの加入」など、先代の方向性を修正して時代に合うものにし、経営を継続的なものにする。もう一つは「第2の創業」をして、先代とは違うことにチャレンジし、先代を否定するような行動をとる▽20代で会社を継いだある2代目は、「先代は営業らしい営業もせず、経営も大雑把。そこをなんとかしたかった」と言い、別の2代目は「女遊びが過ぎた先代を追い出し、社内の雰囲気も仕事の進め方も根本的に変えて会社を建て直した」と言う。もちろん、先代と一緒に仕事をしながら平和に事業継続ができた例も多くあるが、それとて経営の継承は簡単なことではなく、その事例の数だけドラマがあると感じた。
2011年08月25日号から
ヤフーに広告.新聞読まない30代以下狙う
土屋ホーム
(株)土屋ホーム(本社札幌市、佐藤孝司社長)は、インターネットのポータルサイト「ヤフー」にキャンペーン告知用のバナー広告を約1ヵ月掲載、反応も上々なことから第2弾も計画している。
掲載したバナー広告は、「エコフルキャンペーン」告知。キャンペーン内容は、新築住宅に太陽光パネルを設置する人を対象にパネル設置費用の一部として100万円を独自に補助するというもの。バナーをクリックすることで同キャンペーンの専用ページに誘導する。6月に約1ヵ月間掲載した。
ヤフーは、トップページには全国対象のバナー広告しか掲載できないが、「ヤフー不動産」や「ヤフートピックス」などコンテンツページには地域を限定したバナー広告を掲載することが可能。土屋ホームは不動産情報の検索や北海道のローカル情報を閲覧するようなユーザーに対してバナー広告を表示するように設定した。
このバナー広告をきっかけにキャンペーンページを閲覧するユーザーや現場見学会に来た人が相当数いたといい、次回は新しい企画住宅の告知用バナー広告を計画している。
同社では、これまで雑誌広告や新聞折り込みチラシ、現場見学会などを顧客との接点に活用していたが、悩みは30代以下の若い顧客にアピールすることだった。最近は新聞の折り込みチラシの反応が鈍くなり、特に30代以下が目立っていた。また、雑誌広告では掲載される住宅会社の数が多すぎて埋没しがちだ。そこで、住宅や不動産に興味がある人に限定するバナー広告を試した。
同社の渡辺成樹企画宣伝室長は、「iPadなどタブレット型パソコンが普及したことで、気軽にパソコン用ホームページを見てもらえるようになったこともバナー広告を出す動機となった。しばらくバナー広告の効果を見極めていきたい」と話している。
【画像】
6月に載ったバナー広告
2011年08月05日号から
窓の外で日射をさえぎるとなぜ涼しいか
今年は日本全国が特別な夏を迎えている。夏場の電力不足が心配される中、エアコンの運転を控えてほかの方法で涼しさを得ようという工夫だ。生活の知恵も大切だが、何より大切なのは窓の外で日射をさえぎること。ではどのくらいの効果があるのか。実測してみた。
遮へいすると屋外より涼しい
同じ方位の窓で、1つは窓の外で日射をさえぎり、もう1つはそれがない窓それぞれの室内側に「おんどとり」を設置して、数日観察した。日射をさえぎった方のおんどとりを「よしずくん」、外部遮へいなしのおんどとりを「カーテンさん」と名づけた。
設置面は南東で、直射日光の影響も受けることがあると思うが、夏の暑さの原因である日光を避けるようなことはせず、本当に窓辺において見守った。ただ、4日間はおんどとりを設置した窓を開けず、最後の1日だけカーテンさんの窓を開けた。
この5日間、朝方雨が降った27日をのぞき、天気は曇りから晴れの天気が続いた。特に午前中はおおむね晴れた。
グラフを見てほしい。見事に折れ線がそろってできた。日射をさえぎっていない「カーテンさん」は、最高気温が26℃台の日でも30℃を軽く超える。最高温度のピークが午前中になるのは窓が南東面だから。南西面で測定すれば午後にピークを迎えるだろう。
※続きは試読をお申し込みください。
(伝言欄に「8月5日号から希望」とお書き添えください)
https://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/
2011年07月06日
東日本大震災の被害に遭われた皆さまへ
3月11日の午後に起きた「東日本大震災」、および原発事故により被害にあわれた皆様に、改めて心よりお見舞い申し上げますとともに、犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。
被災地におかれましては、一日もはやく普段の生活に戻れますよう、皆様のご無事を心よりお祈り申し上げます。
なお弊社では、3月15日号から6月25日号まで「北海道住宅新聞」紙面をpdfファイルとして提供してまいりましたが、すでにご案内のように6月をもって終了いたしました。
被災地の購読者様で、pdf配信サービスの継続利用をご希望の方は、たいへん恐れ入りますがこちらまでメールをお送りくださいませ。
iesu@iesu.co.jp (@を小文字に変更してください)
ご面倒をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
2011年7月6日
株式会社北海道住宅新聞社
代表取締役編集長 白井 康永
2011年06月25日号から
6月25日号をpdfでダウンロード配信します。
北海道住宅新聞 ご愛読者各位
3月15日号から本紙紙面をpdfファイルとして当社公式ホームページからダウンロードできるようにいたします。
ご面倒をおかけいたしますが、ダウンロードしてご覧くださいませ。ファイルは1ページずつの分割ファイルと、統合したファイルを用意いたします。
※ダウンロードサービスは今回をもって終了いたします。被災地の購読者様で、継続利用をご希望の方は、たいへん恐れ入りますがこちらまでメールをお送りくださいませ。
iesu@iesu.co.jp (@を小文字に変更してください)
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2面(1,253KB)
3面(857KB)
4面(602KB)
5面(743KB)
6面(607KB)
7面(386KB)
8面(709KB)
北海道住宅新聞社
2011年06月15日号から
6月15日号をpdfでダウンロード配信します。
北海道住宅新聞 ご愛読者各位
3月15日号から本紙紙面をpdfファイルとして当社公式ホームページからダウンロードできるようにいたします。
ご面倒をおかけいたしますが、ダウンロードしてご覧くださいませ。ファイルは1ページずつの分割ファイルと、統合したファイルを用意いたします。
※ダウンロードサービスは6月をもって終了いたします。
分割ファイル
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6面(643KB)
7面(430KB)
8面(658KB)
北海道住宅新聞社
2011年06月15日号から
Q1.0-X全国で
カーボンマイナスも視野
NPO新住協の総会・全国研修会が5月20日、京都市内で開かれた。代表理事で室蘭工業大学教授の鎌田紀彦氏は京都で開催できたことを節目としたいと語り、断熱住宅の効能が認められ、徐々に全国に広がっていることを報告した。
今年度の事業としては、Q1・0住宅の省エネ性をいっそう高めたキューワン・エックスへの取り組みと、必要となる技術開発を進める。
キューワン住宅運動では、暖房エネルギー消費を次世代基準比の半分に抑える高断熱化を推進してきたが、これを発展させるキューワン・エックスはほぼ無暖房になる超断熱性能とライフサイクルカーボンに着目したカーボンマイナスをにらむ。
手法として、断熱面ではすでに技術開発が進んだ外壁の高断熱化に加え、熱損失の少ない基礎断熱工法の開発、シロアリ地域向けの床断熱工法の開発、ローコスト大型木製サッシの開発などがテーマとなっている。
このほかの事業では、補助金を受けた断熱・耐震改修事業の推進もあげられる。こちらは今年度もエントリーする予定という。
総会終了後は鎌田代表理事による基調講演、続いて東京大学名誉教授で日本建築学会元会長の内田祥哉氏による記念講演が行われた。また、会員による断熱・耐震改修事例の報告、東日本大震災による停電で、無暖房状態となった仙台の住宅の温度環境報告も行われた。
基調講演は、4月に札幌で開かれたキューワン・エックス(Q1・0―X)のセミナーをベースに、全国に発信する内容。
現在のキューワンも含めて性能レベルを4段階とし、全国的に外壁200mm断熱をベースに断熱仕様を設定していく。
会員は鎌田氏の講演に聴き入っていた。
なお、内田先生による記念講演は後日まとめて掲載する予定。
写真
Q1.0-XのCO2排出量と創エネ(太陽光発電)の関係。札幌でカーボンマイナスはかなり厳しい
鎌田代表理事
2011年06月05日号から
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北海道住宅新聞 ご愛読者各位
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北海道住宅新聞社
2011年06月05日号から
家族で東日本大震災被災者を支援
野菜類差し入れ続ける
アキレス(株)北海道営業所に勤める酒井善光さんは、家族を宮城において札幌で単身生活。札幌生活も1年になろうというときに東日本大地震が起きた。
日本海まわりでなんとか自宅に戻り、家族や近所の生活再建、親せきの見舞いなど一通りのことを済ませ、いったん札幌に戻り、ゴールデンウィークに再び自宅に戻って酒井さんは驚いた。自宅近くに約100名が暮らす避難所があったのだ。
そこは東北本線・品井沼駅前の農村環境改善センター。有名な景勝地・松島から内陸側に数㎞入った地点で、東松島市の人たちが暮らしているという。東北本線が復旧して娘さんが通学に駅を利用できるようになって初めてわかった。
避難暮らしについて訪ねたところ、野菜類が不足しているとのこと。これを知った酒井さんは、自費で近隣の農家から野菜を購入し、差し入れを開始した。
大型の避難所には毎週仕出しがあったり芸能人が来たり、それなりの生活変化があるようだが、ここではそういったこともない。
地震被害については十分にわかっているつもりだった酒井さんも、こういった避難所生活の温度差を知って驚いたという。
写真は避難所の外観と内部。そして差し入れた野菜類。現在は野菜類が足りているようで、その都度確認して差し入れているそう。
北海道は今回の震災による直接被害が少なかったが、過去には大きな地震も経験している。多くの人が赤十字などを通じて義援金を寄せているが、酒井さんの活動もまた被災者への支援活動だろう。
酒井さんの活動に関心のある方は、編集部・白井までご連絡ください。(電話011・736・9811)
写真
酒井さんが最初に届けたコネギ・ミズナ・ホウレンソウ・トマト
松島町の避難所外部と内部
2011年05月25日号から
5月25日号をpdfでダウンロード配信します。
北海道住宅新聞 ご愛読者各位
3月15日号からしばらくのあいだ、本紙紙面をpdfファイルとして当社公式ホームページからダウンロードできるようにいたします。
ご面倒をおかけいたしますが、ダウンロードしてご覧くださいませ。ファイルは1ページずつの分割ファイルと、統合したファイルを用意いたします。
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北海道住宅新聞社
2011年05月25日号から
熱中症の危険とエアコン
続・夏場の節電と冷房
「エアコンを扇風機に替えると電力が5割削減」
5月上旬にとつぜん飛び出したこの言葉が、不幸をよばなければいいのですが...。
報道では、家庭の削減目標が15%、エアコンの設定温度を2℃上げて10%、エアコンをやめて扇風機にすれば50%―。どのメディアもそういっている印象です。
念のためインターネットで「節電」をキーワードに検索し、最初にリストされた経済産業省のホームページから、「家庭の節電対策メニュー」という掲載を見つけました。
報道とはまるで印象が違います。政府の資料には、注意書きとして「エアコンの控え過ぎによる熱中症などに気をつけて、無理のない範囲で節電しましょう。」とハッキリ書かれている上、エアコンをやめることを推奨してもいません。
数度の違いで危険高まる
【熱中症】高温度下で労働や運動をしたために起こる熱射病。脱水・けいれん・虚脱などが現れる。(大辞泉)
独立行政法人国立環境研究所のホームページには熱中症予防に関するページがあります。
それによると、熱中症の患者発生は、WBGTという指標と密接な相関関係があります。
WBGT(湿球黒球温度)とは、人体の熱収支に影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れた指標で、熱中症の危険は温度だけでなく、湿度と輻射熱に影響されることを意味しています。
WBGT温度と気温の関係、そして指針と注意事項を表に示しました。
本当に数度の違いが熱中症の危険を大きくするということです。WBGT温度で31度を超したら危険域です。この時の気温はおよそ35℃程度。高齢者は安静状態でも危険が高まるということです。
「冷房は使うべき。ただし冷やしすぎは遠慮してね」というのがこの夏の対策のようです。
既存住宅の節電対策は紙面またはリンクへ。
http://www.shasej.org/
2011年05月15日号から
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北海道住宅新聞社
2011年05月15日号から
夏場の節電と冷房
3種換気の併用が効果的
大震災の影響で夏場の電力供給に余裕がなくなり、東北、関東、中部では夏場の省エネ(今年の場合は節電)のために「冷房期間を短くする」「負荷を小さくする」ことがとても大切になっています。
この機会に北海道も含め冷房をどう減らすかを考えてみたいと思い、研究者に取材を申し込んだところ、意外な答えが返ってきました。1つは「冷房をケチるべきではない」こと、もう1つは「第3種換気との併用が省エネでかつ効果的」ということなのです。
換気量は0.5~1.0回/h程度
夏場を涼しく快適に、かつ省エネに生活するには、断熱に加え、日射遮へいと通風(自然冷却)、そして効率のよい冷房機が必要であることはいうまでもありません。
既存住宅での配慮や対策については、空気調和・衛生工学会が4月、ホームページ上に「日々の安全や衛生、健康や最低限の快適性を損なうことなく、電力不足に伴う緊急の節電対策の留意点(暫定版)」をまとめて掲載しました。
これらについては紙面の関係で後日掲載します。またホームページからpdfファイルをダウンロードできます。
(夏期の業務用ビル並びに住宅における節電対策の留意点)
さて、今回のメインテーマは冷房と換気の関係です。
というのも、多くのかたは冷房効果を上げるために換気はとめたほうがいい気がするでしょうし、換気も第3種より第1種全熱交換型がいいと聞いたことがあるのではないでしょうか。
最新の研究では、どちらも正反対の答えが出ているそうです。
取材したのは国立保健医療科学院生活環境研究部・主任研究官の田島昌樹博士。田島先生は換気と省エネルギー分野の専門家です。
戸建てとビルは違う
ビルは基本的に24時間空調で、しかも冷房負荷がピークになる午後の時間帯にルスということはあり得ません。
ところが戸建ては、昨夏のような酷暑でも冷房運転は間欠でon/offします。さらに、昼間はルスの家が多く、冷房は止まっています。
このように間欠運転、しかも部分冷房の戸建てでは、そもそも熱交換換気の省エネルギー効果は限られるのです。
このことを試算によってまとめたのがグラフです。全館連続暖冷房の場合はもうちょっと違う結果になるのですが、基本的に関東以西では暖房でさえも間欠運転になります。ですから間欠運転を前提にしたほうが現実的でしょう。
まず、年間トータルで見た場合、熱交換換気を入れなくても、一次エネルギー消費は変わらないか(Ⅱ、Ⅲ地域)、入れるとむしろ増えてしまいます(Ⅳ地域以西)。これは、熱を回収して暖冷房負荷を減らしても、換気運転にかかる電力消費負荷が増えてしまうからです。
省エネルギーの観点からは、熱交換換気を導入するメリットはほとんどありません。
冷房は暖房の1割以下
棒グラフを見てもわかるように東京などⅣ地域でも冷房のエネルギー消費は暖房より少なく、実際の使用状態になるとさらに少なくて暖房の10分の1以下、5%という例もあります。ただし、ビルでは冷房のほうが多くなります。住宅はビルといっしょに考えることができないのです。
全館連続暖冷房でも、冷房時に熱交換換気を運転するメリットはほとんどありませんから、エネルギー的には暖房時だけ運転するほうがいいことになります。
もう一度強調しますが、冷房エネルギー消費は想像よりはるかに少ないのです。
熱中症予防と冷房
酷暑となった昨年は熱中症で医療機関へ搬送された人が5万人を超え、搬送後に亡くなった方だけでおよそ170名に達しました(消防庁まとめ)。高齢者が冷房をとめた室内でなくなるケースも多く、「温度計を設置して、室温28℃を超えないようにエアコンをつけて」といったアドバイスがされていました。
今年は電力供給の減少から「冷房温度を上げて」と節電を呼びかけていますが、高齢者には「冷房を入れてください」と伝えています。通風ができるからといって冷房を止めるのはよくありません。
もう一つ付け加えたいことは、去年のような酷暑では冷房が絶対に必要、逆に今年が平年並みの暑さなら、冷房負荷は昨年の4分の1から5分の1に減るので、熱中症対策を考えても遠慮せず冷房を利用したほうがいいということです。
冷房負荷がこれほど違うのは、暖房と違って冷房は室内と屋外の温度差がさほど大きくないこと。その中で昨年の暑さは平年より5℃以上も高くなったり、40℃の日もあり、内外温度差が大きくなったことに加え、外気温が上がるとエアコンの効率が下がるためです。
エアコンの選択と効率
効率を考えると、小さなエアコンを大きな空間で運転するのがもっとも効率がよいことがわかっています。負荷の大きなところで使ったほうが効率が上がるという意味です。
日射遮へいや遮熱がしっかりしていれば、エアコンはよく効くので○畳用という目安よりもずっと広い面積で使ってだいじょうぶです。
冷房時に換気をとめる?
これは住み手の問題なので、夏の暮らしかたとしてアドバイスする時に参考にしてください。
結論は、換気回数で1・0回/h程度の換気を行うと、もっとも省エネになる一方、0・5回以下だと冷房負荷が増えます。
意外に思うかもしれませんが、室内には人体や冷蔵庫など発熱源があり、断熱化によって熱をため込む能力が高くなると、その排出にはちょっと窓を開ける、機械換気を増やすなど換気や通風を行った方が良いのです。窓全開はNGですが・・・。
写真
答えてくれた田島昌樹先生
2011年05月05日号から
5月5日号をpdfでダウンロード配信します。
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5月5日号はLED照明を特集しました。
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2011年04月15日号から
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2011年04月05日号から
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2011年03月25日号から
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北海道住宅新聞社
2011年03月15日号から
3月15日号をpdfでダウンロード配信します。
北海道住宅新聞 ご愛読者各位
日ごろは本紙をご愛読いただき、まことにありがとうございます。
さて、東日本大地震の影響で、郵便物等の到着が大幅に遅れる見込みとなり、配送に郵便を利用する本紙も発行日にお読みいただくことが難しい状況となりました。
そこで、郵便が正常に戻るまでのあいだ、本紙紙面をpdfファイルとして当社公式ホームページからダウンロードできるようにいたします。
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2011年03月15日
東北太平洋沖地震の建材・設備メーカーへの影響
ここでは、3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震による建材・設備メーカーへの影響と対応について、3月15日現在で各社ホームページから得られた情報をまとめた。
情報は刻々と変わっているので、最新情報は各社ホームページを参照して欲しい。
取り上げた以外にも、東京電力の計画停電の影響で生産計画に遅れが出たり、物流インフラの被害で配送に通常以上に時間がかかる場合が多いので注意すること。
【総合メーカー】
パナソニックグループ
http://panasonic.co.jp/info/110314.html
パナソニック電工郡山工場が復旧作業中
http://sumai.panasonic.jp/teiden/
断水・停電・地震時におけるパナソニック電工製品取扱い注意事項
LIXILグループ(4月1日から合併してLIXILに)
トステム
http://www.tostem.co.jp/oshirase/pdf/20110314_02.pdf
LIXILグループ各社の工場操業停止 全国49ヵ所中8ヵ所 工場被害は軽微
INAX
洗浄便座の停電時便器洗浄方法など告知
サンウェーブ
お客さまダイヤルと修理受付ダイヤルは休止
カタログ配送に1週間~10日程度の遅延の恐れがあり、一部配送停止地域も
【水まわりメーカー】
クリナップ
http://www.cleanup.co.jp/important/important2.shtml
工場は被害軽微だが、水道/物流インフラの復旧待ちで操業停止
既発注分も含め、3月末日まで納品不可能
カスタマーセンターには電話がつながりにくい状況が続いている
TOTO
http://www.toto.co.jp/News/dansui_teiden/index.htm
洗浄便座の断水・停電時など便器洗浄方法を告知
ハウステック
http://www.housetec.co.jp/topics/11031402.html
結城工場と宇都宮工場被災につき、一部製品の納期遅延あり。エコキュートの停電・断水後の復帰方法についてもリンクあり。
【サッシ、外装材】
YKKAP
http://www.ykkap.co.jp/cominfo/20110314.asp
宮城工場の被害状況など確認中、15日まで操業停止
旭トステム外装
カタログ・サンプル送付をしばらく中止する。AT-WALL製造の鹿島工場・物流が被害を受けて停止しており、商品供給にしばらく時間がかかる見込み。Danサイディング製造の一関工場も被害を受け、現在出荷停止中。
【内装材など】
リリカラ
http://www.lilycolor.co.jp/interior/news/2011/110315.html
東北支店は当面休業、商品配送に遅れがある可能性告知。
【断熱材】
マグ・イゾベール
http://www.mag.co.jp/news/l_Refer.php?news_id=134
土浦工場、明野工場ともに被災。特に明野工場は被害が大きい。16日まで製造・出荷停止。17日以降は被災した状況を調べた上で後日告知。
旭ファイバーグラス
http://www.afgc.co.jp/news/2011/0314_140339.shtml
工場損害はないが、北海道、東北、北関東などで配送できない場合がある。受発注受付時間は計画停電の実施により変動する
JSP
http://www.co-jsp.co.jp/ir/top01_1_1/2011031510374102/P2388347902606/JSP_4586113650325.pdf
鹿島工場に被害。現在操業停止して操業再開に向け調査中。
【金物】
タナカ
http://www.tanakakanamono.com/images/1103314_02.pdf
北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、千葉県への受注・配送は一部地区が配送不能な場合がある
カネシン
http://www.kaneshin.co.jp/info/dc/110314_4info.pdf
北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、千葉県からの受注はしばらく中止(運送会社が配達を見合わせているため)
上記以外の地域でも集荷・配達遅延は起きている
【暖房・給湯】
サンポット
http://www.sunpot.co.jp/news2-entry.php?eid=00038
花巻の本社工場は被害はあったものの無事。14日は通常通り営業。
ノーリツ
http://www.noritz.co.jp/hpnews/files/52/1745/7320/2484/2011_0314.pdf
つくば工場が停電などの影響で生産中止。インフラ復旧次第生産再開予定。
ピーエスグループ
一部製品の生産・出荷停止中。冷暖房製品の停電からの復帰方法についても記載。
【換気・気密部材】
日本住環境
http://www.njkk.co.jp/news/index.cgi#20
北海道、青森県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、山梨県へは出荷停止中
ジェイベック
http://www.jbeck.co.jp/news/24/index.html
納入遅延のお知らせ
城東テクノ
http://www.joto.com/topics/?128
3/15より中部地方以西の地域(中部・近畿・中四国・九州)および北海道地域で業務再開。配達日・時間指定はできない。
フクビ化学工業
http://www.fukuvi.co.jp/news/index.php?dayy=2011&daym=3#107
仙台営業所休止中につき受発注は新潟営業所で代替
三菱樹脂
http://www.mpi.co.jp/infopdf/mpi_jishin0314.pdf
筑波工場、郡山製造所が操業停止。再開に向けて安全確認中。
デュポン
http://www2.dupont.com/DuPont_Home/ja_JP/NewsEvents/news/2011/article20110314.html
製造・開発拠点の宇都宮事業所が被災し、生産停止中。復旧には日数を要する。
【内装建材】
大建工業
http://www.daiken.jp/news/newsDetail/278/
東部大建工業(株)の高萩工場・会津工場が安全確認のため操業停止
南海プライウッド
http://www.lilycolor.co.jp/interior/news/2011/110315.html
北海道、東北、茨城県での荷受け中止
ノダ
http://www.noda-co.jp/pdf/787920110313.pdf
連結子会社の石巻合板工業の本社事務所・工場設備が被害を受けたが、工場等に近づくこともできず、状況の確認や社員の安否確認もできない状況
【その他】
<ウッドワン、コロナ、コニシ、セメダインなど>
生産設備の被害はないが、震災地域での営業販売拠点は被害を受けて休業中
<エクセルシャノン、積水化成品工業、タカラスタンダード、カネカなど>
地震の影響は現在調査中
2011年03月14日
東日本大地震の被害にあわれました皆様へ
3月11日の午後に起きた一連の「東北地方太平洋沖地震」におきまして被害にあわれた皆様に、心よりお見舞い申し上げますとともに、犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。
被災地におかれましては、一日もはやく普段の生活に戻れますよう、皆様のご無事を心よりお祈り申し上げます。
なお弊社では、郵便が正常に戻るまでのあいだ、3月15日号「北海道住宅新聞」から紙面をpdfファイルとして当社公式ホームページからダウンロードできるようにいたします。
ご面倒をおかけいたしますが、ダウンロードしてご覧くださいませ。なお、ファイルは1ページずつの分割ファイルと、統合したファイルを用意いたします。
株式会社北海道住宅新聞社
代表取締役編集長 白井 康永
2011年03月14日
電話・ファックスは本州方面からかかりにくい状況です
ご迷惑をおかけしておりますが、電話およびファックスにつきましては、本州方面からかかりにくい状況になっております。KDDIの回線の問題のようです。
お問い合わせなどは、白井の電子メール、または携帯電話にお願いいたします。
y-shirai@iesu.co.jp
(@を半角に変更してください)
携帯電話:090-1381-1769
北海道内につきましては、ほぼ正常に戻っているようです。
2011年03月13日
電話・ファックスが回復しました。
当社の電話・ファックスが回復しました。
ご迷惑をおかけいたしました。
なお、電子メールについては、地震発生時より問題なく機能しております。
北海道住宅新聞社
2011年03月13日
電話・ファックスが回復しました。
当社の電話・ファックスが回復しました。
ご迷惑をおかけいたしました。
なお、電子メールについては、地震発生時より問題なく機能しております。
北海道住宅新聞社
2011年03月12日
地震被害について
夜が明けて、地震被害の全容が徐々に明らかになってきました。被災した方および関係する皆さまに、心からお見舞い申し上げます。
当社は現在、電話とファックスがつながりません。
お問い合わせなどは、白井の電子メール、または携帯電話にお願いいたします。
y-shirai@iesu.co.jp
(@を半角に変更してください)
携帯電話:090-1381-1769
2011年02月25日号から
iPad活用術(特集)
ユーザーに施工事例の写真や建材・設備のカタログを見せる、図面を見て修正点を書き込む、仕事の予定やメールをチェックする―。どこにいてもこれらの作業を指1本でこなせる道具として、「iPad(アイパッド)」を導入する住宅会社が増えている。アイパッドで何が変わるか、そしてどんな使い方があるのかをここでまとめてみた。
使うメリットは?
アイパッドに注目する住宅会社が増えている理由としては、まず「モニター表示装置」としての使い勝手の良さが挙げられる。例えば、ユーザーとの商談や打ち合わせの場で施工事例の写真や図面のデータを見せる時、ユーザーの目の前にサッと出して指先1本で次々に写真を表示することができる。ディテールや納まりをよく見せたい時などには写真の拡大も指先で直感的に行える。
特にユーザーの自宅などや事務所以外では、この使い勝手の良さが大きなメリットとなる。写真や建材設備機器のカタログはすべてデータ化して入れておけば、いちいち写真を印刷したり、重いカタログを何冊も持ち運ぶ苦労から解放されるし、ノートパソコンのように起動してソフトを立ち上げる時間はほとんどかからず、ユーザーに画面を向けていることで操作がしにくいといったこともほとんどない。
また、普段は携帯電話でユーザーや大工などと電子メールのやりとりをしている人も多いが、慣れていてもあの小さいテンキーを使っての文字入力はツライという声を聞く。アイパッドであれば画面表示のバーチャルキーボードとはいえ、ノートパソコンに近い感覚で文字入力が可能。ブログの更新なども携帯電話よりずっとやりやすい。
このほか、現場見学会で施工事例の写真を音楽付きのスライドショーで見せたり、パソコンで管理している仕事の予定表や住所録などのデータを取り込むこともできるが、一番のメリットはユーザーの「興味を惹き付ける」ことができる点にある。発売当時はマスコミにもかなり大々的に取り上げられ、テレビコマーシャルもよく見かけることから、アイパッドを知らない人はほとんどいないだろう。商談や打ち合わせでサッと取り出し指1本で操作すれば、ユーザーとの会話も弾み、その場を盛り上げる効果も期待できそうだ。
※続きは試読をお申し込みください。
(伝言欄に「2月25日号から希望」とお書き添えください)
https://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/
2011年02月05日号から
夏を涼しく
窓の設計ガイド発行 北総研
北方建築総合研究所では、冷房設備に頼らず、通風や夜間の低温外気導入、日射遮へいによって夏の室内を快適にする窓の設計や使い方などを解説した技術パンフレット『窓を使った夏のくらし―外気冷房のための窓設計ガイドライン―』をこのほど発行した。同研究所ホームページからPDFファイルをダウンロードできる。
このパンフレットは、平成17~19年度に北総研と(株)シャノン(当時)、トステム(株)、(株)カネカ、YKKAP(株)の4社で行った共同研究「夏季の常時通風可能な開口部の基本性能評価に関する研究」の研究成果を取りまとめたもの。窓の設計の参考にしてもらうほか、通風・換気窓や窓の付属部材の開発に役立ててもらうことを目的としている。
ここ数年、北海道でも夏の暑さ対策としてクーラーを設置する家が増えてきたが、省エネと快適な暮らしを両立するためには、断熱・遮熱とあわせ、窓を積極的に開放して通風・排熱もできる家づくりが重要。しかし、その一方で窓を開放することは騒音や防犯の面で不安を抱えることにもなる。
そこでこのパンフレットでは、外部の音や防犯に配慮するとともに、通風・排熱や低温外気を取り入れて室温を下げる外気冷房(夜間換気)で必要な窓の選択・配置方法など、クーラーなしでも涼しく過ごすための工夫をわかりやすく紹介している。
このほか、付録として引き違い窓を常時開放可能な窓にするための改修方法や、窓の有効開口面積の算出方法、道内各地の日中・夜間の平均外気温度なども掲載されている。
http://www.nrb.hro.or.jp/
2011年01月15日号から
忙しいが冬場は大事
札幌市 工務店 専務
おかげさまで昨年は忙しい1年でした。越年工事もけっこうあって、新年から現場も忙しいのですが、冬の間に見学会を2度開こうと思っています。性能訴求型の当社としては、やはり冬場に完成住宅を見ていただくことが性能をご説明する際にとても重要だからです。引き渡し後の住宅にお客さまをお連れすることもよくあるのですが、それだけでは出会いの数が増えません。ホームページからお問い合わせいただくケースも増えていて、そういうお客さまも見学会をやるとご案内しやすいです。
◆棟梁らしい人がいなくなった
北見市 工務店 社長
昔は棟梁と言えば、腕がいいのはもちろん、下の人間に技術や礼儀作法などをしっかり指導でき、地域の人たちにとっても何か困った時などにとても頼りになる存在だったと思うんですが、最近ではそのような意味で棟梁と呼べる人をめっきり見かけなくなりました。私も棟梁は尊敬に値する存在だったのですが、そんな気持ちを持てる棟梁はごく僅か。どちらかというと大工たちをまとめる"大工部長"といった管理職の棟梁が多い気がします。
◆コスト優先のツケは消費者に
札幌市 設備工事会社 社長
「暖房工事の見積がほしい、工事を頼みたい」とご依頼をいただくことはよくありますが、いざ図面をもらって提案すると「そこにパネルはいらない」など言われることがあります。こちらはプロとしてお施主様が快適に暮らせるよう提案をするのですが、どうも住宅会社の中にはコストやプラン優先の会社があるようで、こちらの提案などお構いなしです。そんなところは断るか、下請けで入るようにしています。当社の責任でそんな仕事をしたとは思われたくないので。
2010年12月15日号から
平成22年版消防白書
火災警報器が威力
平成18年6月からすべての住宅で設置が義務付けられた住宅用火災警報器(以下、火災警報器)の普及率は、今年6月時点でまだ6割弱だが、火災警報器の設置によって、死者数、損害を受けた床面積、被害額は、設置していない場合と比べて大きく減少している。このほど公表された「平成22年版消防白書」が伝えている。
火災警報器は、住宅火災の死亡原因で過半数を占める「逃げ遅れ」を防ぐため、平成16年の消防法改正で18年6月から戸建住宅や延床面積500㎡未満の共同住宅にも設置を義務化。総務省が政省令で示した設置・維持に関する基準をもとに、各市町村が実際の設置箇所や設置方法などを条例で規定しており、一定の猶予期間が設けられていた既存住宅も、来年6月までに全国の市町村で設置義務化となる。消防庁の推計によると、今年6月時点での普及率は全国で58・4%。東日本は61・7%、西日本は53・3%となっている。
消防白書によると、住宅火災による死者数(放火自殺者等除く。以下同)は平成17年の1220人をピークに、火災警報器の義務化が始まった18年以降は4年連続で減少。21年は1023人と依然1千人を超える水準にあるものの、平成15年以降では最も少なくなっており、消防庁では火災警報器の普及が死者数の減少に役立っていると推測している。
また、消防庁では平成19年から21年までの3年間に、失火を原因とした住宅火災約4万4千件を対象として火災警報器の設置効果を分析したところ、火災警報器を設置していない住宅と比べて、住宅火災100件あたりの死者数は7・5人から4・7人へ、損害を受けた床面積は1件あたり48・3m2から22・0m2へ、損害額は1件あたり322万2千円から175万4千円へと減少していることが確認された。
なお、平成21年の住宅火災件数(放火除く)は1万4778件で、死者数1023人のうち逃げ遅れが原因となったのは58・9%と、依然過半数を占めている。
2010年11月05日号から
リフォーム面新設
北海道住宅新聞は11月5日号からリフォーム面をスタートしました。
毎月5日号に掲載する予定です。
詳しくは試読をお申し込みください。
(伝言欄に「11月5日号から希望」とお書き添えください)
こちら>>>
2010年09月25日号から
日射遮へいのありがたい効果 ひと夏の体験
2010年はおそろしく暑い夏でした。天然クーラーつきの北海道も、夜間に機械が故障気味?で、暑さに弱い道民はみんなゲッソリ。そんなこの夏に、たまたま7月から取り組んだよしずを使った日射遮へいの成果について、体験を中心にまとめてみました。題して、「編集長のひと夏の体験」(新聞に掲載した写真類を一部省いています。ご了承ください)
夜9時以降は扇風機が不要
日中は家にいない自分だけでなく、女房もこの夏を「暑いが耐えられないほどではない」と感じていました。家族5人ともに夏バテもなく、食欲も旺盛。
その理由を9月1日の室温変化で見てみたいと思います(図2)。
室温測定は「おんどとり」で行いました。日射と風の影響を受けにくい部分に置いてあります。すぐ近くに景品でもらった温度計があり、常におんどとりより1℃程度低く表示していました。
体感的に27℃を超えると「あついー」とぼやきが出ます。そのぼやきが出る時間帯がこの日は朝7時台から夜の8時ころまで続いていました。
朝の暑さはどのくらいかというと、電気カミソリが滑らない状態です。それが27℃。冷房設備があれば必ずonする温度ですね。
夜はというと、汗を流しながらの夕食となります。しかし扇風機がちょうどいいのもこの温度帯でした。そして夜9時以降になると扇風機がいらなくなりました。
日中は女房の話になりますが、もちろん『暑い』。ただ本州出身で暑さは慣れていることもあるでしょうが、『耐えられないほどではない』。
RC造のマンションに住む友だちは『32℃から下がらない』とぼやき、木造の1戸建ての友人も『家に帰ると32℃』とノイローゼ気味で、わが家は『天国のよう』と涼んでいたというのです。
確かにわが家は今年、いちども家の中が30℃以上になりませんでした。
照り返す暑さなく夜眠れる
涼しかった昨年は別として、これまでも30℃以上にはめったにならない家です。では何がこれまでと違ったか。
照り返すような暑さ、そして夜10時を過ぎてもあまり下がらない室温。そういうことが今年はありませんでした。測定してはいませんが、例年はかなり暑い2階の子ども部屋が1階より少し高い程度でした。
室温と札幌管区気象台の気温の差を見てください(図1・表)。
9月1日は朝8時から外気温が上回り、夕方5時まで続きます。外気ピークは31℃、室温は29℃で、夕方から夜にかけて室温もなだらかに低下しています。
夜間の室温が高いのは、窓をほぼ閉めた日です。前日の外気温が低いときは窓を大きく開けずに寝られる気温でした。
温度上昇の山を見ると、外気より室温がやや穏やかで、しかも遅れてピークが来ています。上昇こう配と下降こう配が同じ角度であることから、順調に室温が下がっていることがわかります。その結果、よく眠れるのです。
これが屋外で日射をさえぎる最大の効果だと思います。
エアコンあればさらに快適
もちろん日射遮へいだけでは快適な涼しさは得られません。エアコンがなければ湿度を下げられませんし、そもそも温度コントロールはできません。
ただ、エアコンを使う場合も日射遮へいはものすごく効果的だと思います。室内に強い輻射熱源がないので、スッキリと冷房が効くはずです。逆に日射遮へいができていないと、この夏は北海道でもエアコンが効かなかったようです。
最後になりますが、窓の外でどのように日射遮へいをするかは立地条件や意匠と相談しながら決めると思いますので、ここでは触れません。
よしずについては、写真のように壁から腕木を突き出し、窓の外側に下げました。窓面との間は10㎝ほど離れており、雨の日は窓を開けると涼しくなります。風対策で振れ止めをつけてみましたが、なくても問題ありません。
光は入るのに室内が涼しく、目障り感もない。口うるさい家族にも好評です。よしずは冬になる前にはずすつもりです。
もう1つよく効いてくれたのが、窓面に這わせたにがうり(ゴーヤー)です。緑のカーテンによる天然の日よけで、かつゴーヤーが3つも収穫できました。2階は軒で、これらは南東面。
西面は立地上、あまり光が入らないので対策していません。
使ったのはよしず。回転窓をフルオープンできず不便かと思ったのですが、不都合なし。通風換気さえできればOKです
2010年09月05日号から
顧客とビルダーを取り持つ潤滑油に/ウーマンズ・アイ vol15
札幌・久末弘信建設 名古屋志津子さん
「結婚当時住んでいた建売住宅は間取りも水回りも収納も、使い勝手の悪い不便な家でした。だからこそ、お客様の住まいはライフスタイルに合った個性的で暮らしやすい家にしてあげたい」。久末弘信建設㈱で建築士・インテリアプランナーとして活躍する名古屋志津子さんは仕事への思いをそう語った。
常に心がけているのは、ユーザーと会社との間で「潤滑油」的な役割を果たすこと。「建築の知識のないお客様にとって家づくりはわからないことだらけ。要望を伝えようにも、うまく言い表せないのが普通です。そこをフォローするのが専門家の役目」と話す。
理想とする住まいの形を言葉で表現しきれない人でも、夫婦間の言葉のやりとりや服装の好み、子供との接し方などを注意深く観察していると、家族のニーズが見えてくるという。それらを踏まえた上で、優先順位に従って予算を振り分け、お客様の夢に近づける方法を探りつつ、全体のプランを練っていく。
手描きパースで自分らしく
「一般の人にはわかりにくい建築用語や法律を、かみ砕いてわかりやすく説明するのも自分の仕事」と名古屋さん。
打ち合わせはパースを描きながら進めるが、これは「これから造ろうとする住まいを、より具体的にイメージしやすいように」という配慮から。
家具や照明、小物など細かい部分までていねいに描き込み、マーカーで色付けしていく。お客様の目の前で短時間で仕上げるには熟練したパースの技術や建築の知識が必要なのはもちろん、家具の標準寸法や流行なども頭に入っていなくてはならない。
「営業的な意味合いもありますが、これが『私らしさ』。大きな買い物をしていただくのに、図面だけのプレゼンテーションでは寂しい気がします」(名古屋さん)。
仕事はバランス感覚も必要
住宅業界の男性の仕事ぶりについては「自分の専門分野・担当分野は頑張るが、それ以外のことには関わりたがらない人が多い気がする」とのこと。「お客様にとっては、いい住宅を建ててもらうことの方が大切。もう少しバランスの取れた仕事の進め方も必要では」と指摘する。
また、古い家や賃貸住宅に長く住んでいた人は、今の住宅がどのようなものかわからないことも多い。
「ストーブがない」「玄関が引き戸じゃない」と不思議そうな顔をする人もいるそうだが、「お客様自身、住んでいる家の性能や機能性・利便性が現在の標準的な住宅と比べてどの程度劣っているのかを自覚していない場合は、いいプランを提案しても納得しないことがあります。最新の住宅の性能・仕様といった情報をお伝えして、時代にあった住宅を知っていただくところから家づくりをスタートしてもらえるようサポートすることも私たちの大切な役目」。
一般の人にはわからないことだらけの家づくりをフォローする専門家として、名古屋さんはそう語ってくれた。
2010年08月16日
雪庇防止技術の協力者募集
住宅の換気排熱をロードヒーティングに利用する技術を開発した川本清司氏が、このほど、その応用技術として雪庇防止、スノーダクトの縦トイ・横トイの凍結防止をロードヒーティングといっしょに実現する手法を開発。現在、施工実験に協力してくれる住宅会社を募集中だ。
建築基準法の改正により、住宅などの建築物は1時間当たり0・5回の換気を行うことが義務となっており、暖房を行う冬場は換気とともに捨てられる熱の再利用が課題となる一方、雪国で安全・安心に暮らすために雪処理の問題はいまも変わらず大きなテーマだ。
換気排熱を利用したロードヒーティングは、両方の課題をいっぺんに解決できる技術として、考案者の川本氏と本間弘達氏(伊藤組土建)が特許を取得したほか、(社)日本建築学会北海道支部の技術賞も受賞。技術を応用した商品としてエコロードヒーティング「ゆうらく」が販売されている。
今回はその技術を屋根に発生する雪庇防止と、スノーダクトのトイ防止にも活用しようという試みで、その実証実験に協力してくれる住宅会社を募集している。
条件は、札幌市内に今年11月末をメドに新築・完成する40坪以上の木造住宅。建築との取り合い確認や見積もり作業などの時間を見込む必要があるため、応募〆切は9月3日(金)。
条件など詳しい問い合わせは、実験を実施する川本氏へ((有)北欧住宅研究所、電話011・712・0331)。
2010年08月15日号から
東岩・グラスウール 道リサイクル認定・北方型ポイント対象
ニットーボー東岩が製造するグラスウール製品が、北海道リサイクル製品に認定された。今回認定を受けたのは、「太陽SUN」「サンツーバイ」「サンボード」「トーヨーファイン」の4製品群。北方型住宅ECOプラスでは、これら認定製品に対し「その他部材」として5ポイントが設定されている。
北海道リサイクル製品認定制度は、北海道内で発生した循環資源を利用し、道内で製造された一定の基準を満たすリサイクル製品を北海道が認定し、リサイクル品の利用を促進する制度。
製品の製造、流通、再生利用または廃棄の各過程において、環境負荷の低減に十分配慮されている点も認定基準となっている。
同社は道内企業として、江別市でリサイクル原料(板ガラス、牛乳・ジュース・ビールなどの空き瓶)から断熱材を製造しており、これを機に断熱材の生産を通じてCO2削減を実現しながら、生産工程ではリサイクル資源を最大限に活用して、環境負荷の低減に貢献したいとしている。
なお、今年度の北方型住宅ECOプラスでは、地域材の使用が条件となっており、「その他部材」としてリサイクル断熱材に5ポイントが設定されている。リサイクル断熱材は「北海道認定リサイクル製品」に限ると規定されており、同社の認定グラスウールを使用するとポイントが加算される。
詳しくは同社営業推進課へ
(tel.011・590・8800)。
2010年08月05日号から
暮らしに寄り添う建築を目指して/ウーマンズ・アイ vol14
札幌・アトリエmomo 櫻井百子さん
円山のマンションの一室には、個人で仕事をする"一国の主"たちが集まっている。職業は様々だが、その多くは女性。櫻井さんも、ここにたったひとりの建築事務所を開いた。同室の仲間たちがお互い助け合って仕事をしており、「みんな違う業界だからこそ、気楽にグチを言いあったり、仕事を紹介し合ったりできるんです」と櫻井さん。仕事が終わってからみんなで飲みに行くのが、なによりも楽しい時間だという。
出産・育児を機に潔く決断
櫻井さんは高校で理系クラス、大学で建築学科と、男性に囲まれて過ごすことが多かった。「そんなに男女の差を意識したことがなかったけれど、女扱いされたくない、という意識はあったかもしれません」。何をするにも完ぺきにしなければ気が済まない性分だった。それは「女だから」と言われたくない、という無意識の表れだったのかもしれない。しかし子どもが生まれたことが転機となる。
出産後は職場だった建築事務所を1年休職し育児に専念。その後復帰してからは、仕事をとりまく状況がすっかり変わった。保育園へ迎えに行く時間で仕事が区切られ、熱を出したといって急に呼び出される。子どものいる生活は、予測不能の連続だ。「でもいい意味でおおざっぱになったというか、無理しなくていいんだ、できることをしようと思えるようになりました」。
子どもがいて、無理なく働くためには「独立するしかない」と考えた櫻井さんは、事務所を退職する。「2つのものから選ぶとき、潔いほうを選ぶ。半端になるならやめます」。育児と仕事をきちんと両立させたい、という櫻井さんらしい決断だった。
設計者の前に生活者である
2008年に念願の個人事務所を設立したが、30代という若さで一軒の家を任せてもらうには信頼が必要になる。
そこでまずホームページを工夫した。建築家という存在を身近に感じてもらえるよう、親しみやすいデザインにし、建築家になるまでの詳細なプロフィールも掲載した。また建築業界以外の人たちと積極的に交流し、刺激を受けた。
櫻井さんがエコハウスに取組むようになったのも、こうした交流がきっかけ。環境問題について活動している人には、環境に負荷の少ない材料の選び方など学ぶことが多かった。櫻井さんは、暮らし方を変えていく提案を、建築でできないか考えるようになる。そして昨年、「下川町21世紀環境共生型モデルハウス」のコンペで最優秀賞に選ばれ、環境を大切にした家づくりの指針となるエコハウスを設計した。
「暮らしに寄り添う距離は、女性のほうが近いかもしれません」と櫻井さんは言う。例えばキッチンのゴミ箱の位置、物干しの高さなど、自分が生活の中で「こうだったら便利だな」と思うことを図面に書いてみる。すると施主の奥様に共感されることも多い。
同時に思い込みで設計しないよう心がけてもいる。「これからの時代、キッチンを"女の城"として考えるのは違うかもしれません。ご主人や子どもも使いやすい"みんなの城"として提案していきたい」。設計者の前に生活者であるからこそ、気付きがたくさんあるのだ。
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下川町のエコハウス『美桑』。林の奥にひっそりと、奥ゆかしくたたずむというコンセプトで設計した
平尾建築事務所時代に担当した住宅のキッチン。大工の造作でコストを抑えながら細かい提案などを実現した
2010年07月25日号から
トップを訪ねる 四国・高松編
日本には元気な工務店がたくさんいる。巨大化を目指すことなく、住宅会社の経営に集中したり、業種の幅を広げたり、ノウハウの販売を行ったりとさまざまだが、軸足を地域と住宅業に置き活躍している。そんな全国の企業トップを、編集長がときどき訪ねマス。
『再受注』から考えた住宅販売
今年はビッグチャンス
最寄り駅で電車を降りて客待ちのタクシーに乗り込む。地図を渡し『わかりますか』と尋ねる。指でしばらく道路をなぞってから「うーん」。けっきょく電話番号からカーナビでルート検索。
5分ほど走ってタクシーは突然停車した。「たぶんここです、訪ねてみましょうか」。こうしてアンビエントホーム高松を訪問した。
看板ナシ、表札もナシ。事務所の気配もなく、モデルハウスらしさは少しだけ。
札幌の工務店社長・Tさんに「いちど会ってみるといい」と紹介されていた。今回、ちょうど四国・高松に出張する機会があり、取材に快諾していただいた。
「今年は10年に1度のビッグチャンス。当社は年商を1・5倍の7億円に伸ばす計画。全国規模で起きているニーズの変化をとらえることができれば、どの地域でも今後の基礎が築ける」。
藤本氏はイケイケの規模拡大論者ではない。むしろ減少時を基準に事業を構築していると語る。
藤本氏の考え方
1.お客さまとのコミュニケーションを切らさない。
2.地域でいちばんおいしいパン屋さんになる。
3.売れる商品を持っている。
1.基本は、『再受注』。およそ5億円の年商のうち、3億5千万円が紹介受注で、このうち5千万円がOB客のリフォームだという。同社は創業13年で社員7名。かなりコンパクトである。
看板がなくてフリーのお客が来られないというのは、OB客中心の商売を進めた結果であって、もちろん新規を拒否しているわけではない。
2.地場産業の情報発信としては、宣伝に頼るのではなく、なくてはならない存在になること。それが藤本氏の言う「地域のいちばんおいしいパン屋さん」の意味だ。
3.商品は、次世代省エネ基準以上・アトリエ建築家の設計(自分で図面を書かない)・メンテのとき現状復帰できる素材―であること。性能面が一定の基準に達したあとはデザイン性や文化的価値が決め手になる。この点で北海道は10年遅れている一方、性能面で本州は10年遅れている。
消費者セミナーを開き、そのあとの『次アポ率(次のアポをその場で取れること)』を8割に高めるといった手法を細かくマニュアル化して実現している点も特徴的。
以下に、藤本氏の言葉を切り抜いてみた。
▽消費者の動きは全国共通
『この地域は特殊だから』という方もいる。もちろん気質の違いはあるし、それが気候風土によってはぐくまれることも実感として理解している。ただ、消費者の動きに大きな違いはない。唯一、首都圏だけは規模がまるで違う特殊な市場だと思っている。
四国の高松は人口40万人、香川県の人口は100万人。気質はものすごく保守的だが、じゅうぶんマーケットはある。
▽変わる=伸びる
今までのやり方をやめて変わろうとし、変われた会社は元気で伸びている。『ユーザーの感性に刺激を与えられる会社』は好調といえる。
商品と人材が揃っていればビッグチャンスだ。当社は今期、社員を増やさずに売上1・5倍増を目指そうと思っている。ただし、その方法は、社員各人が生産性を2倍に上げるも良し、働く時間を2倍に増やすも良し、今まで通りがいい人はワークシェアすることになる。
▽変わるきっかけが必要
人は多くの場合、ダメにならないと変われないし、悪くならないと次にいけない。ボクは社内で、ダメになったらぶっつぶす壊し屋と呼ばれている。小さな会社のやり方だけれど、これが次へのステップだ。
▽フランチャイズの是非
役に立たないFCもあるが、いいものもある。自分でやれば試行錯誤して多くの授業料を払い、結果として時間がかかる。いいFCは時間を買うと思えばよい。ノウハウはお金で買うことができる。ただし、信念とか改革の方向とかはあらかじめトップが決めていなければならない。
そういう意味では、出遅れたと感じている会社は、まずいろいろ調べた上でFCに入ることをお勧めする。
藤本 修(Fujimoto Osamu)
1961年、香川県高松市生まれ。ハウスメーカーをへて1998年アンビエントホームを設立。1998年、工務店ネットワークである㈱アンビエントホームネットワーク設立。2007年㈱CRM設立。工務店の社長であると同時に、フランチャイズ、マーケティング、顧客管理ソフトなどを提供する立場でもある。
http://www.ambienthome.com/
2010年07月22日
おわび 北海道住宅新聞をご購読いただいている皆さまへ
7月15日付記事 長期優良100万円補助「補助枠残り約500戸」 は間違いでした
このたびはたいへんご迷惑をおかけいたしました。
「補助枠残り約500戸」は間違いです。
補助枠は未定です。
国土交通省に確認したところ、締切日は10月1日で変わらず、今後、募集締切日が延長になったり、早まったりする場合には、ホームページ上で速やかに発表するとしています。
経緯を以下にご説明いたします。
「平成22年度木の家整備促進事業」(長期優良住宅100万円補助事業)について、募集が始まった4月当初に長期優良住宅普及促進事業実施支援室に補助戸数を確認したところ、「2000戸を予定」との回答を得ており、6月末時点で同支援室がホームページ上で補助金交付決定通知書が約1500戸となったことから「補助枠残り約500戸」という記事を掲載しました。
その後、一部の読者から「補助枠は2000戸と決まっていないのでは」という指摘を受け、同支援室に確認したところ、当初は2000戸を予定しているという話をしていましたが、「木の家整備促進事業」とともに"木のまち・木のいえ整備促進事業"の一つである「木のまち整備促進事業」の採択プロジェクトがまだ確定していないため、全体で50億円の予算をどう振り分けるかがまだ決まらず、長期優良100万円補助の最終戸数も確定していないとの回答を得ました。
国土交通省にも確認したところ同支援室と同様の回答で、現在のところ10月1日で締切日は変わらず、今後、予算が確定した段階で募集締切日が延長になったり、早まったりする場合には、ホームページ上で速やかに発表するとしています。
よって今回の記事は誤りであり、その原因は同事業の補助枠が当初の同支援室の回答のままと思い込み、確認を怠ったことにあります。
次号(7月25日号)で募集締切は10月1日で変わっていないという記事を掲載するとともに、読者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます。
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北海道住宅新聞
編集長 白井 康永(やすひさ)
2010年07月05日号から
提案力と誠実さでマーケット開拓/ウーマンズ・アイ vol.13
札幌・スズキトレーディング
常務取締役 奥山博子さん
取締役チーフアドバイザー
外川敏恵さん
ヨーロッパや北米の木材製品の輸入・販売を行う(株)スズキトレーディングで、営業スタッフとして活躍している奥山博子さんと外川敏恵さん。2人は19年前にこの業界に入って以来、一般ユーザーに直接商品を売り込むのではなく、設計事務所や住宅会社などに自社商品をスペックインしてもらうための販売促進活動に力を発揮してきた。
男性と女性で能力差はない
2人の仕事は家庭の主婦と直に接するポジションではないため「共感目線」が生かされることはほとんどないが、営業担当として誠実な対応や丁寧な商品説明、木材や建築に関する幅広い知識などが求められてくる。
「体力面で男女差はあっても、考える能力に違いはない」というのが同社鈴木社長の考えで、日常の業務は取引先との打ち合わせやプレゼンテーションのほか、仕入れ・検品、配送の手配、伝票整理など男性社員と変わらない。担当エリアは道内全域で出張も多く、「仕事の性質上、女性であることを意識させられたり、男性との視点の違いを感じる場面はなかった」と奥山さん。
外川さんも「細かな気配りなど女性のいいところは大切にしたい」としながらも「商品や会社の姿勢をいかにアピールするかが肝心」と話す。
営業先で露骨に拒否反応を示す人も、最近では見かけなくなったといい、セクハラなどのトラブルに巻き込まれたこともない。「問題が起きても会社全体で情報として共有する体制が整っています」という奥山さんの言葉からも女性が働きやすい職場環境が伺える。
木の特徴をしっかり伝える
奥山さんは「私たちが扱っているのは必需品ではなく、嗜好品」と話す。
「同じような商品を販売している多くの会社の中から選んでいただくには、あらゆる樹種の特性や他社製品について勉強し、提案力をアップさせることが必要なんです」と外川さん。
日頃の営業活動では、木材の特性をきちんと理解した上で採用してもらうことを心がけている。
「自然の木は温かみがあり、調湿性に優れ、経年変化を楽しむことができる半面、キズがつきやすく、乾燥して変形も生じますし、木の風合いと美しさを保つためにはお手入れも必要。そうした部分も木という天然素材の特徴であることをしっかり伝えることができなくては」(奥山さん)。
展示会などでは、日頃会う機会のないエンドユーザーから「木が膨張・収縮する時の音を楽しんでいる」「適度な湿度が保たれ、室内が暖かく感じる」といった生の声も聞くそうだが、それも営業ツールの一つとして意識。「住まい手個人の感想ですが、取引先には必ず伝えるようにしています」と奥山さん。
「道内の工務店は勉強熱心。自社のカラーを打ち出した個性的な家を造る会社が多いですね」と口を揃える2人。「同じ北海道でも、地域によって住宅づくりはさまざま。その土地の気候風土を熟知した地場工務店が仕事を確保できる世の中であってほしいと思います」と、外川さんは語ってくれた。
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写真上:床に幅広で厚みがある飫肥杉の無垢フローリング、天井にウエスタンレッドシーダーを使い、異なる樹種でコーディネートした室内(一晃建設施工)
写真下:床に味わいあるレッドパインの無垢フローリングを採用(丸三ホクシン建設施工)
2010年04月25日号から
札幌・児童館トルエン問題
原因は意識の低さ
すでにテレビや一般紙で報じられているように、札幌市・宮の沢児童会館の床改修工事後に、トルエンの室内濃度が厚生労働省指針値の26倍となっていたことが判明。100人を超える児童らが体調不良を訴えた。なぜこのようなことが起こったのか。札幌市への取材でわかったのは、市の担当部署と施工業者ともにシックハウスに対する意識の低さと、なおざりな施工管理体制だった。比較的対応が進んだ住宅に比べ、公共建築での意識の低さを指摘する専門家もいる。
トルエン濃度、指針値の26倍
今回、札幌市の宮の沢児童会館で起こったトルエン問題の経緯は次の通り。
1.3月22日にプレイルームの床材を、じゅうたんからコルク床に改修する工事を実施。
2.3月23日から一般開放したところ、職員の1人が体調不良を訴え、アレルギーと診断される。
3.3月28日と31日に室内のVOC測定を行ったところ、厚労省指針値の23~26倍の濃度のトルエンを検出。
4.4月2日にVOC測定の結果を受けて使用した接着剤を確認したところ、トルエンが含まれていたことが判明。
5.4月3日から休館し、9日に床をタイルカーペットにする工事を実施。室内VOC測定の結果、トルエンの濃度が厚労省指針値以下であることを確認。
6.4月10日から一般開放を再開。4月15日午後3時現在でこれまでに体調不良を訴えた児童らは114人となっている。
問題となったトルエンは、接着剤や塗料の溶剤・希釈剤などに使われるもので、人体への影響としては平衡感覚が失われたり、めまいや立ちくらみ、疲労感、吐き気が起こるなど、中枢神経への影響があると言われている。厚労省では260μg/m3(0・07ppm)を指針値として定めている。
工事担当部局である子ども未来局子ども企画課によると、問題が起きた後、コルク床の施工に使った接着剤にトルエンが含まれていたことが成分表で判明。この接着剤はコルク床材メーカー指定の製品で、F☆☆☆☆とJISの認定も受けていたという。
材料検査実施せず
市「事務職では対応できない」
シックハウスの社会問題化を受け、平成15年にシックハウス新法が施行となり、今では住宅でホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)が高濃度になることは、かなり少なくなった。それだけに厚労省指針値の26倍という濃度は尋常ではない。なぜ事前に被害を防ぐことはできなかったのか。
実はこの問題は工事担当部局が適切に職務を遂行していれば、事前に防ぐことができたもの。
札幌市では平成17年に「札幌市公共建築物シックハウス対策指針」を策定し、その中で 1.新築・改修等を行う時には材料受け入れ検査を行い、実際の使用材料が適性かつ安全であることをMSDS(製品安全データシート)や成分表などで確認 2.施工後は室内VOC測定によりホルムアルデヒドやトルエンなど6物質の濃度が指針値を上回っていないことを確認―などを定めている。室内VOCの採取は、捕集管を一定時間設置しておくだけのパッシブ法と、機械で空気を強制的に補集するアクティブ法のいずれでも良いとしているが、今回はアクティブ法を採用し、道立衛生研究所が分析した。
この指針通りに材料受け入れ検査や室内VOC測定を行っていれば、被害は未然に防げたはず。ところが、実際にはいずれも行われていなかったのだ。
働かなかったチェック機能
子ども未来課によると、「材料受け入れ検査はMSDSなどの内容を事務職の人間が見ても、いいか悪いか判断できない部分が多いことから、実際に使う材料は施工業者の判断に頼っていた」という。
確かに建築を専門としない事務職が、化学物質の善し悪しを判断できるかと言えば難しいかもしれないが、それであれば建築関連の部局に依頼することはできなかったのだろうか。そもそも何のために札幌市が指針を定めたのか。
札幌市の公共工事を行った実績がある住宅会社の1社は「あり得ない話で信じられない。公共工事では実際に使う材料をすべて図面に入れて市のチェックを受けるが、今回はチェック機能がまったく働いていなかったとしか言いようがない」と言う。
勘違いして測定も省略
本来は6物質の濃度確認
一方、室内VOC測定を行わなかったことについては、シックハウス対策指針の取り扱い要領を、子ども未来課の担当者が誤って解釈していたことが原因。
取り扱い要領とは、シックハウス対策指針に基づいて各部局ごとにどのように対応するかを定めたもの。同課では施工後の室内VOC測定について、「施設管理者が発注した小規模な修繕工事では、簡易測定や書類で安全確認できれば行わなくてよい」とした指針の一文を受け、課の取り扱い要領でF☆☆☆☆の認定やMSDSなどで安全を確認できた物質は、測定を省略してもよいと規定していた。
しかし、担当者はこの取り扱い要領を誤って解釈し、「F☆☆☆☆であれば6物質すべての測定を省略できる」と勘違いしていたという。
市の公共施設、特に子どもが利用するということを考えれば、人体に影響を及ぼす化学物質が高濃度になるなどあってはならないこと。それだけに今回明らかになった子ども未来課のシックハウスに対する意識は、明らかに低いと言わざるを得ない。
また、指針には「F☆☆☆☆建材の使用とVOCを含まない材料の使用を基本とする」と書かれてあるのに、施工業者はメーカー指定とは言え、なぜトルエンがそんなに高濃度になる接着剤を使ったのかという疑問も残る。その点について同課では現在調査中としているが、施工業者もシックハウスに対する意識が低かったのではないか。
トルエン含有に驚く接着剤メーカーも
そもそも室内濃度が厚労省指針値の26倍にもなるほどのトルエンを含む接着剤が、現在でも作られていることに驚きを隠せない接着剤メーカーもおり、あるメーカーは「当社ではもう5~6年前からトルエンを含む床用接着剤は販売していない。速乾タイプもノントルエンタイプ。正直、まだそんなにトルエンを含む接着剤を作っているメーカーがあったとは」と話す。
子ども未来課では、使われた接着剤のメーカー・製品名は把握しているものの、現時点では公表していない。ただ、メーカー筋の話によると"おそらくこの製品ではないか"という見当は付くという。
今後、同課ではシックハウスに対する意識を高めるとともに、取り扱い要領の見直しや工事仕様書などの書類を確実にチェックできる体制を考えていきたいとしているが、今回のトルエン騒動はシックハウス対策としてVOCを放散しないまたは放散量が少ない材料の選択と、適切な施工管理が重要だということを改めて認識させてくれたと言える。
基準法見直しも必要
さらに今回新たに考えなければならない問題点も浮かび上がった。建築基準法で規制する化学物質は、このままホルムアルデヒドとクロルピリホスだけでいいのかという点だ。
トルエンやキシレン、アセトアルデヒドなどは、人体への影響が指摘されているものの、いまだに法律で使用を規制する動きは見られない。
室内VOC濃度の測定・分析を行うNPO日本VOC測定協会の資料によると、同協会が2007年3月から2008年10月までに行ったVOC測定では、トルエンが厚労省指針値を超えていた物件が21%と、アセトアルデヒドの42%に次いで多いというデータもある。この2つの化学物質はいずれも塗料・接着剤関連の物質から放散されるもの。全棟VOC測定を行っていても、塗料や接着剤を変えたりすると、この2物質の濃度が高くなったことがあると話す住宅会社もいる。
建材メーカー各社ではノントルエンタイプの接着剤や塗料などが主流になっているが、今回のようにトルエンを含んだ製品も市場に出回っており、今回のようなことが住宅でも起こりうる可能性は十分あるだろう。
シックハウス新法の施行から7年経ち、改めて規制の内容を見直す時期に来ているのではないだろうか。
グラフ
NPO日本VOC測定協会が2007年3月から2008年10月まで行ったVOC測定におけるアセトアルデヒドとトルエンの結果
2010年03月05日号から
主婦の経験が営業に生きる/ウーマンズ・アイ Vol.9
音更・(株)とかち工房 武藤ふみえさん
「子どもの頃、家の間取りを描くのが好きでしたが、まさか仕事になるとは」と笑う。専業主婦として家庭に入り、子どもも生まれて幸せな生活の中、地元新聞の女性通信員に応募。そして住宅会社が主催し、消費者が家具を製作したり2×4パネルを使った小屋を建てる「家づくり教室」を取材することになり、出会ったのが後にとかち工房を創業する後藤薫さんだった。
「自分1人でモデルハウスを見に行ったりするのが好きで、家づくりにかかわりたいという気持ちは心のどこかにあったのだと思います」と武藤さん。通信員の仕事が終了後、ある住宅会社にパートとして採用され、モデルハウス受付をしながら次第にインテリアコーディネートなども行うようになった。
とかち工房に縁あって入社し、一からの出発の中で、これまで経験したことのない営業職を志した。「自分が会社に対して何ができるかを考えて決めました。自分が建てたいと思う家だから営業もしやすい」という。
本気で営業に取り組むと、より専門性の高い仕事がしたくなる。そこで武藤さんは宅建資格を働きながら取得した。現在はお客さまとの出会いからプラン打ち合わせ、引き渡し後のアフターまでこなしている。
自分の家を建てるつもりで
武藤さんは、昨年だけで5軒の現場を担当した。忙しい日々の中で、どういったことを心がけているのだろうか。「お客さまの想いや気持ちを十分に聞き出して汲み取ること。『人の話を聞く』という取材経験が生きていると思います。1軒1軒、自分が建てるつもりで取り組んでいます。」
主婦としての経験も大いに役立っている。営業や打ち合わせの相手は主婦ということも多い。ついつい盛り上がって長話になることも。仕事と関係ない世間話のようでいて、重要だという。
「細かな話の中に、プランニングのヒントが見つかることもあります。それに主婦業は家事が繰り返しの仕事になりがち。その中で楽しみを見つけるために自分たちの働く場所であるキッチンのレイアウトなど細かなことにこだわりが出てくるのです。そんな主婦の気持ちに共感し、要望にできるだけ応えることができるのも、専業主婦や子育て、共働きといったいろいろな経験があるからだと思います」と武藤さん。
手描きスケッチにも取り組む
現場は毎週通っている。図面だけではわからない、実際の空間構成などを見ながら、ニッチの位置を考え直したり、細かな部分まで目を光らせる。職場で女性だから働きにくい、と感じたことがないのも幸いしている。
今後は、プレゼンテーションの技術に磨きをかけ、お客さまを感動させるような営業に取り組む。とかち工房では、造作家具に力を入れているが、お客さまの要望を聞いて打ち合わせの席上で後藤社長がペンを走らせてスケッチを描くと、お客さまもたいへん喜ぶという。武藤さんも見よう見まねで描き始め、もっとうまくできるようになりたいと考えている。
(株)とかち工房ホームページ
2010年02月05日号から
お客様の喜びが自分の喜びになる/ウーマンズ・アイ Vol.8
北見・(株)松田建業 福島 松美さん
「お客様の喜んでいる顔を直接見ることが、自分の喜びでもあったんです。だから自然と営業の仕事が多くなりましたね」。こう語る福島松美さんは経理事務として松田建業に入社した後、営業に仕事の喜びを見いだし、今では仕事の7~8割が営業。不安や悩みもあるが、まずは家づくりを積極的に楽しんでもらいたい―。そう心がけて、ユーザーのもとへ足を運んでいる。
前向きな姿勢で営業に転身
入社当時は事務仕事中心で営業なんてまったく考えていなかったというが、インテリアコーディネートの手伝いなどで表に出る機会が少しずつ増え、社長からも営業の手伝いをしてほしいとの話があったことから、仕事の内容は営業中心へと変わっていったという。
とは言うものの、今まで事務中心で仕事をしていた人が営業をやるのはそう簡単なことではないはず。その点はどうかというと「最初は営業をすることに対して抵抗がありました。ただ、もっと会社に貢献したいという気持ちもありましたし、営業には人と喜びを共有できる楽しさがあり、大変な仕事だけに成果が出た時の喜びも大きい。そう思っているうちに抵抗もなくなりました」と福島さんは話す。
仕事に対する前向きな姿勢に加えて、"縁があって出会えた人と一緒に喜びを分かち合いたい"という気持ち。それが営業で頑張る力の源になっているようだ。
家づくりを楽しんでもらう
そんな福島さんが営業で心がけていることの一つに、"家づくりを楽しんでもらう"ということがある。
「年に何棟か頂く受注は、お客様それぞれにとって唯一無二の家。それを肝に銘じて取り組むのが営業するうえでの大前提ですが、まずはお客様に家づくりは楽しいものだと思ってもらいたいんです」。
例えば商談やプランニングはもちろん、着工から完成・引き渡しまでの打ち合わせでは、趣味やペットの話など家のこと以外で施主が興味ある話に時間の半分を費やしたりする。こうすることによって施主の気持ちを盛り上げ、家づくりの過程を楽しんでもらおうとの考えだ。
また、現場などでは施主が写っている写真をできるだけ多く撮るように心がける。施主には家づくりの過程の写真を収めたスライドショー形式のDVDを渡しているが、施主が笑顔で写っている写真や現場の大工と歓談している写真をところどころ入れることができれば、ストーリー性を持たせることができるからだ。そしてそれは施主にとって楽しかった家づくりの思い出を形にして残すことになる。
主婦や母としての目線で
主婦、そして母親でもある福島さんは「主婦・母親の視点で家づくりを考えることができるのが自分の強み」と言う。
水回りや家事の動線、収納などへの配慮は、やはり仕事を持つ主婦ならではの発想で"家事を短時間で済ませることができ、それでいて子供にも目が届く間取り"を意識。「例えばお客様が収納を充実したいと要望した時、男性は大きな納戸や押入などをいくつか付けることが多いのですが、それでは収納した物を探す時が大変。もっと必要な場所に必要な大きさ・機能を持った収納があれば、片付けやすく、掃除もしやすいんです」。
昨年には愛犬2匹とともに快適に暮らせる自宅を新築。見学会を行ったところ反響も多く、「この経験を生かして愛犬との暮らしを改善したい人たちに、人も犬もストレスを感じることなく暮らせる家づくりの情報を発信していきたい」と、営業ウーマンとしてさらなるステップアップを目指している。
2009年12月25日号から
「換気の可視化が大切」
パッシブシステム研修会で北総研・福島氏
NPOパッシブシステム研究会(中野隆二理事長、(有)フォルムデザイン社長)では、去る3日に札幌市内のトステムショールーム内で技術研修会を開催。参加した約30名以上の会員がパッシブ換気の設計・施工方法や機械換気の考え方などについて学んだ。
同会理事で(有)奈良建築環境設計室所長の奈良謙伸氏と同会顧問で道立北方建築総合研究所居住科学部長の福島明氏が講師を務め、最初に奈良氏がパッシブ換気の設計・施工について講演。これまで自ら設計したパッシブ換気採用住宅の事例をもとに、床下に導入した新鮮外気を外壁と床の取り合いに設けたスリットから室内に給気する手法や、屋根に排気筒を設置せず2階外壁から排気を行うことで排気口部分のメンテナンスを容易にする手法などを紹介。
続いて福島氏が『パッシブ換気と機械換気』をテーマに講演し、機械換気を考えるうえで重要なこととして、換気設備が"止まらないこと"、居住者が換気の運転を"止めないこと"、メンテなどを"人任せにしないこと"の3つを指摘。特に"人任せにしないこと"については「換気ファンが室内のどこに付いているのか、給排気口がどこにあるのか、掃除はどうすればいいのか、ユーザーはわからない。換気設備は目に見えることがとても大切で、換気ファン本体やフィルターボックスなどは天井ふところなどに隠ぺいせず、居住者が見てわかるよう室内に露出することが大切」と強調した。
2009年12月15日号から
ソーラーデカスロン第3位 カリフォルニアチーム
太陽の家は美しく、そして広く
カリフォルニアチームはサンタクララ大学と名門・カリフォルニア美術大学の合同チーム。
10項目の総合力で争うソーラーデカスロン(十種競技)で、ほとんどの項目でベスト3にランクイン、中でも建築など2項目で1位、エンジニアリングでは2位を獲得している。美しく、斬新な曲がり屋のデザイン、室内と屋外が融合した空間を作りあげた。
概 要
美しさは全体の設計と窓の使い方から来ている。南に向いたデザインは南面を最大にするほか大きく見せる効果もある。中庭は建物に取り込まれたように見えるからだ。
「夏はドアを開いたままにできるので、約74m2にすぎない家は中庭とリヤデッキをリビングの一部に取り込み、ずっと大きく使えます」と、サンタクララ大学のチームリーダーのひとりは語る。
曲がり屋はカリフォルニアのよく晴れた気候に最適。南向きのパッシブソーラー設計によって、実際には暖房は不要になり、最先端の太陽熱吸収チラーが冷房パネルによって冷房を行う(床暖房・天井冷房)。チラーからの排熱は太陽熱給湯システムの予熱として使う。屋根はもちろん太陽光発電パネル。
技術と特徴
・モニターシステム。携帯電話・アイフォンのソフトで動き、住宅の性能を表示し、温度と照明をどこにいても制御できる。
・雑排水の貯水池。この水で庭の地味を豊かにする。
・パッシブソーラー技術。これにより暖房熱を不要にしている。
・超高断熱窓。取り入れた技術はLow―Eガラス、ヒートミラーフィルム、クリプトン・アルゴンガス空気層。
・太陽熱吸収チラー。端末は冷風吹き出しではなく輻射型冷房。
・太陽熱給湯システム。チラーから排出される熱も予熱として利用する。
・8・1kWの太陽光発電パネル。
・中庭を家に取り込む曲がった長方形デザイン。
・室内を広く使う組み込み家具。
暖冷房技術
快適な空間を最小限のエネルギーによって実現するための技術として、暖冷房は換気とエネルギー回収システムと連動し、効率を高める。制御系はデジタルで、住宅内だけでなく地域のエネルギー需要に対応したインテリジェントシステムとなっている。
窓とブラインドは最も効率的に動くように自動制御されているが、もちろん手動もできる。給湯は高効率のヒートポンプを装備。
特徴的なのは、スマートグリッドと呼ばれる技術に対応すること。例えば暖冷房と給湯は需要ピークをずらすなどの制御を行う。
暖冷房システムはバッファタンクを持っており、これが夏は冷房・冬は暖房に使われる。バッファがあることで、ヒートポンプの運転時期を一日のうちで最も効率がよい時間帯に運転したり、電気料金が安いとき、または地域の電力網が安定する時間帯に運転することができる。バッファを持つことでいろいろな意味でピークシフトが可能になる。
(翻訳:本紙編集部)
2009年12月05日号から
紹介受注にチカラ入れてます? 18社に聞きました
昔から受注のきっかけとして重要視されているのがOB客などからの紹介。特に新築市場が冷え込んでいる中では、紹介受注を積極的に増やすことも必要になってくる。そこで住宅会社18社への調査をもとに、紹介を営業戦略の柱に据えている住宅会社はどのくらいあるのか、紹介してくれたOB客への報酬・謝礼はどうするのかなど、なかなか知る機会がない紹介受注の実態をまとめた。
今回調査した住宅会社18社のうち、紹介を重要な営業戦略として位置づけていたのは5社。
例えば札幌A社は「会社の内部規定として謝礼制度を作り、紹介客と契約になった場合、OB客には商品券を渡している。名前と連絡先だけ紹介するやり方もOK。さらに紹介客にも値引きか家具のプレゼントといった特典がある」と言う。
同じく札幌B社は「ここ15年ほど、定期点検などでOB客を訪問するたびに『現在紹介キャンペーン中なので、どなたか新築やリフォームを考えている方がいらっしゃったら、紹介してもらえますか。成約になったらお礼に受注金額に応じて商品券を差し上げます』と案内している」と話す。
また、道央C社は「大手ハウスメーカーがフリーの営業マンを雇うのと同じように、OB客と紹介営業の委託契約を結び、『報酬は受注金額の○%』と取り決めしている」と、ビジネスとしての紹介営業を全面に打ち出している。
つづきは見本紙をご請求ください。
https://www.iesu.co.jp/inquiry/
2009年12月05日号から
ソーラーデカスロン 第2位 イリノイ大学
「古い」が「新しい」。 伝統的三角屋根にソーラー
イリノイ大学はシカゴの南約200kmの地にあるアーバナ市とシャンペーン市にまたがる全米トップクラスの大学。
チームは、最高・最新の省エネ技術は未来形ではなく、現在も建つ普通の家と同じであると考え、取り組みを開始した。
2位となった三角屋根の家は、必要エネルギーの最大4倍を生産するが、外観は伝統的なアメリカ中西部の農家と変わらない。外壁は築100年の納屋からはがした外装羽目板、屋根は南面のみ高効率のソーラーパネルという組み合わせ。室内は最新の構造用竹材を採用、最適化された窓と断熱によって暖房はヘアードライヤー1台分のエネルギーしか消費しない。
チームは屋根全面にソーラーパネルを張るフラット屋根を選ばなかった。というのも、三角屋根の南面だけで必要な電力を十分供給することができることを証明したかったからだという。
投入された技術は次の通り。
1 30cmのウレタン系断熱材を床・壁・天井に吹きつけ。
2 竹の集成材による門型の構造体。これは木材より強度が高く、資源の再生も早い。
3 高効率の空調型暖房と換気は小さな負荷のために最適化制御。
4 暖房・換気・空調とシステム化した温水熱交換機。
5 LED照明。
6 9・1kWの太陽光発電パネル。
イリノイチームは、実際に住宅産業が手ごろな価格で実現できる技術を目標としてきた。坪単価が最安でなかったとしても、長期的に見た場合の省エネ性とコストの安さ、そして長期信頼性を追求し続ける。そしてこういった特徴は、狙ったマーケットのニードと要望にマッチするはずだ。
ターゲットは、アメリカ中西部に暮らす子どものいない専門職の夫婦。世帯年収は8万ドル(およそ800万円)で土地持ち。サイオンの購入を検討するタイプの人たちに例えることができる(サイオンとはトヨタがアメリカで展開する自動車ブランドで、若者層をターゲットとしている)。彼らは自分たちをトレンドをつくるタイプと見ている。
品質やコスト、デザイン、サスティナビリティに関心があり、家については個性の表現であり、彼らの価値観を映し出す生活の一部分と見なす。モデルハウスは歴史と環境親和性をデザイン上で表現しながら、施主を想定して設計している。
トヨタ・サイオン http://www.scion.com/
(翻訳:本紙編集部)
2009年11月15日号から
ソーラーデカスロン第1位 ドイツチーム
全身が発電機!! VIPや蓄熱材も投入
ドイツチームはダルムシュタット工科大学の学生チームで、2007年の前回大会に次ぐ2連覇。
チームの理念は可能な限りの新技術を取り入れて限界に挑戦すること。
発電能力が最大になるよう設計された2階建ての箱形建築は、壁と屋根、そして窓の外に取り付けたルーバーにも太陽光発電セルで覆われている。その発電能力は11・1kW 屋根は40の単結晶シリコンパネル、外壁は250の薄膜型太陽電池パネル(CIGSと呼ばれる最高・最新の太陽電池という)が取り付けられ、必要エネルギーの2倍をつくり出すと試算される。
CIGSパネルはシリコンパネルよりやや効率が下がるが、曇天時にも効率が上がるという。
躯体は真空断熱材も使った超高断熱と、PCMと呼ばれる新しい蓄熱材を採用し、ルーバーによる日射遮へいも行って室内を快適な室温に保つ。
太陽光発電は最も特徴的ではあるが、このほかにも以下のような注目すべき技術が投入されている。
▼ほかの新技術
1 真空断熱材のパネル
2 PCMと呼ばれる新しい蓄熱材。外壁はパラフィン系、天井は水和塩系
3 自動調整型の窓ルーバー
4 ヒートポンプ給湯・暖冷房システムボイラー
構造は120mm角の軸組で、金物工法。
断熱は50mmの真空断熱パネルを躯体の外側に設置。充てん断熱はセルロースという複合断熱。真空断熱パネルは日本でも建築用として試験的に使われており、単体の断熱性能は極めて高い。ただし釘で打ち抜いてしまうと普通の断熱材になってしまうなど、施工には気を使う。ドイツチームはパネル化によってその問題を解決する取り組みを行っている。
PCM蓄熱材は日本でもいままさに試験採用が進む最先端の素材。
窓ルーバーはセミ・アクティブ技術とも呼ぶべき手法として、今回ドイツチームでは位置づけている。冷房エネルギーを低減する基本機能に加え、ルーバーが発電パネルでもある。
ヒートポンプはアクティブ技術として重要な位置づけになっている。
言うまでもなく、躯体は高断熱・高気密化されている。さらに計画換気と熱回収を装備。空調はヒートポンプを採用し、ラジエータは使っていない。
熱回収とヒートポンプの関係を図で示す。温水暖房を使わずにエアコン型を採用したのは、ドイツのパッシブハウス基準に沿ったほか、暖房負荷がとても小さいからだ。
暖冷房の主装置はヒートポンプ。それに熱交換換気を組み合わせる。効率は80%。温水タンクは180。冷房時は排熱はタンクにためる。タンクにはヒーターが設置されている。
なお、チームは建築系を中心とする24人の学生が、小所帯ながらさまざまな分野から協力を得ながらプロジェクトを推進した。
(翻訳:本紙編集部)
2009年11月05日号から
道内は来年も3万戸割れ、全国100万戸以下が定着
中期住宅着工見通し
三菱UFJ系のシンクタンクが去る10月、「100万戸割れは今後も定着する」とする調査レポートを発表した。今年の不振は一過性ではなく、本格的な住宅着工減時代への幕開けなのか。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)は10月9日に発表したレポートの中で、供給サイドである業界側、需要サイドである消費者側がともに萎縮しているほか、空き家率の高まりなども考え合わせると、2009年からの5年間は平均で85万戸台、それ以降はさらに水準が低下して60万戸台の推移となり、100万戸割れは定着すると試算した。
また(社)日本経済研究センターは9月に発表したレポートの中で、2009年からの5年間の着工を平均で90万戸とし、100万戸超えが続く可能性は高くないとしている。
2009年の住宅着工は、北海道内が2万5000戸、全国で80万戸という昭和30年代の水準にまで落ち込むことがほぼ確実になった。
年初にたてた厳しい予想をさらに下回る低迷で、住宅会社はもちろんだが住設建材メーカーは生産力調整と販売拠点の見直し、事業連携などといった再編の動きが活発化している。
問題は、『鬼も笑う』来年の見通し、そして中期的な展望ということになる。
2010年、北海道は回復に至らず2万5000戸から2万8000戸程度、全国は90万戸台にはのらず、80万戸台と予測される。
記事全文をお読みになりたい方は試読紙をご請求ください。
2009年11月05日号から
冬期の暖房灯油消費量、秋田が札幌を上回る
研究者ら20年にわたり調査
秋田県内の秋田市・本荘市(現由利本荘市)では冬の暖房灯油消費量が20年間で倍増し、札幌市を上回った。秋田県立大学・長谷川兼一准教授(工博)らが4年前に発表した研究・調査を、先月、秋田の地元紙が報道したことで改めて注目を集めている。長谷川准教授は秋田県全体の傾向とまでは言えないとしながらも「十分な断熱・気密をしないまま、暖房する面積・期間・時間が増え、室温設定も高くなったことによるもの」とその原因を分析する。
この研究は長谷川准教授を含む6名の研究者による共同研究「熱環境から見た冬期の居住性能に関する地域特性の推移東北地方都市部を対象とした20年間の変化」で、2005年に発表。東北地方を中心とする12都市の戸建住宅620軒の温熱環境や性能・仕様、エネルギー消費量などについて2002年にアンケート調査を実施し、1982年の第1回調査、1992年の第2回調査と比較して20年間の変化をまとめている。
秋田県内では本荘市と横手市を対象に調査。本荘市は過去2回調査を行っていた秋田市で協力が得られなかったため、秋田市の代わりとして調査を実施した。そのため本荘市は秋田市との比較となるが、隣接する両市の違いはほとんどないという。
調査結果によると、一世帯当たりの一冬の暖房灯油消費量は、1982年比で札幌市が2400から1300へと半分近くに大幅減少しているのに対し、本荘市は逆に1350と倍増し、札幌市をわずかながらも上回った。東北各都市は多くが増加傾向にあるが、その中でも突出した増加率となっている。
暖房灯油消費量について本荘市など東北では「暖房と給湯の合計」で回答した割合が高く、住宅の床面積も札幌市では100~140m2が多いのに対し、本荘市は140~180m2が多いということもあるが、年間平均気温はⅠ地域の札幌市よりⅢ地域の本荘市のほうが高く、同じ仕様であれば本荘市の暖房灯油消費量は札幌市の4分の3で済む計算だ。
断熱・気密化に遅れ
一方で暖房面積など拡大
このような逆転現象が起こった最大の原因は断熱・気密化の遅れ。長谷川准教授は「もともと東北地方は居間にストーブ1台などの"採暖"が主流で、灯油消費量も少なかったが、断熱・気密化しないままに、暖房面積や期間・時間が増え、室温も高くなったことが、灯油消費量が増大につながった」と話す。
札幌市は住宅の断熱・気密化が先行し、暖房が進化する中で、暖房灯油消費量の削減を実現したが、本荘市では冬期の快適な室内環境を求めた暖房の変化に、住宅の断熱・気密性能が追いついていなかったというわけだ。
調査物件の性能・仕様を見ても、断熱材を使用している住宅が札幌市ではほとんどなのに対し、本荘市では7割程度、居間の窓も札幌ではPVCサッシ・ペアガラスが主流であるのに対し、本荘市はアルミサッシ・シングルガラスまたはアルミ2重サッシが主流となっていることから、本荘市では住宅の断熱・気密化が進んでいないことがわかる。
2002年の調査から7年経った現在、状況が変化しているかどうかについて長谷川准教授は、「秋田では住宅の電化が進んでいることなどを考慮すると、状況が変化している可能性はある。2012年に同様の調査を予定しているので、その時に明らかにしたい」としている。
2009年10月25日
車は社用車か自家用車か
そこが知りたい!工務店生態レポート 第4回
工務店の社員にとって自動車は、営業や現場回りに欠かせない。1年間の走行距離もかなり多くなる。そこで気になるのが、"工務店の社員は仕事に会社の車を使っているのか、自分の車を使っているのか"。今回は仕事で使う車について調べてみた。
社用車派
工具完備で機動力に優る
「社用車にはひと通りの工具を載せているので、リフォームの物件で現状確認を行う時に便利だし、OB客からクレームの連絡が入った時もすぐに直行して対応できる」(札幌・A社)
社名入りで走る広告に
「社用車には社名が書かれているので、走れば走るだけ広告効果があると考えているからだ」(十勝・B社)
燃費悪い車は勘弁
「以前は自家用車を使ってもらっていたが、あまりにも燃費の悪い車だと、支給するガソリン代もシャレにならなくなる。それで軽自動車やバンをリースで入れて社用車として使うようになった」(オホーツク・C社)
自家用車派(借上げ費・ガス代支給)
駐車スペースが問題
「今は社員の車を借り上げて、ガソリン代も支給している。近い将来はリースの軽自動車を社用車として使いたいが、社員が自家用車で通勤してくることには変わらないので、駐車スペースをどう確保するかが問題」(札幌・D社)
みんな車を持ってるから...
「社用車を入れることを考えたこともあるが、社員みんな車を持っているので、わざわざ会社で用意しなくてもいいかなと...。もちろん、社員の車は会社で借り上げ、ガソリン代も出している」(十勝・E社)
営業車手当てを支給
「社員が営業などで使う車は自家用車。ガソリン代も含めて一定額を営業車手当てとして支給しているが、会社でリース車を導入するより経費は安くなっているのでは」(十勝・F社)
自家用車派(ガス代のみ支給)
借り上げ費はなしで
「営業や現場回りは自家用車を使ってもらっている。ガソリン代は支給しているが、借り上げ費用は出していない。他の工務店で社員の自家用車に借り上げ費用を出しているところがあるとは思ってもいなかった」(旭川・G社)
(グラフ...今回の調査は10社の社長に協力して頂いた。自家用車を使ってもらっている会社が過半数を占め、その中ではガソリン代だけ出す会社より、借り上げ費まで出す会社のほうが多い)
2009年10月15日号から
遮熱という付加価値/札幌・北一タカハシ建設
現場のジャッジ 第5回
断熱・気密という言葉は聞き慣れていても、『遮熱』という言葉は親しみがない。ましてや、『NASA(アメリカ航空宇宙局)の技術』という触れ込みで登場した遮熱シートは「マユツバ物だろう」と感じている人もいるはず。
遮熱も差別化の1つ
(株)北一タカハシ建設(札幌市)の髙橋一彦社長は、寺社建築を豊富に手がけている経験から、本格的な和風住宅を建てる住宅会社として差別化を図ってきた。さらに、蓄積した施工住宅の暖房費データを元に年間の暖房費の目安を施主に提示し、さらに入居後の暖房代から暖房費削減のアドバイスをするなど、一般の人に高性能住宅の上手な住まい方を指南するサービスを提供してきた。
しかし、「まだまだ差別化を図っていかないと生き残っていけない」と危機感を持ち、遮熱シートを採用したのは今年初めの施工物件から。遮熱シート「リフレクティックス」の総輸入元である(株)佐武(本社・福島県本宮市)の講習を受け、その考え方に共鳴したという。
北海道も夏は天井面からの輻射熱で2階が暑くなる。断熱材が施工されていても、屋根板金の表面は夏場の日中は70℃以上という高温にもなる。その熱が断熱材にも伝わり、断熱材自体が熱を持ってしまう。そこから室内に輻射熱という形で侵入してくる。その輻射熱を反射してブロックするのが遮熱シートだという。
(写真上...髙橋一彦社長 写真下...外壁部の構造模型。軸間にウレタンを70ミリ吹き付け、空気層を挟んで遮熱シート、石こうボードとなる)
天井と外壁に使用
「夏に建てた住宅で、天井面に遮熱シートを施工すると、施工現場の2階の暑さがかなり緩和され、快適になった」と髙橋社長は言う。
現在、同社は天井面の施工を標準とし、オプションで外壁にも施工する。また、冬場に施工した現場では、仕事が終わって暖房を切っても、翌朝来た時の温度低下は4℃ほどで済んだという。この現場では、外壁の断熱は発泡ウレタン70ミリ、それに遮熱材を断熱材の室内側に施工した。石こうボードとの間には空気層を作る。熱損失係数を表すQ値は1.3~1.4Wレベルというが、「遮熱効果で暖かさが長続きするのでは」と見ている。遮熱効果は断熱性能としては表すことができず、正確な評価が難しい。ただ、実感として違うことは確かだそうだ。
(写真...天井面に遮熱シートを施工中。緑色は、吹き付けたウレタン断熱材)
問題は価格ではない
一見すると問題は価格のように見える。材料費として1500円/m2かかり、幅1.2メートル×長さ38メートルの製品を施工するのに1人工ちょっとかかり、住宅の価格に跳ね返ってくる。「生き残っていくには、この価格が高いと言われるようではダメ。自らがデザインする手作りの建具などこだわりの和風デザインに、『断熱+遮熱』という付加価値を盛り込み、ハウスメーカーと同レベルの価格でより満足度の高い家を提供することが大事」と社長は考えている。
今後もリフレクティックスは標準採用を続ける。来春には、暖房費削減効果のデータも揃う。
(写真...同社が得意とする本格和風住宅)
☆採用のポイント/遮熱という新しい考え方
★ここがあと一歩/性能を数値で表しにくい
2009年09月25日号から
話の「上手な」聞き方
ニーズウォッチング
顧客ニーズに応えるのは商売の基本。でも「言うが易し、行うが難し」だ。シリーズの第4回は、北海道では食っていくことも難しいとも言われる「フリーライター・エディター」として活躍する佐藤優子さん。住宅会社にもヒントをいただきました。
「聞き方」のNGは?
佐藤さんの仕事の一つが、北大文学部の教授陣をインタビューし、学生にその魅力を伝えるというもの。専門家の話は一般の人には難解だが、誰でも理解できるように記事化するには、
1 「あなたの話をぜひ聞きたい」という取材の姿勢=事前の準備・情報収集
2 常識的な身なりや言葉遣い
3 聞いているはずの「話」を相手から奪ったり、「要するに」といいながらまとめようとしたりするのはNG。きちんとうなずき真剣に聞くこと
などが重要だという。 「コーチングなどの資格を持たない身で恐縮ですが、1本1本の取材が教科書がわり。自己流で身につけた取材術です」と佐藤さん。こうしたスキルを身につけてこそインタビューの仕事が続けられるのだ。
「初対面ならなおさら『この人に話してもしっかり理解してもらえるだろう』と思わせ、貴重な時間を割いてもらえるような事前の準備をすることが大事です」と佐藤さん。
この3つのポイント。人に会う仕事なら誰もが参考になるのではないでしょうか?
テーマは尽きない
ビジネス情報誌「ウイング札幌」での「北の匠」シリーズは北海道の様々なジャンルの匠を探しだし、毎月1人を連載で紹介、そして美唄市のポータルサイト「PiPa」の特集記事などの編集と取材も行っている。思わず「美唄市内だけでそんなに取材ネタありますか?」と聞いてしまったところ、
「美唄やきそばがブームになっていますが、地元の人にとっては馴染みの食。地域の良さ、努力、面白さを嘘をつかずに身の丈にあった形で紹介しています。月間18万ページビューの訪問者を得ています」とのこと。
住宅会社にアドバイス
「顧客ニーズを聞き、期待に応える」ために努力しているのは住宅会社も同じ。「聞く」ことのプロ、佐藤さんに「どんな住宅会社さんには家造りを頼んでみたいか」と聞いてみました。
1・話を聞ける営業マン
家を建てる時にはたくさんの人間の欲望が渦巻き、できるできない、という話が噴出すると思います。家づくりで最も大事なのは家族のハートをまとめる、責任を持って家族の話を聞くことではないでしょうか?話を聞いてニーズをくみ取ることができる営業マンがいるか、が第1です。
2・顧客の喜びを共有
接客担当者は、顧客のニーズをしっかり聞き、設計や施工、経営者などと住まいづくりの方針を話し合うことになると思いますが、その時に「これをこうしたい」という対処法だけを話し合うのではなく、「キッチンにこの工夫があれば奥様が喜ぶ」「玄関で座れる工夫があればおばあちゃんが喜ぶ」というように、オーナーファミリーの「誰が何に喜ぶか」をすべての基準として社内の共感を勝ち取れる営業マンがいいですね。結果的に住宅オーナーの共感も得られる家になる気がします。そういうことができる営業マンを探したいです。
詳しくはサイトで
紙面の都合で、佐藤さんの活動全てを紹介することはできません。続きは「札幌良い住宅.JP」をご参照ください。
札幌良い住宅.JPへ
(写真上...北海道大学大学院文学研究科・文学部の「Lab.letters」に各先生の聞き書き記事が掲載 写真中...ビジネス情報誌「ウイング札幌」の「北の匠」にも連載を持つ 写真下...美唄市ポータルサイト「PiPa」)
フリーライター・エディター佐藤優子:北大文学部卒、(株)アルバイト情報社編集室に12年間在籍。05年独立、フリーライター・エディターに。札幌在住
2009年09月15日号から
高断熱化などに早期の支援策
民主党北海道に聞く これからの住宅政策
少子化、大不況、雇用の悪化という3重苦の中、これからどのような政策が展開されるのか。住宅事業者・消費者ともに新しい政策を心待ちにする一方、変化に対する不安も大きい。政権政党となった民主党で北海道の副代表を務める一方、1998年の建築基準法改正にもかかわるなど住宅政策にくわしい参議院議員の小川勝也氏に、民主党が考えているこれからの政策を聞いた。(取材日:9月8日)
温暖化防止政策と連動
言うまでもなくこれから内閣が決まり、国土交通大臣以下のスタッフも決まることになる。その任についたものが現状を精査した上でマニフェストを実現していくことになるので、今の段階では、これまで党内および国会内外で議論してきた話が中心になる。
最初に申し上げたいのは、政権の引き継ぎで補助金の支給が突然停止するなど混乱はいっさいない。その点は心配しないでいただきたい。
ただし、民主党が掲げた政策の一部は、早い段階で実行に移されるのではないかと想像している。
政策の4本柱
少子化、住宅があまっている現状で、景気を刺激するためだけに住宅政策を行うことは難しい。これからは、2つ以上の政策実現のために住宅政策を展開することになる。
1.耐用年数の長い住宅に対するインセンティブ。
住宅の質改善などを目指すもので、現在も優遇が行われている(長期優良住宅)。
2.温暖化防止政策との連動。
鳩山由紀夫代表(次期首相)は2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減すると宣言した。いわゆるエコ住宅に対して強く支援していく。この場合、素材がエコであること、断熱性が高いこと、太陽光発電パネルなど付加価値があることがその対象となるだろう。
3.森林整備との連動。
植林地では、伐期を迎えた木を使うことが必要。そして再植林する循環型経営によって整備を継続するわけだが、植林木を中心に住宅で使うこと、さらに地産地消を推進していく。
4.中古住宅市場の整備。
子どもが独立して家が広すぎるなど家族の成長や変化に家がついていけない現状を改善し、規模に過度に縛られない質の高い生活が送れるよう変化させていきたい。既存住宅の質向上を推進する一方で、流通や評価の仕組みを整えていく。
注目の政策
(写真...民主党の住宅政策を語る参議院議員の小川勝也氏)
2009年08月05日号から
住まい手目線こそ満足度向上のカギ/ウーマンズ・アイ Vol.3
北見・みゆき内装 山本美幸さん 一級表装技能士
「自分がお客様の立場だったら、どのように仕事すれば満足してもらえるか。いつもそのことを意識して作業しています」。そう話す山本さんは、常にユーザーの目線でどのように仕事をすればいいのかを考え、動いている。
(写真...山本美幸さん)
気軽な会話の中に安心感
女性職人をほとんど見かけない内装工事業界に山本さんが入ったのは、北見での会社員時代に事務所の隣で家が一軒完成する過程を見て感動したのがきっかけ。「大工は力仕事があって女性には厳しそうだが、内装ならできると思い、この世界に飛び込んだんです」。
そんな山本さんの現在の仕事はリフォームが中心だが、大切にしていることの一つが"お客様とのコミュニケーション"。ただ、それは根掘り葉掘り質問したり、踏み込んだ話をしたりということではない。
「友達がクロスの張り替えに来た感じで、気軽にお客様と話をしていることが多いですよ」と言うように、多くは作業中に子供の話など雑談をする程度。リフォームでは奥さんが家にいる状態で仕事をすることがほとんどなので、「黙々と作業して緊張感を与えたり、聞かれたことしか答えないよりも、してほしいことや気になることなどを気軽に話してもらったほうが、安心して任せてもらえるんです」と言う。
「小さい子供が工具に興味をもって触ろうとすることもありますが、コミュニケーションが取れていれば『ダメだよ』と注意しても、緊張した雰囲気になることもないですね」と山本さん。単に指定された材料をキレイに施工するだけではない、彼女ならではの仕事に対する姿勢がそこに感じられる。
効率よりも気配りが大切
もう一つ、山本さんが大切にしていることに女性ならではの"細やかな気配り"がある。
例えば、内装工事に限らず、住宅の施工現場では効率を重視し、掃除も仕事が終わってから最後にやればいいと考えがちだが、「最後に掃除すればいいというのはこちらの都合。お客様は仕事中もキレイにしてほしいと思うのでは」と話す。
また、「リフォームで自分がその家の奥様だったら、キッチンからトイレまでの動線をよく使うので、その部分の作業を最初に済ませてから他の部分に取りかかるようにする」など、ユーザーの立場に立って仕事を考えることを忘れない。
「もともと絵を描いたり、工作をするのが好きだったんです。塗り壁やクロス貼りはその延長のようなもの。それでもお客様が求めるクオリティに100%応えられているわけではないので、まだまだ勉強中です」と笑う山本さん。
住宅市場が冷え込む中、一番やりたいという塗り壁仕上げの仕事にはなかなか恵まれないというが、「多くのユーザーから"あなたに頼んで良かった""と言ってもらえること」を目標に、自分のスタイルを磨き続けている。
(写真...塗り壁の施工に集中する山本さん。「お客様が求めている柄や仕上がりを表現できれば、こんなに素晴らしいことはない」と言う)
2009年07月25日号から
給料は振込か手渡しか
そこが知りたい!工務店生態レポート 第1回
社風や慣習は工務店によって様々だが、他の工務店が"なぜそうしているのか"は意外と自社の体制改善のヒントになるかもしれない。
そこでこの連載では、工務店社長に対するアンケートから得られた、経営・業務の実態について紹介していく。第1回目のテーマは「給料は振込みか手渡しか」。
振込み派の意見
手渡す時間がもったいない
「給料を手渡しするなら、やはり会社の代表である社長自ら渡さなければならないと思うが、そうすると私自身が手渡しのための時間を作らなければならなくなる。その時間がもったいないので振込みに変更した」(札幌・A工務店)
飲みに行ってもなくさない
「間違いなく社員の手に渡る。帰宅途中に飲みに行って、どこかに忘れてきてしまうなんてこともない」(札幌・B工務店)
経理業務合理化のため
「振込みにしているのは、経理業務の合理化を考えてのこと」(千歳・C工務店)
大工のみ手渡し派の意見
頑張ったことを実感
「希望すれば振込みにするが、大工は手渡しを希望することがほとんど。給料日にそのまま飲みに行くからというわけではなく、仕事で頑張ったことを直接実感できるからではないか」(札幌・H工務店)
コミュニケーションできる
「仕事のことを現場のみんなで話し合う機会になるので、給料日には会社に大工全員集まり、ジュースを飲んで、納まりのことやマナーのことなどいろんな話をしながら一人一人給料を手渡ししている」(旭川・I工務店)
手渡し派の意見
仕事の価値感じられる
「振込みにしたほうが楽だが、手渡しを続けている。やはり現金を直接渡したほうが仕事の対価としての価値が感じられると思うからだ」(十勝・F工務店)
父親の威厳が保てる
「『今月もお疲れさまでした。また来月も頑張りましょう』と声をかけることが社員の励みになればと考えた。また、最近は家庭の中で父親が軽視されるようになってきているので、父親が母親に直接給料袋を渡せば、子供も一家の大黒柱として父親のことを見るようになるのではと考えたことも理由の一つ」(オホーツク・G工務店)
(グラフ...11社に話を聞いた結果、振込みと答えた工務店が多かったが、大工に限って見れば、手渡しとしている工務店のほうが多い)
2009年07月05日号から
"本当に良い家"をつくるために/ウーマンズ・アイ Vol.2
札幌・㈲TAO建築設計 川村弥恵子さん 一級建築士 デザイナー
「仕事の中では女性であることを意識させないよう、中性的にふるまうことも多い」という川村弥恵子さん。彼女が手がける住宅は繊細なこだわりがあふれている。
「なんかいい」を感じる力
「人間は、ほんのわずかな差を感じるセンサーを持っているんです」。そう言って、家具用の薄い突き板と厚めの挽き板を並べて見せてくれた川村さん。なるほど、たった0・6㎜ほどの違いでクオリティの差を感じてしまう。板の数㎜の厚さや、コンセントのちょっとした位置の違いが「なんかいい」を生み出すという。
川村さんは戸建住宅を中心に手がける建築家として、施主の要望を一から聞き、一緒に家を造り上げる。しかし施主にとっては、言葉でなかなか説明できないことも多い。そのひとつが「なんかいい」という感覚だ。
川村さんの頭の中にある「なんかいい」とは、理屈抜きの気持ちよさ。そのためなら、わかりづらくて面倒な注文にも応えるといい、「細かいところが気になるのは女性が多いかもしれません。私もどんなに細かいことを言われても苦にならないです」と、頼もしい。
「簡単でわかりやすい家ばかり造ろうとすると、絶対良いものができない。どこか手間をかける部分がないとね」と話すように、施主の価値観はじっくり時間をかけて聞いている。
(写真...川村弥恵子さん)
手間と言葉を重ねてこそ
川村さんのプロジェクトでは、結果的に信頼感のある工務店や設備・板金など職方さんたちと一緒に仕事をすることが多い。「ポイントは、人としての良心と安心感があること。建築家との仕事は、手間のかかる注文を何度も出されて面倒なものです。それをいとわず、逆におもしろがって、少しでもいいものを造りたいという誇りを持っている人は、一緒に仕事をして気持いい」。
建築家と工務店の密なコミュニケーションがあってこそ良い家が生まれる、と川村さんは考えている。コミュニケーションを意識したのはアメリカ時代。女性経営者でスタッフも9割以上が女性という、ウーマンパワー全開のインテリア事務所に勤めた。常にミーティングや対話を欠かさず、本音をぶつけあっていたという。
しかし帰国してかかわわった建築の業界は、まったく正反対の男の世界。駆け引きや探り合いなどはもちろん、何より重要な部分は男性の責任者が決め、社員と話し合って決める雰囲気がなかった。
この体験が独立を決断するきっかけにもなったようだ。「それに女性が求めるのは、こまめなコミュニケーション。"言わなくてもわかるだろ"は、全然通じないですよ」と笑う。
手間や言葉を重ねることをいとわず、本当に良いものを。それこそ川村さんが貫く姿勢なのだ。
(写真上...室内と屋外がつながる暮らし 写真下...人も登れる猫棚(ねこだな)。家を建てたら猫を飼いたいという施主のために)
2009年02月19日
おわびとお知らせ
2009年02月18日 18:00 頃から19:35 頃までサーバで障害が発生し、ホームページの閲覧ができない状態となっておりました。誠に申し訳ございません。
問題なく復旧いたしましたので、ご報告いたします。
原因はセキュリティバージョンアップの際の不手際だったと報告を受けております。
ご不便をおかけしたことをおわびいたしますとともに、今後ともよろしくお願い申し上げます。
株式会社北海道住宅新聞社 代表取締役 白井康永
2009年02月05日号から
間違い、行き過ぎた表現 道がチラシ表現で指導
昨年、国の超長期住宅先導的モデル事業に採択された北方型住宅ECOモデルの来年度実施がまだ確定していない中、このほど札幌市内で「国と道による200年住宅モデル事業『北方型住宅ECO』いよいよ申込み開始!(注文住宅)」という宣伝文句が大きく入ったチラシが新聞の朝刊に折り込まれた。これに対し同事業の実施主体である北方型住宅先導的モデル事業推進協議会の事務局である道建築指導課では"間違いであり、行き過ぎた表現"として、この住宅会社を厳重注意。市場環境が厳しさを増し受注競争が激化する中で、住宅会社のモラルが改めて問われた出来事と言える。
問題のチラシは今年1月下旬の朝刊に折り込まれた。それを見ると、これから北方型ECOの申込みを開始するという一文が大きく目立ち、さらに「国庫補助金の申請(工事代金の10%)、所得税控除の割り増しご利用」と記載。北方型ECOのモデル事業がまた始まったのかと誤解しかねない表現だ。
今年度実施の北方型ECOモデル事業はすでに全123棟の建設が確定しており、事業に参加した住宅会社各社からの補助金交付申請書類をまとめて国へ提出する最終段階に入っているところ。今から新たに建てるのが不可能であることは、事業に参加している住宅会社であれば当然わかっているはずだ。
また、次回の事業実施についても、道は今月の第3回目の募集に提案するのか、春先と言われる第4回目の募集に提案するのかを決めていない。そのような状況で申込み開始などとは間違っても書けないだろう。
道では厳重に注意
道建築指導課ではこの住宅会社に対し厳重に注意し、住宅会社側も行き過ぎた表現だったと認めたという。同課ではこのようなことが起こらないように、職員が札幌圏の新聞のチラシなどを常にチェックしており、注意を行ったのは今回で2件目。もう一件は「国から認定を受けた」という表現をした住宅会社だったという。
市場が冷え込み、生き残りをかけた受注競争の中で、最大200万円の補助金が受けられる北方型ECOは、使いようによってはセールスポイントになるだろう。
しかし、まだ次回の実施も決まっていない段階で申込み開始というユーザーを騙しかねない記述は、当の住宅会社だけではなく、北方型ECOのモデル事業に参加しているすべての住宅会社にとってマイナスにこそなれ、プラスになることはない。
事前に相談OK
道建築指導課では「もし表現等が適切かどうか自社で判断できなければ、こちらで事前に内容をチェックすることもできるので、相談してほしい」と話している。
(写真...これが問題のチラシ。北方型ECOの次回実施が決まっていないうちから「いよいよ申込み開始」と明記してある)
2009年01月15日号から
チャレンジ2009/北海道から全国へ
(株)木の繊維(本社札幌市)は、道内で木質繊維断熱材を作ろうと2007年7月に設立されたばかりのベンチャー企業だ。木質繊維断熱材は、大きな熱容量、難燃性、防音性能、LCCO2の小ささなど様々な特徴を持っている。昨年暮れには苫小牧市植苗に工場建屋が完成、今年4月から試験操業を開始する予定だ。同社の大友詔雄(のりお)社長にこれまでの経緯や抱負などを語っていただいた。
3年間頑張って製造ライセンス取得
木質繊維断熱材との出会いは今から5年ほど前、NERCと協力関係にあるドイツの環境・エネルギーコンサルタント会社のECOS(エコス)からの紹介です。ドイツは1994年、日本の憲法に相当する基本法に「次世代の為に自然を守る責任がある」ことを盛り込むなど環境先進国として知られています。
断熱材に触ってみると繊維が柔らかいのが印象的で、「これはいい」と思いました。しかも材料は針葉樹が最適だと知り、北海道での「地産地消」事業にうってつけとライセンス取得交渉を始めました。
ドイツから木質繊維断熱材を輸入して実際にユーザーに使ってもらって「いいものだ」と感じていただき、ドイツ側にも「日本には受け入れる素地ができている」と理解してもらうなど地道な努力を重ねました。この間取得までに3年かかりました。
ただ、事業化には多大な資金が必要でNERC単独では取り組めません。(株)中山組(本社札幌市)が「力を貸しましょう」と申し出てくださり、工場建設予定地に隣接していた丹治林業(株)(苫小牧市)にも賛同いただいて(株)木の繊維を正式に設立できました。
工場は建屋が昨年12月に完成。今年4月から試験操業に入り、まずは断熱マット品を生産します。原料は道産トドマツ、カラマツの間伐材などが中心。このほか、「UDボード」の生産も計画しています。床用防音材や多目的の硬質付加断熱材兼外壁下地として使えます。
生産過程で工場で使う熱エネルギーには、バーク(樹皮)ボイラーを採用しています。燃料となる樹皮はいろんな含水率の物が運ばれてきますので、流動床ボイラーや、ボイラーの排熱利用で乾燥させる仕組みにしました。投資額はかさみますがランニングコストで回収できます。
(写真上...木質繊維断熱材を手にした大友詔雄社長 写真下...急ピッチで建設中の工場建屋。現在は完成し、製造機械の搬入が始まる)
熱容量が大きいから室温変化を抑える
木質繊維断熱材の魅力は、まず熱容量の大きさです。箱の中に断熱材を敷き、電球を点けて断熱材下の温度を測定しました。開始後10分で鉱物繊維系の断熱材は温度が7℃上昇、一方木質繊維断熱材は断熱性能を表す熱伝導率は同じでも、わずか0.3℃の上昇。電球を消すと、鉱物繊維断熱材は急速に温度が下がるのに対し、木質繊維断熱材はほとんど変化しません。木質繊維断熱材は5倍以上熱容量があり、熱を断熱材に貯め込むからです。このため室内の温度変動を抑えられます。
ニセコに建てた住宅で、厳冬期に暖房で20℃超まで温度を上げてから完全に暖房を切り、その後の温度変化を調べたところ、2週間後も室温は7~10℃に保たれました。暖房費の大幅削減が期待できます。このデータが出たことでみなさんの反応も変わりました。
2つめは、製造から廃棄に至るまでのCO2排出量を表す「ライフサイクルCO2(LCCO2)」の小ささです。当社で詳しく調べたところ、木質繊維断熱材は鉱物繊維断熱材と比べ半分以下。さらにCO2の固定効果がLCCO2の3倍以上あり、実質的にCO2を出さないと言えます。
3つめはきわめて付加価値が高いことです。これは地産地消実現の大事なポイントです。原料1トンあたりの製品価格で比べると、木質繊維断熱材は少なくともチップの10倍、木質ペレット燃料の3倍以上もあります。
操業開始までは、ドイツから製品を輸入し、1あたり2万円台前半で販売しています。輸入品は売っても赤字ですが、国内生産に切り替えれば同価格で販売しても事業として成り立ちます。
従来の断熱材より割高ですが、ランニングコスト低減が期待できます。
(写真上...道内住宅の実例が出たことで評価が変わった 写真下...付加価値が極めて高いのも地材地消に重要な要素)
販売網は全国へ11年度には年間30万m3
事業計画では、初年度5万でスタートし、3年目に30万のフル生産に移行する予定です。全国販売し、拠点は北海道、東北、関東甲信越、中部の計4ヵ所です。
営業面では、建材ルートの開拓のほか、大手ハウスメーカーにも採用を前向きに検討していただいてます。まずはお客さまに使っていただいてご意見や評価をいただくことが基本だと思います。
お客さまから、「既存の丸鋸は面倒だ」というお話がありました。丸鋸の刃渡りのサイズでは、厚み10㎝以上ある断熱材は一気に切ることができないのです。そこで当社は専用裁断具を開発しています。100V対応の電動丸鋸でスパッと切れてほとんどくずが出ません。この記事が掲載される頃には試作品が完成し、皆さんに試していただける予定です。
今後は防耐火認定をなるべく早く取りたいですね。素材単体と構造体としての認定両方です。4月の試験操業開始時点で道立北方建築総合研究所(北総研)や道立林産試験場(林産試)の協力も仰ぎながら進めていきたいと思っています。
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■会社プロフィール
株式会社木の繊維
本社:札幌市中央区北1条西4丁目 札幌ノース プラザ8階
011-398-5210
http://www.kinoseni.com/
設立:2007年7月12日 資本金:1億5600万円
代表取締役 大友詔雄
■大友詔雄さん
北海道大学工学部卒業。工学博士。同大学で教鞭を執りながら1999年に北大発ベンチャー企業として㈱NERC(自然エネルギー研究センター)を設立、センター長として自然エネルギー利用などのコンサルティングを行う。2007年に同大学を退官し㈱木の繊維の代表取締役社長に就任。
■木質繊維断熱材
間伐材や林地残材の樹皮を取り除き、細かく破砕して作ったチップを繊維状にし、バインダーを数%混ぜて成形する。断熱性能は道内でよく使われる鉱物繊維断熱材並みの0.038W/K。製造過程で水を加える必要がない乾式製法。
2009年01月05日号から
逆境の中にチャンスはある
一昨年の建築基準法改正による官製不況、そして昨年の米証券大手のリーマンブラザース破たんに端を発した世界的な大不況によって、住宅市場はかつてないほどの危機的状況に直面している。新たな法改正や基準改正にも対応していかなければならない住宅会社にとって、まさに今年は正念場。この激動の時代に生き残るため、まずは予想される住宅業界の動きや市場動向を把握したうえで、ユーザーが安心して毎日を過ごせる家づくりを考えていきたい。
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