新聞記事

2009年11月05日号から

冬期の暖房灯油消費量、秋田が札幌を上回る

研究者ら20年にわたり調査

 秋田県内の秋田市・本荘市(現由利本荘市)では冬の暖房灯油消費量が20年間で倍増し、札幌市を上回った。秋田県立大学・長谷川兼一准教授(工博)らが4年前に発表した研究・調査を、先月、秋田の地元紙が報道したことで改めて注目を集めている。長谷川准教授は秋田県全体の傾向とまでは言えないとしながらも「十分な断熱・気密をしないまま、暖房する面積・期間・時間が増え、室温設定も高くなったことによるもの」とその原因を分析する。

 この研究は長谷川准教授を含む6名の研究者による共同研究「熱環境から見た冬期の居住性能に関する地域特性の推移東北地方都市部を対象とした20年間の変化」で、2005年に発表。東北地方を中心とする12都市の戸建住宅620軒の温熱環境や性能・仕様、エネルギー消費量などについて2002年にアンケート調査を実施し、1982年の第1回調査、1992年の第2回調査と比較して20年間の変化をまとめている。
 秋田県内では本荘市と横手市を対象に調査。本荘市は過去2回調査を行っていた秋田市で協力が得られなかったため、秋田市の代わりとして調査を実施した。そのため本荘市は秋田市との比較となるが、隣接する両市の違いはほとんどないという。
 調査結果によると、一世帯当たりの一冬の暖房灯油消費量は、1982年比で札幌市が2400から1300へと半分近くに大幅減少しているのに対し、本荘市は逆に1350と倍増し、札幌市をわずかながらも上回った。東北各都市は多くが増加傾向にあるが、その中でも突出した増加率となっている。
 暖房灯油消費量について本荘市など東北では「暖房と給湯の合計」で回答した割合が高く、住宅の床面積も札幌市では100~140m2が多いのに対し、本荘市は140~180m2が多いということもあるが、年間平均気温はⅠ地域の札幌市よりⅢ地域の本荘市のほうが高く、同じ仕様であれば本荘市の暖房灯油消費量は札幌市の4分の3で済む計算だ。

断熱・気密化に遅れ
一方で暖房面積など拡大

 このような逆転現象が起こった最大の原因は断熱・気密化の遅れ。長谷川准教授は「もともと東北地方は居間にストーブ1台などの"採暖"が主流で、灯油消費量も少なかったが、断熱・気密化しないままに、暖房面積や期間・時間が増え、室温も高くなったことが、灯油消費量が増大につながった」と話す。
 札幌市は住宅の断熱・気密化が先行し、暖房が進化する中で、暖房灯油消費量の削減を実現したが、本荘市では冬期の快適な室内環境を求めた暖房の変化に、住宅の断熱・気密性能が追いついていなかったというわけだ。
 調査物件の性能・仕様を見ても、断熱材を使用している住宅が札幌市ではほとんどなのに対し、本荘市では7割程度、居間の窓も札幌ではPVCサッシ・ペアガラスが主流であるのに対し、本荘市はアルミサッシ・シングルガラスまたはアルミ2重サッシが主流となっていることから、本荘市では住宅の断熱・気密化が進んでいないことがわかる。
 2002年の調査から7年経った現在、状況が変化しているかどうかについて長谷川准教授は、「秋田では住宅の電化が進んでいることなどを考慮すると、状況が変化している可能性はある。2012年に同様の調査を予定しているので、その時に明らかにしたい」としている。
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