新聞記事

2014年05月25日号から

PM2.5と室内換気 健康への影響も心配

微小の粒子状物質・PM2.5が問題視されるようになって約1年半。健康への影響が心配され、換気メーカーも対応を進めてめている。

花粉より小さく、呼吸器系・循環器系に影響も

20140525_1_1.jpg PM2.5とは大気中に浮遊している非常に小さな粒子のことで、主にボイラーや焼却炉などのばい煙発生施設が排出源。家庭内の喫煙や調理、ストーブなどからも発生する。大きさは2.5mmの千分の1で、髪の毛の太さの30分の1程度。肺の奥深くまで入りやすいことから、肺ガンや呼吸器系・循環器系への影響が心配されている。
 国ではPM2.5の環境基準値を、1年の平均値で15マイクログラム/m3以下、かつ1日の平均値で35マイクログラム/m3以下と定めており、さらに「注意喚起のための暫定的な指針」では、健康への影響が心配される濃度基準を1日平均値で70マイクログラム/m3としている。同指針は法律に基づくものではないため強制力はないが、1時間あたり80?85マイクログラム/m3を超えた場合に、都道府県等が一般市民に対して不要不急な外出や、長時間の激しい運動を控えるよう注意を促すよう勧めており、道内ではPM2.5の測定局がある札幌や旭川、函館など7市で、必要に応じ市民に注意を行うこととなっている。
 日本でPM2.5が問題視されるようになったのは、中国の大気汚染が原因と言われている。中国でPM2.5などによる大規模な大気汚染が断続的に発生した昨年1月に、西日本で環境基準を超えるPM2.5が観測されたからだ。この時は消費者の健康被害に対する不安が増したのを背景に、近畿以西で空気清浄機の販売台数が急増。(一社)日本電機工業会の統計によると、同年1?3月の空気清浄機出荷台数は前年同期比3割増を記録した。

大陸からの飛来だけが原因ではない

 ただ、PM2.5は以前から日本でも常に大気中で観測されており、濃度は工場の排煙や自動車の排気ガスなどの影響も考えられるほか、気象条件によっても変動する。今年3月には室蘭で85マイクログラム/m3を超えるPM2.5が観測され、市が注意喚起を行ったが、原因はPM2.5の濃度が高い大気のかたまりが遠くから運ばれてきて市内を覆ったことと、地域の工場や家庭などから発生したPM2.5が、ほぼ無風状態だったために滞留したことの2つが重なったためだった。
 もっとも、高濃度になる原因にかかわらずPM2.5が、空気汚染物質として広く認知されるようになったのは確か。住宅会社もアレルギーやぜんそくを患っていたり、化学物質に過敏反応を起こすユーザーに対し、今のうちから対応策を準備をしておいたほうが良さそうだ。

外気フィルターで給気を浄化

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20140525_1_3.jpg これまで室内空気汚染の主な原因物質だった、ホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)。これらの物質の多くは住宅に使われる建材や家具などから放散されるため、VOCを放散しない、あるいはほとんど放散しない建材を選択し、換気をしっかり行うなど、2003年に施行されたシックハウス新法に則った対策を行うことで、健康リスクを低減することができた。
 しかし、PM2.5は屋外で発生し、大気中に浮遊しているため、PM2.5の濃度が高かった場合、換気によって室内空気質を悪化させてしまうことが考えられる。そこで対策としては、室内に外気を給気する時に、PM2.5を除去することが基本となり、換気メーカーでも昨年から今年にかけて、PM2.5を捕集するフィルターを用意する動きが加速している。
 例えば日本住環境とジェイベックでは、今年に入りそれぞれ自社の第3種換気システム用給気口に装着することで、PM2.5などの有害物質を軽減する高性能フィルターを発売開始。いずれも静電気の力を利用して、空気中の微粒子や花粉などを捕集する。
 第1種換気のメーカーも、パナソニックが昨年9月から熱交換ユニット本体の給気側に微粒子用フィルターを搭載した製品を販売開始したほか、LIXILも対応フィルターをオプションで用意した新製品を今年4月に発売。また、健康住宅を追求する工務店グループの「いやし健康増進住宅研究会」では、全国の会員に対し、高性能フィルターと抗酸化コート剤、床下活用の全熱交換型換気システムなどを組み合わせることで、PM2.5を原因とする大気汚染問題に対応した室内空気環境改善システム「きれいな空気の家『四季風』」の技術提供を昨年から開始している。

1種換気組込み型の外気清浄機など新たな提案も

 このほか、喫煙室用の空気清浄機などを製造・販売するトルネックスでは、第1種熱交換換気システムの外壁給気口と熱交換ユニットとの間に取り付けることで、PM2.5や黄砂などの汚染物質を除去する、電子式集じんフィルター方式の外気清浄機を開発。昨年10月に東京で行われたジャパンホームショーに出展し、注目を集めた。化学工業メーカーの住友スリーエムも、PM2.5など微粒子物質の濃度を低減する丸形給気口用フィルターを昨年から販売しているが、今年からは角形給気口用のフィルターもラインナップに追加するなど、換気システムを扱っていないメーカーからPM2.5対策の提案製品が出てきていることにも注目したい。


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