新聞記事

2012年02月05日号から

空知・石狩北部で記録的豪雪

OB客の除雪SOS急増

 昨年末から空知地方や石狩北部を襲った豪雪は、鉄道や高速道路を寸断し、路線バスも一時全面運休に追い込まれるなど、市民の暮らしに大きな影響を与えた。この状況に地場の住宅会社も、工期の遅れやOB客からの除雪依頼の急増など、これまで思いもよらなかった事態に直面している。

岩見沢など過去最高
 雪の行き場ない状態

20120205_01_01.jpg 今回の豪雪によって1月16日の最深積雪は空知管内の岩見沢で194㎝、石狩管内の新篠津村で213㎝、石狩市厚田で169㎝と、3地点で過去最高を記録。この日は高速道路が札幌・旭川間で断続的に通行止めとなり、JRも運休や遅れが出たほか、道路の除排雪も追いつかず、岩見沢市内を運行する高速バス・路線バスはすべて運休。その2日後には災害派遣で道内の陸上自衛隊が岩見沢と三笠で排雪作業を開始し、1月の終わりになってようやく日常の暮らしを取り戻しつつある。
 「まちなかにこれだけ降ると、除雪した雪の置き場所がなく、道路の除排雪も遅れていくのは当然。国道とその他の道路がぶつかるところは除雪の20?30㎝くらいの段差ができているほか、歩道に寄せた雪の山の上を人が歩いて走る車を見下ろしていたり、道路がすり鉢状になってバスがすれ違いできない光景を見たのは、かなり久しぶり」。
 こう話すのは岩見沢に本社を置く武部建設㈱の武部英治専務。同社ではOB客からの除排雪依頼が1月25日時点で60件を突破した。例年はこの半分以下と言い、人手が足りずにやむなく断るケースも出てきているそうだ。巨大な雪庇が落ちて外壁・窓に損傷を与えそうな住宅や、高齢者世帯の住宅は、現場より優先して除排雪したという。

車のために除雪が増える

 また、岩見沢市在住の建築家・中村欣嗣《よしあき》氏は「道路の除排雪が間に合わず、雪が高く積み上がっているため標識が見えなくなったり、消火栓やバス停の立て看板、ゴミステーション、信号の押しボタンが埋まるといった問題が出てきている。住宅に目を移すと、1世帯あたりの車の保有台数が増え、除雪が必要な面積や接道の長さが増えたために、排雪しなければならない雪の量が昔に比べて増加していることがわかる」と話す。
 降雪量や積雪量の問題だけでなく、住宅づくりや暮らし方の変化も除排雪環境悪化の一因になっているという指摘だ。

何をするにも時間かかる

 このような状況の中で、地場の住宅会社は日常の業務をどうこなしていたのか。
 武部建設では年をまたいで施工中の現場が市内にあるが、職人の移動や建材納入にかかる時間が従来の倍くらいかかったりしたほか、1日のうち半分は除雪という状況が続き、生産効率は2分の1程度にダウン。1月20日前後になってようやく落ち着いた。
 「郊外の現場だったから排雪や車の駐車スペースを確保できたものの、これが住宅密集地だったら車が停められず、現場近くから歩いて行かなければならなかったり、建材などの配送もできなかった可能性がある。札幌のまちなかだったらお手上げ状態では」(武部専務)。
 このほかにも、「毎日除雪だけで終わってしまい、工事が全然進まなかった」「建材販売業者が配送をストップした」などという他社の話も聞こえてくる。

巨大な雪庇対策が必要が心配

20120205_01_02.jpg 地場住宅会社の間では、この豪雪による住宅への被害も懸念されている。代表的なのは巨大化した雪庇の落下による外壁・窓・外構部材の破損や電線の切断、屋根の積雪荷重による建具の動きの不具合などだ。
 雪庇対策としては軒先ヒーターや衝立て状の専用部材を設置することが考えられる。ただ、通常の降雪であれば効果的なこれらの対策も今回ほどの大雪になると、軒先ヒーターの部分がかまくらのように中空状態になった雪庇ができた住宅や、衝立て状の専用部材が雪に押されて折れ曲がった住宅も何軒かあったとのこと。
 武部建設・武部専務は「岩見沢は道の条例で垂直積雪量が160㎝となっているが、当社では200㎝で計算して梁のサイズを決めているほか、住宅の配置・形状に応じて軒先ヒータなど雪庇防止部材を適切に設置したり、雪庇が隣家の敷地内に落下しないように軒先から隣地境界線まで150㎝のスペースを取るといった対策を行っている。今後もこれらの対策を強化していきたい」と話している。
 また、今回の豪雪地域の状況を見た限りでは、①屋根に安全に登ることができる配慮②雪庇がかぶらない位置への電線引き込み③軒先の雪庇を安心して落とせる配置計画などもポイントとして挙げられるだろう。


写真
①豪雪メイン...積雪量と雪庇を見ると、いかに豪雪だったかがわかる(中村欣嗣氏提供)

②豪雪雪庇...岩見沢市内の多くの住宅では建物東側に巨大な雪庇が発生。道路の除雪でできた雪山とくっつきそうな住宅もあった


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