エコ化

2015年07月21日(16:41)

中古住宅の価値を引き上げることは本当に可能か?

空き家が増えている、若年人口が減っている、今後さらに家があまりそう、などの理由で、中古住宅をもっと売りやすいように、もっと買いやすいようにしよう、という動きが始まっています。
そのためには、まず中古住宅が安心して買えるか検査をしましょう。
耐震性は? 大切な部分に腐れや劣化はないかを調べて、「骨組みは大丈夫だけど、屋根がちょっと傷んでいるからなおしたほうが良いですね」みたいな検査結果を提出する。そうすれば、売り手も買い手も安心して中古住宅を売買できる。

この仕組み、とてもよくできていると思います。中古品を買うときに目ききによるチェックは必要だし、そうでなければ保証がほしいというのが買い手の気持ちですから。

今のところ普及はこれからですが、ボクはぜひ普及してほしいと思っています。


ただ、1つ引っかかることがあります。検査して性能面で問題がないことが確認されれば、不動産価値が高まる、すなわち高く売れるようになるという趣旨のPRが政府からも発信されているのです。

ボク、そうはならないと思います。
中古住宅の価値は、性能だけで決まるわけではないからです。
むしろ、この検査制度が始まり普及することで、性能が現行法に近いレベルにあることが当たり前になる。物件の価値はそこでは決まらず、立地やデザイン、基準を上回る性能などが決定要因になるはずですし、中古市場ではほしい人のニーズに合ってない物件は、たとえデザインがよく高性能でも売れないわけで、そういった市場原理までひっくり返すほどの「検査」があるはずがないと思うのです。
 
もっといえば、検査して性能がOKなら価値は上がる、というのはある種のバブル経済思想であって、"資産インフレを起こせば国民お財布のひもが少しゆるむはず"という下心があるのではないかと勘繰りたくなります。

中古物件の検査は、中古車でいえばディーラー車を買うようなもの。
「何かあったら当然うちがめんどう見ますから」という。
そのことで安心料が上乗せされることはあっても、価値が上がるわけではない。
そこんところはき違えないほうが良いと思うのです。

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〈中古住宅市場活性化ラウンドテーブル 報告書から。価値が上がるために何をすべきなのか。そこが問題ですよね。クリックして拡大します〉

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2015年07月19日(07:51)

建築研究所 坂本雄三理事長「誘導基準ができます」

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7月18日(土)
建築研究所・坂本雄三理事長の講演会が室蘭で開かれました。主催は地元の住宅会社・住まいのウチイケさん。ハウス・オブ・ザ・イヤーの受賞記念というかたちで、市民と専門家160名ほどが集まりました。
地場工務店がまずしっかり家をつくること、いい家をつくっていることを地域の市民に知ってもらう努力を怠らないこと、断熱技術と設備、そして制御技術を高めること、基本は断熱性能にあることなどを説明し、みんな聴き入っていました。

そのなかで、「誘導基準」の話が出てきました。
現行の基準は5-6年後に義務化が予定されており、すでに目指すべき目標ではなくなっています。そこで、新たに目標を示す形になりそうです。
細かなことは触れられませんでしたが、現行基準から2割強化という線のようです。単純に北海道に当てはめると、熱損失係数(Q値)で1.3Wを切る水準になります。北海道は本格的に200mm断熱時代が到来することになりそうですね。
その他の地域はようやくまともな断熱基準が登場したと言えそうです。

さあみなさん、これからどうしましょうか!!

〈写真最前列は室蘭市長の青山剛くん。生意気にも「くん」付けで呼ばせていただくのは、高校の後輩だから。室蘭工業大学の建築出身の市長は、やはり建築と都市計画が好きですね〉

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2015年07月15日(19:10)

セミナー出張が終わりました

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函館・青森(鰺ヶ沢)、北見・旭川の出張が終わりました。
セミナーはどの会場も満席! 多くのかたに力添えをいただき、そして多くのかたに集まっていただき、そして、講師の山本亜耕先生、藤原陽三先生に素晴らしい内容の講演をいただきました。

参加いただいた皆さんからのアンケートからも「やって良かった」と主催者・協賛各社の満足感でいっぱいです。
講演内容については後日新聞で特集いたします。

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2015年05月24日(15:00)

日本で唯一「セントラルヒーティング工事店の団体」

日本全国では暖房といえば「こたつ」。しかし、日本でもっとも寒い北海道ではこたつの普及率が日本一低いという。
じゃあ、あんなに寒い地域でどうやって暖房しているの?

はい。今日のお題「セントラルヒーティング」のお話です。

日本で唯一、北海道は「セントラルヒーティング」が戸建住宅の標準的な暖房方法です。
セントラルヒーティング=集中暖房と訳すことができます。
なので、本来の意味では1台のボイラーで家全体を暖房する方法を差します。
例えば温水セントラルヒーティング。
セントラル温風暖房も少ないですがあります。

また、セントラルヒーティングを「家じゅうくまなく暖房する」という意味にとらえるなら、
ストーブ1台やエアコンと個室に小さな暖房器でもセントラルヒーティングと言っていいのかもしれません。

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そのセントラルヒーティングは誰がつくるかというと、
例えばですが、ボイラーはノーリツ、部屋につけるパネルヒーターはまた別のメーカー、温水を回す配管は銅管、システム部材は外国製といった具合で、どこかのメーカーが完成品を持っているわけではなく、1軒ごとにシステム設計が必要です。
このため、北海道では暖房工事店が40年ほど前に誕生し、経営と技術が現代まで引き継がれています。

温水暖房は、基本的には秋口にスイッチを入れるだけで、あとは春まで何もしなくていいすごいシステムです。
その工事店の団体が北海道にあります。おそらく日本で唯一の存在です。
北海道暖冷房換気システム協会・略称:北暖協(ほくだんきょう)といいます。
非常に価値ある北海道の資産だと、白井は思います。

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この団体は、業界団体ですが誰かに圧力をかけるために存在しているわけではありません。技術の研さんと次世代への継承、会員企業の経営基盤強化が目的です。

日本で唯一、かつ地域の資産。そういう目線で、北海道の住宅産業を見直すと、もっと楽しくなるのではないかと思います。
写真は、先週、5月22日に開かれた北暖協の総会の様子です。
同会のホームページはこちら
http://hokudankyou.com/

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2015年04月01日(17:04)

「主婦3名雑談:オール電化について、石油ストーブについて」

今日から北海道内では電気料金が3回目の値上げになりました。正式には、劇変緩和策が終了となった。

以下、かなりリアルなお話です。

専業主婦3人.小学生の子どもが1~2名.名前は仮名です。
一戸建てオール電化を数年内に建てた.

明美「月の請求が7万円近いんでビックリ!」
優子「だいたい5万以上はみんなかかるよね」
涼子「うちは蓄熱暖房器を切って灯油ストーブにした。ストーブは本当に暖かくてビックリ!」
明美「すぐ暖まるしね、周りは」
涼子「シチュー煮込んだりできるし」
優子「結露はどうなの?」
涼子「結露はないよ」
明美「暖房止めちゃだめって言うけど、大丈夫なんじゃないの!?」
優子「石油のにおいが気にならない?」
涼子「全然ないよ」
明美「電気代がいちばん高いのは1,2月だよね」


みたいな会話は、いま全道各地で展開されています。
こういう話はこれからの家づくりにジワリ効いてきますね。

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ボクは、北海道電力がどうだとか言いたいわけではありません。まず、エネルギー消費が少ない家を建てるべきだという、そういう話をしておきたいのです。
今回は電気の値上げでしたが、その前は灯油値上げでした。ガスだって今後値上がりするかもしれないんです。

じゃすでに建った家はどうするの??
このブログで1年以上ずっと人気記事を独走している「オール電化住宅で灯油ストーブ」という記事がありますが、それもひとつの方法ですね。もちろん注意してほしいことはいろいろありますが、熱源分散は正しいアプローチだと思います。

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2015年03月31日(18:36)

北海道でも太陽熱利用を推進したい

世の中の多く、そして当社も今日は年度末。
そして、高校野球では東海第四高が決勝進出です。
おめでとうございます。
じつは、知人の息子さんが2人もこの春から同校野球部に進みます。
がんばれー。
 
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そんな3月31日(火)、太陽熱で温水をつくり、その熱で暖房と給湯をまかなおうという実証住宅を見せてもらってきました。
 
北海道のよく似た気象条件の北欧・スウェーデンなどではずいぶん昔から太陽熱温水システムが使われているのに、北海道は今のところ技術の蓄積がまったくありません。30年ほど前にはやったそうですが、その後廃れてしまいました。技術の継承もありません。
 
廃れた理由は技術面ではないと思います。30年前にはやった理由はオイルショックで灯油が値上がりしたことです。灯油を節約するシステムとして注目されるも、その後灯油はリッター30円台の時代へ。そして熱源交代により電気温水器の時代へ。
 
要するに、太陽熱温水器はときのエネルギーコストに翻弄(ほんろう)され、技術の集積が進まないまま、今を迎えているのです。
 
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太陽熱利用は太陽光発電の2倍以上の効率と言われます。寒い北海道の冬でも温水(ぬるま湯)をつくることができるので、じゅうぶんに働きます。
 
実験を行っている大洋建設の鏡原社長は、「技術的には8割がたクリアしている。あとはコストダウン」と話しています。
取り組みをはじめて3年。苦節3年です!
「北海道の住宅は高断熱と太陽熱温水で、ほんのわずかのエネルギーで暖かく冬を過ごすことができる。もちろん夏は涼しく。そんな家づくりをまず北海道の業界を挙げてすすめていきたい」そう話す情熱が印象的でした。

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2015年03月04日(19:09)

太陽光発電が進まない札幌で・・・

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北海道において太陽光発電は十勝地方を中心に根室・釧路地方、オホーツク地方などに集中して施設が建設されています。
札幌はというと土地がないこともありますが、住宅の屋根につけるケースも少ない。
その理由は、たぶん、もっとも稼ぐのが春だとわかっても、冬の寒いときに電気が作れない(雪をかぶってしまう)のが残念、という気持ちが強いと思います。

ただ、もうひとつ問題があります。
札幌は圧倒的にM型無落雪というフラット系屋根が多く、そこにのせるとなると架台を置いて発電パネルを30℃くらいの角度で載せるか(このタイプはときどき見かけますよね)、もしくは屋根に平置きすることになります。
冬の発電が少ないことも残念ですが、屋根板金の上に取りつけるという方法になることから、漏水の心配があります。また、最近のバクダン低気圧の風であおられ、道北ではパネルがめくれてしまった例もあると聞きます。

そんなこんなのなか、昨日、M型無落雪屋根を太陽光発電パネルで葺く、という新しい試みの実証現場見学会が開かれました。
M型無落雪屋根は普通、トタン(板金)で葺かれています。その板金にかえて屋根材として発電パネルを設置するのです。

1月上旬に設置して、データ取りが進んでいます。昨日の見学会は,建築の専門家に現場を見てもらい、厳しい意見をもらうという趣旨でした。
集まった皆さんは、どんな印象を持ったのでしょうか?

発売はまだ先になります。メーカーさんも発売元も、実験に協力している札幌の板金工事店さんも、しっかり見極めてから次に進みたいと考えているようです。

白井的には、連続して新技術の取材になっております。

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2014年12月15日(19:05)

断熱ヲタクのつぶやき 断熱リフォームをできるだけ安い価格で!

前回は、新築の話をしましたが、リフォームで暖かい家をつくることができるか!?
できます。どんなに古い30年以上前の家でも、構造さえしっかりしていれば、耐震改修をしたうえで断熱によって暖かい家にすることはできます。
ただ、それにはかなりのお金がかかるという現実もあります。
いちど屋根や壁を取り払い、建物を柱と梁だけの裸状態にした上でそこから工事をやり直す「フルリフォーム」と呼ばれる工事が必要になり、それには最低でも800万円以上がかかります。

ボクはこの問題を何としたいと思ってきました。
「100万円から300万円で断熱性能の引き上げが可能にならないか?」
新築と同じような暖かさでなくても、暖房が効いて快適に暮らせる家にできないだろうか!?
断熱リフォームの協議会「あったかリフォーム倶楽部」事務局を引き受けてから、ずっとこのことを思い続けています。
そして今年、あったかリフォーム倶楽部の幹部メンバーに、数年来考えていたこの思いを話してみました。
そうしたら、
「いいね。やってみよう」
ということになったのです。

ここから話が急展開しました。
100万円でできる工事と、それによってどのくらい暖かくなるか。
300万円でできる工事なら、どこまでできるのか。
そんな話を、設計事務所やリフォーム店とここまでやってきました。

そして、今そのまとめをしています。
結論だけ言うと、100万円で暖かく改修することは可能です。

このことを多くの市民に知ってもらいたいし、
建築業者の皆さんにも挑戦してもらいたいと思っています。

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写真は、先日開いた断熱リフォームの座談会。
蔵を再生したカフェ・マールの店頭でのshot !

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2014年12月13日(16:03)

施工力が伴わない工事では、本当に暖かい家はできない 断熱ヲタクのつぶやき

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〈ていねいな施工ですが、これでは気密層が連続しません。気密シートが薄いので、破れやすい欠点もあります。残念な施工です〉
 
断熱住宅の価値は、寒さから身を守ることだと思います。ボクら寒冷地に住む者にとって、断熱住宅のいちばん大切なところは、暑さを防ぐことではない。寒さから身を守る。これはまず、ハッキリと確認しておきたいところです。
もうひとつ確認しておきたいのは、断熱住宅はしっかりした施工力が伴わないとまるでダメな住宅になる、という点です。断熱性能を高めるために気密性が必要。別にボクたちは密閉空間を愛しているわけでも、ポリフィルムが好きなわけでも、潜水艦にあこがれているわけでもありません。誤解のないように。
 
20年前までは、断熱(もちろん気密性が伴っている住宅)によって暖房がよく効くようになり、「あぁ高断熱・高気密住宅って本当に暖かいんだね」と住み手はみんな感謝しました。
断熱によって暖房がよく効くこと。これは素晴らしい効能でした。
ところが、もうこれだけでは満足できなくなりつつあるのが現代ではないでしょうか。
断熱住宅は確かに暖かい。暖房費も割安になる。しかし、もうちょっと「断熱したことの実感」がほしい。
断熱によって暖房なしでも15℃程度は維持できる。つまり断熱が暖房の代わりになる。これからはそんな断熱が求められつつあるように感じます。
 
これは理屈や計算ではなく、時代の気分ではないかと。
 
 
わが家は熱損失係数=Q値で1.3W程度の断熱性能です。真冬でもちっとも寒くないトリプルガラスの木製サッシは、断熱のありがたみを体感させてくれますが、この程度の住宅性能では、断熱は暖房の替わりにはなりません。ボク的には、1.3Wという断熱性能は20年前の断熱住宅のグループに属していると思います。断熱するならもっと上を。それがこれからの断熱住宅ではないかと、30年近くこのことを追いかけてきたボクは思います。

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2014年10月31日(18:21)

北海道の電気料金が明日から上がります。

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皆さんそれぞれに節電の工夫をされていると思いますが、いよいよ、明日・11月1日(土)から電気料金再値上げです。

今回の値上げがどういう意味を持つか、とても分かりやすい例があるので、ここでお示ししますね。

当社の電気料金が値上げ後にいかほどになるか、ほくでんさんにお願いして試算してもらいました。
値上げ後の価格は、軽減期間ではなく、本格値上げ後の来年4月以降の単価を適用しています。

当社は3つの電力契約をしています。
1.従量電灯:一般家庭と同じく、電灯やパソコンの電力に使う。
2.低圧電力:業務用の冷房機専用。
3.ホットタイム22ロング:暖房専用。

どの料金がどのくらい上がると思いますか。
やっぱり日常使う1の従量電灯が大きく上がりそうな予感がしますよねぇ。

以下が試算した値上げ分の差額です。
 
 
 
 
 

1.19,521円(月平均1,627円)
2. 1,595円(月平均133円)
3.48,075円(月平均4,006円)

そうです、暖房専用の電気代がものすごく上がるのです。これが値上げの本当の意味です。
なぜこのようなことになるのか。その理由は、前回も今回も電気の使用量が多いほど、値上げ額が大きくなる設定だからです。

ボクたちは、電気に依存しすぎていたのかもしれませんね。

自宅や事務所の電気代が気になる方は、ほくでんに問い合わせてください。書類で試算表がもらえます。

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〈会社にはなぜか立派な白菜と大根、ほうれん草も。なぜか心なごむわ〉

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PROFILE

編集長 白井 康永

家づくりを変えたいという野望を持ち、北海道住宅新聞、札幌良い住宅jp を中心に、少子化の激流のなかでわれわれが日本を導きます.時にひょうひょうと(笑).
北海道・札幌市生まれ54歳。血液型O型.新卒1年、専門学校に通う娘たち、高校を卒業した息子あり. 休日にやってること:のろまジョギングとテレマークスキー.

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