北海道・札幌

2016年12月18日(17:34)

久しぶりに山に行きました

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札幌の里山・三角山。夏も冬も市民に親しまれている、その名の通り三角すいのようなきれいな形をしています。

記録によれば(笑)、この前にのぼったのは5月。ですので、半年ぶりになります。

じつは、雪山は初めて。今日は気温が上がっているので、踏み跡は固まり、わりと歩きやすかったです。
それにしても、雪が降ってしまえば夏道のルートがわからなくなります。いったい誰が踏み跡をつけたのでしょうか。

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そんなことを考えながら夏より10分ほど余計に時間をかけて山頂到着。
山頂でデカビタ飲みました。

さあ、ここから来た道を戻ってもいいのですが、三角山からは縦走コースがあります。ものすごい下りこう配の坂にビビリながら大倉山を目指します。

大倉山。ラージヒルスキージャンプ台がある山です。
三角山からは尾根を伝って20分程度。上り下りを繰り返しながら、昨日のランニングの疲れもジワリ出てきて、ホントはいけないのに汗も噴き出し、「まだ着かないのか」と先を見つめながら、ようやく着きました。

山頂にはリフト降り場があり、大会や練習中はジャンプ選手が乗りますが、今日は観光の皆さんが乗っています。
上から見下ろすと、助走路に雪こんもり。選手はしばらく使ってないのですね。

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ここからのくだりは、いつも階段です。辛うじて踏み跡がついている状態でしたので、雪に埋まりながら下山しました。

今日は気温が上がったため、虫も出ていました。春と勘違いしたのでしょう。

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2016年12月15日(16:56)

これで良いのか断熱改修(頭の整理中)

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先週はおもしろいセミナーがありました。

断熱住宅のサイディング外壁の上から断熱材を張って断熱リフォームする新しい断熱改修と、2000年以降の建築にもかかわらず寒い、使いにくい住宅をフルリフォームした事例。これらを紹介したうえで会場で議論しましょうという企画でした。

外壁の上から行う断熱改修については、ボクのfacebookで紹介し新聞の記事でも書きました。
要点をまとめると、通気層を一部ふさぐ、サイディングのうえから断熱材を施工する、その上に軽量な樹脂サイディングを施工して終了。

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ポイントは、既存外装材を撤去する費用で断熱を付加しましょうというローコスト改修。通気層については大いに議論もあるところですが、企画した北海道科学大学・福島明教授は「気密住宅なら大丈夫」と説明しています。


もう一方の住宅は、2002年に新築したものの初年度から寒い、しかも家の中に雪が吹き込むという50年前のクオリティだったそう。おまけに間取りが非常に使いにくく、階段は危険なまわり階段で、上り下りが多い1階車庫の3層構造。このまま住み続けることはキツイということで、建替も含めて1年がかりで検討した結果、3階をなくして面積を縮小したうえでフルリフォームした。間取りも完全に変更。


ボクが事務局を務めるあったかリフォーム倶楽部という断熱リフォームの推進団体では、「300万円の断熱リフォーム」「100万円の断熱リフォーム」を展開しています。こちら>>
フルリフォームがいいことは当然だけど、いつまで住宅を使うかなど費用対効果を考えると、答えはひとつではない、とボクは考えています。


福島先生の今回の取り組みは、気密性能が悪いために断熱性能を引き出せない多くの北海道の住宅ストックに対する答えではなく、気密性能は良いが断熱は100mmレベルというまあまあの数があるはずの道内住宅ストックに対するひとつの提案だと思います。
福島先生の挑戦は、これまでの常識からすると、すべてがタブー。ただし、気密性、耐震性の初期性能が高く、躯体換気もしっかりしている物件なら、外装交換の際に最低限の出費で断熱性能を高めることができることを示しています。

これから気密住宅のストックが増えていくわけで、断熱のみ厚手化したい場合、福島先生の手法は有効だと思います。一方、現状の機能・性能があまりにお粗末な物件は、これまで通り大手術するしかない。

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一方の減築・フルリフォームは、まだまだ機能・性能が不十分な家に対する改善方法として、多くの課題を残しながらも現状でのベストな答えを出した思います。

設計した山本亜耕氏は、この工事を通じて3階を解体するたいへんさ、大量に発生する建築廃材とその処理の難しさなど、新築工事にはない難しさと直面し、「ストック住宅の改修技術がまだほとんど確立していない現状を身をもって知った」と語っています。
例えば石こうボードビスに代表される抜きにくい金物類は、新築時の高い施工性と引き換えに、解体・再建をとてもめんどうにしてしまいました。

もうひとつの論点はまさに「ストック社会の建築」、改修の基本技術と教育の問題でしょう。
亜耕さんはこう語っていました。
新築中心で進んできた戦後の住宅業界は、これまで、既存住宅の改修について、さまざまな整備を進めてはいる。ただ、まだまだ不十分。
設計者は既存住宅の改修に関する教育をまったく受けておらず、学校教育でもまだ行われていない。施工については、まだまだ会社と個人の経験に頼っている。

インスペクションが広まって、既存住宅の診断が、不動産流通の場面でも取り入れられるようになってくるでしょう。ではその後どう改修するか。どうローコストに抑えるか。
今回のセミナーは、そういった課題をボクたちに突きつけるかたちになりました。

いろんな断熱改修方法が提案されています。
今後は、新築よりめんどうな施工管理、建物の出来に反映しないさまざまな施工コスト、こういった問題をどう解決していくかが大きなポイントのひとつになるでしょう。

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2016年12月12日(15:54)

越えられない

3日連続の降雪で、札幌市内は朝から大渋滞。主要道の除雪は辛うじて終わったものの、雪は道の脇に山積み。枝道は除雪が入っていない道路も多く、路面に積もった雪が掘れて段差ができたり、なかなかたいへんな状況です。

こういう日は地下鉄に限る。
地下鉄北12条駅で下車して南に向かうと、先を歩いていた高齢の女性が立ち止まった。
「どうしたのかな」
足元を見ると、写真のように道路が盛り上がっています。
そこが登れないのです。

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回れ右して戻って来た女性、
「越えられない」とひとこと。

状況を説明しましょう。
道路には除雪が入り、路面に積もった雪を削って路肩によけます。
そのおり、歩道から車道へつながる部分に
写真のように削った雪が小山をつくってしまうのです。

女性に変わってボクが小山登山に挑戦。
踏み跡の横に足を蹴り込んで階段をつくり、登れるようにしてみました。
女性に声をかけてボクは先に横断歩道を渡しました。

「誰のせいでもなく、冬は高齢者にとって何かと厳しい道路状況になるよな」なんて思い返しながら歩いていたら、
突然「ドスン」とごう音。
車が雪山にぶつかったのか?
そう思って音のする方向を見ると、

高層ビルの屋根から地面へ
雪庇が落雪したようでした。

現場まで10mちょっと。
ゾッとしました。
住みよい札幌ですが、
冬は注意が必要です。

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2016年12月11日(18:23)

偶然のすてきなカット

昨日はあの大雪でセミナー主催者が東京から到着できず、北海道の人材だけでセミナーが実施されるというハプニング。

慶応大学・伊香賀先生の最新研究をうかがいたかったですが、伊香賀先生のスライドを旭川医大・西條先生が代わって紹介するという展開で、大雪の中、参加したかいがありました。

今日の日曜は撮影と取材が入っていました。ライター志望者を連れて、10時にお客さま宅へ。
玄関に自転車が3台置ける家。ロードレースにも出場している20代のご主人と奥さま。

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広い玄関と、ローラー台に乗ってペダルを回していただいたカットを撮り、ロードレーサーをはさんでご夫婦のカットを撮ったのがこれ。

撮影が終わったあとは取材をして、お客さま宅をおいとまして、ボクは健康づくりセンターでトレッドミル30分+デッキランニング30分の冬場ルーティーンをこなし、うちに戻りました。

音声をレコーダーから、写真データをカメラから回収し、パソコンでチェック。何百枚も撮影しましたが、おふたりを最初に撮ったこのカットが個人的には一番のお気に入りです。

若さや思いやり、自転車への愛情が感じられます。


さて、夜はおでんらしいです。

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2016年12月08日(11:20)

北海道のZEH事情

年の瀬ですね。
今年の札幌は早くから降雪があり、冷えたと思ったら今度は小春日和になったりと、秋がないまま冬になりました。

11月末にZEHセミナーの講師を務めてきました。
暖房負荷の大きい北海道において、ZEHが難しいことはいうまでもありません。
ただ、それだけではなくて、現状の北海道の家づくりが否定されたかのような現在の省エネ性能判断プログラムに対する不満や、屋根の防水などなど、いろいろあるわけです。

ボク的には、まずは過去に設置した太陽光発電の発電データを収集することから始めてみてはいかがですか、という話をしました。

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基準クリアのためには、実績ではなくシミュレーションでいいのですが、雪の降る北海道において、実績がわからないと屋根に発電器を上げたくないという気持ちもありますよね。

そして昨日はZEHの補助金申請と、ZEH基準に適合するための設計の苦労話の勉強会がありました。
こちらは盛り上がりました。

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2016年11月15日(11:51)

11月の出張-エアコン暖房について

新潟から東京の出張についてつぶやいてみようと思っているうちに、次の関西出張が終わってしまいました。

新しいところから書いておこうかな。

2016_1115cspace.jpg〈床下なう〉

白井的に目からうろこだったのが、エアコン暖房のことなのです。
北海道ではこれまでエアコンという空調機をほとんど使ったことがない。せいぜいクーラーです。

それが、「本州でエアコン1台の暖房をやっている」「北海道でもできないか」「寒冷地性能が向上しているらしい」ということで、興味を持つビルダーが増えています。

今回、メチャ暑い広島まで行って、エアコンの使い方を勉強してきました。もちろん断熱住宅におけるエアコンの使い方です。


簡単にまとめると、

暖房用は床下
冷房用は一番高い天井やロフト
ということになります。

2016_1115loft.jpg〈ロフトなう〉
 
床下エアコンで冷房してはいけない。冷房が効かないしカビ発生の危険あり。
床下に設置するエアコンは暖房専用。灯油使うならFFストーブとか、エコジョーズなら温水暖房とか、何でもよい。
 
Q:なぜ部屋に設置しないか。
A:温風暖房が不快だから。床下にエアコンを入れれば、床面からの伝熱・輻射・自然対流の快適暖房になる。
 
すごくシンプルな答えでした。
ボク個人的には、床下で暖冷房をすると思い込んでいましたが、冷房には使わないと聞き、とてもスッキリしました。
 
2016_1115lawson.jpg〈広島の赤いローソン〉
 
じつは我が家にエアコンを入れようか数年悩んでいます。
当然、暖冷房兼用に使いたいのですが、
それに対する答えは、依然として見つかっていません(笑)。
 
しかし、多くの悩みはこれで解決すると思います。
あとは暖房空気を回すために、床下へリターンする開口を大きく取っておけばOKかと。
 
なお、この旅で腕時計をホテルに置き忘れました。
3,000円で買った腕時計を1,600円かけて送ってもらいました。
 
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しょうがないっしょ(T-T)

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2016年07月31日(16:53)

旧中湧別駅、エゾリス、聖ミカエル教会、鎌田先生と鈴木所長。ボクの7月

今日は朝から汗かきまくりでした。
朝ランは11kmでバテバテ。走り込み不足のため冷却システムが不十分でオーバーヒート気味。走り終わっても汗が引かず。朝食後は草刈りへ。こちらも汗だくで、水分とミネラル不足になってしまいました。

さてさて、怒濤の7月を写真で振り返りたいと思います。
 
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7月2日(土)湧別町に東京大学名誉教授で建築研究所理事長の坂本雄三先生を迎え省エネ住宅のセミナーが開かれました。ボクは後半に坂本先生を中心としたトークセッションの司会役。
写真は、会場となった同町文化センターの向かいには旧中湧別駅。すでに廃線となっていますが、駅の構えがほぼそのまま残っているのは珍しいとのこと。ボクは初めて訪れましたが、子どものころ姉とふたり旅をした札幌-帯広の狩勝峠超えを思い出しました。
不思議ですね。本当はもう覚えていないはずなのに、思い出が駅舎に重なるのです。
 
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セミナーが終わった後、少し遠回りして帯広に向かったのですが、写真はサロマ湖畔で開かれていた自転車のロングライド大会参加者です(インターナショナルオホーツク サイクリング2016)。
ちょうどのこのころから雨が降り出して、子どももママチャリの人もいたので、きっとたいへんだったと思います。皆さん完走できましたか。
 
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7月3日(日)帯広の朝は前日の雨の影響で蒸し暑かったですが、気持ちよく晴れました。写真は、ホテルから十勝川を渡って音更町へジョギングし、鈴蘭公園から望む十勝大橋。帯広と音更を結ぶ大きな橋です。
鈴蘭公園はジョギングに最高の公園で、人慣れしたエゾリスも出てきて、楽しくなりました。

 
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7月4日(月)帯広で定員を大幅に上回る皆さんにお越しいただき、相模稔さん(オーガニックスタジオ新潟社長)のセミナーを開催しました。相模さんの熱いトーク、聴き入る皆さん。講演者と参加者が一体になったとき、いい講演会になります。
 
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帯広の講演を終えて札幌に戻りましたが、まだぜんぜん明るい。ここは札幌市東区にある札幌聖ミカエル教会。アントニン・レーモンド設計により1960年に完成したそう。ボクにとってここは通学路でした。そのことがのちの人生に少し影響しているかな、と思わなくもないすてきな建物です。相模さん大興奮!
 
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7月11日(月)中標津町でのセミナーを終えて、講師の山本亜耕さんと空港に向かい、飛行機の時間まで中標津のチーズと鹿肉ジャーキーをかじりながらビアパーティ(笑)。いい具合に酔いが回り、さあ飛行機に乗るか!というときのこの景色。絶景なり中標津。美しきボンバルディア。日本ではあまり評判が良くないですが、ボクはプロペラ機のボンバルディアが好きです。
 
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7月19日(火)この日はいろいろな人の協力で新住協札幌支部のセミナーが無事終わりました。17時の講演終了後、19時までイタリアンレストランで懇親会、その後2次会、さらに3次会と続き、写真は講師の鈴木大隆・北方建築総合研究所所長が最終のJRに乗車するために席を立つときの鎌田紀彦新住協代表理事との握手ショットです。
いろいろあってまわりが気をもんだおふたりでしたが、何はともあれ少し肩の荷が下りました。
 
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7月22日(金)は、前日夜に帯広でミニプレゼンをしたため、早朝に帯広を出て室蘭まで250km走りました。ちょうどトマムを通過するときの写真です。前日飲み過ぎたボクは予想通りの寝坊。ちょっと飛ばしました。
 
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会場の室蘭市文化センターから見る室蘭の町は快晴。狭い土地に家が建ちならび往年のにぎわいをしのばせます。
 
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定員いっぱいの参加者にお越しいただき、山本亜耕さんの講演が終わった後、アイスを食べに白鳥大橋方向へ車を走らすと、ありました旧三菱合資会社 室蘭出張所。現役で使われているようで、何よりです。ボクの好きな擬洋風ですね!
 
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7月24日(日)インテリアコラージュセミナーを取材しました。部屋の模様替えやリフォーム、新築の前に、自分の好みを知ることが大切。そのためには「好きの見える化」をするわけです。誰でもそうかなと思いますが、和風とビクトリア調が好きとか、人は好みの方向が一定とは限りません。そういうこともすべてこの1枚の紙の上に表現します。上手・ヘタではなく、「好きの見える化」をするのです。ちなみに白井は自分の「好き」を持っていかなかったため、ちょっと片手落ちなボードになってしまいました。ボクの好きは方向性がありません(笑)。
 
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7月28日(木)最後のセミナー会場へ向かう途中、創成川イーストで蔵を見つけました。札幌軟石による組積造でしょう。母屋も古い木造のようでした。いままで何百回とこの前を通っていますが、この日初めて気がつきました。ヒトは、車で見える風景と歩いて見える風景が全く違うのですね。

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2016年07月29日(23:26)

7月、全道を移動しながらの怒濤のセミナー月間が終わりました

7月2日(土)の湧別町セミナーから始まり、7月28日(木)札幌でのプレゼンまで、自分が話すセミナー5回、弊社並びに白井が責任者を務めるセミナー5回を無事に終えることができました。
回った順に湧別、帯広、札幌、中標津、札幌、帯広、室蘭、岩見沢、札幌、札幌!
 
たくさんの出会いと学び、おいしいお酒、疑問や発見、和解、感謝と反省がありました。
 
予定の5割程度しかお客さまに来ていただけない会場がありました。どこに問題があったのか次回に備えてしっかり振り返りたいと思います。
ありがたいことに、予定を超えてたくさんの参加者にお越しいただいた会場も数会場ありました。そういうときは講師に参加者の「体温」を聞くことにしています。セミナーが始まるにつれて体温が上がっていく感じ、いいですね。
 
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一方、ボクが話をした会場は、やはり話の内容をどう受けとめてくださったかが気になります。
今月最後のプレゼンは北海道でのZEH(ネットゼロエネルギー住宅)の現状について話しました。
参加者の体温は高く、話していてしびれる感じがありました。
 
8月はお盆休みがあるので、けっこう忙しいです。9月の1,2日には札幌で新住協全国総会があり、ボクらは地元受け入れ側としてお迎えする立場になります。
 
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業界活動はけっこう多岐にわたりますが、皆さんの協力で成り立っていると実感します。
 
さあ、明日はまとめて数名の大工さん取材です。

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2016年06月25日(14:45)

ニセコの超高級別荘と究極の手づくり住宅 視察その3.家の価値

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〈まだ建設中の2.5億円ほどする別荘〉
 
ニセコ・後志地区の林業を視察したのち、この日の宿に向かいました。
北海道トラックス:ニセコの魅力にとりつかれたオーストラリア人が立ち上げたリゾート専門の不動産会社で、創業は2003年、完成物件数が60件以上というニセコ地区で最有力の海外資本系企業です。
SUDOホーム・須藤建設さんに同社を紹介いただき、協力価格(笑)で別荘を2棟借りました。須藤建設さんは2006年から同社と提携し、ニセコ地区に高品質な建築を建ててきました。
 
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〈鹿の角を使ったグスタフのダイニング照明〉

ニセコはパウダースノーを求めて南半球のオーストラリアの人たちが集まるようになり、いまではアジアの人たちも来ています。ただ単に集まるだけでなく、リゾートとしてニセコを気に入り、別荘を持つ、つまりニセコに投資する人たちが爆発的に増えています。
日本のお金持ちはニセコに興味なくても、世界のお金持ちの中に0.1%ニセコが好きな人がいて、数億円を投資して年に数ヵ月遊びに来る、そういうエリアになったのが、ニセコです。
ニセコとは、自治体区分でいうと倶知安町(くっちゃん)のヒラフ地区、花園地区、ニセコ町にまたがる、標高1308mのニセコアンヌプリという山のすそ野を取り囲むエリアを主に指しています。
 
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〈カワセミのバルコニー〉
 
借りたのは、Gustav Hideaway(グスタフ・ハイダウェイ)とKawasemi(カワセミ)という2棟。グスタフのオーナーはアメリカ人、カワセミは香港系のイギリス人だそう。
ニセコに別荘を持つ人はニセコにほれている人が多く、夏・冬ともに1ヵ月あまりを自分の別荘で過ごすそうです。それ以外の期間を貸別荘として運用する人から、ボクたちは1日だけ借りて宿泊しました。他人には貸さない人もいます。
 
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〈寝室の窓から緑をみる〉
 
泊まって感じることにとても意味がある
北海道トラックスは不動産企画から販売、建ったあとの管理と運用を請け負っている、と考えるとわかりやすいと思います。
ボクたちを案内してくれたのは樫田さん。もとは道内最王手の地場ハウスメーカーに勤めていたそう。事前の細かな打ち合わせから当日の案内、夕食レストランの手配までしてくれました。
 
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〈チェックインはすべて英語!〉
 
建物価格は、約1億から2億円以上ということだそうで、プラス土地代。まあ、まったく次元の違う世界なのです。別世界だから見る価値がないかと聞かれれば、ボクは、泊まって体験できる豪邸がせっかく身近にあるのだから、夏のシーズンにぜひ行って泊まるべきだと思いました。きっといろいろなことが感じられるはずです。見るだけでなく体験するべきです。
なぜ夏かというと、冬は5連泊からの受付になるので、たぶん泊まれません(笑)。
また、1人で1棟借りるのは金額面で難しいので、5人以上で行くことをオススメします。例えばビルダーの研修旅行として仲間同士で行く方法もあると思います。
※北海道トラックスへの問い合わせは白井まで。電話の向こうがいきなり英語、というのは何だと思うので。
 
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〈ホテルのエントランスに牛のアート〉
 
札幌で味わえない時間の流れ方
夕食は「杏ダイニング」。ここはスキー場のヒラフゴンドラのすぐそばにあるホテル「木ニセコ」の1Fです。
北海道産の海の幸、畑の贈り物をシェフが料理してくれます。が、ここまでだと普通のレストランですね。じつは、窓の外に夕暮れの羊蹄山がドーンと見えるのです。暮れゆく羊蹄山を眺めながら、ゆっくりとした時間を楽しむ。これは札幌では味わえないこと。だからこそリゾートの意味がある。そう感じました。
 
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お客の多くは外国人でしょうね。料理は松花堂風かと思えば、独創的な洋風料理だったりもして、その和洋折衷にあまり違和感がないのは店の実力かと思いました。
 
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やがて羊蹄山は完全に闇に沈みました。レストランではテーブルを囲む人たちの笑顔が、小さな明かりに浮かびます。
http://www.kiniseko.com/ja/dining-ki-niseko
 
建材が発明される前の手づくりの家

翌朝はいつものように5時起床。ボクは、わがままを言って、田んぼの見える部屋に泊まりました。窓の外では植えたばかりの苗が風に揺れています。外に出てみるとパラパラと雨も落ちてきましたが、天気は何とか持ちそう。
 
この日の午前は、メーソンリーストーブという少々変わった薪ストーブをつくっているニセコ町のマキビト工芸さんを訪ねます。
ニセコの主要道から農道に入り、ややしばらく走ったあとに舗装道から下る砂利道を100m以上走り、マキビト工芸の工藤さんご夫婦が暮らす住宅兼ショールームがありました。
 
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現地に着くと、「ショールーム」という言葉は誰からも出てきません。手づくりの、ムーミンの家のような、「いえ」がそこにありました。
壁厚40cm。断熱材が発明される前の極寒冷地建築。建築の専門家たちが、「何だこれは?」と思わず声をあげる家です。
ストーブを見に行ったのに、みんな家の話から離れられません。1泊したセレブな別荘の対極にある、人のニオイがする家。その価値にまた衝撃を受けました。
現代の家づくりは、木を同じ寸法に加工した製材や集成材、薄くスライスした木を貼り合わせた合板、石こうボード、その他の建材でできています。これら建材が開発される前の家づくりを考えたこともありません。
しかし、100年前までは確実にこれらの建材はこの世界にありませんでした。そのころ家は、木と、土と土を焼いたレンガやタイルでつくられていました。工藤さん夫婦の家はこれにとても近い。
 
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そして、メーソンリーストーブも、そういう家づくりの中で見えてくる暖房器具でした。
レンガの総重量3トン。巨大な蓄熱体が熱を貯めこむので、燃やした薪をムダにしない。ストーブ表面温度は65℃程度だそうです。
また、牧野燃焼効率も極寒冷地に伝わる知恵があるそう。薪は立てておき、上に火をつけるのです。ロウソクをイメージしてくれればわかると思います。上から燃えるといぶされて出る白い煙が出なくなる。これが燃焼効率向上の秘訣だそう。
そんなわけで、1日2回、バケツ1杯の薪でじゅうぶん。
 
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とは言え、そんな巨大なストーブを家に置くことは難しいですから、小型の蓄熱ストーブも開発されています。とは言えこちら600kg。
 
お金を払って安らぎを買う人、時間使って安らぎをつくる人。
ひとはいろいろな方法で安らぎに向かうのですね。
 

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2016年06月18日(17:19)

ニセコ・札幌で大量に生まれる薪需要 視察その2.半機械化林業

黒松内の興奮がさめやらぬまま、われわれはバスに乗って千歳林業さんの本社・倶知安町に向かいました。そこには薪割り機がありました。
 
東日本大震災以降、薪ストーブがブレイクしています。電気に依存しない暖房機。灯油も電気もガス暖房も、ほとんどが電気がないと使えない仕組みになっていますが、薪ストーブはほとんどが電気なしで運転することができます。ただし、薪(まき)を夏の間に調達しておく必要があります。
 
もうひとつの需要は、リゾート地ニセコならではの別荘・ペンション等の需要増。
休暇を過ごす非日常空間に炎が見える暖房がほしいと願うのは普通の心理。ところが、燃料となる薪が調達できない!
 
千歳林業はこれまでも薪を販売してきたそうですが、どうにもやりくりがつかなくなって、2013年度に薪割り機を購入したのだそうです。
 
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〈奥から手前のおのに向けて丸太を押し出して薪を割る〉
 
機械化林業を見学してきたボクたちは、オートメーション化が進んだ生産設備を頭の中に描いていたのですが、目の前にあった設備は「家内制手工業」と呼んでもいいくらい、ゆっくりした設備でした。
短く切った丸太を機械に投入し、おのに押し当てて薪を割る。割れた薪はそのまま流れていくという仕組みです。そのスピードはかなりのんびりしたものでした。
 
聞けば、生産設備のスピードを上げたくても原木の供給が間に合わないのだそう。林業会社においてそういう状況ですから、なにをかいわんや。
 
広葉樹を主に生産していますが、とうてい足りないので、針葉樹を混ぜる場合もある。シラカバは火つきがいいので一定量を入れるけど日持ちがいいのはナラ。いずれにしても原木不足。
 
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〈向かって右から丸太を投入し、ちょうど壁で見えない部分で薪を製造。左から薪が流れてくる。トラクターは何のためにあるか!? じつは薪割り機の動力なのでした〉
 
見学者のボクたちは、ある種の混乱に陥りました。
黒松内では、これからの林業は機械化が進む。そう確信したわけですが、薪割りの生産はまるで違う。そもそも原木が足りない。
 
ボクたちの仕事がそうであるように、林業の世界も一本調子であるわけがないのですね。
生産性をうんと上げる仕事がある一方、需要をにらみながら原料供給と相談して生産性を最適化する仕事もある。
そういった難しさを半日で目撃したのですから、頭の中はかなりいっぱいいっぱいになりました。

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PROFILE

編集長 白井 康永

家づくりを変えたいという野望を持ち、北海道住宅新聞、札幌良い住宅jp を中心に、少子化の激流のなかでわれわれが日本を導きます.時にひょうひょうと(笑).
北海道・札幌市生まれ54歳。血液型O型.新卒1年、専門学校に通う娘たち、高校を卒業した息子あり. 休日にやってること:のろまジョギングとテレマークスキー.

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