2016年06月25日(14:45)

ニセコの超高級別荘と究極の手づくり住宅 視察その3.家の価値

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〈まだ建設中の2.5億円ほどする別荘〉
 
ニセコ・後志地区の林業を視察したのち、この日の宿に向かいました。
北海道トラックス:ニセコの魅力にとりつかれたオーストラリア人が立ち上げたリゾート専門の不動産会社で、創業は2003年、完成物件数が60件以上というニセコ地区で最有力の海外資本系企業です。
SUDOホーム・須藤建設さんに同社を紹介いただき、協力価格(笑)で別荘を2棟借りました。須藤建設さんは2006年から同社と提携し、ニセコ地区に高品質な建築を建ててきました。
 
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〈鹿の角を使ったグスタフのダイニング照明〉

ニセコはパウダースノーを求めて南半球のオーストラリアの人たちが集まるようになり、いまではアジアの人たちも来ています。ただ単に集まるだけでなく、リゾートとしてニセコを気に入り、別荘を持つ、つまりニセコに投資する人たちが爆発的に増えています。
日本のお金持ちはニセコに興味なくても、世界のお金持ちの中に0.1%ニセコが好きな人がいて、数億円を投資して年に数ヵ月遊びに来る、そういうエリアになったのが、ニセコです。
ニセコとは、自治体区分でいうと倶知安町(くっちゃん)のヒラフ地区、花園地区、ニセコ町にまたがる、標高1308mのニセコアンヌプリという山のすそ野を取り囲むエリアを主に指しています。
 
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〈カワセミのバルコニー〉
 
借りたのは、Gustav Hideaway(グスタフ・ハイダウェイ)とKawasemi(カワセミ)という2棟。グスタフのオーナーはアメリカ人、カワセミは香港系のイギリス人だそう。
ニセコに別荘を持つ人はニセコにほれている人が多く、夏・冬ともに1ヵ月あまりを自分の別荘で過ごすそうです。それ以外の期間を貸別荘として運用する人から、ボクたちは1日だけ借りて宿泊しました。他人には貸さない人もいます。
 
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〈寝室の窓から緑をみる〉
 
泊まって感じることにとても意味がある
北海道トラックスは不動産企画から販売、建ったあとの管理と運用を請け負っている、と考えるとわかりやすいと思います。
ボクたちを案内してくれたのは樫田さん。もとは道内最王手の地場ハウスメーカーに勤めていたそう。事前の細かな打ち合わせから当日の案内、夕食レストランの手配までしてくれました。
 
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〈チェックインはすべて英語!〉
 
建物価格は、約1億から2億円以上ということだそうで、プラス土地代。まあ、まったく次元の違う世界なのです。別世界だから見る価値がないかと聞かれれば、ボクは、泊まって体験できる豪邸がせっかく身近にあるのだから、夏のシーズンにぜひ行って泊まるべきだと思いました。きっといろいろなことが感じられるはずです。見るだけでなく体験するべきです。
なぜ夏かというと、冬は5連泊からの受付になるので、たぶん泊まれません(笑)。
また、1人で1棟借りるのは金額面で難しいので、5人以上で行くことをオススメします。例えばビルダーの研修旅行として仲間同士で行く方法もあると思います。
※北海道トラックスへの問い合わせは白井まで。電話の向こうがいきなり英語、というのは何だと思うので。
 
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〈ホテルのエントランスに牛のアート〉
 
札幌で味わえない時間の流れ方
夕食は「杏ダイニング」。ここはスキー場のヒラフゴンドラのすぐそばにあるホテル「木ニセコ」の1Fです。
北海道産の海の幸、畑の贈り物をシェフが料理してくれます。が、ここまでだと普通のレストランですね。じつは、窓の外に夕暮れの羊蹄山がドーンと見えるのです。暮れゆく羊蹄山を眺めながら、ゆっくりとした時間を楽しむ。これは札幌では味わえないこと。だからこそリゾートの意味がある。そう感じました。
 
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お客の多くは外国人でしょうね。料理は松花堂風かと思えば、独創的な洋風料理だったりもして、その和洋折衷にあまり違和感がないのは店の実力かと思いました。
 
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やがて羊蹄山は完全に闇に沈みました。レストランではテーブルを囲む人たちの笑顔が、小さな明かりに浮かびます。
http://www.kiniseko.com/ja/dining-ki-niseko
 
建材が発明される前の手づくりの家

翌朝はいつものように5時起床。ボクは、わがままを言って、田んぼの見える部屋に泊まりました。窓の外では植えたばかりの苗が風に揺れています。外に出てみるとパラパラと雨も落ちてきましたが、天気は何とか持ちそう。
 
この日の午前は、メーソンリーストーブという少々変わった薪ストーブをつくっているニセコ町のマキビト工芸さんを訪ねます。
ニセコの主要道から農道に入り、ややしばらく走ったあとに舗装道から下る砂利道を100m以上走り、マキビト工芸の工藤さんご夫婦が暮らす住宅兼ショールームがありました。
 
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現地に着くと、「ショールーム」という言葉は誰からも出てきません。手づくりの、ムーミンの家のような、「いえ」がそこにありました。
壁厚40cm。断熱材が発明される前の極寒冷地建築。建築の専門家たちが、「何だこれは?」と思わず声をあげる家です。
ストーブを見に行ったのに、みんな家の話から離れられません。1泊したセレブな別荘の対極にある、人のニオイがする家。その価値にまた衝撃を受けました。
現代の家づくりは、木を同じ寸法に加工した製材や集成材、薄くスライスした木を貼り合わせた合板、石こうボード、その他の建材でできています。これら建材が開発される前の家づくりを考えたこともありません。
しかし、100年前までは確実にこれらの建材はこの世界にありませんでした。そのころ家は、木と、土と土を焼いたレンガやタイルでつくられていました。工藤さん夫婦の家はこれにとても近い。
 
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そして、メーソンリーストーブも、そういう家づくりの中で見えてくる暖房器具でした。
レンガの総重量3トン。巨大な蓄熱体が熱を貯めこむので、燃やした薪をムダにしない。ストーブ表面温度は65℃程度だそうです。
また、牧野燃焼効率も極寒冷地に伝わる知恵があるそう。薪は立てておき、上に火をつけるのです。ロウソクをイメージしてくれればわかると思います。上から燃えるといぶされて出る白い煙が出なくなる。これが燃焼効率向上の秘訣だそう。
そんなわけで、1日2回、バケツ1杯の薪でじゅうぶん。
 
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とは言え、そんな巨大なストーブを家に置くことは難しいですから、小型の蓄熱ストーブも開発されています。とは言えこちら600kg。
 
お金を払って安らぎを買う人、時間使って安らぎをつくる人。
ひとはいろいろな方法で安らぎに向かうのですね。
 

カテゴリ:ie家 |

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PROFILE

編集長 白井 康永

家づくりを変えたいという野望を持ち、北海道住宅新聞、札幌良い住宅jp を中心に、少子化の激流のなかでわれわれが日本を導きます.時にひょうひょうと(笑).
北海道・札幌市生まれ54歳。血液型O型.新卒1年、専門学校に通う娘たち、高校を卒業した息子あり. 休日にやってること:のろまジョギングとテレマークスキー.

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