2012年02月18日(14:35)

じゃあ、お母さんも逃げる。あとで必ず迎えに行くからね

岩手県釜石市で防災教育を7年間実施し、計画の最終年度を迎えるまえに起きた昨3月の東日本大震災で、14の学校、約3,000人の子供たちほぼ全員の命を救う「人が死なない防災」を達成した群馬大学片田教授の講演内容を、北海道・有珠山のホームドクターとしても知られる岡田弘北大名誉教授からちょうだいしたのが1月24日。岡田先生が年末年始を利用して、講演録から書き起こしたものだ。
内容の一部は、岡田先生にお願いした原稿から、すでに知っていた。そして25ページの記事を一気に読み終えた。


皆さんは自分が暮らす街、会社のハザードマップを見たことがあるだろうか。

ハザードマップ:災害予測図。一定の時間内に、ある地域に災害をもたらす自然現象が発生する確率を図にしたもの。(インターネット版大辞泉)
一般に危険地域を赤、危険度が低くなると色が薄くなるように色分けされている。


釜石市のハザードマップ上は"白い地域"であった地域に、今回は津波が押し寄せた。
白地域の釜石東中学と鵜住居小学校の子供たちは、地震の揺れが収まると、すぐに逃げた。逃げて逃げて逃げまくった。途中、中学生が小学生に声をかけ、保育園では小さい子を抱え、車イスの高齢者をおして。これらの行動すべてが防災教育によるものだった。
最後の避難所に着いた最後尾の子供たち。その後を追うように迫っていた津波から30秒差で逃げ切ったのだという。


少し引用します。

一番最初に逃げたのはサッカー部の連中です。
(グラウンドで)練習をやっていたら地震があって、とつぜん地割れが走ったので、子供たちは校舎に向かって、「津波が来るぞー、逃げるぞー」っと言ったまま、そのまんま、小学校へ向かって、そして小学校に向かって「津波が来るぞー、逃げるぞー」と声をかけて、御在所の里(避難場所)へ向かいました。・・・


わかってはいてもやらない、逃げない人がたくさんいた中で、なぜ彼らは徹底できたのか。なにせ、釜石の小中学生たちは、学校にいなかった5人をのぞき全員無事だったのだから、これは素晴らしいお手本になる事例だと思う。


地震が来たら、親も子もそれぞれがバラバラに逃げる。お互いに必ず逃げていると信じて。だから親も子も逃げられるのだ。「津波てんでんこ」の本当の意味はそういうことだった。これも防災教育の中で徹底した点の1つだったという。
親が子を心配する、子が親を頼る。それはごく当たり前のこと。ただし、その気持ちを地震後に"自宅確認"などの方法で確認してはいけない。


もう一度引用します。

そして、最後の授業はたいてい参観日でした。裏番組で保護者会をやっていました。そこで、お母さん方に「今日子供たちは家に帰ったら、『ボク絶対逃げるから』と一生懸命言うはずです。今日は、子供たちと正面向かって、ちゃんと話を聞いてやってください。子どもはお母さんに聞いてもらえないと、心配しますから。『ボクはちゃんと逃げるから、ボクはちゃんと逃げるから』、お母さんが信じてくれないと絶対お母さんが(迎えに)来ちゃうと思っているから、子供たちは一生懸命そう言いますから、ちゃんと聞いてやってほしい」。
そして、子供たちが絶対逃げると確信を持ったときに、こう言ってください。「わかった。わかった。ちゃんと逃げるのだよ」ということと、「じゃあ、お母さんも逃げる。じゃあ、お母さんも逃げる」。このひと言を言ってやってほしいのです。そして最後に「あとで、必ず迎えに行くからね」と付け添えてやってほしい。・・・


群馬大学の研究室
http://dsel.ce.gunma-u.ac.jp/modules/news/article.php?storyid=57
みんなに知ってもらいたくて、一気に書いてフェイスブックにアップし、今日は少しまとめてブログに掲載します。


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カテゴリ:ひと |

コメント

難しい事は分かりませんが、釜石の学校の生徒児童全員が生還したと言う事実は、本当に凄い事ですよね。
そして、それにはこの聞きなれない名前の避難ポリシーがあったと知って、私は本当に感動しました。
教育・訓練された子供達が、逃げるのを躊躇する地域の方や家族に逃げる事を促す事もあったとNHKでは特集していました。
ホントに素晴しい。
また、その講演内容を岡田教授から頂いたと言うのも感慨深いですね。
どんな堤防よりも、逃げる事を教育する事が防災に一番役立つ事がよく分かりました。

なべやん(2012-02-19T20:36)

>どんな堤防よりも、逃げる事を教育する事が防災に一番役立つ
震災前なら空論にも聞こえそうですが、釜石が実証しましたね。ホントにそのとおりだと思います。
一方で、片田教授も岡田先生も共通しておっしゃっているのは、「ふだんは恵まれた自然を楽しめばいい」ということです。過度に恐れる必要はない。ただ、そのときが来たら速攻逃げる。これがキモだと思いました。

まるへん(2012-02-20T11:40)

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PROFILE

編集長 白井 康永

家づくりを変えたいという野望を持ち、北海道住宅新聞、札幌良い住宅jp を中心に、少子化の激流のなかでわれわれが日本を導きます.時にひょうひょうと(笑).
北海道・札幌市生まれ54歳。血液型O型.新卒1年、専門学校に通う娘たち、高校を卒業した息子あり. 休日にやってること:のろまジョギングとテレマークスキー.

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