新聞記事

2012年04月05日号から

木造建築の新しい可能性 特集

 一昨年10月、国は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を施行し、低層の公共建築物の木造化を推進することになった。コンビニなど民間商業建築でも木造化が始まっており、木造建築のこうした新しい可能性について、工務店・住宅会社がどう取り組めるのか探ってみた。

増える公共建築や商業建築
環境問題と経済面

20120405_1.jpg 公共建築では、政府の「コンクリートから人へ」という政策転換によって公共事業費が大幅に減らされて「ハコもの」が作りにくくなった。一方で福祉・文教施設では、高齢化や待機児童の増加による施設建設の需要が増大している。こうした建築物は多くが300~1000m2程度と住宅よりも大きいが施設の性格を考慮すると2階建て以下が多い。
 そこに政府が「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を施行、あわせて国産材の利用促進を図り、国内の林業保護と振興に役立たせようと大きく舵を取った。さらに木造は建物建設時のCO2を削減でき、国産材を使うことで輸送時のCO2軽減もできるなど、地球温暖化対策にも有効という判断だ。
 この流れを受けて道も昨年3月22日に「北海道地域材利用推進方針」を発表し、道産材を積極的に活用して学校や社会福祉施設、病院、図書館や公民館、公営住宅、公務員宿舎などで木造化を進めることを決めた。特に道営住宅に関しては昨年7月に「新たな木造道営住宅推進方針」を発表し、これまでRC造など非木造が99%を占めていた道営住宅の木造化への一部転換を印象づけた。

コンビニなどで民間も関心

 一方、民間建築でも木造化への関心が高まっている。たとえばコンビニエンスストア。鋼材の値段が高騰したことなどから木造で建てる例が少しずつ増えている。たとえば、(株)セブン―イレブン・ジャパンでは一昨年から道内店舗の木造化を進め、昨年8月末現在で道内に34店舗の木造店舗を建設した。2年間で建て替えを含め道内に70~80店舗建設していることから、少なくとも新築店舗の約半分が木造化されていることになる。ツーバイフォー工法を採用し、トラスを積極的に採用することで柱の数を減らし、鉄骨造店舗と変わらない空間作りを実現。それでいて建設コストを軽減しているという。
 コンビニは店舗面積が60坪程度の広さが多く、独立型の店舗では多くが平屋建てなので防火規制への対応もハードルが低く、木造化しやすい。また、24時間営業などを行うことでエネルギーを多く使うとされているコンビニでは、エネルギー消費量削減やCO2排出量の削減を行うことが重要となっており、木造化は照明のLED化、暖冷房エネルギーの低減とともに今後コンビニ建築で重要になる。
 また、高齢者専用賃貸住宅や介護付き住宅など高齢者向け建物も木造化が進んでいる。ハウスメーカーでは、木の温もりの良さや結露も起きにくいことをアピールし、専門部署を作って需要開拓に取り組んでいる例もある。このほか、民間保育園、小規模店舗、事務所など木造化の需要は幅広く存在する。

提案営業が必要
工事面では管理ノウハウ

 木造建築の用途はこのように拡大しており、工務店や住宅会社に対する期待も大きい。ある建材販売店ではこのように話している。「おおむね500m2以下の建物であれば、材料や技術的にも住宅と大きな差異はなく、工務店の経験がそのまま生きると思う。木造建築経験の浅いゼネコンもあるので、工務店が担い手として育ってほしい」。
 もっとも、財政難で公共工事は減っており、建て替えが中心。そこで役所の担当者に木造建築による建て替えを提案することも必要だ。公共建築物はこれまでRC造やS造がほとんどだったため、担当者は木造の方が高くつくと考えていたり、耐久性が低いと考えている場合もある。公共建築物の木造化について詳しく知らない場合もあり、木造化のメリットについて建築会社側から提案する必要がある。
 現場管理の重要性を指摘する声もある。一級建築士事務所・建築計画工房(苫小牧市)の佐藤孝司代表は、「延床面積が1000m2クラスの木造建築になると、現場管理が重要となる。たとえば、建て方をやっているときに大工を10人程度しか入れなかった現場があった。しかし、それでは床の養生費などが余計にかかる。この規模の木造建築のノウハウが不足していたことが理由だ。木造のメリットを生かすために現場管理者の育成は急務だ」と話している。

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