ドイツ・フライブルク市に住む環境ジャーナリストの村上敦氏を招いて7日夜、札幌市立大学サテライトキャンパスで環境を考えるセミナーが開かれた。
環境政策で世界をけん引するドイツにあって「環境首都」と呼ばれる同市は、早くから環境政策を推進。1995年から計画が始まり昨年に工事が完了したヴォーヴァン地区は既存住宅地に比べ使用エネルギーを7割削減した省エネで快適な団地として有名だ。
村上氏は同市とヴォーヴァン地区について、環境政策の概要を2時間あまりにわたって説明、集まった60名近くの市民、建築家、学生らは最後まで熱心に耳を傾けた。
同市は1992年比で2010年に交通や電気・熱などエネルギー使用を25%削減する目標を立てたが、2006年現在で7%しか減っておらず目標を修正。達成年度を2030年とした上で目標を40%削減に上積みした。
この目標を達成するためには、『節電・節約』の取り組みではとうてい足りない。エネルギーを7割削減したヴォーヴァン地区はそのためのリーディングケースであり、窮屈な生活を強いることなく目標を達成するための方法として国内外から視察が相次いでいる。
CO2削減のための費用対効果を見ると、最も割安なのが省エネルギー、次いで高効率化。ソーラー発電などの自然エネルギーは費用が高い。コストの安い方法から取り組もうとすると、既存住宅の断熱改修(省エネ)のほか、発電の効率改善のためにコージェネの導入、バイオマス燃料の利用、これらによって排出される熱を地域暖房に利用する方法が効果的だ。
また、交通の面では、チョイノリや通勤に自家用車より電車や自転車を使いたくなる仕組みを作り、無理なく輸送エネルギーを削減している。
財政難だからこそ実現した
住宅単体としては、地区内すべてが集合住宅で、技術としては、エクステンシブ屋上緑化と呼ばれる軽量・ローコストの屋根緑化、フジ(南側)やツタ(北側)を活用した壁面緑化、パッシブソーラー技術と高断熱化など、ローテクの集合体だ。
質疑応答の中で村上氏は、「フライブルクは夕張市一歩手前の貧乏市であり、コストの制約は大きい。その中でどう合理的で環境に優しいまちづくりを進めるかということを考えてきた歴史がある」と説明した。