業界全体が後半メチャクチャに忙しかった2010年。しかし終盤にはやや暗い話も聞こえるようになり、2011年の展望が必ずしも開けていない。その原因の1つに「忙しすぎた」2010年の状況がある。忙しいことはいいことだが、仕事量の波が大きすぎるのはマイナスだ。2011年は、受注の波とどうつき合うか、この問題を考えてみたい。
本当のリスクは何か?
住宅会社の経営にとって大きなリスクは、利益率が低いことと受注に波があることではないだろうか。
2008年、2009年に住宅着工がどん底に落ち込み、多くの企業は売上が2009年より小さくてもバランスがとれるような予算を2010年に組んだ。ふたを開けてみると売上は伸びたが前半は着工のズレなどで工事が少なく、後半に集中。年間を通してバランス良くとれていればさほど問題にならない程度の受注でも、集中したことでパニックになった面があると思う。
受注の波は補助金とからんでいるため、根本的には補助金制度が改良されることが一番だが、現状を前提に考えれば、どう会社を適応させていけばよいか、ということが大きな経営課題になってきた。
本気で取り組む谷間対策
1つは谷間をどう埋めるかということ、もう1つはピーク時の現場管理の改善策だ。
谷間を埋めるというのは、『言うは易し、行うに難し』簡単ではない。それでも本気で対策に挑戦し、谷を少しでも浅くできれば、資金繰りや収益性が改善される。増員による忙しさ解消のメドも立ってくる。
しかし、谷が深いままだと、増員できないし秋までの資金がキツイ。受注が少ない心理的なつらさもバカにならないと語る経営者もいる。何より忙しさの対応だけに追われると、谷間対策が打てないまま次の年を迎えてしまう。
方法はさまざまだ。考え方として、次のような流れがあると思う。
▽規格商品→違う顧客層の開拓→社内活性化や外部とのコラボレーション。
▽工事確保を最優先→価格引き下げや建売。
規格商品を用意する、または建売という方法は、言葉を換えれば新しい顧客層をつかむために商品構成を増やすことだ。夏までに家を建ててもらうためには、ある程度、着工までの手離れがよいこと、顧客側に補助金を活用しにくい事情がある、または興味がないこと、が条件になる。
新しい顧客層を獲得するには、違った発想が必要になる。社内活性化によってタレントを発掘し育てるか、外部との連携によって企画を進めるか、いずれにしても従来と違った動きが必要になる。ただ、そのことはきっと従来の商品にも相乗効果を生むはずだ。
一方、価格引き下げは、補助金と同等の値下げを実施するという決断になる。大幅な値下げ(値引)になるが、谷間の時期に工事してくれるなら、それもアリではないか。想定範囲内の値引幅で、かつ期間限定なら他の顧客への影響もないだろう。
振り返れば以前は公庫が
この問題の背景を考えると、旧住宅金融公庫の回次別募集が使われなくなって以降、春先の着工遅れはずっと言われ続けてきたことに気がつく。北海道の場合、4月着工→6月引き渡しというサイクルは、現状として家を建てる側にとってあまり魅力がないのだろう。また春先から動き出したユーザーにとっては、4月着工はあまりに時間がない。
こういうことを考えると、4月着工のユーザーを増やす受注営業をすることは、業界全体の課題であり、実現すれば共通利益につながるとも言える。