新聞記事

2009年04月25日号から

瑕疵担保保険の義務化目前 業界から見直し請願の声・1

20090425_01_01.jpg 住宅瑕疵担保履行法で定める資力確保義務化の施行が10月1日に迫っている。住宅会社は事前に対応しなければならないが、この法律は「国民が安心して住宅を取得できるように」というそもそもの趣旨とは裏腹に、エンドユーザーにとって有益とは思えない面が当初から指摘されていたが、ここへ来て業界内部から公然と政府に見直しを迫る声があがっている。
 
(写真...国交省ホームページにあるイメージ画像。本当に「住まいを守る」法律になるのか...)
 
消費者保護なのに悪質な欠陥に保険金を払わない
 国土交通省は、いわゆる「姉歯事件」後に行った1万人の消費者アンケートで9割の人が「保険が必要・どちらかといえば必要」と回答したと公表。それを根拠に10年の瑕疵担保責任保険などの義務化を法律で定めた。これにより売主または請負人に「供託」か「保険への加入」が義務化された。
 この法律は当初から、『悪質業者や技術レベルの低い業者のせいで、優良な住宅会社で家を建てた消費者も今までにない費用負担を強いられる』との指摘があったものの、『それによって欠陥住宅被害から救われるなら、やむなし』と受け入れる空気だった。
 「瑕疵の確率が低い工務店なら保険料率が下がり、一方悪質な業者は高額な保険料を払わなければならなくなるので業界が健全化されるだろう」と前向きにとらえる会社も少なくなかった。
 ところが法律の細かな点が決まり出すと、疑問の声があがり出す。
 昨年1~3月に行われた住宅リフォーム・紛争処理支援センターによる事業者説明会で国交省は『故意または重過失による欠陥(瑕疵)には保険金を払わない。住宅事業者が倒産したら保険金は払われる』と判断を示したが、当初の趣旨はすべての欠陥修繕をカバーするために保険の義務化に踏み切ったはずだ。
 うっかり欠陥住宅を建ててしまった場合(軽過失)は保険が面倒を見る。しかし、欠陥が出るかもしれないけどいいや、とか欠陥になると思うがそのままやれ、といった場合(重過失と故意)は保険が下りない。欠陥住宅の補修で問題になるのはどちらの事例なのだろうか。消費者保護が必要なのは、後者、すなわち重過失と故意で作られた欠陥住宅に住む人たちなのではないか。

保険法人にサービス横並びを強制? 検査は2回
20090425_01_02.jpg もう1つの大きな問題は、こういった形で保険が義務化されると、『よりよい品質で差別化を図る』ことよりも、むしろ『保険検査にパスするギリギリの品質まで落とすことでコストダウンを図る』という品質低下の方向に向かってしまう心配が大きいことだ。このことによって損害を受けるのは、消費者だ。
 そういった中でも、厳しい検査体制によって品質を維持していることが割安な保険料という形で消費者のメリットにつながればいい。住宅会社の訴求点にもなる。ところが、国土交通省は保険法人に横並びの検査・保証体制を求めたとされ、このため合計4回の検査を実施していた検査・保証会社は、横並びの2回、オプションで4回の検査を行うことも認められなかったという。
 品質確認と向上のためのサービスを認めず、横並び。重過失や故意は保険金を払わない。これでは競争原理が働くはずもなく、何のために民間に保険法人を開放したのかわからない。
 保険商品で差別化できないと、保険法人は保険金を払わないことで利益を確保する方向に進みかねない。2年前に話題になった「生命保険の不払い問題」では25万件以上の不払いが明らかになったように、保険会社はもともと保険料をなるべく払わないことが利益確保につながる。
 「消費者保護というお題目を人質にとって、天下り先確保のためだけにできた法律か」そういう声さえ出ている。
 
(図...保険制度のフロー)

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