新聞記事

2012年02月25日号から

1月に室温が上がらない③

高性能住宅Q&A 761

床暖房も厳しい

前回は、暖房熱のうち約1000Wはコンクリートに奪われていることを明らかにしました。1000Wとは、100V暖房器具のいちばん大きな機種とほぼ同じ能力。それが24時間ずっと。すごい熱量です。
 ここから今回。これらに加え、しばらくはコンクリート表面温度が低く、そのため体感温度も低くなります。この点も考慮すると、さらに熱量が必要になるでしょう。
 比較のために、1階を木造躯体で組んだ場合も計算します。木材量は8m3(重さにして4t)。容積比熱が立方メートルあたり0・14kWhなので、これに基礎断熱分を加え、必要熱量は4kWhになります。1時間当たりに換算したら160W。電球2つ分、コンクリート造の6分の1です。仮に床断熱ならコンクリートへの蓄熱はほとんどなく、1時間当たりで40W、コンクリート造の4%程度です。

設備に余力ないことも一因

 次に設備側の話をしたいと思います。
 仮にコンクリートに熱を奪われたとしても、熱源が強力だったら問題は小さいのです。昔はパワーのある灯油ボイラーを熱源にして温水セントラル暖房をしたので、問題はあまり起きませんでした。ストーブや電気蓄熱暖房器を多めに設置した場合も同様です。
 しかし今はちょっと違います。新築で主流熱源となっている電気もガスも、パワーに余裕がない場合が多いのです。例えば、暖房負荷計算をして必要熱量が5kWだとすると、暖房熱源の契約容量は7~8kW程度。節約するならもっと小さくすると思います。こうなると新築後の暖房立ち上げで家が暖まらないという現象が起きます。
 この問題は、北海道だけでなく、東北や信越など寒い地域ほど深刻になります。12月から1月は日射も乏しく体感温度も低いからです。ただし、2月に入ると劇的に改善するのが普通です。寒いとは言え、北海道でも2月に入れば太陽高度が上がり、昼間が長くなり、気温が低くても晴れる日が増えます。コンクリートの蓄熱も進んで、大きく改善するのです。
   *   *
 今回の例は床暖房だそうです。床暖房は、立ち上げに時間がかかるのが特徴です。室温維持には向いていますが、立ち上げ加熱用としては放熱温度が低いからです。今回は、土間コンのうえに断熱材を敷き、その上に暖房配管したそうですが、熱源の出力と放熱面温度が限られており、パワー不足に陥ったものと考えられます。
 1ヵ月の辛抱ですから、1月は1000W級の市販オイルヒーターを1台以上投入するだけで相当改善するはずです。とにかく補助暖房を入れて寒さをしのいでもらう方が良いと思います。必ず2月には改善しますから。そしてそのときに温度が上がらない理由も説明すると、きっと納得してもらえるはずです。
取材協力:中村よしあき建築研究所(岩見沢市)


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