Q...お客さまから『夏暑い。雨が降ると窓が開けられない』とグチをこぼされました。今や冬暖かい家は当たり前になりましたから、「夏はガマンして」とは言いにくく、エアコン設置をすすめるしかないのが現状です。コストを上げずに工夫する方法はありますか(札幌・住宅会社部長)
A...8月5日号1面で、夏の暑さを防ぐ方法として、外部での日射遮へいがとても重要であることをまとめました。理由は、室内の加熱を防ぐことができればエアコンのあるなしにかかわらず格段に快適になるからでした。
今回は雨の日についてです。9月初旬に台風で紀伊半島を中心に大きな被害をもたらした時、道内も前線や台風の影響で大雨となり、しかも気温が高かったために家の中がひどく不快になったことがグチの引き金になったそうです。
札幌では30年ぶりの洪水被害が心配されるほどでしたから、そうそうあることではないのかもしれません。ただ、夏の暴風雨は窓を開けられないのでキツイ、そもそも風がなくても雨の日に窓を開けられないという問題があることも事実です。
もちろんエアコンを使うのも1つの方法です。ただ、ここではそれ以外の方法を考えてみます。
工務店・ハウスメーカーの皆さんは、雨の日、どんな家で窓が開いていて、どんな家で窓が閉まっているか注意して観察したことがありますか?
外開き(たてすべり出し)はだいたい閉まっています。引き違いは少しだけ開けている窓もありますが、やはり閉めているケースも多いようです。あいているのは、回転窓や回転しないすべり出しタイプ。それにほとんど見かけませんが内倒しです。
窓を開けられない理由は、言うまでもなく雨が吹き込むから。その原因は、主には窓の開閉方式ですが、軒の出やひさしも雨の吹き込みに影響があります。
ただ、仮に軒が出ていても、少し風があれば雨は吹き込むものですし、2階建てなら1階の窓は少量であれ雨が入ります。
回転窓や下からのすべり出しタイプは、突き出した障子が傘の役目をするため、多少の風では雨はまったく入りません。
すべり出しなので開口の見付面積は小さいのですが、換気窓としては充分に機能します。ただし、外部遮へいと組み合わせるときは、障子に遮光スクリーンをつけるか、突き出し幅を考えて腕木を取り付けて遮へい部材をつるすことになります。
この点、引き違いは突き出しがなく優れていますが、ハッキリ言って夏は雨、冬は雪が吹き込み、晴れた日しか窓が開けられません。引き違いは軒の出が相当深くないと、床を濡らします。
外開き(たてすべり出し)は障子そのものが濡れる、強風時に障子がばたついて不安、という声を聞きます。風に弱いのです。
すべり出し窓をうまく使うことが、設計者の腕の見せどころではないでしょうか。
補足:8月25日号に掲載した「Q&A・窓ガラスと太陽熱取得」について、追加の質問をいただきました。趣旨は、『太陽熱取得を中心に考えて、南面のガラスをペアにしようと思うがいいガラスはあるか』という内容です。
日本板硝子にペアマルチEAという商品があります。3+12+3のLow―Eペアで、断熱性能(U値)は1・9Wと普通のLow―Eより若干劣りますが、日射熱取得率(η)は0・74できわめてよく、透明ペアに迫る性能です。ちなみに透明ペアはそれぞれ2・9W、0・79です。なお、このガラスをよく紹介しているのは室蘭工業大学鎌田紀彦教授です。
写真:すべり出し窓をうまく使いたい(エクセルシャノンのカタログから)
写真:ペアマルチEAカタログから
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