新聞記事

2010年12月05日号から

茨城でパッシブハウス.外壁290mm

20101205_01_01.jpg 国内で2棟目、在来木造では初のパッシブハウス「茨城パッシブハウス」が茨城県石岡市で建設されている。設計・施工は地元のビルダー・(株)島田材木店(島田恵一社長)。国内初のパッシブハウスを設計したキーアーキテクツ・森みわさんをコンサルタントに迎え、完成後は地元ユーザーに高水準の快適な室内環境を体感してもらうモデルハウスとして公開する。

温暖地でも世界水準
20101205_01_02.jpg パッシブハウスとは、ドイツ・パッシブハウス研究所が定義した省エネ住宅の基準で、年間の暖房負荷と冷房負荷がそれぞれ15kWh/m2以下、家電を含む年間一次エネ消費量が120kWh/m2以下、50パスカルの加圧および減圧時の平均漏気回数が0・6回以下(C値で0・2~0・3cm2/m2程度)であることが条件。同研究所が認定を行っており、日本では昨年神奈川県鎌倉市に建設された鎌倉パッシブハウスが認定1棟目となる。
 島田材木店は、以前から快適性の高い住まいを提供するために、温暖なⅢ地域でも北海道レベルの断熱性能が必要と考え、Ⅰ地域の次世代省エネ基準をクリアする"ローエナジーハウス"を提案してきたが、取引先を通してパッシブハウスと出会い、「パッシブハウスは自分が考えている家づくりと方向性が一緒だったことに加え、そのレベルまで性能を高めた時にどのような室内環境になるのか、実際に体感したかった」(島田社長)と、パッシブハウスに取り組むことを決断。自社の技術力と同時に、世界レベルの高性能住宅に挑戦してみたいという気持ちも強かったという。

柱は240×120mmの杉材
20101205_01_03.jpg 建設中の茨城パッシブハウスは、オール電化で延床面積約38坪の在来木造2階建て。軸組材は国産材にこだわり、すべて合法性が証明できる茨城・栃木の無垢の杉材を使用している。
 外壁は充てん断熱材の厚さを確保するために、柱や土台・胴差しなどのサイズを240×120mmとし、高性能グラスウール16K120mmを2層充てん。さらに軸組屋外側は9mm厚の耐力面材を張った後、グラスウールボード32K50mmを下地間に外張り付加し、合計290mmの断熱厚を確保。
 また、軸組室内側は夏期の逆転結露を防ぐため、壁体内が湿度80%以上の高湿状態になると気孔を開いて湿気を逃がす調湿気密シート・ザバーンを張り、その上から胴縁材を柱・間柱に留めて30mmの配線スペースを取っている。さらに内装下地の石こうボードは蓄熱性をできるだけ持たせるために12・5mm厚品を2層張りしている。
< 床回りは、気積を抑えて暖冷房負荷を減らすために土間床工法を採用。基礎外側を押出スチレンフォームB3種50mm、土間下を同100mmで断熱しており、床組は土間の上に大引・たる木を土台と同面で施工。大引・たる木間にもグラスウールを入れている。
 天井は桁上断熱で、高性能グラスウール16K140mmを4層施工し、桁下にもグラスウール80+50mmを施工した合計690mm断熱。窓は木製サッシ・トリプルガラスを採用した。
 換気は冬期に第1種熱交換、夏期には第3種に切り替わるドイツ・パウル社の製品を設置。熱交換効率はカタログ値で91%、実際の設置状態で88%となっており、熱交換した給気にヒートポンプの熱を伝えて暖冷房も行う。給湯は太陽熱温水器とエコキュートを併用。

Q値0.8W、C値0.1cm2
20101205_01_03.jpg パッシブハウス研究所が開発した熱損失計算ソフトのPHPPでの計算結果によると、年間の暖房負荷は4・81kWh/m2、冷房負荷は3・1kWh/m2と基準値をクリア。
 Q値にして0・84Wとなり、給湯を加えた年間エネルギー消費量は18・6kWh/m2、家電を含む年間一次エネ消費量(照明除く)は約50・5kWh/m2となる。
 調湿気密シートの施工が終了した段階で気密測定も行い、C値0・1cm2/m2を記録。基準の一つである50パスカル時で0・6回の換気回数もクリアし、パッシブハウス研究所から仮認定を取得した。
 今月中には完成し、換気の給排気量や給湯負荷の算出結果などを同研究所に提出した後、正式に認定が下りる予定。同社では来年1月下旬頃からモデルハウスとして一般公開する考えだ。
 なお、建設コストについては実行で坪あたり65万~70万円ほど、ユーザー引き渡し価格は同80万円を超える見込み。同社では今後、施工の簡略化を進めると同時に、設備機器の見直しなども行うことで、誰もが手の届く価格で提供できるようにしていきたいとしている。


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