新聞記事

2010年12月05日号から

高性能住宅Q&A 741回 断熱材が間に合わない 現場の回し方見直し

Q・・・北海道は大丈夫だそうですが、本州では断熱材が現場に入らず、工程が大幅に狂うという問題が起きています。一時的な工法変更などの対策を検討しています。(関東・工務店)

仕掛かり工事を積み上げない
A・・・夏くらいから本州では断熱材が品薄になり、かなり混乱しています。そのときにこのような質問を受けました。
 大手ハウスメーカーはもちろん、建築現場は基幹建材の材質が変更になると少なからず影響を受けます。それをうまく乗り切るのも現場の力と言えるとは思いますが、難しいことも事実です。
 今回は1つの考え方をご提供できればと思います。それは工程管理のことです。
 たとえば壁のグラスウールが納期に間に合わないとします。グラスウールの施工ができないと着手できない工程は、壁下地です。
 では壁下地が終わらないとできない工程は、壁・天井の仕上げ工程でしょうか。
 そうすると、壁の断熱材がないことで、ほかの工事がどれだけ進んでも、けっきょく仕上げ工事の前に長い待ち時間が発生することになります。
 うんと単純化して話を進めましたが、これは工程の依存関係の中からいちばんのキモを見つける作業、いわゆるクリティカルパス、またはクリティカルチェーンと呼ばれる工程管理の考え方です。
 ここで大切なのは2つ。1つは、断熱材がないという「制約」の前の作業をどれだけ進めても、次には進めないという事実。もう1つは断熱材が来て工事が動き出したら、大工工事が間に合わないことでほかの工程に遅れが飛び火する可能性です。

【例】5つの現場に2人ずつ、合計10人の大工が現場に入っているとします。全10工程の工事の中で断熱材は第4工程で、2現場が第4工程の前で止まっています。次にやるべきことは?

 止まった大工をほかの3現場に投入し、工事のスピードをあげること。そして断熱材が届いたら、納期が迫っている現場にすべての大工を投入すること。
 壁下地工事という問題工程のまわりにたくさんのしかかり(仕掛)工事を積み上げても納期は短縮しません。「それぞれの現場がやれるとこまでやっておく」のではなく、来るべき大工不足に備えて、大工の配置変更でほかの現場を進めておく。これらの方法を検討する価値は、じゅうぶんにあると思います。また工法変更を余儀なくされたときにも生きると思います。
 もちろん、大勢の大工を投入する現場では、作業効率は2人のときより落ちるかもしれません。しかし、それは小さなことです。部分最適に気をとられると、すべての工事の納期と品質管理という全体最適を見失いかねません。ポイントは、大工という労働力(資源)を現場単位でなく全体で優先順位を決めて活用するという点です。この場合、管理者の仕事は残り時間がどのくらいあるか、遅れがほかに飛び火して深刻化していないか、の観察と対処になります。詳しくは制約条件の理論(TOC)を検索してください。
*   *
 とはいえ、今回の納期待ちはたいへんで、納品を待てなかった例もあると聞いています。このQ&Aは1つの考え方として、読んでいただければ幸いです。


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