一般的に築後20〜25年で市場価値ゼロと見なされてしまう中古戸建て住宅の評価手法を改善するため、このほど国土交通省では「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定。基礎・躯体は性能に応じて20年を超える耐用年数を設定できることと、適切な維持管理やリフォームを評価に反映できることが大きなポイントとなっている。
これまで中古戸建て住宅の評価は、主に原価法が用いられてきた。原価法は、評価する住宅を現在もう一度建てる時にかかる費用(再調達原価)を割り出し、その金額から築後の経過年数による価値の低下を減額(減価修正)して現在の評価額を推定するが、現状で戸建て住宅は築後20〜25年で建物価値をゼロとみなすことが一般的。そのため、建物の性能やリフォーム・リノベーションによる価値の向上が評価に反映されにくく、中古住宅流通の活性化を妨げる要因になっていた。
国交省では、躯体性能や内外装・設備のリフォーム、適切な維持管理による建物の価値向上を評価に反映できるよう、検討委員会を立ち上げ、昨年8月から5回にわたって会合を開き、原価法による評価のあり方と改善策を検討。その結果をまとめたのが今回の指針だ。
劣化なければ築後経過年数を短縮
指針では、インスペクションによって住宅の状態や使用価値を把握したうえで、減価修正を行うことを基本とし、住宅を大きく「基礎・躯体」と「内外装・設備」に分類。このうち基礎・躯体については、適切な防水・防湿処理や防蟻処理が行われていて、腐朽や蟻害が発生していなければ、長期間にわたって性能を維持することができると見なす。
具体的には、性能表示の劣化対策等級2相当に適合する場合は耐用年数50〜60年程度、同等級3に適合する場合は同75〜90年程度、長期優良住宅の認定を受けた住宅は同100年程度とし、原価法で用いる築後経過年数は、インスペクション(現況検査)で確認した劣化状況に応じて設定する。
例えば築20年の住宅でも、インスペクションによって劣化が進行していないと確認された場合には、評価上の築後経過年数を20年未満に設定することができ、劣化部分があっても、補修・交換を行えば、築後経過年数を短縮できる。
内外装・設備については、経年によってほぼ一律に減価されるものの、新築時と同等の機能を持つ内外装・設備に更新するのであれば、その使用価値は100%回復、つまり新築並みと見なすことができる。
耐震・省エネの評価は今後の検討課題
今後国交省では、この指針による評価手法の定着へ向けて、宅建業者と不動産鑑定士が使う評価ツール・実務指針の作成や、ユーザーがわかりやすい評価結果の表示方法などの検討を進めるとともに、不動産取引実務・金融実務の関係者とも議論を継続していく。
なお、使用価値を左右する要因としては、耐震性や省エネ性などもあるが、これらを適切に評価に反映する方法は、今後の検討課題としている。