北海道住宅新聞社『健康住宅づくりIesu』vol.47より転載

暖房エネ消費量を半分に

 私たちNPO新住協はこの20年間、いろんな技術開発を行いながら高断熱・高気密住宅の普及へ向けた活動を展開し、現在はコストアップをできる限り抑えながら、次世代省エネルギー基準比で暖房エネルギー消費が北海道・東北は半分、それより南の地域は4分の1まで減らすことを目標に住宅づくりを進めています。これがQ1.0(キューワン)住宅運動です。
 Q1.0住宅運動は、実は次世代省エネルギー基準が北海道ほど厳しくない本州の住宅の暖房エネルギー消費量を半分以下に減らそうと考えたことがきっかけでしたが、もちろん高断熱・高気密化が進んでいる北海道の住宅でも暖房エネルギー消費量が少ないにこしたことはありません。

 ましてや地球温暖化は北海道への台風到来や流氷接岸の遅れなど、日常生活で感じられる段階に来ています。そこで私たちは北海道の暖房エネルギー消費量を半分にするという一つの目標を設定し、3年ほど前から具体的な仕様を提案すると同時にQ1.0住宅運動を始めたのです。
 私たちはQ1.0住宅について、コストダウンを続けながらリーズナブルな価格でみなさんがごく当たり前に建てられるような体制を目指していこうとしています。そこにQ1.0住宅の一番重要なポイントもあります。
 地球温暖化は台風到来や流氷接岸の遅れなど、北海道でも日常生活で感じられる段階に来ていることを考えると、世の中全体に広く省エネを普及させることでCO2排出量を削減し、地球温暖化に歯止めをかけることが大切。

 断熱厚の増加は外壁を中心に考えることになりますが、旭川・道北など冬期の日射・太陽熱があまり期待できない厳寒地では一般的な在来木造の2倍、200㎜厚を標準とするべきでしょう。実際に旭川を含む道北地域では、これまで20棟近い200㎜断熱のQ1.0住宅が建てられています。

 200㎜断熱の躯体に、太陽熱取得を考えた窓の設計と低消費電力の熱交換換気システムの組み合わせが最も有効な手法となります。
 特に断熱材は新築時に施工してしまうと、外装材の張り替えなどの機会がなければ容易に取り替えたり追加したりすることはできませんし、断熱性能は100年以上変わりません。

長期的な視野で考えれば200㎜断熱は高価ではない

 地球温暖化の影響は肌で感じるほど急速に進行しており、30年先がどうなっているか、正直わからない部分があるのも事実です。
 みなさんにはまず、しっかりした200㎜断熱のために費用を捻出していただき、換気は第3種換気でもいいと思います。20年、30年後にエネルギー価格が大きく高騰していたら、そのときに熱交換換気を入れる方法もあるのです。20年、30年を考えれば200㎜断熱は決して高価ではありませんし、施工がしっかりしていれば断熱効果は解体まで続く良さもあります。

 Q1.0住宅の将来的な見通しとしては、暖房はもちろん、給湯や家電・照明にかかるエネルギーの削減も目指し、太陽熱給湯器や太陽電池、ヒートポンプ、バイオマスエネルギーなど普及途上のエネルギーも視野に入れながら、住宅を造る技術と住宅の設備を作る技術を発展させることで、もっと広い視点でCO2排出量の削減にチャレンジできる住宅を造れるのではないかと考えています。

 そうすると、高価な超省エネ住宅より、誰もが建てられる価格のQ1.0住宅を広めていくほうが効果的だからです。
 
ですからみなさんにはQ1.0住宅の普及による省エネ効果について関心を持ってもらい、同時にこれからの北海道の住宅像を目にしてもらうことで、私たちの省エネに対する考え方に共感してもらえればと思っています。

 NPO新住協は10年後に全棟が地球に優しいQ1.0住宅という体制を目指しており、これからもいろんな技術開発を進め、必要な建材などを供給してもらえるよう、住宅・建築業界にインパクトを与えながら運動を進める考えです。

旭川など日射少ない地域は200㎜断熱が標準

 Q1.0住宅の技術的手法を紹介します。①建物本体の断熱厚を増やし建物から逃げる熱をへらす、②南面の窓は断熱戸や断熱ブラインドで断熱強化と太陽熱取得を両立し、東西北面の窓には断熱性の高い窓を採用する、③電力消費量が少ない熱交換換気システムを採用する、④冬期の太陽熱や夏期の夜間の冷気を室内に蓄えられる工夫をする―を提案しています。ここでは特に旭川・道北地域で重要なポイントになる①について、200㎜断熱を中心に詳しくお話ししましょう。
 建物本体の断熱厚を増やそうとすると、木材と断熱材、手間が増えますが、うまく工夫すればあまりコストをかけずに実現できますし、確実に暖房エネルギーを減らすことができます。

 新築する時にできるだけ厚い断熱を施工しておけば、効果は100年単位です。
 断熱が厚い住宅は、窓から入る太陽熱や、人体・家電製品などから出る生活発生熱だけでも室内がかなり暖かくなるので、暖房エネルギー消費量の低減につながるだけではなく、災害時などにライフラインが途切れて暖房機器が使えなくなったとしても、すぐに凍えてしまうほど室内が寒くなることはないでしょう。

施工中のQ1.0・200㎜断熱住宅
旭川の暖房エネルギー削減案
200㎜断熱の手法
Q1.0住宅のコンセプトイメージ

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