北海道住宅新聞社『健康住宅づくりIesu』vol.47より転載

気密測定
高い施工力で隙間は僅か

 住宅性能を測定する手段として、最もよく行われているのが気密測定。これは住宅にどれくらい隙間があるのかを測定するもので、測定結果は相当隙間面積(C値)で表します。

 C値は住宅の床面積1㎡あたり何㎠の隙間があるのかを示し、数値が小さければ小さいほど気密性が高いことになります。気密性能は施工力を評価する一つの指標ですが、断熱性能の高い住宅を造るために高い気密性は必要不可欠で、気密性能が低いと隙間風が増えて不快感があるほか、断熱性能の低下や壁内結露の原因にもなります。

 国が推奨する次世代省エネルギー基準で定めた気密性能は北海道などでC値2㎠/㎡以下ですが、Q1.0・200㎜断熱住宅で設計通りの断熱性能を十二分に発揮するためには、同1㎠/㎡をクリアすることが求められます。

 NPO新住協旭川支部ではQ1.0・200㎜断熱を推進するにあたり、施工技術の向上や情報交換も毎月の例会を通じて積極的に行っています。

 ひとくちに200㎜断熱と言っても施工方法は会員各社によって様々。そこで旭川支部では室蘭工業大学・鎌田教授に旭川で直接技術指導をしてもらいながら、最大限の効果を最低限のコストアップで得るために、見学会や例会を開いてそれぞれの施工方法を検証し、活発な議論を交わしています。

 これらの活動の成果は会員各社が施工するQ1.0・200㎜断熱住宅にフィードバックされると同時に、現場見学会や講演・セミナーなどを通じ家づくりの参考になる情報としてユーザーのみなさんに提供しています。

 北海道の中でも特に冬の寒さが厳しい道北・旭川で、北米や北欧の住宅先進国と肩を並べる高性能な住まいが当たり前に建てられる時代は、すぐそこまで来ています。

気密測定を行う時の装置構成。室内と屋外に圧力差を発生させて、圧力差と屋外に流れる空気の量から相当隙間面積(C値)を算出する

 設計上の住宅性能がいくら高くても、施工がしっかり行われていなければ意味がありません。断熱性能や暖房費が計算通りになるかどうかはビルダーの施工力にかかっています。「Q1.0・200㎜断熱」を推進しているNPO新住協旭川支部は、会員各社が断熱性能の指標となる熱損失係数(Q値)と年間の暖房エネルギー消費量を算出したうえで、公的機関などによる気密測定や換気風量測定を行い、施工品質を常に確認しています。断熱施工がきちんと行われていることを確認する赤外線熱画像測定を実施するケースもあります。
 ここではQ1.0・200㎜断熱住宅の優れた性能を科学的に証明する性能測定や性能予測などについて紹介します。

赤外線熱画像測定
強力な断熱シェルターを確認

 優れた断熱性・省エネ性が最大の特徴であるQ1.0・200㎜断熱住宅ですが、先に述べた通り、その性能が実際に発揮されるかどうかはビルダーの施工力にかかっています。しかし、住宅は完成してしまえば壁の中の断熱材がどのように施工されているのかを見ることはできません。そこで断熱材が適切に施工されているかどうか、所定通りの性能を発揮しているかどうかを確認する方法として用いられるのが、サーモグラフィによる熱画像測定です。

 サーモグラフィは床・壁・天井などから放射される遠赤外線を分析し、部位ごとの温度分布を画像化して目で確認できるようにするもの。例えば冬期に測定した場合、断熱材がしっかり効いている住宅であれば開口部などを除きどの部位も同じような色の画像となりますが、断熱欠損があったり、気密層が切れている部分から空気漏れしている箇所があると、その部分だけ赤色系など違った色で表示されます。

 下の写真は外壁を200㎜断熱で改修し、窓は高性能な樹脂サッシに交換した住宅の熱画像です。改修前の上の画像は窓回りを中心に赤色系の部分が目立ち、熱が屋外に漏れていることがハッキリわかりますが、改修後は赤色系の部分が完全になくなり、住宅全体がほぼ同じ色合いになっています。

 室内の熱が逃げず、屋外の冷気もシャットアウトするという、いわば住宅全体が強力な断熱シェルター。これが200㎜断熱の凄さなのです。

200㎜断熱で改修した住宅(下)と改修前の住宅(上)の熱画像。改修後は熱が逃げていることを示す赤い色の部分がまったくなくなっている

線損失・暖房エネルギー消費量計算
旭川で灯油1000リットル以下も現実に

 Q1.0・200㎜断熱住宅は、暖房エネルギー消費量を次世代省エネ基準の半分にすることを目指した住宅。そのため建てる前に断熱性能(熱損失係数)を設計し計算することで、年間の暖房エネルギーがどれだけかかるのかを把握します。

 ここで使われるのが室蘭工業大学・鎌田研究室が開発した熱損失係数・年間暖房灯油消費量計算ソフト「QPex」。住宅の建設地や延床面積、床・壁・天井の断熱仕様などを入力すると、住宅全体の熱損失係数と年間暖房灯油消費量を算出してくれます。

 北海道で年間暖房エネルギー消費量を次世代省エネルギー基準の半分に減らすためには、熱損失係数=Q値1.0W(/㎡・K)前後の断熱性能が必要となります。次世代省エネルギー基準の北海道のQ値は1.6W以下なので、それを4割近くも上回ることになり、寒さが厳しい旭川の冬を年間1000リットル以下で過ごせる住宅も出てきています。

室蘭工業大学・鎌田研究室が開発した熱損失係数・年間暖房灯油消費量の計算ソフト「QPex」。施工地域や断熱仕様などを入力するだけでどのくらい省エネな住宅になるのかを把握することができる