平成20年1月25日号から
高性能住宅Q&A
先張りを忘れてしまった!!
「後張りでいいですが、手間がかかります」

写真1…2階の梁と柱の取り合いを下から見る。先張りは建て方の時に防湿フィルムを胴差しにタッカーなどで仮止めし、梁との接合部を×字に切り込んで梁を接合させる


写真2…同じく火打ち梁の先張り


写真3…先張りし忘れた火打ちまわり。工程はそのまま進み、グラスウールも入っている
 Q…在来軸組工法でこのほど初めて気密化工法を施工中なのですが、一部、ミスから先張りなどを忘れてしまいました。どうしたらいいでしょうか。(札幌市 工務店現場管理)

実例ではC値0.3を切る
A…現場管理の方からのご質問です。対策を説明する前に、最後まで施主のためにガンバリ通してほしいということをまずはお願いしたいと思います。『まあいいか』で中途半端に終わってしまっては施主がかわいそうです。専門家の誇りにかけて快適な住宅を提供してください。
 在来工法の場合、気密化のポイントはいくつもありますが、先張りの施工忘れは建て方が終わったあとから、梁まわりなどを後張りで防湿・気密シート施工することになります。このとき、梁まわりを切り込んでシートと梁をテープ止めする手間が発生しますが、それはやむを得ません。



写真4(上)・写真5(下)…写真3と同様の部分を後張りした状態。火打ち梁の接合部を切り開いて火打ちとシートを丁寧にテープ止めする。この後ボード押さえとなるため、気密性能に影響はないが、手間はかかる
 写真4をご覧いただきたいと思います。これは梁まわり、火打ち梁まわりを後張りで施工した写真です。施工指導は(有)北欧住宅研究所所長・川本清司氏です。
 防湿・気密材はポリエチレンフィルムを使用しています。
 まずは先張りの写真です(写真1・2)。胴差しまわりに幅1メートル程度のポリエチレンフィルムをぐるりと回していくのですが、このとき、梁が入る部分は×印にカッターで切り込んで梁を落とし込むだけで施工が終わります。特にテープ止めする必要はありません。梁と胴差しがフィルムと密着するからです。施工中にフィルムが切れた部分だけ、テープで補修すればじゅうぶんです。
 写真3は先張りがない部分です。本来、この段階では先張りシートがベルト状に回っていなければなりません。火打ち梁まわりの後張り施工が写真4です。フィルムと絡む部分をテープ止めしています。その後ボードで押さえるので気密性能は維持されます(写真5)。



写真6…先張り忘れ。この段階では棟梁の上からかぶせるように先張りシートが施工されてなければならない。母屋も同様
慣れるまでは原則通り先張り
 屋根断熱の棟梁・母屋も後張り施工の例を示しました(写真6・7・8)。本来は棟梁や母屋の上に先張りシートを張り、その上からたる木をかける順序となりますが、シートが後張りになったためにU字状に室内側を回る納まりとなります。
 このように後張り施工はとても手間がかかりますが、気密性能は先張りと同じ程度まで高めることが可能です。この現場では相当隙間面積で0.3cm2/m2を切りました。



写真7(上)・写真8(下)…屋根断熱部分の後張り。棟梁・母屋ともにシートはU字状に室内を回って屋根断熱の気密層と連続させる。屋根面で氷堤などの被害を出さないように、気密・断熱ともに細心の注意をしたい部分だ
 なお、気密施工に熟練した工務店には後張りを標準工法にしている会社もあります。ただそれは施工の勘どころを押さえ、大工さんも熟練した上での工法改良です。最初に取り組む場合は、先張りが原則です。

ミスを避けるために
 最後にこういった施工ミスを避けるための対策について触れたいと思います。まずは現場管理者がしっかりと施工のポイントを頭に入れることが大切です。これは言うまでもありません。
 大切なのは、事前に大工さんに『こういう施工でやる』という納まり図面を見せておくことです。図面は、その現場の詳細図があればベストですが、そうでなくてもOKです。気密施工のマニュアルなどを渡して見てもらえば、ポイントをすぐにつかんでもらえるはずです。現場に納まり図面集を置いておくといいようです。
 またこの段階で大工さんからいろいろ質問を受けておいたほうがいいと思います。勘違いがあれば、できるだけ早い機会に解消しておきたいからです。
 大工さんに事前に図面で説明しておくと、いいことがいくつもあります。まず、理解が早まるのでミスが減ります。施工しやすいように段取りを組もうと考えてくれるので、工程がスムーズになります。そして何より、現場管理者の予想以上に現場が早く進行しても、やり忘れが起きにくいことです。最後に工事関係者への周知徹底がやりやすくなることです。
 ここでは説明しませんでしたが、土台まわりの先張りも忘れずに。

『北海道型』を開発
サンポット ペレットストーブを発売

道庁1階ロビーで実演中の北海道型ペレットストーブ。多くの人が行き交うため、木製の安全柵を設置している様
 サンポット(株)は、北海道型ペレットストーブ「FFP-701DF」を今月末から発売する。道立林産試験場と共同開発、道内の住宅でメイン暖房として使える性能と使い勝手、購入しやすい価格を目指した。
 ペレット燃料とは、通常は廃棄される森林の残材やおが屑などを原料に、高温高圧で固めて乾燥させた小さな円筒状の固形燃料。ペレットストーブは化石燃料を使わないほか、放出されるCO2は、森林で吸収したCO2を大気に返すだけなので、実質的に増えないという『カーボンニュートラル』の視点に立ち、地球環境にやさしい暖房として注目されている。
 同社では、「いわて型ペレットストーブ」を数年前に岩手県と共同開発。同県では、樹皮を主原料にしたバークペレットも生産されているが、北海道ではホワイトペレット(樹皮を除いた木部が原料)か全木ペレット(樹皮も木部も丸ごと原料にする)に限られていることから、北海道型はホワイトペレットと全木ペレットに最適化した燃焼部とした。
 さらに室温の自動調整、タイマー機能など灯油FFストーブと同等の使い勝手を実現。FF方式なので室内の空気が汚れない。
 このほか、対震自動消火装置や過熱防止装置を装備し、防火性能認証も取得予定(現在申請中)など安全対策を考慮した。
 ストーブの高さは70センチとダイニングテーブル並みに抑え、無理のない姿勢で燃料を補充できるよう設計されている。
 寸法は幅90×高さ70×奥行51センチ、重量65キロ。奥行は背面カバーも含んだ寸法で、設置時の壁からの出っ張り寸法となる。価格はオープン価格だが、20万円台後半程度になる見込み。
 なお本機は、道庁1階ロビーで暖房運転中。暖かさを体感でき、ペレット燃料に関する資料や製品の簡易カタログも置かれている。
 問い合わせは同社札幌支店(札幌市東区本町2条10丁目1-25、Tel.011・785・1211)へ。

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