平成20年1月15日号から
新時代がスタート
環境の激しい変化に対応する

構造計算書偽装問題で明らかになった課題への対応(=平成20年中に施行または施行予定)
 今年は構造設計一級建築士と設備設計一級建築士制度のスタートや、建築士資格取得後の定期講習義務づけなど新制度が始まり、来年10月に施行となる瑕疵担保責任の履行の確保に必要な保険法人の指定が行われるなど、昨年に引き続き法改正への周到な準備が必要な年となる。
 法施行前後の混乱を避けるためにも、入念な準備をしておきたい。まずはこれらの法改正がどのような背景で行われているのか、もう一度おさらいをしてみた。

根底に消費者保護
  1994年のPL法(製造物責任法)制定以来、国は消費者保護を積極的に進める政策を採ってきた。住宅分野では翌95年の兵庫県南部地震が契機となり、建築基準法を改正して在来軸組工法でホールダウン金物を義務化するなど耐震性能を強化、さらにいわゆる「秋住問題」の欠陥住宅などがきっかけで、消費者保護の観点から新築住宅の引き渡し後10年間の瑕疵担保責任の義務づけや住宅性能表示制度の創設などが進められた。
 ところがこうしたさなか、姉歯元建築士によるマンションの耐震偽装事件が発生。姉歯元建築士がマンション等の構造計算結果を改ざんし、大地震に耐えられない構造の物件を『建築基準法をクリア』すると偽装した。これにより国民の目はいっそう厳しくなり、建築関連の法規はより規制を強化する方向に動いている。具体的には3つの観点から法改正が進められている。
 まず建築行政の観点からは、建築確認・検査でなぜ見抜けなかったのか、民間の検査機関の資質の問題が挙げられた。これに対して昨年6月から建築確認・検査の厳格化が行われたのは記憶に新しい。さらに、平屋や500?以下の2階建て小規模木造住宅、いわゆる4号物件でこれまで構造関係規定の審査の省略を認めていた特例を今年暮れ以降に廃止する方向で動いている。たとえば金物の詳細な納まり図などを作成しなければならない。

資力確保義務づけの範囲

供託と保険の違い

保険 供託
費用 8万円/戸程度 1億4000万
※年10戸程度の場合
形態 掛け捨て 10年間供託
(無事故なら返還)
事故対応 保証で対応 自社で対応
現場検査 あり なし
事故時紛争処理 1万円であっせん なし
※現場検査、保険による事故対応など、保険を使う工務店は安心感をアピールできる
 次に、建築士制度そのものに偽装を生み出す土壌がなかったかどうか、建築設計が複雑になっている実態などの問題点が挙げられた。これに対して、建築士全般の資質維持のため定期的な講習受講が義務化され、さらに高度な専門能力が必要な構造設計・設備設計に関しては、一級建築士の中から実務経験年数や指定講習受講などの要件により構造設計一級建築士、設備設計一級建築士制度を新たに設ける。
 定期講習の義務づけと構造/設備設計一級建築士制度は、今年11月末にも施行予定で、構造設計一級建築士などによる法適合チェック義務づけは来年5月末頃の施行予定。

4号特例廃止が延期
 なお、4号特例の廃止時期については、最近新しい動きが出てきた。国交省が今年12月と噂されていた時期をずらすというのだ。昨年12月19日に開催された社会資本整備審議会では、設計者向けの講習会を開催するなど、周知期間をじゅうぶんに置いた上で実施するとしており、具体的な実施時期は明言されてない。昨年6月の建築基準法改正で建築行政側も混乱した反省とされる。
 そして、消費者保護の観点からは、瑕疵担保責任の実行が実際にはなされず、買い主を守れなかったのではないかという課題が残った。姉歯事件の被害者は法のもとに瑕疵保証を受けて補修済みあるいは建て直しをした安全な物件に住めるはずだった。ところが、マンションの販売会社、施工会社、偽装を見抜けなかった民間確認審査機関とも破産あるいは廃業となり、瑕疵を修補することができなかった。
 そこで、被害者の救済をより確実なものとするため住宅販売側に保証金の供託または保険加入を義務付けることになった。保険は、住宅販売・建築を担当した住宅会社が倒産するなどの理由で瑕疵担保責任の履行ができなくなった場合でも、保険制度を活用して買い主の損害を補てんする。

4号特例廃止に対応したサービスを既に発表している金物メーカーもある((有)グランドワークス)
 保険制度は、『特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律』が昨年5月30日に成立した後、保険法人の指定と保険契約にかかわる紛争処理に関する規定が今年4月頃発表される。保険法人は、建築に関する技術的知識を持って現場検査を行い、また瑕疵が発生した場合にはその特定と損害額の査定を正確に行うことが必要となる。現在、応募に名乗りを上げている会社が数社ある。
 また、気になる瑕疵担保責任の保険額だが、住宅1戸あたりおおよそ8万円前後になるとみられている。今後は事故率などにより、住宅会社によって保険料率の優遇があるかもしれない。自動車の任意保険で、事故率によって車種ごとに保険料率に差があるイメージだ。なお、保険法人指定については、国交省からパブリックコメントの募集が今月中に出される予定。

工務店囲い込みも
 4号特例の廃止と瑕疵担保責任保険の強制加入で工務店の負担感はさらに強まる。そこで、工務店支援と囲い込みを目指して動き出した会社が出てきた。
 HSS金物工法を展開中の(有)グランドワークス(富山県滑川市)は、4号特例の廃止に対応して「木造住宅の構造耐力上主要な特記仕様書」、「柱端部と接合金物の納まり」など「特記仕様書・標準納まり図」を作成するサービスを間もなく行うとPRしている。
 また、瑕疵担保責任保険で行われる検査業務は、現場ではまず基礎配筋検査、そして中間検査、竣工検査の3工程とみられているが、住宅性能表示や完成保証制度、フラット35を利用する場合には、それぞれ同様の現場検査が必要になり、工程に支障を来すことも考えられる。そこで、瑕疵担保責任保険引受けの準備を行っているジャパンホームシールド(株)(本社東京都)や、住まい'S DEPO.ねっとでは、瑕疵担保責任保険と住宅性能表示、完成保証、フラット35の適合証明を一手に引き受けるサービスを準備中だ。配筋検査、中間検査、竣工検査をそれぞれ1回で済ませられることや、それにより検査手数料も安くなるなど、工務店側のメリットをPRしている。

新しい工務店像
マイスターから『コンシェルジュ』へ
 景気の低迷による賃下げ・非正社員化、持家充足率のアップ、戸建住宅を購入しない人の増加、そして今年からはパワービルダーの道内参入などが要因となって、道内住宅会社の経営環境は年々厳しさを増している。
 効果的に見込み客をつかみ、他社を上回る情報提供や提案活動などを行って受注を確保するにはどうしたらよいか。住宅業界の曲がり角とも思える状況の中で、改めてその対策を考えたい。

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