北信商建が開発した無暖房住宅のモデルハウス |
無暖房住宅など熱損失係数=Q値1W(/m2K)を切る長野県内2棟の省エネ住宅の室内環境と暖冷房エネルギー消費の実測結果が公表された。それによると、無暖房住宅として開発されたQ値0.68Wの住宅は次世代省エネ基準地域で昨冬の暖房負荷がゼロ、Q値0.77Wの高省エネ住宅は同地域で暖房エネルギー消費が灯油換算で150リットル弱と、いずれも期待通りの省エネ性を発揮している。信州大学工学部社会開発工学科の山下恭弘教授(工博)と各住宅会社との共同研究によるもの。
暖房負荷ゼロ達成
今回実測結果を公表した2棟のうち1棟は、北信商建(株)(本社長野県飯綱町、相澤英晴社長)が開発した無暖房住宅で、昨年4月に長野市内(地域)に完成した約38坪のモデルハウス。在来木造で躯体は外壁400ミリ断熱や木製サッシ・クリプトンガス入りトリプルLow-Eガラス、熱交換換気システムなどによってQ値0.68Wとし、さらに太陽熱を夏期と中間期は給湯、冬期は補助暖房と給湯に利用するFBソーラーシステムを導入している。
実測は、夫婦と子供2人の4人家族を想定して実施。室内には人体発熱の代わりとなる柱状の照明器具を設置し、テレビや冷蔵庫、照明も含め実生活に即したスケジュールでオン・オフ制御。さらにバスタブへの給湯も毎日行い、実生活に限りなく近い条件で家族4人暮らしをシミュレートした。なお、昨年11月から2階を事務所として使用している。
無暖房住宅での外気温と室温の1週間ごとの平均。最も寒かった1月上旬でも室温は21℃以上を保った |
冬期の室温は 0℃以上維持
昨年6月から今年4月までの実測結果を見ると、昨冬はFBソーラー以外は一切暖房を使用しない状態で室温は平均で24℃を維持。事務所を使用していない期間も平均21.3℃となり、暖房負荷ゼロを達成している。
なお、FBソーラーは9月25日から暖房に切り替えており、冬期の1日あたりの放熱量は山下教授による実測で12月が約40Wh/m2、1月が約55Wh/m2、2月が約69Wh/m2。
また、夏期はできるだけエアコンを使用せず、夜間に少し窓を開けることで室温を調整。8月2日から9月10日までの期間は27~28℃設定でエアコンを使用したが、電力消費は合計94kWh。1日当たりの電気代は57円(1kWh=20.08円換算)で済んでいる。
結果としてこれまでの暖冷房負荷は昨夏の冷房負荷のみ。今年5月分の結果とFBソーラーによる暖房は入っていないが、次世代省エネ基準地域の年間暖冷房負荷の基準値460MJ/m2の4%程度、Ⅰ・Ⅱ地域の基準値390MJ/m2の4%強の暖冷房負荷で済んでいる。
佐々木工務店が施工した高省エネ住宅のモデルハウス |
ヒートポンプで灯油150リットル未満
もう1棟は(株)、佐々木工務店(長野県軽井沢町、佐々木賢二社長)施工の高省エネ住宅で、昨年7月に御代田町(地域)に完成した約31坪のモデルハウス。ツーバイフォー工法で外壁400ミリ、天井500ミリ断熱など高断熱化を図り、換気は熱交換換気システムとしてQ値0.77W。北信商建の無暖房住宅と同様に家族4人暮らしをシミュレートし、昨年8月から実測を行った。
昨冬は11月22日から4月1日までガス温水ヒートポンプ暖房を使用し、設定温度約18~20℃で暖房負荷は約52MJ/。灯油換算で約145リットルで済んでいる。夏期は8月1日と8月10~17日に室温27℃設定でエアコンを使用。冷房負荷は約2MJ/となった。
昨年8月から今年4月までの実測期間の暖冷房負荷は約54MJ/m2。今年5~7月の結果が入っていないものの、これは次世代省エネ基準地域の年間暖冷房負荷の基準値390MJ/m2の約14%。断熱の厚手化と高効率設備機器の組み合わせによる高い省エネ効果が確認された。
高省エネ住宅の熱負荷シミュレーション結果と実測による暖冷房負荷。計算上は次世代基準Ⅱ地域の基準値の約20%となっている |
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