平成19年6月25日号から
見えた無暖房の可能性
信州大・山下教授が実測値公表

北信商建が開発した無暖房住宅のモデルハウス
 無暖房住宅など熱損失係数=Q値1W(/m2K)を切る長野県内2棟の省エネ住宅の室内環境と暖冷房エネルギー消費の実測結果が公表された。それによると、無暖房住宅として開発されたQ値0.68Wの住宅は次世代省エネ基準地域で昨冬の暖房負荷がゼロ、Q値0.77Wの高省エネ住宅は同地域で暖房エネルギー消費が灯油換算で150リットル弱と、いずれも期待通りの省エネ性を発揮している。信州大学工学部社会開発工学科の山下恭弘教授(工博)と各住宅会社との共同研究によるもの。

暖房負荷ゼロ達成
 今回実測結果を公表した2棟のうち1棟は、北信商建(株)(本社長野県飯綱町、相澤英晴社長)が開発した無暖房住宅で、昨年4月に長野市内(地域)に完成した約38坪のモデルハウス。在来木造で躯体は外壁400ミリ断熱や木製サッシ・クリプトンガス入りトリプルLow-Eガラス、熱交換換気システムなどによってQ値0.68Wとし、さらに太陽熱を夏期と中間期は給湯、冬期は補助暖房と給湯に利用するFBソーラーシステムを導入している。
 実測は、夫婦と子供2人の4人家族を想定して実施。室内には人体発熱の代わりとなる柱状の照明器具を設置し、テレビや冷蔵庫、照明も含め実生活に即したスケジュールでオン・オフ制御。さらにバスタブへの給湯も毎日行い、実生活に限りなく近い条件で家族4人暮らしをシミュレートした。なお、昨年11月から2階を事務所として使用している。


無暖房住宅での外気温と室温の1週間ごとの平均。最も寒かった1月上旬でも室温は21℃以上を保った
冬期の室温は 0℃以上維持
 昨年6月から今年4月までの実測結果を見ると、昨冬はFBソーラー以外は一切暖房を使用しない状態で室温は平均で24℃を維持。事務所を使用していない期間も平均21.3℃となり、暖房負荷ゼロを達成している。
 なお、FBソーラーは9月25日から暖房に切り替えており、冬期の1日あたりの放熱量は山下教授による実測で12月が約40Wh/m2、1月が約55Wh/m2、2月が約69Wh/m2。
 また、夏期はできるだけエアコンを使用せず、夜間に少し窓を開けることで室温を調整。8月2日から9月10日までの期間は27~28℃設定でエアコンを使用したが、電力消費は合計94kWh。1日当たりの電気代は57円(1kWh=20.08円換算)で済んでいる。
 結果としてこれまでの暖冷房負荷は昨夏の冷房負荷のみ。今年5月分の結果とFBソーラーによる暖房は入っていないが、次世代省エネ基準地域の年間暖冷房負荷の基準値460MJ/m2の4%程度、Ⅰ・Ⅱ地域の基準値390MJ/m2の4%強の暖冷房負荷で済んでいる。


佐々木工務店が施工した高省エネ住宅のモデルハウス
ヒートポンプで灯油150リットル未満
 もう1棟は(株)、佐々木工務店(長野県軽井沢町、佐々木賢二社長)施工の高省エネ住宅で、昨年7月に御代田町(地域)に完成した約31坪のモデルハウス。ツーバイフォー工法で外壁400ミリ、天井500ミリ断熱など高断熱化を図り、換気は熱交換換気システムとしてQ値0.77W。北信商建の無暖房住宅と同様に家族4人暮らしをシミュレートし、昨年8月から実測を行った。
 昨冬は11月22日から4月1日までガス温水ヒートポンプ暖房を使用し、設定温度約18~20℃で暖房負荷は約52MJ/。灯油換算で約145リットルで済んでいる。夏期は8月1日と8月10~17日に室温27℃設定でエアコンを使用。冷房負荷は約2MJ/となった。
 昨年8月から今年4月までの実測期間の暖冷房負荷は約54MJ/m2。今年5~7月の結果が入っていないものの、これは次世代省エネ基準地域の年間暖冷房負荷の基準値390MJ/m2の約14%。断熱の厚手化と高効率設備機器の組み合わせによる高い省エネ効果が確認された。


高省エネ住宅の熱負荷シミュレーション結果と実測による暖冷房負荷。計算上は次世代基準Ⅱ地域の基準値の約20%となっている

改正基準法がスタート
書類の扱いが厳しく
混構造は構造計算書が必要

1階RC造、2・3階木造の混構造では、確認申請時に両方の構造の構造計算書を添付する
 今月20日から耐震強度偽装事件の再発防止を目的とした改正建築基準法が施行され、確認申請も国土交通省が策定した「確認審査等に関する指針」によって厳しく行われることになった。ここでは四号物件(木造の2階建てや平屋など)を中心にそれらの改正点について改めて確認しておきたい。
 20日以降の確認申請についてポイントをまとめると、木造2階建てまたは平屋の住宅の添付図書については従来通りで、壁量計算図や構図伏図などの構造関係図書は不要木造・RC造(WRC造=壁式鉄筋コンクリート造)の混構造は、両構造の構造計算書を添付申請書等に誤記、記載漏れなどがあった場合は、一定の期限内に補正が必要申請書等の記載事項に不明確な点があった場合は、一定の期限内にその部分について説明した書類を提出。なお、申請書等の差し換え・訂正はできない審査中の計画変更による申請書等の差し換え・訂正は認めない―の5点。
 添付図書については、2階建て以下の木造住宅の場合でも壁量計算図や伏図などこれまで提出不要だった構造関係図書が必要になるのではないかという憶測も流れていたが、建築基準法でこれらの図書を省略できると定めた項目の変更などはなく、提出する図面等は従来と変わらない。
 ただし、1階RC造、2・3階木造という混構造の場合はそれぞれの構造の構造計算書を添付しなければならない。
 混構造は、これまでRC造の部分の構造計算書を添付、もしくは道内は一部の特定行政庁を除き札幌市が規定する仕様を採用していればよかったが、木造・RC造の部分とも許容応力度計算に加え、層間変形角や剛性率、偏心率も確認したルート2相当の構造計算書を提出する。さらに構造計算にともない、構造計算を行った設計士が発行する構造計算安全証明書の写しを確認申請時に添付することとなる。

誤記などの補正認める
 申請書等に間違いや不明点があった時の対応も規定された。
 申請書等の中に誤記や記載漏れまたはこれらと同レベルの間違い、いわゆる軽微な不備があった場合、申請者が本来記載しようとした事が簡単に推測できる程度のものであれば、基準法に適合するかどうか決定できないという通知書が交付され、同時に一定の期限内に間違いがあった申請書等を補正するように指示される。
 基準法に適合するかどうか決定できないという通知は、確認をいったん戻すということではない。審査を一時中断し、補正された申請書等が提出された段階で審査を再開するということになる。申請書等の補正の期限については、道建築指導課や札幌市建築確認課はどの程度の間違いかによってその都度決定するとしており、簡単なものであれば窓口に出向いてその場で補正することも構わないという。
 ただ現段階では、図面相互の不整合などを含め、どの程度の間違いまで軽微な不備として扱われるかは、建築主事の判断に委ねられている状況で、しばらくは各市町村によって判断が異なることも考えられる。
 申請書等の中に不明点があった場合は、軽微な不備があった場合と同じく基準法に適合するかどうか決定できないという通知書が交付され、同時に一定の期限内に不明点について説明した書類を提出するように指示される。審査が一時中断になり、説明書類の提出期限が不明点の状況に応じて決まる点も同じ。ただ、説明書類を提出する代わりに申請書等の差し換えや訂正を行うことはできない。
 なお、軽微な不備があった場合、不明点があった場合ともに、通知書の交付から補正や説明書類提出までの期間は、法定審査期間に含まれない。

審査中の計画変更を認めず
 また、確認審査を行っている期間中に申請した建築物等の計画を変更しようとする時は、申請書等の差し換えや訂正が認められないことになっている。確認審査中でも計画変更を行うのであれば、確認が下りた後に改めて計画変更の確認を出さなければならない。

ツーバイ用パネル製造
Pre-com.  トラス含め全道で営業展開

工場で生産され出荷を待つ壁パネル


合板張りや開口部のカットも行う壁パネルの製造ライン
 オホーツク・遠軽町の(株)Pre-com.(プレコム、河島幸則社長)では、昨年11月からツーバイフォー住宅の壁・床パネルと屋根トラスの製造販売を開始。1階床から屋根まで住宅1棟分のパネル・トラスを一括して提供可能で、壁パネルは構造用合板張りまで行うなどの独自性を出し、オホーツクを中心として全道で営業展開を進めている。
 同社は昨年経営破綻した遠軽町の住宅会社・(株)箱崎の従業員の地元雇用の確保と同時に、箱崎が所有していたパネル工場や機械設備の有効活用を目的として、同じ遠軽町の建材販売業者である河島商店が設立。現在、河島社長以下8名でツーバイフォー住宅用パネル・トラスの製造販売を行っており、ひと月当たり10棟分のパネル・トラスを生産している。
 パネル・トラスとも工場生産によって高い寸法精度を確保しており、壁パネルはツーバイフォーまたはツーバイシックスに対応。外壁パネルはインチ・フィートモジュールは針葉樹構造用合板、尺モジュールはOSBの9ミリ厚をあらかじめ貼り、開口部はカットした状態で出荷する。床パネルはフレームだけの構成となり、遠方からの受注に対しては輸送負担を考慮し、部材のカットだけ行うことも可能。屋根トラスは、こう配屋根とスノーダクト屋根のいずれにも対応できる。
 現場の工程に合わせて納品するため、発注する場合は着工の3週間前まで図面を送付することが必要。価格は延床面積約40坪の総2階建てで、間仕切りを含めて壁パネルがツーバイフォー、床パネルは部材のカットのみ、屋根は三角トラスの場合、130~140万円が目安になる(運賃別途)。
 なお、近い将来には木質複合梁・I型ジョイストの製造販売も考えているという。
 問い合わせは同社(遠軽町清川377-5、Tel・FAXとも0158・42・0250)へ。

音声ガイダンス付き
アーステックジャパン 指紋認証ドア錠の新型

カバーをスライドさせると指乗せ台が光って誘導する
 アーステックジャパン(帯広市)は、指紋認証式のドアロック「レオワン」の後継機として「レオプラスSE」をこのほど発売した。レオワンは既に製造中止となり、今後はすべてレオプラスSEに切り替わる。
 「レオワン」のデザインや操作性はそのままに、指紋センサー内部基盤など設計を一新して信頼性を一層向上させた。また、高齢者にもやさしい日本語対応の音声ガイダンス機能や、賃貸物件で不動産会社などが一括管理するのに便利な暗証番号の共通登録機能などを新たに搭載した。
 レオプラスSEは、室外機のカバーをスライドして開けて指紋認証部分に指を乗せるだけで世界特許のLEセンサーが1秒以内に指紋認証して玄関ドアを解錠する。買い物でカギを取り出すのが不便なとき、夜、灯りが暗くて鍵穴を探すのに不自由なときも、指1本をセンサー上に載せるだけで解錠できる便利さがメリット。
 指紋認証用データは、合計99指まで登録可能なので、右手の人差し指以外に、他の指などを登録しておけば、万が一右手の人差し指がケガなどで使えないときもスムーズに解錠できる。
 指紋認証が使えないときのために、4~12桁の間で設定できる暗証番号による解錠にも対応している。暗証番号の共通登録機能は、賃貸マンション・アパートで大家や不動産会社が部屋の立ち入りなど管理業務を遂行する際に、全戸分に共通する管理者用の解錠パスワードをあらかじめセットできるというもの。
 このほか、出かけるときにカギを閉めなくてもいいオートドアロック(設定解除可能)、ドアの不正解錠に対応した大音量警告アラームなどの特徴がある。また購入者を対象に、製品サポートを24時間フリーダイヤルで対応する。
 電源は単3アルカリ電池4本で、電池寿命は約1年。バッテリー消耗時にはアラーム機能で電池交換時期を知らせてくれる。取付可能なドア厚は35~45ミリ。室外機の寸法は75×162×44ミリ、室内機は111×189×48ミリ。マイナス20℃から動作し、少々の雨雪が本体にかかっても使用可能な簡易防滴を装備。色はシルバーとゴールドの2色。設計価格は12万円(税別、取付費別)。
 問い合わせは、同社(帯広市西23条南1丁目54、Tel.0155・61・1120)へ。

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