一昨年冬に発覚した耐震強度偽装事件の再発防止を目的とした改正建築基準法が今月20日に施行される。施行直前になってもはっきりしない部分はあるが、改正法では一定の建築物に対する構造計算適合性判定の義務化などとともに、国が定める指針に基づき建築確認を厳格に審査する方向が打ち出されており、確認申請後の図書の差し換えや訂正が原則禁止となる。なお、2階建てまたは平屋の木造戸建住宅(四号物件)については添付図書に壁量計算図や伏図の追加もささやかれていたが、最終的に提出する添付図書はこれまで通りで変更はない予定だ。国交省が18日に発表予定の指針が待たれる。
間違いあれば再申請
今月20日に施行となる建築基準法の改正点としては、現段階で1.確認申請の審査で一定の建築物に対し、建築主事や指定確認検査機関が行う構造審査に加え、各都道府県知事による構造計算適合性判定を義務付け
2.四号物件(木造の2階建てや平屋など)を除き、確認の法定審査期間を21日から35日に延長 3.階数3以上の共同住宅に対し、法定中間検査を実施
4.建築士が構造計算を行い建築物の安全性を確認した場合は、確認申請等で建築士が交付する構造計算安全証明書の写しの添付を義務化―などが判明している。
これらの改正点については、木造戸建住宅にほとんど関係してこない。問題は現在国土交通省が検討・作成中の「確認審査等に関する指針」に基づく厳格な審査だ。
厳格な審査の具体的な内容としては、確認申請後に添付図書の記載事項に不整合や誤りがあった場合と、建築計画を変更した場合は、図書の差し換えや修正などによる申請書の補正・変更が原則禁止になる予定。誤字・脱字程度なら許されるが、そうでなければ再申請しなければならないというわけだ。
“変更”の範囲未定
これは大きな問題で、「とりあえず確認だけ先に出しておこう」など安易な気持ちで確認申請ができなくなることは確か。審査中に記載事項の変更は認められず、正本と副本の図書相互の不整合や誤りがあれば、建築基準関係規定に適合しない、または適合するかどうか決定できないと見なされ、確認が下りない。確認を認めない理由はもちろん指摘されるが、その部分を修正して再申請するにしても申請手数料は納めなければならず、また一から審査することになるため、経済的・時間的なロスが発生してしまう。
ただ、原則禁止であり、現在、道と道内の特定行政庁ではどこまで訂正等を可能にするかを検討しているという。ケースによっては訂正等が認められることもありそうだ。
また、「事前相談については従来通り受け付ける」(札幌市)ので、不安な部分や疑問点などはあらかじめ各市町村の建築確認担当者などに相談し、不備のない申請書類を用意しておくことが大切だ。
なお、図書などに不整合や誤りではなく、不明な点があった場合にはどうなるかというと、国交省の指針案では「建築基準関係規定に適合しているかどうかを決定できない場合は、申請者に対し不明点を説明するための図書等を求める」としている。
混構造は構造計算
添付図書に関しては、これまで通り2階建て木造戸建住宅で壁量計算図や構図伏図などの構造関係図書を添付する必要はないが、木造・RC造の混構造では両方の構造の構造計算書が必要になることに注意したい。
木造・RC造(WRC造=壁式鉄筋コンクリート造)の混構造は、例えば1階がRC造、2~3階が木造の場合、これまでRC造の部分の構造計算書を添付、もしくは一部の特定行政庁を除き札幌市が規定する仕様を採用していればよかったが、今後は木造・RC造の部分とも許容応力度計算に加え、層間変形角や剛性率、偏心率も確認したルート2相当の構造計算書を添付しなければならなくなる。
構造設計に関わる業界関係者の話によると、道内で木造とRC造の両方とも構造計算および構造チェックができる設計事務所は非常に少ないと言い、ハウスメーカー・工務店は両構造の構造計算ができる設計事務所を事前に調べておきたい。
添付図書は最終図面のつもりで
いずれにしても正式には18日に発表予定の国交省の指針が出るのを待たなければならないが、あるビルダーは「必要であれば市町村の担当者と事前相談をしっかり行うほか、ユーザーにも今回の法改正の内容をあらかじめ伝えて、確認の添付図書は最終図面とするくらいの気持ちで作成・提出することが必要になるのでは」と話す。
札幌市建築指導部建築確認課では「間違いがないよう事前に法令をきちんとチェックしてから、確認を出して頂きたい。これまで安易に確認を出していると見受けられるケースもあったが、それでは確認を下ろすのはかなり難しいと思う」と注意を促している。
建築物の規模による構造計算の方法と確認審査の方法(北海道の資料より) |
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