講演する小金澤敏明氏
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資産価値高める家造り説く
去る3日、在札幌アメリカ総領事館で「アメリカ大使館・住宅セミナー&ミニ展示会」が開催され、住宅関係者だけでなく、一般市民も含め定員を上回る申込みがあるなど、今回のセミナーに対する関心の高さがうかがえた。
このセミナーは、アメリカの住宅に対する考え方を紹介しようと毎年開かれているもので、ワシントン州シアトルで建材販売と輸出を行っているキャスケード・コンポーネンツ・インクの小金澤敏明社長が「恒久住宅の実現を目指して」について、在大阪・神戸アメリカ総領事館の高畑和久上席商務専門官が「アメリカにおけるグリーン・ビルディングへの取り組み」について基調講演。パックリム・ビルディング・サプライ(株)など4社が商品・サービスPRを行った。
セミナー開催前や休憩時間には、企業PRを行った参加会社などが取扱い商品の展示を行い、多くの参加者が訪れていた。
マーヴィンウインドーズが参考出品した、換気ポジション付FIX窓。右ハンドルのようにレバーを上げた状態が換気ポジションで、蛇腹のような幌とともに障子がせり出す。左ハンドルのようにレバーを下げた状態なら通常のFIX窓になる |
年間80万戸の時代
このうち、小金澤氏の基調講演の概要は次のとおり。
日本はバブル期に年間160~170万戸もの住宅着工があったが、ここ数年は120万戸前後で推移している。住宅の耐久性の向上や量的充足、金融システムの変革にともなう住宅ローンの変化、一次取得者層である30代半ばから50代前半までの人口が2010年以降大幅に減ると予想されること―などの理由で、今後着工数は減り、年間80万戸時代が近い将来にやってくる。民間シンクタンクの中には年間45万戸や65万戸と予測をするところもある。
金融システムの変革により、住宅金融公庫の直接融資が間もなく終了する。1戸あたり2000万円、年間100万戸の市場として年間20兆円もの巨大市場が民間に移る。しかし、日本では住宅の価格は年収の5~6倍とアメリカよりも割高でローン依存度が高い。貸付金を確実に回収するために住宅ローンの融資金額の査定方式が変わってくるだろう。
日本はこれまで建物の価値ではなく土地と申込者の収入や信用で貸付額が決まる債権型(クレジット)ローンだった。これからは、申込者がローンを支払えなくなったときは金融機関が担保物件そのものを売り払うことで貸付金を回収する抵当型(モーゲージ)ローンが主流になると見ている。
そうなると金融機関は担保物件はいくらなら売れるか、という再販売価値をもとに融資金額を決めるため、今より貸付金額は低く抑えられる。ここで貸付金額を多くするためにクローズアップされるのが資産価値の高い住宅づくりだ。
アメリカでは、住宅の資産価値が長期的に持続されることを前提に、将来抵当権評価額以上の価格で売却できる住宅であることが求められている。年月が経てば、物価上昇分以上に資産価値が上がる住宅もめずらしくない。
歴史的意匠から学ぶ
資産価値の高い住宅に必要なのは、ヘルシー、アフォーダブル、ヘリテージの3要素だ。ヘルシーは健康住宅であることはもちろん、建材の生産過程や住宅の建築過程でも地球環境や人体にやさしいことが求められる。アフォーダブルは購入者にとって求めやすい価格であること。アメリカの住宅価格は年収の3倍程度と日本よりも割安だ。ヘリテージとは「恒久」でサスティナブルハウスのことを指す。美しいデザインで消費者の注文に合わせた住宅を設計することが必要だ。
住宅を構成する3つの重要なポイントは、意匠、機能、性能だが、機能や性能はリフォームで変えられるが、意匠(=デザイン)はできない。そのため、建築段階で歴史が残してきた伝統的デザインを取り入れることが資産価値を高めるために必要だ。古くからあるデザインは恒久的な審美性を持っていると評価され、住宅の築年数に左右されないものだ。歴史が残してきたデザインをそっくりまねるところから始めれば良い。
セミナー開始15分前でこのように会場はほぼ満員状態
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目に見えない工程を合理化
日本もモーゲージローンに移行して、建物の質を積極的に評価する方へ向かえば、コストダウンと住宅の質向上という恩恵を消費者は受け取ることができる。コストダウンのためにはコンストラクション・マネジメントも必要。設計・仕様の規格化、標準化、単純化を図り、無駄な材料の洗い出しなどを行う。例えば、消費者へ引き渡す時に、目に見えないものは“ムダ”と考え、そこから合理化を進める。この点で大量に使う養生部材は
“ムダ”なもの。工程を変えることで養生材が不要になれば、資材と労務両方の費用が浮いてくる。 |