平成18年7月5日号から
改修で外壁200ミリ断熱
旭川・小井田工務店 天井・基礎含めオールGW

既存のモルタルとシージングボードを撤去した後、OSBを張って付加断熱材の下地となる間柱材を施工した外壁面
 (株)小井田工務店(旭川市、小井田勉社長)では、旭川市内にある築24年の住宅のリフォームで、既存グラスウール100ミリが充てんされた軸組の外側にグラスウール100ミリを新たに付加して外壁200ミリ断熱とし、基礎も高撥水グラスウールボードによる基礎断熱を行うなど、コストを抑えながらより高い省エネ効果が得られる断熱改修に挑戦した。


下地の間に付加断熱材のグラスウールを充てん
築24年を高省エネ化
 この住宅は昭和55年に建てられたもので、7年前に現在のオーナーが中古で購入。延床面積約31坪(増築部分含む)の2階建てで、改修前の断熱仕様は、外壁と天井がグラスウール100ミリ、床が同150ミリ、窓がアルミサッシ引き違いの二重サッシ。室内が寒いので暖かくしたいとオーナーから要望を受けたことに加え、モルタルの外装や屋根材の傷みも目立っていたことから、同社も加盟しているNPO新住協旭川支部が推進する200ミリ断熱での改修とともに、ガルバリウム鋼板の外装仕上げなどによって住宅全体のイメージを変えることを提案した。
 工事は最初に外装の既存モルタルを撤去した後、2階の屋根を改修。適切な小屋裏空間が取れるように小屋組を造り直し、ブローイング300ミリを吹き込んでから屋根をかけた。続いて付加断熱材を納める2階外壁の下地造りを行い、同時に下屋部分の屋根を改修。下屋部分は2階外壁との取り合いに折り重ねたグラスウールを入れて気流止めとし、天井部分にブローイング300ミリを吹込み。その後1階外壁の付加断熱下地を造ってから、1・2階の付加断熱材の施工と外装仕上げ、基礎の断熱施工と化粧仕上げをそれぞれ行った。


外壁をガルバリウム鋼板、基礎を樹脂サイディングで仕上げた住宅の外観

基礎は高撥水グラスウールボードを下地材で押さえてコンクリートビスで固定
既存壁断熱材は流用
 外壁部分は面材の既存シージングボードを撤去し、軸組外側にOSB9ミリを張ってから付加断熱材の下地となる間柱材をL金物を使って455ミリピッチで固定。土台・胴差・桁部分の室外側に上枠・下枠を付けてから高性能グラスウール16K100ミリを間柱材の間に充てんし、透湿・防水シートを張って通気層を取ってから外装仕上げとしている。
 軸間に充てんされていた既存グラスウールは状態が良かったため、窓廻りや増築部分以外は室内側の防湿・気密フィルムごとそのまま残して防湿層とし、気密は軸組外側のOSBと透湿・防水シートで取る形としている。特に透湿・防水シートは断熱工事前に土台に屋外側から先張りを行い、さらに外壁に張ったシートは土台横の下地受け材の下で折り返して布基礎と基礎断熱材で挟み込むことで、土台廻りの隙間を解消している。

基礎は高撥水のGWボード使用
 基礎部分は実験的なチャレンジ。布基礎外側をGLから200ミリ程度掘って暗渠と切込み砂利150ミリを入れ、高撥水グラスウールボード75を下地材で押さえてコンクリートビスで留めている。外装仕上げは縦張りの樹脂サイディングとし、一部に鋼板も使用。既存の床断熱材もそのまま残している。今後、床下空間の温湿度を計測して検証する予定だ。
 このほか、窓はPVCサッシ・アルゴンガス入りLow-Eペアガラスに更新。暖房と換気はそのままで、暖房はツインバーナータイプの床暖房併用FFストーブ、換気はトイレやユーティリティーのパイプファンによるダクトレス3種換気。
 内装工事や2階の一部増築なども含めて、総工事費は約750万円になるという。
 同社設計・工事担当の真崎寿昭氏は「環境問題を考えると、これからは100ミリ断熱の時代ではなく、150ミリ断熱、200ミリ断熱の時代になる。今後も環境負荷が小さくコストメリットもあるグラスウールを上手に使って断熱性を高め、暖房エネルギーを減らしていきたい」と話している。



給気を木炭で浄化
石狩・はるす工房 パッシブ換気で新たな提案

和室の床下に設けたピット部分。導入した外気は木炭が入った箱を通って床下空間全体に広がる
 はるす工房(石狩市、高杉昇主宰)では、木炭を給気径路に設置することにより、室内に導入する外気の浄化・調湿効果を狙ったパッシブ換気システム住宅を設計。先月、(株)伊藤工務店(夕張郡由仁町、伊藤公人社長)の施工で北広島市内に完成させた。
 パッシブ換気は内外温度差を利用して換気を行うシステムで、基礎断熱した床下空間に新鮮外気を取り入れ、パネルヒーターで温めてから1階は床面のガラリから、2階へは1階間仕切り壁内と1階天井ふところを経由して給気し、汚染空気は屋根に設置した排気塔から排出する仕組み。現在の建築基準法で通年パッシブ換気のみの換気は認められないため、冬期はパッシブ換気メイン、内外温度差が少ない夏期や暖房端境期はトイレ、ユーティリティーのパイプファンによる第3種換気として0.5回/hの換気量をまかなう考え。
 高杉氏は、室内の汚染物質は換気で室外に排出するにしても、屋外の空気が汚れていた場合はどうすればいいのかを問題提起したかったと言い、特に大都市などでは室内に導入する外気をきれいにする何らかの措置が必要ではないかと考え、また、夏期の給気の湿度調節や春先の花粉の吸着といった効果もあわせて検証しようと、今回、木炭を使って外気を浄化するパッシブ換気を初めて手がけた。


木炭利用のパッシブ換気を採用した住宅の外観。一部にロフトを設けることで給気口と排気口の高低差を確保し、平屋でのパッシブ換気を可能にした
床下ピットを利用
 木炭利用のパッシブ換気を採用した住宅は、新在来木造構法による延床面積約44坪の平屋建て(一部ロフト)。以前手がけた住宅で床下にシリカゲルを入れて空気の浄化・調湿を試みたこともあったが、コスト負担が大きかったため、よりローコストな材料として木炭に着目。コスト低減と、ユーザーが簡単に維持管理できるように、今回はホームセンターで入手した木炭を使用した。
 従来のシステムと比べると、外気導入部分が異なっており、塩ビパイプ2本は玄関横から基礎外周部の下に回して床下に立ち上げ、立ち上がり部分の周囲には合板などで囲って130センチ×70センチ角の床下ピットを造っている。床下ピットは側面の一部に開口を取り、そこに約1キログラムの木炭を収納する箱を設置。塩ビパイプを通して導入された外気は木炭入りの箱を通ってから床下空間に拡散し、室内に給気される。
 なお、パッシブ換気は給気口と排気口の高低差が一定以上必要となるため、平屋で採用するには工夫が必要だが、今回の住宅では無落雪屋根の一部に排気塔を付けた三角屋根のロフトを造り、外気導入口の位置も低くすることで7mの高低差を作り出している。

外気浄化の必要時に備える
 今後は臭気や調湿、花粉の吸着の有無など木炭の効果について1つひとつ検証していく予定で、木炭の使用量や使用箇所についても明らかにしていきたいとのこと。
 高杉氏は「外の空気は本当に新鮮なのかを考えると、都市部と郊外では同じように新鮮とは言えない場合もあると思う。今すぐ必要というわけではないが、札幌やその周辺の都市部で近い将来、外気の浄化を行う必要が出てきた時の手段として木炭による給気の浄化を提案したい。一定の成果が得られればパッシブ換気のシステムもより良い方向に変えていけると思う」と話している。



札幌に営業所開設
サーマエンジニアリング 土壌蓄熱暖房を本格販売

パネルはまんべんなく敷き詰める。大きさは幅457ミリで長さは914~2133ミリまで3種類ある
 サーマエンジニアリング(株)(本社名古屋市、福田哲三社長)は、今年3月に札幌営業所(大谷隆昭所長)を開設、カナダ生まれの土壌蓄熱暖房システム「サーマスラブ」の販売を道内で本格的に始めた。
 サーマスラブは、石こうボード内に電気ヒーターを埋め込んだ厚さ15ミリの発熱パネルを地中に埋めて地中の土壌そのものを蓄熱体にし、土壌からの輻射熱で住宅全体を暖める暖房方式。基礎は、土間床に転ばし根太を推奨している。
 土壌全体を蓄熱体とするため蓄熱容量が大きく、数日間通電がなくても土壌からの輻射熱で住宅を暖房できるという。床スラブ表面温度は30℃以下、住宅の1階床表面温度は24℃前後の『低温暖房』で「暖房機器の存在を感じさせない、寒くない暖房」を実現する。
 仕組みが比較的単純で機器コストが安く、施工も1日で終わるためイニシャルコストはさほど高くない。発熱パネルの通電はドリーム8などコストの安い深夜電力を利用する。開放的な間取りなら2階もそのまま暖房可能だ。

パネルはまんべんなく敷き詰める。大きさは幅457ミリで長さは914~2133ミリまで3種類ある















サーマスラブ使用時の土壌温度分布
 施工は、土間コン施工前の地中30~40センチぐらいを整地して発熱パネルを敷き込み、パネルの傷付きを防ぐため砂を厚さ10センチほどかぶせ、さらに砕石をかぶせ、最後に土間コンクリートを施工する。
 土間コンを施工してしまうと初期不良時の対応が難しくなるため、敷き込む工程の中で通電試験などを行ってチェックする。パネルは一部屋ぐらいの広さごとに並列に結線するため、万が一故障箇所が生じてもシステム全体が止まることはない。
 発熱線はフッ素樹脂でコーティングされており、長期間にわたり劣化しない。日本に初めて導入されてから約10年が経過するが、同社では断線事故は報告されておらず、仕組みが単純なため数十年の耐久性が期待できるという。
 使い方は、秋にコントローラーのスイッチをオンにしてスラブ表面温度をセットしたらあとは春までそのまま。温度センサーはスラブ内に埋設されている。蓄熱容量が大きいため、寒波の来襲など急激な温度変化が生じたときも室内の温度変化は小さい。
 問い合わせは、同社札幌営業所(札幌市中央区南1条西10-4、Tel.011・222・5280)へ。

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