平成18年5月15日号から
木造戸建住宅復活の道・その5
「e-家」に住みたい-に込めた思い
(株)北海道住宅新聞社 会長 白井 丞

居室ごとの新鮮空気の供給量の目安。これに実際の空気の流れと換気風量の測定値を書き込み換気システムと性能を表示する
新機軸の選択が鍵
 木造戸建住宅はこの20年間に、規模の拡大と使い勝手の改善を進める一方、隙間風が入り難い、冬は暖房用灯油消費量を増やさずに家中暖かく、日常的にクリーンな空気の中で暮らせる住まいが完成し、外見的には欧米先進国に見劣りしないマイホームが誕生しました。
 これまでとは比べものにならない豊かさやゆとりを多くの人が手に入れましたが、新たな不快や不満、そして課題を感じるようにもなりました。
 この矛盾を解決することが、木造戸建住宅の改良に取り組んできたビルダーの使命であり、長期低迷からの脱出、マンション・木造アパートからアドバンテージを取り戻す道でもあります。
 また、その積み重ねが省エネ性・快適性、そして機能的にも先進国と肩を並べられる、内容が十分に備わった住まいとなります。
 そうした中でビルダーが今後、どのような機能などを選択し、次の時代の新機軸として提案するかが、受注競争の激しい中で勝ち残るポイントになります。ユーザーの視線が必要です。



全室暖房の一般的な室温設定と換気システム。冬の日常生活における室温の範囲を示す
地球環境貢献も意義
 高断熱・高気密工法が一般化し、それ自体では受注面の優位性はなくなりました。が、しかし、性能をきちんと発揮していないケースが多々ある現実を踏まえると、少なくとも気密性能・換気風量・ホルムアルデヒド濃度の測定、さらには冬季暖房時の室内の快適性の目安となる温度について、各部屋の上下と部屋間の温度差、部屋ごとの温度設定、春・秋の一時期の補助暖房、換気の強弱や補完機能、湿度調整機構、暖房用エネルギー消費量など、快適性を見分けるデータを、自社のこれまでの施工実績から可能な範囲で示すことで信頼度を高め、他社との差別化を図ることが、最初のポイントです。
 また、昨年から先進的な工務店などでは超高断熱のQ1.0住宅を建設していますが、ユーザーにとってどんなコスト・パフォーマンスが得られるのか、エネルギー消費量と二酸化炭素排出量の削減効果・経済性・快適性などを示すことです。灯油高騰の今は、それなりに経済性の理解を得られますが、将来200ミリ断熱を目指すためにも、ユーザーの立場にたったメリットを示すことで理解を得る必要があります。
 一方、省資源・省設備、生ゴミ・雨水のリサイクル、さらには、太陽光・風力発電、ヒートポンプ・排熱利用などにより、地球環境負荷の軽減をはかり、省エネの一方で設備に依存しすぎている快適性の追求が、トータルエネルギーの消費量を増加させている現実に対処する視点が大切です。企業の社会的使命をアピールする効果もあります。


トータルエネルギーを抑制するには省エネとともに創エネルギー、省設備などが必要。選択肢はこんなにあります(BL.NO160次世代住宅を支える技術・広松猛)
間取り配分見直す発想の転換が必要
 持家一戸当たりの床面積は30年前に比べて50%、20年に比べても16%増えています。道内の新築持家の床面積は140m2台となりました。
 一方、世帯構成は、少子高齢化が進み、30年前の一家族構成3.19人が、20年前には2.85人、現在は2.21人、30年前と現在では1人減りました。そして単身世帯が増加しています。
 団塊世代のリタイア、親子関係の絆の変化などから、家族や住宅の形が多様化してきました。
 マイホームは、今までの様な規模の大型化、ダイニング・キッチン・浴室のスペース拡大、個室の増加などは休止し、食品室など必要になってきた新たなスペースの確保が求められています。
 美観にとらわれがちなデザイン力を、住宅性能の向上にともなう機能の充実と生活に密着した新たなニーズに目を向けるべきです。設計思想を見直す時期にきています。
 これから順次、具体的に示していきます。



塗り壁の普及へ
札幌・アスペック 100年WALLシステム

セメント系軽量コンクリートボード「ユーティークリート」のしなやかさを実演している様子
 (株)アスペックコーポレーション(札幌市、矢野哲夫社長)では、去る4月21日、札幌市つどーむ・コミュニティーホールで、内装・外装の塗り壁材などを紹介した「100年WALLシステム説明会」を開催。当日は大勢の建築関係者らが訪れ、製品の優れた強度や耐久性が注目を集めていた。
 冒頭で矢野社長は「最近の木造住宅は躯体の耐久性が高まると同時に、建材類の性能も高まってきた。ユーザーがメンテナンスをしっかり行えば、塗り壁で仕上げた内装・外装は100年でも充分に美しさを持続する。そういう考え方から、当社が手掛ける塗り壁工法を100年WALLシステムとして提案させてもらいたい」と挨拶した。

優れた塗り壁下地

「ユーティークリート」と通気層、断熱材を一体化した製品のサンプル模型

セラミックタイル「ひだセラ」を水に浮かせている様子
 最初に紹介されたのは、塗り壁下地材の不燃セメント系軽量コンクリートボード「ユーティークリート」。アメリカで 30年以上の実績があるこのボードは、軽石より軽い粘土陶粒入りのポルトランドセメントを芯材とし、その両面にガラス繊維ネット(耐アルカリ性)を埋め込んで補強したもの。不燃材料・耐火構造など国交省の認定・指定を受けている。耐水性・耐火性・凍結融解性・耐震性・衝撃吸収性に優れており、また、半径 2.4mまでの曲面壁でも施工できる可とう性に優れたしなやかさも持っている。サイズは厚さ11ミリ×3尺×6尺。施工は横張り・千鳥張りが標準。
 同社ではこのユーティークリートボードに断熱材を一体化した製品を開発中だ。断熱材のネオマフォーム50ミリとユーティークリートの間に通気胴縁として厚さ15.8×幅50×920ミリに成形したユーティークリートを挟み込み、通気工法に対応した外断熱塗り壁下地材として、今年の夏ごろ販売する予定だ。
 続いて、オーストラリア製の塗料「100年ペイント・アステックペイント」をテーマに、輸入・発売元である(株)アステックペイントジャパンが塗料を紹介した。他にも、水に浮くセラミックタイル「ひだセラ」、サイディング塗り壁リフォームシステムなどが紹介された。
 アスペック社が以前から扱っている塗り壁材などに加え、アステックペイントなど耐久性に優れた仕上げ塗料をラインナップし、下地材にユーティークリートを推奨することで、デザインバリエーションと耐久性・強度を兼ね備えた内外装仕上げ工法を提案していく考えだ。
 製品についての問い合わせは同社へ(札幌市東区北32条東18丁目6-2、Tel.011・783・6565)。

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