居室ごとの新鮮空気の供給量の目安。これに実際の空気の流れと換気風量の測定値を書き込み換気システムと性能を表示する |
新機軸の選択が鍵
木造戸建住宅はこの20年間に、規模の拡大と使い勝手の改善を進める一方、隙間風が入り難い、冬は暖房用灯油消費量を増やさずに家中暖かく、日常的にクリーンな空気の中で暮らせる住まいが完成し、外見的には欧米先進国に見劣りしないマイホームが誕生しました。
これまでとは比べものにならない豊かさやゆとりを多くの人が手に入れましたが、新たな不快や不満、そして課題を感じるようにもなりました。
この矛盾を解決することが、木造戸建住宅の改良に取り組んできたビルダーの使命であり、長期低迷からの脱出、マンション・木造アパートからアドバンテージを取り戻す道でもあります。
また、その積み重ねが省エネ性・快適性、そして機能的にも先進国と肩を並べられる、内容が十分に備わった住まいとなります。
そうした中でビルダーが今後、どのような機能などを選択し、次の時代の新機軸として提案するかが、受注競争の激しい中で勝ち残るポイントになります。ユーザーの視線が必要です。
全室暖房の一般的な室温設定と換気システム。冬の日常生活における室温の範囲を示す |
地球環境貢献も意義
高断熱・高気密工法が一般化し、それ自体では受注面の優位性はなくなりました。が、しかし、性能をきちんと発揮していないケースが多々ある現実を踏まえると、少なくとも気密性能・換気風量・ホルムアルデヒド濃度の測定、さらには冬季暖房時の室内の快適性の目安となる温度について、各部屋の上下と部屋間の温度差、部屋ごとの温度設定、春・秋の一時期の補助暖房、換気の強弱や補完機能、湿度調整機構、暖房用エネルギー消費量など、快適性を見分けるデータを、自社のこれまでの施工実績から可能な範囲で示すことで信頼度を高め、他社との差別化を図ることが、最初のポイントです。
また、昨年から先進的な工務店などでは超高断熱のQ1.0住宅を建設していますが、ユーザーにとってどんなコスト・パフォーマンスが得られるのか、エネルギー消費量と二酸化炭素排出量の削減効果・経済性・快適性などを示すことです。灯油高騰の今は、それなりに経済性の理解を得られますが、将来200ミリ断熱を目指すためにも、ユーザーの立場にたったメリットを示すことで理解を得る必要があります。
一方、省資源・省設備、生ゴミ・雨水のリサイクル、さらには、太陽光・風力発電、ヒートポンプ・排熱利用などにより、地球環境負荷の軽減をはかり、省エネの一方で設備に依存しすぎている快適性の追求が、トータルエネルギーの消費量を増加させている現実に対処する視点が大切です。企業の社会的使命をアピールする効果もあります。
トータルエネルギーを抑制するには省エネとともに創エネルギー、省設備などが必要。選択肢はこんなにあります(BL.NO160次世代住宅を支える技術・広松猛) |
間取り配分見直す発想の転換が必要
持家一戸当たりの床面積は30年前に比べて50%、20年に比べても16%増えています。道内の新築持家の床面積は140m2台となりました。
一方、世帯構成は、少子高齢化が進み、30年前の一家族構成3.19人が、20年前には2.85人、現在は2.21人、30年前と現在では1人減りました。そして単身世帯が増加しています。
団塊世代のリタイア、親子関係の絆の変化などから、家族や住宅の形が多様化してきました。
マイホームは、今までの様な規模の大型化、ダイニング・キッチン・浴室のスペース拡大、個室の増加などは休止し、食品室など必要になってきた新たなスペースの確保が求められています。
美観にとらわれがちなデザイン力を、住宅性能の向上にともなう機能の充実と生活に密着した新たなニーズに目を向けるべきです。設計思想を見直す時期にきています。
これから順次、具体的に示していきます。 |