平成18年2月25日号から
灯油FC(燃料電池)を共同研究
新日石・北総研 寒冷地向けシステム開発へ

北総研実験住宅内で行われた起動式(左から北総研・成田泰雄所長、旭川市・菅原功一市長、上川支庁・高橋教一支庁長、新日石FC事業部・山口益弘部長)。右にあるのが発電ユニットで、中央後ろにあるのが貯湯ユニット
 新日本石油(株)(新日石)と道立北方建築総合研究所(北総研)ではこのほど、灯油仕様の家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの寒冷地への適用を目指して共同研究を開始。去る10日に旭川市内の北総研実験住宅内に設置したシステムの起動式が行われた。外気温がマイナス10℃以下になる地域における同システムの運転は全国でも初めて。

低硫黄の灯油使用
 今回の共同研究で使うシステムは、灯油と水を反応させて作った水素を酸素と化学反応させることにより電気を作り、同時に発電時の熱を回収して作ったお湯を暖房や給湯に利用する灯油仕様の家庭用燃料電池コージェネで、燃料電池発電ユニットと貯湯ユニットで構成されている。一般の灯油より硫黄分が大幅に少ない専用の「ENEOS FC灯油」を使用し、定格出力は1kW級。エネルギー効率は約80%。
 新日石では昭和61年から灯油から水素を作る研究を始め、昨年夏に家庭用燃料電池コージェネのプロトタイプを完成。今年3月に灯油仕様の家庭用燃料電池としては世界初の商品化を行い、平成18年度中に100台の設置を目指しているが、極寒冷地でも導入可能なシステムの開発を目的に、北総研との共同研究を実施することになった。
 システムは北方型住宅基準で建てられた延床面積約43坪の実験住宅内に設置され、今後、寒冷地住宅へのシステム設置方法や、寒冷地でのシステム設置に適した住宅性能及び要求水準、暖房機器を含む寒冷地住宅に適したシステム構成などを明らかにしていく。


灯油仕様燃料電池コージェネの仕組み
極低温化での性能検証
 新日石FC事業部の山口益弘部長は「マイナス10℃以下、高断熱・高気密住宅への設置という条件の中で、灯油仕様のシステムがどのような住宅にマッチし、寒冷地での暮らしにどの程度の効果があるのかを検証することで、外気温がマイナス10℃を下回っても使用できるシステムの開発につなげていきたい」と、寒冷地向けシステムの開発に意欲を示した。
 また、北総研の成田泰雄所長は「寒冷地における暖房・給湯の熱需要や電力負荷への対応能力などシステムの性能を把握するとともに、室内への設置方法や北方型住宅に組み込んだ時の仕様などについても検討していきたい」と話している。
 なお、今年3月に商品化されるシステムは、道内でも札幌、小樽、江別、函館、室蘭、苫小牧で提供。詳細は次号以降で改めて紹介する。



高性能・低価格に挑戦
秋田・知的オオタホーム こだわる、性能と施工品質

Q1.0住宅の外観


室内には地元でなければ手に入りにくい秋田杉の白太の羽目板。年月を経過するといい色に焼けてくるという


基礎天端から50ミリほど立ち上げた基礎断熱材。土台の木部熱橋を抑える
 秋田県大館市の?知的オオタホーム(太田国雄社長)は一定期間モデルハウスとして展示しその後売却する建売住宅でQ1.0住宅に挑戦。土地・建物で約2000万円という販売価格を念頭に、コストを抑えながら光熱費を大幅に削減できる住宅として差別化戦略を展開する。
 同社はこれまでも高断熱・高気密住宅で他社とは一線を画す性能にこだわった住宅を販売してきたが、徐々に全体の性能レベルも上がることで相対的な差が縮まったことに加え、ローコストの流れもあり、明確に差別化が図れる上に省燃費化によって住まい手の経済的負担と地球環境への貢献を明確にできるQ1.0住宅に挑戦することを決めた。
 大館市は地域区分がⅡ地域、凍結震度が45センチある北海道・函館並みの寒冷地。次世代省エネ基準はQ値で1.9Wだが、今回の物件は1.08W。断熱スペックは北海道のQ1.0住宅とほぼ同じで壁が高性能グラスウール16K100ミリ充てん、外側にフェノールフォーム35ミリ付加など。

断熱の納まりを徹底
 同社の物件の大きな特徴は、断熱スペックという仕様部分だけでなく、建て終われば見えなくなる各部位の納まりなどを徹底して丁寧に施工している点だ。
 まず、基礎工事ではどんな地盤でも表土をはいで地盤改良する。コンクリートは浮き型枠を使って布基礎とベタ基礎を一体で打ち込み。基礎断熱は土台の木部熱橋をできるだけ少なくするため、断熱材を土台が半分隠れるまで立ち上げておく。半分残すのは、外壁下地のOSBを土台まで釘打ちするため。
 内壁下地は防湿・気密シートを貼った上に胴縁を組み、このスペースに配線を回す。こうすることで断熱層内の配線と気密層の穴あけがほとんどなくなる。


(写真上・下)ホールダウン金物など熱橋部分はすべてウレタンで熱橋を防止する
 また窓は、夏を涼しく過ごす工夫としてドレーキップと引き違いを多く使う。引き違いは気密性能が低下するから使わないというビルダーもいるが、召しあわせのような明確な隙間は木材の腐れなどとは関係ないので、通風のために採用しているという。
 標準仕様は第3種換気だが、今回はフロア設置タイプの熱交換換気を1、2階に1台ずつ設置。暖房は電気蓄熱暖房器によるオール電化。年間の光熱費は17万9000円程度と試算されている。
 敷地面積は70坪、延床面積は36.6坪で、販売価格は2006万円。このうち土地費は400万円。建物の坪単価は税抜きでおよそ41万8000円になる。
 同社太田社長は「3年前に地場企業5社でオール電化住宅の展示を行ったところ反響もあり、ちょうどモデルハウスを建てようと計画しているところだった。室蘭工業大学鎌田紀彦先生の講演を聴き、まずはやってみようと挑戦した。いかにお金をかけないで、高省エネ住宅ができるかを発信することで、灯油がリッター75円の時代にユーザーの関心を高めていくことができると思う」としている。

防湿・気密シートの室内側、下地胴縁スペースに設置したコンセントボックス。気密コンセントボックスを使わなくてよくなるほか、配線による気密層の穴あけも少なくなる
主な断熱仕様とQ値 建設地:秋田県大館市内
基礎 押出スチレンフォームB3、75ミリ
高性能グラスウール16K100ミリ+フェノールフォーム35ミリ
屋根 高性能グラスウール16K200ミリ
樹脂サッシ・Low-Eアルゴンペア
換気 熱交換型セントラル換気
暖房 電気蓄熱暖房器(オール電化)
Q値 1.08W/m2・K
暖房エネルギー試算 788リットル(灯油換算)
C値 0.16 /?
※Q値は換気回数を0.2回/hで計算している


断熱さらにアップ
AWエモト ソシエⅢ発売

AL1620N(スタイリッシュベンチバス・北海道仕様)
 エア・ウォーター・エモト(株)は主力のシステムバスをモデルチェンジ、「Socie(ソシエ)Ⅲ」として新発売した。
 寒冷地用として培ってきた断熱技術をさらに高めた「まるごと断熱」でユニットバス全体と浴槽などの断熱性を強化した。
 バスタブの保温力を見ると、4時間後の温度低下が従来品で4℃のところ、新型の断熱フタタイプでは2℃しか下がらない。バスルーム全体の保温力も大きく高まっているという。
 また同社が力を入れているミストサウナを小型化。気軽にリラクゼーションを楽しめる。
 このほかバスタブにはベンチタイプのワイドタイプを用意したほか、フロアはステップパターンのない新デザインに変更、ドア下枠を脱着式のパーツにするなど随所に掃除がしやすい工夫を施した。
 ソシエⅢは1坪タイプで73万3950円(税込・北海道地区価格)から。写真はAL1620N(スタイリッシュベンチバス・北海道仕様)。本体標準価格は117万1800円(税込)、写真セット価格142万1490円(税込、浴室テレビ・窓・窓枠オプション品付属時)。
 問い合わせは同社札幌支店または最寄りの支店・営業所へ(札幌=白石区本通14丁目北1-26、Tel.011・863・1451)。

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