平成18年1月15日号から
電気温水セントラル 灯油と変わらぬ価格に
 
調査結果概要


1.オール電化住宅の設備費が高額とは言えない。
2.特に電気温水セントラル暖房は、灯油温水式との十分な価格競争力を持っている。
3.オイルパネルヒーターは普及状況が刻々と変化しており、ごく最近は価格面で競争力が生まれつつある。
4.温水セントラル暖房は各社ともに似通った価格が出ているが、電気蓄熱暖房器とヒートポンプについては価格差が発生している。
5.電気温水器は灯油給湯ボイラーと比べて割高感はほとんどない。
 本紙では昨年10月から12月にかけて、札幌の戸建住宅メーカーおよび工務店数社にオール電化を中心に暖房・給湯・調理の設備費用を見積価格で算出してもらった。それによると、オール電化住宅の設備費が高額であるとは言えず、特に電気温水セントラル暖房は、灯油温水セントラル暖房との価格差がほとんどなく、十分な価格競争力を持っていることがわかった。またオイルパネルヒーターは普及状況が刻々と変化しており、ごく最近は価格面で競争力が生まれつつある。

オール電化設備費を調査
 昨年4月から北海道電力?が電気温水セントラル暖房などに適した電気料金メニュー「ホットタイム22ロング」を値下げし、折からの灯油高騰も手伝ってオール電化暖房設備が大きな注目を集めている。ただ、住宅会社からは「オール電化設備(オール電化住宅)は高い」という声も聞く。そこで、実際にユーザーに提示する価格として、灯油セントラル暖房・給湯などの一般住宅と、どの程度のイニシャルコストの違いがあるのか、調査を行った。

基準は灯油暖房・給湯+IH
 まず、基準となる灯油温水セントラル暖房を見ておきたい。
 灯油温水セントラルは札幌圏では8割以上のシェアを占めるといわれるダントツの標準暖房だ。
 ただ、昨今の石油高騰によって住宅会社がユーザーに勧める暖房・給湯システムを、これまでの灯油一本から電気も加える動きに変化しつつある。この先のエネルギー事情や価格を考えたとき、灯油一本の提案では消費者の利益を害するおそれが出てきたという判断だ。
 また、熱源交換が可能な暖房・給湯システムを考えたいという話も聞くようになった。灯油から電気・ヒートポンプ、そして将来は燃料電池にも対応できることを挙げている。
 さらにフェイルセイフの考え方から、複数の熱源を用意しておく動きもある。たとえば電化に灯油ストーブ1台、灯油や電気の暖房に薪ストーブなど、温水セントラル暖房に電気蓄熱暖房器というのも1つの方法だ。
 給湯については全道的に灯油ボイラーによる水道直圧給湯システムが標準で、全国的にはセミオート、フルオートが増えているが、北海道内では標準型がほとんどといわれる。一方、電気温水器についてはセミオートを使うケースが比較的多い。
 調理器具について今回の調査では、1社が5対5と回答したほかは圧倒的にガスよりクッキングヒーターの採用比率が高く、9対1、または8対2で電気となった。
 
調査依頼項目(札幌・40坪4LDK、次世代省エネ基準相当)

呼称
パターン1
パターン2
パターン3
パターン4
パターン5
パターン6
パターン7
条件
オール電化住宅
セミ電化住宅
灯油暖房・給湯、IHヒーター 灯油暖房・給湯+都市ガスコンロ
電気蓄熱暖房 電気温水暖房 オイルパネルヒーター 空気熱源ヒートポンプ温水暖房
灯油暖房
暖房
電気蓄熱暖房器 電気ボイラー+パネルヒーター オイルパネルヒーター ヒートポンプ+パネルヒーター
灯油温水暖房
給湯
電気温水器(460Lマイコン,セミオート高圧力型)
灯油ボイラー(40,000kcal,セミオート)
調理
IHクッキングヒーター(IH=2,ラジエント=1)
ガスコンロ(都市ガス、ガラストップ)

調査結果
 電気蓄熱暖房器   見積もりにバラツキ
 電化暖房メニューの中では、基準となる灯油温水セントラルと比べ、さほど変わらない見積もりを出す会社がある一方で、大幅に高く見積もる会社があった。
 平均価格は139万3千円でオイルパネルヒーターよりわずかに高く、基準となる灯油温水セントラルとの価格差はおよそ35万円。 電気温水セントラル
価格差ほとんどなし
 基準となる灯油温水セントラルとの価格差は、現時点ではほとんどなくなったと言えそうだ。
 平均価格は110万8千円で灯油温水セントラルとの価格差は6万円。これは実質的に電設による割増分のみと言える。
 昨年4月以降、札幌圏を中心に電気温水セントラルが倍増に近い勢いで大きく伸びている。これだけ増えた理由は、ホットタイム22ロングの値下げと灯油高騰を背景に、住宅会社がいつも発注している暖房設備会社にボイラー変更を依頼するだけで電化できる手軽さがあるだろう。

 オイルパネルヒーター  最近は価格競争力も
 少なくとも札幌に関しては実際に採用した住宅会社はまだ少ないと感じた。平均価格は132万7千円だがバラツキも大きい。これまでの取材に加え今回の調査でわかったことは、割高感があるもののごく最近になって価格は下がり気味で、施工の簡便さ、維持費負担の軽減という付加価値を考えれば納得できない価格差ではないこと。
 なお、昨年の本紙10月25日号・オイルパネルヒーター特集の取材時点では、帯広・十勝地域を除きイニシャルが割高という声がほとんどだった。

 電気設備工事  まだ割高感が残る
 オール電化住宅は電気設備工事が高いという印象がある。そこで電気設備工事だけを取り出して比べた(1面にグラフ)。電気温水セントラルとヒートポンプは専用配線が熱源機だけとなるため、23~24万円程度とみてよさそう。
 実行価格については、200V専用配線が1万2千円から1万5千円という回答。100Vの配線工事と比べまだ高すぎるという意見も根強い。また分電盤や回路増設は200V配線以上の単価となるため、これも頭が痛いとよく聞く。

 空気熱源ヒートポンプ暖房  まだ普及前夜か
 ヒートポンプについては、5社のうち3社で調査できたが、まだ特殊な暖房という位置づけがみられる。
 平均価格は197万3千円で最も高く、かつ価格のバラツキが90万円もある。ただ最安値の会社は、電化の場合はヒートポンプが標準となっていることから、価格的にこなれていると考えられ、ある程度の普及段階に至れば140万円台の価格が可能だとも言える。

 電気温水器とクッキングヒーターのセミ電化  意外に割安
 1社は今年度、けっこうこのパターンが多いと話している。電気設備工事も含めた電気温水器の価格的なメリット、ランニングの割安感などがユーザーに受け入れられているとしている。
見積金額集計(暖房・給湯・調理設備、工事費込み)
呼 称
パターン1
パターン2
パターン3
パターン4
パターン5
パターン6
パターン7
条 件
オール電化住宅 セミ電化住宅 灯油暖房・給湯、IHヒーター 灯油暖房・給湯+都市ガスコンロ
電気蓄熱暖房 電気温水暖房 オイルパネルヒーター 空気熱源ヒートポンプ温水暖房 灯油暖房
札幌・工務店
\2,008,500
\1,685,900
\1,547,000
\2,639,000
\1,632,800
\1,723,410
\1,608,360
札幌・工務店
\1,471,400
\1,371,525
\1,842,000
\1,359,525
\1,306,525
\1,308,125
全国大手
\2,566,000
\1,745,000
\1,840,000
\1,487,000
\1,614,000
全国中堅
\2,064,000
\3,100,000
\1,882,000
\1,558,000
\1,561,200
中  堅
\1,731,100
\1,841,330
\1,726,850
\1,603,950
\1,666,950
札幌・工務店
\2,510,530
\1,399,200
平 均
\1,944,250
\1,741,551
\2,028,765
\2,527,000
\1,688,235
\1,535,777
\1,551,727
最高額
\2,566,000
\2,064,000
\2,510,530
\3,100,000
\1,882,000
\1,723,410
\1,666,950
最低額
\1,471,400
\1,371,525
\1,547,000
\1,842,000
\1,359,525
\1,306,525
\1,308,125

見積金額集計・暖房のみ(電気設備工事を含む)
呼 称
パターン1
パターン2
パターン3
パターン4
パターン5
パターン6
パターン7
条 件
オール電化住宅(電設含む) セミ電化住宅 灯油暖房・給湯、IHヒーター 灯油暖房(灯油工事含む)
電気蓄熱暖房 電気温水暖房 オイルパネルヒーター 空気熱源ヒートポンプ温水暖房 灯油暖房
札幌・工務店
\1,577,615
\1,077,500
\1,162,330
\2,189,704
同右
同右
\1,024,400
札幌・工務店
\1,045,000
\945,125
\1,415,600
同右
同右
\933,125
全国大手
\1,853,500
\1,032,900
同右
同右
\1,127,500
全国中堅
\1,278,000
\2,315,000
同右
同右
\1,097,000
中  堅
\1,097,800
\1,208,030
同右
同右
\1,093,550
道東・工務店
\870,000
札幌・工務店
\1,949,200
\990,000
平 均
\1,393,479
\1,108,311
\1,327,177
\1,973,435
同右
同右
\1,044,263
最高額
\1,853,500
\1,278,000
\1,949,200
\2,315,000
同右
同右
\1,127,500
最低額
\1,045,000
\945,125
\870,000
\1,415,600
同右
同右
\933,125


チャレンジ2006
木造ラーメン普及へ
グランドワークス 技術革新で需要を掘り起こせ

門型フレーム用の接合金物に梁を落とし込んでいるところ。この後、ドリフトピンで柱、梁双方の金物を接合する
 HS金物工法を全国展開する(有)グランドワークス(富山県滑川(なめりかわ)市、大倉憲峰社長)がこのほど、同工法のオプション仕様として販売を開始した『フレームシステム門型ラーメンフレーム構法』は、木造で鉄骨並み大開口大空間を手軽に実現する革新的技術。誰でも使えるオープン工法として北海道内でも協力プレカット工場がこの春から稼働するのを機に、早くも注目を集めている。

鉄骨並み大開口大空間
 「間口が狭い敷地で正面の開口部を大きく取りたい」「南面の開口部を最大限大きくしたい」「リビングを広くしたいのでスパンを飛ばしたい」…など、施主の要望は時にはわがままに思えることがある。木造でできることは限られているからだ。しかし、これらの要望に応えられる技術があるとしたらどうだろう。
 木造ラーメン構法がそれを可能にする。ピン構造の軸組でどうやってラーメン構造を実現するのか、実現できたとして費用は、施工性は。
 今回紹介する門型ラーメンフレーム構法には大きなポイントが2つある。1つは105×300ミリなどの在来軸組工法に広く使われる平角集成材を柱・梁に利用すること、そしてもう1つは専用の接合金物だ。
 平角材の柱と梁で門型にフレームを組むので、集成材のコストは一般の軸組と基本的に同じ。またその接合部はプレカット工場であらかじめ金物を取り付け、現場ではドリフトピンを打ち込むだけ。ただ、一般の接合金物と違うのは、半剛接合とするため柱と梁にラグスクリューを埋め込んで強力な引き抜き耐力を実現したこと。柱の脚部もラグスクリューを使い、接合金物を介して直接基礎と緊結する。
 最大スパンの目安は6メートル。105×300ミリの集成柱と105×450ミリの集成梁を使用した場合、スパン6メートル、高さ295センチの構造体で壁倍率10.8倍を記録した例もある。
 見えがかりにはほとんど金物が現れず、納まりは非常にキレイなのも特徴の1つだ。

金物は工場組込み
 門型ラーメンフレーム構法を使用すると、狭小敷地で3階建て住宅を建てる場合に1階を開口面積の広い車庫にするなど、従来は鉄骨造でないと実現が難しいと思われていた条件でも木造軸組で建築できる。また、大空間のリビングや大きな開口部をプランニングに取り入れることができ、設計の自由度を広げることにもなる。
 同構法ではプレカット工場で柱、梁にラグスクリュー金物をあらかじめ埋め込み、梁接合金物や柱脚金物を組み込んで現場作業の簡略化を図っている。

門型フレームを組み込んだ住宅。他の軸組材との取り合いも良い
施工現場で大きなスペースを必要としないので、狭小地でも作業に支障がない。
 ラグスクリュー金物のメリットはほかにもある。他のラーメン接合よりも柱や梁の断面サイズを小さくすることができるのだ。また、ほぞ金物とドリフトピンで接合する同社のHS金物工法を主体に大開口部が必要なところだけ門型ラーメン構法を採用することで建物全体のコストダウンも図ることができるという。

北海道で本格展開
 門型ラーメン構法を使用するには、構造計算が必須になるが、同社では構造計算は提携設計事務所に依頼するなど、確認申請書類作成をスムーズに進めるためのサポートを行っている。また、ビルダーや設計事務所を対象とした研修会を全国各地で開催し、ラーメン構造についての講義や設計手法を解説、木造ラーメン構法の普及に努めている。
 北海道では、今月28日に室蘭工業大学建設システム工学科教授の鎌田紀彦先生を講師に迎え、札幌市北区の札幌サンプラザで研修会を開催、今春からは提携プレカット工場が操業をスタートするなど道内で普及に向けた準備を進めている。
 同社の大倉憲峰社長は、「木造の可能性を広げるのがフレームシステム門型ラーメン構法だ。環境に優しい木造の利点を推し進め、今後は各地の地場産材の試験データを取りそろえ、全国各地の地産地消に向けた動きにも積極的に対応していきたい」と話している。地域材を使って今までの木造にできなかった自由な建築ができれば、地場ビルダーの活躍の場は広がる。在来木造の復権へ、新たな技術が後押しをする時代がそこまで来ている。

柱と梁の取り合い例。ラグスクリューが梁の中でしっかりと抵抗することで耐力を発揮し、梁断面の金物面積を最小限に抑えている

ラーメン柱は金物で直接基礎にとめつける。この時土台との関係は、柱勝ちのおさまりとなる

試読・購読はこちら

このページの先頭へ

運営サイト

株式会社北海道住宅新聞社
〒001-0029 札幌市北区北29条西4丁目2-1-201
tel.011-736-9811 fax.011-717-1770

当サイトで使用している写真およびテキストの無断転載を禁止します。

Copyright (c) 北海道住宅新聞社. All Rights Reserved.