平成16年4月5日号から
地場のイメージ一新
倶知安・千葉建設 大手に地域性や新技術で対抗
 (株)千葉建設(虻田郡倶知安町、千葉就男社長)では、大手の進出に対抗するため地場の住宅イメージを一新しようと、エゾマツの板張りとした外壁や、倶知安の気候風土に配慮した外構と大開口部、内外温度差を利用して換気を行うパッシブ換気システムの採用などによってこれからの倶知安の住まいを提案した住宅を建設した。

大きな三角屋根と深みのある色で塗装されたエゾマツの外装材が特徴的な外観。玄関前はカーポートと物置で豪雪と強い北・西風に対処した
外装材にエゾマツ
玄関まわりは雪と風に配慮

 ここ数年、倶知安町を含む後志管内郡部では、大手ハウスメーカーの進出が目立ち、目を引くデザインや最新設備をPRするなど、地場ビルダーにとっては大きな脅威になりつつあった。そこで同社は大手に対抗するために積極的に新しい技術を取り入れ、窓が小さく暖房・換気は必要最低限というこれまでの同管内の住宅のイメージを変えていくことが必要と考え、エゾマツの板材を使った外観デザインや眺めが良く冬期の日射取得にも有利な大開口部、エコロジーなパッシブ換気システムなどを取り入れたという。
 今回の物件は倶知安町内で施工した延床面積約45坪の在来木造2階建てで、2月に竣工した。 外観は三角屋根と、エゾマツの板材を積極的に使った外装仕上げが特徴。エゾマツの板材による外装仕上げは、地場産材を積極的に使っていきたいという同社のこだわりを表現したもので、130ミリ幅のものを縦張りし、ジョイント部分は上から30ミリ角のエゾマツ材を打ち付けることで凹凸のある豊かな表情を造り出している。
 また、玄関廻りには雪が多く、北風と西風が強いという倶知安の気候風土を考慮し、アプローチと一体になるカーポートを設けて除雪の負担を軽減したほか、北風と西風を遮る防風柵を兼ねた物置を設置。灯油タンクも物置の中に収めることで景観に配慮した。


灯油タンクは物置の中に収めて景観に配慮した

窓が小さいという倶知安の住宅のイメージを変えるため、3,500×1,600?という大きな窓を南面に設置
大きな開口部の可能性提案
 このほか、窓が小さいというイメージがある倶知安の住宅でも、大きな窓を付けることが可能であることを地元ユーザーに知ってもらおうと、南面の1階外壁部分には3500×1600ミリの窓を設置。冬期は積極的に日射を取り入れる一方、夏期は1800ミリ出した軒によって日射を遮り、室内のオーバーヒートを防止する。このサイズでLow-E仕様は市販されていないため、通常のペアガラス仕様となっているが、窓下の床面から温められた外気が給気されるため、「この冬は特にダウンドラフトなどで寒さを感じることはなかった」(ユーザー談)という。

パッシブ換気を導入
環境負荷の低減を目指す

 パッシブ換気は同社建築課の北野原伸行課長が道立北方建築総合研究所の庁舎に採用されているのを見て、「自然の原理を応用して環境に優しい換気ができる」と興味を持ったのがきっかけとなって初採用。
 新鮮外気を基礎断熱した床下空間に取り入れ、放熱器で温めてから1階は床面のガラリから、2階へは1階間仕切り壁内と1階天井ふところを経由して給気、汚染空気は屋根に設置した排気塔から排出する。1階床下に立ち上がる給気用塩ビパイプには温度に応じて開閉量を調節する給気グリルを設置して温度制御、排気塔の入口には湿度に応じて開閉量を調節する排気グリルを設置して湿度制御を行う。
 建築基準法では通年でパッシブのみの換気計画は認められていないため、1、2階のトイレなど4ヵ所に最大73立方メートル/時の湿度センサー付きパイプファンを設置し、室内外の温度差が大きい冬期はパッシブ換気とパイプファンのセンサー運転によるハイブリッド換気、室内外の温度差が小さい夏期はパイプファンの常時運転による第三種換気とする。
 パッシブ換気の採用に当たっては空気質を維持するために、土台は防腐処理が不要なヒバ材、床や壁の下地材は全てF☆☆☆☆対応品とし、地中に埋設した塩ビ管や土間(抑えコンクリート)の養生は、汚れやゴミの付着等がないように、特に気を遣ったとのこと。
 同社の北野原課長は「倶知安の住宅は保守的なところがあり、新しい技術を取り入れていこうという気運がなかなか高まっていかないが、それでは大手に負けてしまう。これからは地場ビルダーも新しいデザインや技術に取り組むことで、より快適な住宅を地元のユーザーに提案していくことが必要だ」と話している。

床下から暖めた新鮮外気を給気する1階床のガラリ
天井に設置された
湿度制御型の排気グリル
製品プロフィール
製品名 アエレコ湿度感知制御型自然換気口
(GNH-792JA)
部位等 排気グリル
価格 14,300円/個
問い合わせ ハウスプロジェクト
秋田県北秋田郡田代町長坂字下岱78-1
Tel.0186-47-3300

製品名 サーモフレッシュ(150φ)
部位等 給気グリル
価格 19,000円/個
問い合わせ 森永エンジニアリング?
札幌市中央区南1条東1丁目
011-251-9811
http://www.morieng.co.jp/
製品名 アクアネスト40/80
部位等 床ガラリ
価格 1,000円/枚
問い合わせ ジェイベック?
札幌市東区東苗穂1条2丁目3-9
011-781-8201
http://www.jbeck.co.jp/
製品名 トップホッド
部位等 排気塔の頭部
価格 14,000円/個
問い合わせ ジェイベック?
札幌市東区東苗穂1条2丁目3-9
011-781-8201
http://www.jbeck.co.jp/
製品名 サイレンサー
部位等 欄間のガラリ
価格 5,500円/個
問い合わせ ジェイベック?
札幌市東区東苗穂1条2丁目3-9
011-781-8201
http://www.jbeck.co.jp/
 

こだわり層から強い支持
ドライウォール
第13回 エス・ケー研究室

アイランドキッチンは中高年代のユーザーから好評
外壁にも壁一体工法
塗装仕上げ中高年から人気

 主に戸建住宅の設計を手掛けているエス・ケー研究室(札幌市、志賀克己代表)では、室内を塗り壁材など質感のある素材で仕上げるためには、耐久性や強度に優れた下地が必要ということからドライウォール工法を採用している。
 3年ほど前に建設した住宅にドライウォール工法の塗装仕上げを初採用し、オープンハウスとして公開したところ150名ほどの見学者が訪れた。クロス貼りとは表情や質感の異なる室内を目にしたユーザーからは「普通の住宅と比べて雰囲気が違うのはなぜだろうか」という声があがり、詳しい説明を聞いたユーザーはみな関心を持ってくれたという。
 オープンハウスの室内は、リビング全体を見渡すことができるアイランドキッチンを採用。キッチンをインテリアの一つとして見せるために、パブリックスペースをオープンな空間としている。このような間取りと塗装で仕上げた空間は、中高年代のユーザーから好評だったという。
 ただ、小さい子供を持つ家庭では、子供が遊びながら壁を触ったときに付いてしまう手あかの汚れを心配している。塗装で仕上げた壁はビニールクロスよりも汚れを取りにくいという欠点があるので、小さい子供がいる家庭には塗装仕上げを勧めないという。
 同社ではこのほど完成した建物の外壁の一部分に、ドライウォール工法と同じ継ぎ目処理を施した。施工は、通気胴縁の上にセメントボード・デラクリートを張ってから継ぎ目処理を施し、最後に左官で仕上げている。
 志賀代表は「以前は、薄い布を使ってボードの継ぎ目を処理する寒冷紗工法を取り入れていたが、耐久性や強度ではドライウォール工法が優れていると思い採用するようになった。ドライウォールは若い年代層から好まれているが、予想以上に年配の方も興味を持っている人が多い」と話している。

窓廻りの部分もドライウォール工法と同じ
継ぎ目処理を施した




新素材の薄型金物
タナカ 上から面材の直張り可能
 (株)タナカ住宅資材事業部では、自動車などに使われる軽くて強度の高い高張力鋼板を使用した、Z山形プレートと同等性能を持つ建築金物「フラットプレートSD」を発売した。
 柱と横架材の接合に使われるZ山形プレートなどのかど金物は、通常は厚さが二ミリ以上あるため、金物を施工した後に耐力用面材を直接張ることができなかった。「フラットプレートSD」は、新日本製鐵(株)が開発した高張力鋼板を採用、強度を保ちながら板厚0.6ミリの薄手化に成功。ビス穴はエンボス加工をしてビス頭が金物の表面から飛び出ないようにしているため、合板など耐力面材の直貼りが可能になった。また表面処理は、亜鉛とアルミ、マグネシウムなどからなる高耐食性めっき鋼板『スーパーダイマ』を採用、従来の亜鉛めっきよりも格段に錆びにくくなった。
 なお、日本住宅・木材技術センターで告示1460号(は)適合品の認定を受けており、Z山形プレートVPの代わりに使用することができる。コストも同等の性能を持つステンレス金物より安い。
 施工は、商品に付属する専用角ビットビス6本をとめるだけ。サイズは50×120×0.6ミリ。設計価格は、150円。問い合わせは、同社営業本部(茨城県新治郡新治村大畑702-1、Tel.029・830・6116)へ。

フラットプレートSDの施工例

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