平成16年3月25日号から
雪と寒さの克服に挑戦
“新住協村”プロジェクトが進行中
 寒さが厳しい時でも暖かく、雪かきも必要ない住まいの実現へ向けて、新木造住宅技術研究協議会旭川支部の会員工務店が取り組んでいる。新住協村と呼ばれるこのプロジェクトは旭川市に隣接する鷹栖町のシンフォニータウンで進められているもので、国の次世代省エネルギー基準を上回る断熱性能や屋根の工夫による雪対策に加えて、同協議会顧問の室蘭工業大学・鎌田紀彦先生が監修する五棟は、アプローチ兼用のカーポート、伝統的な在来工法のデザインや防暑対策、品質の高い収納システムなども共通して採用。先月下旬には現場見学会も行われた。

ダブル断熱とし、3寸5分の無落雪緩勾配屋根を採用したモデルハウスの施工現場
5社は鎌田先生監修
全棟次世代上回る断熱性

 今回のプロジェクトは、新住協の技術の集大成をユーザーに提案する場と位置付けており、参加工務店は、會田建設(株)(會田敏雄社長)、(株)芦野組(芦野和範社長)、大城建設(株)(大城功社長)、昭和木材(株)住宅事業部(橋秀樹社長)、(有)新濱建設(新濱壽男社長)、(有)東光工務店(橋本敏昭社長)、(有)豊島建設(豊島孝男社長)、ヨシダホーム((株)吉田建設社、吉田寛社長)の8社。
 8社共通仕様として、断熱性能については、次世代省エネ基準の熱損失係数1.6ワットを上回る1.45ワット以下としており、いずれも軸間充てん+外張り付加のダブル断熱を採用。雪対策については、雪止め金具などを使った無落雪勾配屋根または一般的な無落雪M型屋根とすることで、敷地内の雪処理負担を軽減している。このほかにも共通のシンボルツリーなど、街並みとしての統一感も表現する予定だ。
 8社のうち、大城建設、昭和木材住宅事業部、豊島建設を除く五社は鎌田先生の監修で施工。きれいなプロポーションの在来木造住宅を道内で提案するため、緩勾配の屋根と真壁を共通イメージとしている。

鎌田先生監修の5社は、PFP工法を採用し、軸間には真壁用に85ミリ厚で高さと幅も特注の高性能グラスウール24Kを充てん。現場の廃材を減らすために石膏ボードも5社共通サイズの特注品としている

カーポートとアプローチを一体化して除雪の負担を解消。夏期は妻壁に設けた高窓から室内の熱気を抜く考えだ((株)芦野組の立面図より)
伝統的な在来木造
無落雪の緩勾配屋根と真壁

 鎌田先生監修の5社の仕様を見ていくと、構造はプレカットの集成材と、工場で製作された間柱や縦横の受け材などの壁パネルセット、接合金物、造作材で構成されるPFP工法Mark3で施工。同工法の屋根は5寸勾配を標準としているが、今回は3寸5分の緩勾配とし、雪止め金具やアスファルトシングルなど摩擦係数の高い屋根材を使って無落雪化。本州の伝統的な在来工法のプロポーションと雪対策を両立させている。
 真壁とするにあたっては、軸間に充てんする断熱材に高性能グラスウール24K85ミリ厚の特注品を使用してちりを確保。外張り付加断熱材は、グラスウールボードやロックウールボードなど5社それぞれ異なるが、ヨシダホームでは今回初めて縦桟用のサンボード(高性能グラスウールボード48K)50ミリを採用。縦桟を通気胴縁兼用とすることで施工の合理化を図っている。
 なお、軸間充てん用のグラスウールと内装下地用の石膏ボードは、現場の廃材を減らすために幅・高さとも5社共通の天井高やモジュールに合わせてプレカットされている。

カーポートで除雪軽減
アプローチと一体化


無垢の木を加工した部材などを現場で組み立てるPFP工法Mark3の収納システムの例
 雪対策では、緩勾配の無落雪屋根に加えて、カーポートの設置がポイント。アプローチと一体で屋根を掛け、車庫という閉鎖的なものではなく、木造で見通しの利くシースルーな形とすることにより、コストを抑えながら住宅とのトータルデザインも優れたものにしている。
 このほか、南北に対し四五度傾いた敷地の北側に寄せて建物を配置することで敷地を有効利用。カーポートを建物前面に置いても日当たりが良く、カーポートを含めて車二台の駐車スペースを確保でき、雪処理も容易な外構空間を実現する。

防暑対策に高窓など
収納は木のセットシステム

 防暑対策では、内開き・内倒しのドレーキップ窓を採用し、夏には内倒しとすることで夜間や不在の時でも通風できるようにすると同時に、二階には高窓を設けて室内の熱気を抜く考え。なお、開口部については、従来より引き違い窓の性能が高くなってきていることもあり、掃き出し窓を積極的に採用。そのため、放熱器が出入りの邪魔にならないよう、床下暖房としている。
 収納はPFP工法Markの収納システムを利用し、あらかじめ無垢の木を加工した部材と扉、引き出し、接合金物を使って、洋室でも和室でも使いやすい機能的なものを現場で組み立てる。容易な施工で高品質な無垢の木の収納を実現できるので、収納にも無垢の木を使いたいというニーズに、手間とコストをかけることなく応えることが可能だ。
 室内空間に関しては、特に二階は柱を短くして軒の高さを抑えたので外からは天井が低くなっているように見えるが、屋根断熱で勾配天井とするなど、開放感ある空間を無駄なく造っているほか、高齢化対応として一階には寝室になるスペースを設け、車イスでの行動を可能にするなどの配慮を行っている。暖房給湯用ボイラーも、断熱ケースの中に入れて外で壁掛けすることにより、ユーティリティーなどに畳一枚分のゆとりを作り出し、同時に夜間に気になることがある運転音も遮断した。
 室蘭工大・鎌田先生は「道内ユーザーにレベルの高い地場工務店に住宅建設を頼むことは、マイホームを建てるにあたって非常に有力な選択肢になることを訴えていきたい」と話している。 

技術審査証明を取得
J建築システム・JBRA-1工法 金物代替使用の道が開ける
 柱と土台・梁など木造軸組接合部分を、高い引張強度を持つアラミド繊維シートで補強する「JBRA(ジャブラ)-1工法」がこのほど、日本建築センターの「建築物等の施工技術及び保全技術・建設技術審査証明」を取得。これにより、優れた引張強度や耐久性、施工性が公的に証明され、既存住宅の増改築や新築で金物の代わりに同工法を使える道が開けた。
 同工法は、J建築システム(株)(札幌市、手塚純一社長・工博)が開発したもので、高強度・高弾性の「全芳香族ポリアミド繊維」を一方向あるいは二方向に配列した幅10センチ、長さ30~80センチのシートを、柱と土台・基礎や柱と横架材、筋交いなどの接合部の上に専用接着剤で貼り、構造材と一体化させることで、構造材を傷つけることなく簡易的な構造補強を可能にした工法。増改築での耐震補強のほか、新築時にも同工法を金物と併用することで構造体に余力を付加できる。
 同工法が今回取得した技術審査証明は、民間で開発された様々な新しい技術について、適正かつ迅速な市場導入を図るために日本建築センターがその性能等を審査・証明したもの。シート長さ30センチで片面貼りした時の引張定着強度は17kN以上、山形プレートなどの金具併用の場合は同18kN以上、両面貼りの場合は同33kN以上などと判断されており、容易な施工や十分な耐久性も確認済みとなっている。

軸組接合を簡素化
構造材の断面欠損も少なく

 建築基準法に規定されていない工法であったため、これまでは金物と同等以上の強度があると実験等で確認されていても、実際の現場で金物の代わりとしては使えなかった。しかし、技術審査証明書によって、例えば15kNのホールダウン金物に代えてシートを片面貼りすれば、金物はいらない。これにより、金物の多用による構造材の断面欠損や、複雑な納まりによる施工のしにくさといった現在の建築基準法の問題点を解消することも可能になる。
 実際には金物の代わりとして同工法の使用を認めるかどうかは建築主事の判断に委ねられるが、最終的には設計者の判断で使用可能になると、同社では見ている。
 今回の技術証明書は来月半ば頃までに各行政庁に届く予定で、同社ではそれまで札幌市などの確認申請担当部署に説明を行うと同時に、今月中には標準化した設計・施工方法をまとめる予定。
 同工法は、シート(長さ30センチ60枚、同40センチ・80センチ各10枚)と専用接着剤(200グラム)12パック、施工用具を含めたパッケージでオープン販売されており、部材コストは1棟あたり約5~6万円となる。
 同社の手塚社長は「金物とうまく併用すれば構造材の断面欠損を最小限に抑えられ、納まりもシンプルになる。現在の金物一辺倒という軸組接合の考え方を変えるきっかけになるのではないか」と話している。
 同工法の問い合わせは同社(Tel.011・573・7779、Fax.011・573・7811、担当・設計事業部山下)へ。
アラミド繊維シートで基礎・土台・柱を一体化した施工サンプル

シール材無料プレゼント
アルデ社 発売記念、20名に
 (株)アルデエンジニアリングでは、開口部などの消音用の戸当たりとして使える気密材「すき間モヘアシール」の販売を記念して、同製品の無料プレゼントキャンペーンを実施している。
 同製品は気密材メーカーの槌屋ティスコ(株)が製造しているもので、モヘアとベースを一体化させソフトで復元力に優れた製品。ドアや引き戸の隙間にフィットし、ホコリや風、騒音の侵入を防ぐとともに、戸当たりにつけてドアを閉めるときのバタン音を抑える効果もある。
 キャンペーンの対象は同製品のパッケージ品。製品規格は幅6ミリ×高6ミリ×長2メートルで、先着20名にそれぞれ10パッケージをプレゼント。
 希望者は官製はがきに郵便番号、住所、氏名、年齢、職業、電話、掲載紙名を記入の上、アルデ社「すき間モヘアシール」プレゼント係まで応募のこと。〆切は4月15日(当日消印有効)。
 製品はパッケージ品のほか、100メートル巻の業務用もある。
 応募先・問い合わせは〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町2-8ブロス大伝馬、Tel.03・5623・9331。

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