雪と寒さの克服に挑戦 |
“新住協村”プロジェクトが進行中 |
寒さが厳しい時でも暖かく、雪かきも必要ない住まいの実現へ向けて、新木造住宅技術研究協議会旭川支部の会員工務店が取り組んでいる。新住協村と呼ばれるこのプロジェクトは旭川市に隣接する鷹栖町のシンフォニータウンで進められているもので、国の次世代省エネルギー基準を上回る断熱性能や屋根の工夫による雪対策に加えて、同協議会顧問の室蘭工業大学・鎌田紀彦先生が監修する五棟は、アプローチ兼用のカーポート、伝統的な在来工法のデザインや防暑対策、品質の高い収納システムなども共通して採用。先月下旬には現場見学会も行われた。
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ダブル断熱とし、3寸5分の無落雪緩勾配屋根を採用したモデルハウスの施工現場 |
5社は鎌田先生監修
全棟次世代上回る断熱性
今回のプロジェクトは、新住協の技術の集大成をユーザーに提案する場と位置付けており、参加工務店は、會田建設(株)(會田敏雄社長)、(株)芦野組(芦野和範社長)、大城建設(株)(大城功社長)、昭和木材(株)住宅事業部(橋秀樹社長)、(有)新濱建設(新濱壽男社長)、(有)東光工務店(橋本敏昭社長)、(有)豊島建設(豊島孝男社長)、ヨシダホーム((株)吉田建設社、吉田寛社長)の8社。
8社共通仕様として、断熱性能については、次世代省エネ基準の熱損失係数1.6ワットを上回る1.45ワット以下としており、いずれも軸間充てん+外張り付加のダブル断熱を採用。雪対策については、雪止め金具などを使った無落雪勾配屋根または一般的な無落雪M型屋根とすることで、敷地内の雪処理負担を軽減している。このほかにも共通のシンボルツリーなど、街並みとしての統一感も表現する予定だ。
8社のうち、大城建設、昭和木材住宅事業部、豊島建設を除く五社は鎌田先生の監修で施工。きれいなプロポーションの在来木造住宅を道内で提案するため、緩勾配の屋根と真壁を共通イメージとしている。
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鎌田先生監修の5社は、PFP工法を採用し、軸間には真壁用に85ミリ厚で高さと幅も特注の高性能グラスウール24Kを充てん。現場の廃材を減らすために石膏ボードも5社共通サイズの特注品としている |
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カーポートとアプローチを一体化して除雪の負担を解消。夏期は妻壁に設けた高窓から室内の熱気を抜く考えだ((株)芦野組の立面図より) |
伝統的な在来木造
無落雪の緩勾配屋根と真壁
鎌田先生監修の5社の仕様を見ていくと、構造はプレカットの集成材と、工場で製作された間柱や縦横の受け材などの壁パネルセット、接合金物、造作材で構成されるPFP工法Mark3で施工。同工法の屋根は5寸勾配を標準としているが、今回は3寸5分の緩勾配とし、雪止め金具やアスファルトシングルなど摩擦係数の高い屋根材を使って無落雪化。本州の伝統的な在来工法のプロポーションと雪対策を両立させている。
真壁とするにあたっては、軸間に充てんする断熱材に高性能グラスウール24K85ミリ厚の特注品を使用してちりを確保。外張り付加断熱材は、グラスウールボードやロックウールボードなど5社それぞれ異なるが、ヨシダホームでは今回初めて縦桟用のサンボード(高性能グラスウールボード48K)50ミリを採用。縦桟を通気胴縁兼用とすることで施工の合理化を図っている。
なお、軸間充てん用のグラスウールと内装下地用の石膏ボードは、現場の廃材を減らすために幅・高さとも5社共通の天井高やモジュールに合わせてプレカットされている。
カーポートで除雪軽減
アプローチと一体化
無垢の木を加工した部材などを現場で組み立てるPFP工法Mark3の収納システムの例 |
雪対策では、緩勾配の無落雪屋根に加えて、カーポートの設置がポイント。アプローチと一体で屋根を掛け、車庫という閉鎖的なものではなく、木造で見通しの利くシースルーな形とすることにより、コストを抑えながら住宅とのトータルデザインも優れたものにしている。
このほか、南北に対し四五度傾いた敷地の北側に寄せて建物を配置することで敷地を有効利用。カーポートを建物前面に置いても日当たりが良く、カーポートを含めて車二台の駐車スペースを確保でき、雪処理も容易な外構空間を実現する。
防暑対策に高窓など
収納は木のセットシステム
防暑対策では、内開き・内倒しのドレーキップ窓を採用し、夏には内倒しとすることで夜間や不在の時でも通風できるようにすると同時に、二階には高窓を設けて室内の熱気を抜く考え。なお、開口部については、従来より引き違い窓の性能が高くなってきていることもあり、掃き出し窓を積極的に採用。そのため、放熱器が出入りの邪魔にならないよう、床下暖房としている。
収納はPFP工法Markの収納システムを利用し、あらかじめ無垢の木を加工した部材と扉、引き出し、接合金物を使って、洋室でも和室でも使いやすい機能的なものを現場で組み立てる。容易な施工で高品質な無垢の木の収納を実現できるので、収納にも無垢の木を使いたいというニーズに、手間とコストをかけることなく応えることが可能だ。
室内空間に関しては、特に二階は柱を短くして軒の高さを抑えたので外からは天井が低くなっているように見えるが、屋根断熱で勾配天井とするなど、開放感ある空間を無駄なく造っているほか、高齢化対応として一階には寝室になるスペースを設け、車イスでの行動を可能にするなどの配慮を行っている。暖房給湯用ボイラーも、断熱ケースの中に入れて外で壁掛けすることにより、ユーティリティーなどに畳一枚分のゆとりを作り出し、同時に夜間に気になることがある運転音も遮断した。
室蘭工大・鎌田先生は「道内ユーザーにレベルの高い地場工務店に住宅建設を頼むことは、マイホームを建てるにあたって非常に有力な選択肢になることを訴えていきたい」と話している。
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