持込み家具が盲点に
新法施行後のVOC調査・塗料・接着剤は適量守る
シックハウス新法施行後のVOC調査結果におけるいくつかの特徴的な事例と、ホルムアルデヒド以外のVOCの低減化について、坂本教授は次のように語っている。
「住宅AのVOC測定結果からは、建材全てにF☆☆☆☆を使い、塗料や接着剤などの使用量もきちんと対応すれば、アセトアルデヒドを含めて指針値以下に抑えられることがわかった。しかし、同じ工務店が建てた住宅Bは、アセトアルデヒドの濃度が高い。調べてみると、測定前に建具類を室内に入れたのが原因という結論になり、建材等ばかりでなく、家具などにも十分注意する必要があることがわかる。
トルエンとキシレンの濃度が高かった住宅Cは、外装材にかなりの量の塗料を使っており、その塗料から放散されたトルエン・キシレンが室内に侵入したことが原因と考えられ、外装材を含めて塗料関係には注意しなければならない。なお、トルエン・キシレンはホルムアルデヒドより抜けやすいが、建材の裏側にこれらを含むものが使われた場合には抜けにくくなることも考えられるので、塗料などは細心の注意を払って施工することが求められる。
住宅Dもトルエンとキシレン、アセトアルデヒドの濃度が非常に高い。これはトラブルがあって床のフローリングを貼り直した時にボンド類を大量に使ったことと、階段に油性ニスをしっかり塗ったことが原因と思われる。また、同じボンド類でも、使う製品と量によっては指針値を超えることがある。この点を解決できれば指針値をクリアできると思う。
ホルムアルデヒド以外のVOCは、主に塗料・接着剤が濃度に影響するので、これらはできる限り施工に注意する必要がある。特に多量に使うと濃度が高くなるので気を付けたい。造作した棚や建具、浴室のコーキング剤やパネルヒーターの塗料も発生源となり得るので注意すべきだ。
建材等の適切な選択と施工はVOC濃度を指針値以下とするために欠かせないが、それだけで完全にVOCを抑えることはできないので、換気回数0.5回/時以上の換気システムの導入も不可欠。できれば竣工後にベークアウトを一週間から十日ほど行いたい。ベークアウトはユーザーが早く入居したい場合などもあり、実施が難しい面もあるが効果はある。
このほか、VOCを測定した結果、特定の化学物質の濃度が高かった場合、その原因を特定できることがあるので、測定はできるだけ行ったほうが良い。
工務店だけでなく、ユーザーも注意しなければならないことがある。入居後に持ち込む家具やカーテン、ワックス、化粧品などもVOCの発生源となるので注意が必要だし、煙草は換気回数を増やしても室内から抜けにくいので、できれば室内での喫煙は避けること。暖房器具も空気を汚さないものを選ぶことが大切。さらにシックハウス症候群や化学物質過敏症の発症を防ぐには、建材等だけでなく、食べ物もレトルトものやインスタント食品を避け、保存剤や着色剤の成分表示、野菜や果物の農薬使用などについて確認するなど、食習慣を改めることが求められる」。 |
シックハウス新法施行直後のVOC調査結果
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ホルム
アルデヒド |
トルエン |
エチル
ベンゼン |
キシレン |
スチレン |
アセト
アルデヒド |
パラジクロ
ロベンゼン |
住宅A
|
0.011
|
0.018
|
0.007
|
0.086
|
0.001
|
0.013
|
0.008
|
住宅B
|
0.030
|
0.031
|
0.014
|
0.015
|
0.001
|
0.063
|
0.000
|
住宅C
|
0.014
|
0.083
|
0.223
|
0.280
|
0.000
|
0.013
|
0.003
|
住宅D
|
0.022
|
0.281
|
0.061
|
0.149
|
0.0002
|
0.057
|
0.0003
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厚生労働省
指針値
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0.080
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0.070
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0.880
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0.200
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0.050
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0.030
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0.040
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※白ヌキ数字は指針値をオーバーしている例
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シックハウス新法施行後に行ったVOC調査結果の代表的な事例
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