平成16年2月5日号から
アセトアルデヒド対策が急務
北見工大・坂本先生 新法施行後の住宅調査
 「基準法改正後はアセトアルデヒドが要注意物質に―」。1月19・20日に行われたNEWソトダン住宅研究会(川本清司会長、北欧住宅研究所所長)の例会で「シックハウス新法施行後の室内VOCの調査報告」と題して講演を行った北見工業大学機械システム工学科の坂本弘志教授(工博)は、ホルムアルデヒドやトルエンなどが厚生労働省の指針値をオーバーした住宅は施行前より減っているものの、アセトアルデヒドだけは逆に指針値をオーバーする住宅が増えていることを明らかにした。


北見工大・坂本教授
ホルムなど減少
アセトは半数が指針オーバー

 坂本教授がシックハウス新法施行後に行ったVOC調査は、札幌・北網地区の40棟。竣工後1週間以内に実施した。気密性能については新法施行前の調査と同様、ほとんどが相当隙間面積1.0平方センチ/平方メートル以下の高気密住宅で、換気回数は全棟0.5回/時以上となっている。
 測定を行った化学物質は七種類で、厚生労働省の指針値をオーバーした住宅の割合を新法施行前と比べると、ホルムアルデヒドが三・三%から0・0%、トルエンが49.2%から20.7%、キシレンが16.4%から7.1%、エチルベンゼンが34.4%から3.6%、スチレンが23.7%から0.0%、アセトアルデヒドが40.9%から52.8%、パラジクロロベンゼンが6.6%から4.5%と、アセトアルデヒドを除く全ての化学物質に関して指針値をオーバーした住宅の割合が減少。
 中でもホルムアルデヒドについては、指針値よりさらに低い0.05ppm未満の住宅が、新法施行前の約73%を大きく上回る約97%となっており、ホルムアルデヒドを出さない建材等の使用が進んでいることは明らか。
 しかし、その一方で逆に新法施行前よりも指針値を上回る住宅が多かったアセトアルデヒドは、2軒に1軒が指針値をオーバーしている。
 この結果について坂本教授は「新法施行後、ホルムアルデヒドが指針値を超えた住宅は全くなく、トルエンやキシレンもその割合は減っていることから、建材等のメーカーはホルムアルデヒドだけでなく、他の化学物質もかなり低減化した製品を出してきていることがわかる。
 しかし、ホルムアルデヒドの親戚と言えるアセトアルデヒドは、指針値をオーバーする住宅が増えている。ホルムアルデヒドが規制されたため、代替として同様の性質であるアセトアルデヒドを使用した結果と思われる。接着剤などでホルムアルデヒドの代わりにアセトアルデヒドが使われてきているのではないか。また、トルエンも2割の住宅は指針値を超えていることになるので、心配ないと思ってもらっては困る」と話している。
 また、同教授はあわせて「アセトアルデヒドはホルムアルデヒドと同じく、0.5回/時の換気を行っていても濃度が低くなるのに時間がかかる。今後はアセトアルデヒド対策が非常に重要で、早急に規制を行う必要がある」と警告する。
持込み家具が盲点に
新法施行後のVOC調査・塗料・接着剤は適量守る

 シックハウス新法施行後のVOC調査結果におけるいくつかの特徴的な事例と、ホルムアルデヒド以外のVOCの低減化について、坂本教授は次のように語っている。
 「住宅AのVOC測定結果からは、建材全てにF☆☆☆☆を使い、塗料や接着剤などの使用量もきちんと対応すれば、アセトアルデヒドを含めて指針値以下に抑えられることがわかった。しかし、同じ工務店が建てた住宅Bは、アセトアルデヒドの濃度が高い。調べてみると、測定前に建具類を室内に入れたのが原因という結論になり、建材等ばかりでなく、家具などにも十分注意する必要があることがわかる。
 トルエンとキシレンの濃度が高かった住宅Cは、外装材にかなりの量の塗料を使っており、その塗料から放散されたトルエン・キシレンが室内に侵入したことが原因と考えられ、外装材を含めて塗料関係には注意しなければならない。なお、トルエン・キシレンはホルムアルデヒドより抜けやすいが、建材の裏側にこれらを含むものが使われた場合には抜けにくくなることも考えられるので、塗料などは細心の注意を払って施工することが求められる。
 住宅Dもトルエンとキシレン、アセトアルデヒドの濃度が非常に高い。これはトラブルがあって床のフローリングを貼り直した時にボンド類を大量に使ったことと、階段に油性ニスをしっかり塗ったことが原因と思われる。また、同じボンド類でも、使う製品と量によっては指針値を超えることがある。この点を解決できれば指針値をクリアできると思う。
 ホルムアルデヒド以外のVOCは、主に塗料・接着剤が濃度に影響するので、これらはできる限り施工に注意する必要がある。特に多量に使うと濃度が高くなるので気を付けたい。造作した棚や建具、浴室のコーキング剤やパネルヒーターの塗料も発生源となり得るので注意すべきだ。
 建材等の適切な選択と施工はVOC濃度を指針値以下とするために欠かせないが、それだけで完全にVOCを抑えることはできないので、換気回数0.5回/時以上の換気システムの導入も不可欠。できれば竣工後にベークアウトを一週間から十日ほど行いたい。ベークアウトはユーザーが早く入居したい場合などもあり、実施が難しい面もあるが効果はある。
 このほか、VOCを測定した結果、特定の化学物質の濃度が高かった場合、その原因を特定できることがあるので、測定はできるだけ行ったほうが良い。
 工務店だけでなく、ユーザーも注意しなければならないことがある。入居後に持ち込む家具やカーテン、ワックス、化粧品などもVOCの発生源となるので注意が必要だし、煙草は換気回数を増やしても室内から抜けにくいので、できれば室内での喫煙は避けること。暖房器具も空気を汚さないものを選ぶことが大切。さらにシックハウス症候群や化学物質過敏症の発症を防ぐには、建材等だけでなく、食べ物もレトルトものやインスタント食品を避け、保存剤や着色剤の成分表示、野菜や果物の農薬使用などについて確認するなど、食習慣を改めることが求められる」。

シックハウス新法施行直後のVOC調査結果

  ホルム
アルデヒド
トルエン エチル
ベンゼン
キシレン スチレン アセト
アルデヒド
パラジクロ
ロベンゼン
住宅A
0.011
0.018
0.007
0.086
0.001
0.013
0.008
住宅B
0.030
0.031
0.014
0.015
0.001
0.063
0.000
住宅C
0.014
0.083
0.223
0.280
0.000
0.013
0.003
住宅D
0.022
0.281
0.061
0.149
0.0002
0.057
0.0003
厚生労働省
指針値
0.080
0.070
0.880
0.200
0.050
0.030
0.040
※白ヌキ数字は指針値をオーバーしている例
シックハウス新法施行後に行ったVOC調査結果の代表的な事例

ガスコージェネを開発
北ガス 来春発売へ向け実証試験

実証試験を行っている札幌市・あいの里の住宅
 北海道ガス(株)(本社札幌市、前泉洋三社長)では来年春の発売を目指し、ガスエンジン発電ユニットで電気を供給すると同時に、発電時の排熱を回収して温水を作り、暖房や給湯に利用する家庭用ガスコージェネレーションシステム「ECOWILL(エコウィル)」の開発に昨年から着手。このほど実証試験を行っている5軒の戸建住宅のうち、札幌市北区あいの里の住宅を公開した。
 コージェネレーションシステムは、電気を使うその場で発電し、同時に発生する熱を有効利用する省エネ・高効率なシステムで、道内ではこれまで札幌JRタワーや札幌ドームなどの大型施設を中心に採用されている。
 北海道ガスが開発を進めているエコウィルは、大阪ガスなど本州の大手都市ガス3社とノーリツ、長府製作所が共同開発したガスエンジンの排熱利用システムと、本田技研工業が開発した1キロワットガスエンジン発電ユニットを組み合わせたコージェネレーションシステムの寒冷地仕様。実証試験では機器の仕様や制御方法、設置方法などを積雪寒冷地に対応させるためのデータ収集等を行っている。
 システムは天然ガスを燃料とする屋外設置のガスエンジン発電ユニットと屋内設置の排熱利用給湯暖房ユニットで構成。学習機能によって、過去のエネルギー使用状況から各家庭ごと最も省エネ効果が高い運転パターンを予測して発電ユニットを運転させ、1キロワットの電気を供給。同時に、冷却水と排気ガスから発電時の熱を回収し、150リットルの貯湯槽を内蔵した排熱利用給湯暖房ユニットで温水を作って暖房や給湯に利用する。電力使用量が発電量を超える場合には電力会社の電気を使い、暖房・給湯に必要な熱量が不足した場合には排熱利用給湯暖房ユニット内蔵のバックアップ用ガスボイラーを作動させて補う。太陽光発電とは異なり、電力会社への売電が現状ではできないため、余った電気はヒーターで温水を作るのに利用する。

エコウィルのシステム図


室外に設置されたガスエンジン発電ユニット

ユーティリティに設置した廃熱利用給湯暖房ユニット。手で触れている部分にバックアップボイラーが収まっている

台所のリモコンでシステムの運転状況や省エネ指数などを確認できる
 ガスエンジン発電ユニットは、落雪の恐れがある場所でなければ設置可能で、通常の積雪であれば運転に支障はない。冷却水に不凍液を使用しているので凍結の心配はなく、気になる騒音値も44dBと静かなエアコンの室外機並み。気温が非常に低く、長時間停止した後でもトラブルがないように、立ち上がり制御も寒冷地用に変更されている。
 排熱利用給湯暖房ユニットは高さが195センチあるが、設置スペースは40センチ×70センチで済むため、暖房用と給湯用のボイラーを2台設置するのとほとんど変わりない。
 本州仕様との主な違いは、温水の凍結の恐れがあるため、排熱利用給湯暖房ユニットを屋内に設置バックアップ用ガスボイラーはFF式とし、厳寒時に排熱の大部分が暖房に使われた場合でも十分な給湯能力を確保できるよう20号から24号(42キロワット)に変更冬期に暖房負荷が大きくなる道内において最も高効率となるよう運転制御を最適化―など。耐用年数は10年、運転時間で3万時間を目標としている。

総エネ効率85%を実現
灯油並みランニング

 同社によるとシステムの発電効率は約20%、排熱利用効率は約65%で、合わせて約85%の総合エネルギー効率となり、年間を通じ一般家庭で必要な電力の4割、暖房・給湯にかかる熱量の6割を賄うことを想定。この省エネ効果と合わせて現在検討中の専用料金メニューにより、維持管理費を含めランニングコストは灯油システムと同等を実現できるという。
 また、地球温暖化の原因とされるCO2や、人体への影響が問題となっているNOx(窒素酸化物)の発生量が少なく、大気を汚染するSOx(硫黄酸化物)やススなどの微粒子も排出しない天然ガスの使用により、環境負荷の軽減にも貢献する。
 同社では来年春に都市ガス仕様を発売する予定。価格は本州仕様の70万円台半ばを目安に、仕様変更によるコスト差を考慮して決めることになるとのこと。当初は道央圏中心に普及を進め、施工は同社の責任施工とする意向だ。なお、都市ガス仕様のほかにLPG(プロパン)仕様もグループ会社の北ガスジェネックスから発売される予定。
 同社技術開発研究所ガス利用システム開発チームの村瀬光則リーダーは「今後は現在5軒の住宅で行っている実証試験でのデータをもとに、積雪寒冷地でもより高い省エネ効果が得られる運転制御ができるよう、研究開発を行っていきたい」と話している。

太陽光で屋根融雪
十勝・ウッディハウス ランニングコストはゼロ
 ウッディハウス(河西郡芽室町、山田光治社長)では、太陽の光を鏡のように反射させて北側屋根部分の温度を上げ、ランニングコストゼロで軒先の凍結とスガモリを防止する、パッシブソーラー屋根融雪装置「ソーラーメルター」を昨年1月に開発、発売後は十勝を中心に札幌圏からも多数問い合わせがあり、採用したユーザーの反応も好評だ。
 ソーラーメルターは、ステンレス製反射板を架台で支え、その架台を屋根材のハゼ締め部分にボルトで固定するシンプルな構造。幅1.9メートル、高さ0.7メートルで屋根の北側に設置する。架台はカラー塗装済の鉄製とステンレス製の2種類を用意。特注で幅1.5メートルの商品も製作できる。反射板の角度や長さなどは、山田社長が3年間実験を重ねて最適な値に設定しており、現在のところ北側屋根専用だが、東側屋根などに設置できる製品の開発も進めている。
 十勝では大雪の後に晴れる確率が高く、ソーラーメルターを使えば、大雪が降った後も数日のうちに軒先の雪を溶かすことが可能。2年前の1月下旬に行った測定では、ソーラーメルターを取り付けた北面の屋根温度は、南面屋根温度より22℃も高かったという。
 昨年2月に設置したユーザーは、「融雪ヒーターはランニングコストが気になり、屋根面に上がって雪を落とす作業も危険なため日常的にはできない。地元紙でソーラーメルターの発売を知り、早速取り付けてもらったが、今までスガモリが発生していた問題の屋根部分も雪が完全に溶け、設置以来スガモリは一度も発生していない」と喜んでいる。
 屋根勾配は10分の2から100分の1まで対応。設計価格は、1台5万5千円で、架台をステンレス製にすると1万円高。40坪程度の戸建住宅なら4~5台程度設置する。なお、屋根面が白色など淡色塗装の場合は、ソーラーメルターを効率よく働かせるために、反射した太陽光が当たる部分を黒色に塗り直すことを勧めている。
 問い合わせは、ウッディハウス(河西郡芽室町西1条南4-1-1、Tel.0155・62・0814)へ。また、ホームページ(http://www8.plala.or.jp/woody-hu/)には設置例や原理の詳しい説明も掲載されている。

太陽光が反射し、軒先部分の雪はきれいに溶けている


ハゼの締め合わせ部分に架台をボルトで固定

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