地震で大きく傾いた日高地方の古い住宅(写真提供:北総研)
|
軟弱地盤と老朽化
構造材腐朽で全壊の住宅も
今回の十勝沖地震は、道内で戦後に起きた地震としては初のマグニチュード八クラスで、その影響は広い地域に及んだのが大きな特徴となっている。震源地に近い十勝・釧路・日高管内はもとより、札幌でも液状化現象によって傾いた住宅がテレビに映し出されたのは記憶に新しい。
住宅の被害状況については10月17日現在、全壊60棟、半壊81棟、一部破損1369棟、床下浸水1棟、合計1538棟の被害が報告されており、このうち日高管内が48%、釧路管内が32%、十勝管内が13%。全壊の住宅に限って言えば、日高管内が4分の3を占めている。
日高管内で住宅被害が顕著だったことについて、9月30日から10月3日まで調査を行った道立北方建築総合研究所環境科学部都市防災科の戸松誠研究職員によると「日高管内は地盤が泥炭層だったために揺れが大きくなったことに加え、損壊した建物は比較的老朽化が進んでおり、全壊やそれに近い建物では、土台や柱が腐朽しているケースがあるなど、悪い条件が重なっている住宅で被害が目立った」と話しており、地盤が悪く揺れが大きいところで、構造材が腐朽している古い建物が壊れたという、起こるべくして起こった被害と言える。
また、同研究所では、4時50分の地震発生時から1時間ほど経って起こった余震の揺れが大きかったことや、昭和57年に起きた浦河沖地震で被害に遭いながらも応急措置だけで済ませていた建物が残っていたことも、日高管内で被害が多かった原因ではないかと推測している。
札幌で液状化現象
事前調査は戸建では困難
札幌市清田区で起こった液状化現象は、以前から地震に関係なく起こっていたといい、今回の地震で一気に発生規模が大きくなったようだ。写真の住宅は北(裏側)へ約38センチ傾いた。
液状化は砂層が多い地域で起こるので、札幌の場合、北部で起こるかと思われていたが、南部の清田区で起こったのは、この土地が沢を埋め立てで、もともと地下水位が高い砂地盤の土地であったことが原因と考えられている。なお、地盤が液状化を起こす可能性があるかどうかは、きちんとボーリングを行って地盤解析を行うしかないが、戸建住宅レベルで行うのは難しいという。
このほか、公共物件に関しては比較的大きな被害は少なかったが、大量に落下した釧路空港の天井材などのように、仕上げ材など構造体以外の部材の弱さが目立ったという。
|
出隅部分の上下に亀裂が入って傾いている日高地方の住宅(写真提供:北総研) |
液状化で傾いた清田区の住宅の一部では、既に補修工事が始まっている |
|