平成15年11月15日号から
生き残り戦略見えた
十勝での取り組み真骨頂が明らかに
十勝2×4協会 25周年記念シンポジウム
 10月31日、帯広近郊の十勝川温泉で十勝2×4協会(岡本修会長、岡本建設(株)専務)の設立25周年記念セミナーならびにシンポジウム、式典が開かれ、会員のほか道内外からツーバイフォー先進地・十勝の実情を見ようと関係者が詰めかけるなど、約100名が参加した。翌日は会員の現場7ヵ所を回る現場見学会が開かれた。ここでは、シンポジウムの模様を紹介する。
シンポジウムは、「工務店の今後とその生き残り戦略とは」をテーマに、弊社取締役編集長の白井康永がとりまとめ役となり、高倉俊明氏((株)ほくでんライフシステム参与)、山口正氏((有)ウッズ建築設計事務所所長)、ケビンJ・ビューズ氏(カナダ林産業審議会SPFプログラムマネージャー)、岡本修氏(十勝2×4協会会長)の4名がパネラーとして参加した。


ケビンJ・ビューズ氏

高倉俊明氏

山口 正氏

岡本 修氏
生き残り戦略1 住宅性能
達成可能な目標設定
大手とは性能面で差別化

 住宅の性能技術面では、ケビン氏が初めて来日して本州の住宅に住んだときの体験として、カナダの住宅では考えられないヒートショックに遭遇した話を披露した。全室暖房が当たり前のカナダに対し、初めて暮らした日本の家は、断熱性が低いため局所暖房でトイレも寒く、これがカナダ住宅を日本に普及させる原動力になったと説明。
 高倉氏は、自身が中心となり取り組んだカナダ・R-2000プロジェクトを例に、「日本の省エネ基準などは、『最低限クリアすべき』だ。大手メーカーはそのハードルに飛び付いて、ハードルの下の方をスッと触る程度で安心している。しかし、工務店はそれではいけない。R-2000のように達成可能な努力目標を自分からハードルとして課してクリアする。その目標をお客様に提示して性能を保証することで自分にウソをつけないようにしていく。これが大手メーカーと地場工務店との大きな違いになる」と性能を磨くことが生き残りの1つのキーワードになると強調。
 これを受け岡本氏は、十勝2×4協会がかつてR-2000に匹敵する性能の住宅づくりに取り組み、気密性能の目標値を定めて協会で気密測定器も購入して性能向上に努めたことや、数多くの勉強会を開催してどん欲に知識習得に努めたことなど、これまでの取り組みを紹介した後、「断熱では、すべての住宅をツーバイシックスにして断熱性能を上げ、気密は全棟気密測定を行って平均0.3平方センチメートルを出しており、暖房ではシミュレーションで年間のエネルギーコストを出してお客様に渡している。きちんとしたデータに裏付けた提案ができるというのは1つの武器だ」と性能技術面で差別化を図っている自社の取り組みを紹介した。

生き残り戦略2  営業
クレームから学ぶ
性能の次は営業が重要に

 営業・アフター面では、岡本氏が「住宅を造る上で重要なヒントはクレームから学ぶこと。原因が何なのかを調べることで次の現場に生かせるし、誠実に対応することによって逆に紹介客を獲得できることもあった。例えば昭和62年頃、窓や壁の結露が問題となったが、北欧製の第三種換気システムを標準化することでクレームが大幅に減少した。クレームから逃げないで向き合うことが大事ではないか」と発言、クレーム処理の大切さを示した。
 また山口氏は、「工務店で一番大事なのは営業。そのために、まずは『性能がよいのは当たり前』というレベルまで達して、そこにプラスα、予算に含まれていない何かをお客さんに与えていかなければ、これから仕事はとっていけなくなる。価格の面でも工務店はいつまでもコストダウンを怠ってはいけない。同じ性能のものをいかに安く提供できるか。それはお客さんにとっても最大のメリット」と高性能を実現した後は、営業がより重要になるとの考えを示した。

会場は参加者でほぼ満員
生き残り戦略3  設計
流行にとらわれない
北米や北欧から学ぶべき

 設計面では、山口氏が「北海道に適した家づくりとは、本州を向くのではなく、ほぼ同じ気候のカナダ、北欧、ロシアといったところから学ぶべき。例えば地域に合った『十勝型住宅』も設計者一人の力でできるものではなく、ユーザーと設計者がキャッチボールをしながら積み重ね、30年、50年経って初めて『ああ、これが十勝型住宅なのか』というふうになるのではないか」と語った。
 デザイン面でも山口氏が、何が美しいかというような基本はギリシャ時代の昔から変わっていないことを指摘した上で、「今後中古住宅の流通が日本でも活発になることを考えると、中途半端なデザインの住宅は財産として評価されない。伝統的なデザインは100年経っても200年経っても変わらない。デザインは生活に密着してなおかつ、一時の流行ではないベーシックなものでなければならない」と地道な積み重ねが必要、との見解を示した。


在学中に職場体験
高等技術専門学院 インターンシップ概ね好評 

制作中の模擬家屋。四棟分の広さが確保できる実習場は環境としては恵まれている方だ
 今年度から道内の高等技術専門学院にインターンシップが導入された。インターンシップとは、学生が在学中に短期間の就業体験を行うことで実際の仕事の雰囲気や内容を知り、自分自身の適性の見極めができるもので、今までのところ受け入れ企業側も能力・人物面を含めた評価ができることで好評だ。2年制移行が引き金
就業体験通して適正判断 道では、全道に11校ある高等技術専門学院で年間2000名近く、うち住宅建築系では10校で400名近くの学生を受け入れ、実習を中心とした職業訓練を行っているが、受け入れ先の企業からは「もう少し実践的な訓練を積んできてほしい」との指摘もある。
 週休2日制の実施で年間授業時間が減ったこともあり、より実践的な技術を身に付けることを目的として、多くの学院が従来の1年制から2年制に移行して内容を充実させようとしている。現在では全定員の約7割が2年制で、このうち、建築大工等を養成する建築技術科、建築科は5校が2年制。来年度からさらに1校増える。授業内容は学院によって異なるが、概ね1年目は簡単な道具の使い方と、平屋建ての模擬家屋の制作を行う実習、2年目は道具のより専門的な使い方と応用実習、技能五輪(国際職業訓練競技大会)参加を目指した課題の練習などを行う。
 道の財政難はこうした職業訓練にも押し寄せてきており、予算枠も毎年1割ほど減額されるという。学生1人あたりが使える建築材料費は2年間で約11万5000円と十分な額とは言えない。今まで無料だった学費を一部受益者負担ということで、今年度から道立高校と同レベル(年額約11万円)徴収するようになったので、材料費の減額は避けられたが、模擬家屋は制作後、学生たちで解体してそれぞれの木材を別の実習用に転用するなどの工夫で、材料費の不足を何とか切り抜けているのが現状だ。


インターンシップに取り組む学生

社会での人間関係を学ぶという効果もある
若年層定着に期待
受け入れ側企業も高評価

 こうした中、初のインターンシップは、二年生で実施された。受け入れ先企業1社あたり学生が1~5名程度建築現場に出向き、2週間から1ヵ月の間、企業側担当者の指示のもとに様々な役割を分担して住宅建築の流れや仕事内容を体験する。
 インターンシップ実施の背景には、在学時に職場の雰囲気を味わうことで卒業後の就業をスムーズにし、若年層の高い失業率や離職率、フリーターの増加を防ごうという意図もある。
 インターンシップを実施した効果として、預かった学生の勤務態度や人柄が良かったので来年春の採用を決めた企業が出るなど、概ね好評だ。また、これまで無料だった学費が有料化されたため、熱心な学生が増えてきたようだと評価する学院もあった。

期間延長求める声も
今後は柔軟な運用が課題に

 順調にスタートしたかに見えるインターンシップだが、課題もある。制度本来の趣旨は技能習得ではなく「就業体験」なので、実施期間は2週間から1ヵ月が適当とされたが、実施に当たっては「もっと延長して欲しい」という声も出た。特に建築大工は他の職種とは異なり、木工事だけを見ても土台敷きから内装仕上げまで早くて2ヵ月。できれば全行程を体験させ、その中で実践的な技能を身につけるべき、とする立場からは1ヵ月は短すぎる。受け入れ先の企業からも、「どうせやるなら2ヵ月はやって欲しい」といった声もあがっており、制度の柔軟な運用に課題を残している。
 住宅建築の実践的な技能を身につける1つの方法として、これまで学外で実際に建築物を請け負うなどの「校外実習」を行った例もあるというが、不況下で民業を圧迫するのではないかという声や、アフターや瑕疵担保責任が負いにくいという問題もあり、実際には行うのが困難になってきている。こうした背景がインターンシップへの期待の大きさにつながっているとも言える。

頑張れインターン
 若年層の失業率が依然として高水準で推移する厳しい環境の中、自覚を持ってがんばっている学生たちも多いという。インターンシップ制度が学生たちの就業率アップと職場定着につながるよう、学院側にも道にもがんばって欲しい。

道内生産を開始
新日鐵・北海鋼機 スチールハウス用形鋼

形鋼部材の生産を始めた杉田公義北海鋼機社長
 江別市に本社を構える関東以北唯一の鉄鋼二次製品総合メーカーの北海鋼機(株)では、先月28日から新日本製鐵(株)が展開するスチールハウス「ニッテツスーパーフレーム」用形鋼および薄板軽量形鋼部材の委託生産を開始した。納期短縮と輸送コストの圧縮などにより、道内でのスチールハウス着工戸数を早い時期に600戸に持っていきたいとしている。
 スチールハウスの構造部材となる形鋼の生産は道内では初めて。また、新日鐵は年内立ち上げ予定の他地域の拠点も加え、これでほぼ全国7拠点体制が整う。
 北海鋼機内に新たに設置したラインは、板厚が1.0、1.2、1.6ミリ、長さは最大10メートルの長尺ものまで生産可能。生産能力は月産250トンで、これは一直体制のフル生産で年間およそ600戸分の供給能力に相当するという。
 スチールハウスによる住宅着工は昨年度が道内で15棟・66戸、全国で2035戸・19000戸。全住宅着工に占めるシェアは全国で1.6%あまり。道内ではさらに低くなっているが、新日鐵ではライン新設を機に本格的にシェア拡大に乗り出したい考え。
 コスト面では躯体部分で木造ツーバイフォーと同じ、完成コストで断熱工法が外張りとなる分、コストアップになると見ているが、性能測定などのデータを踏まえ断熱性能には自信を深めている。
 スチールハウス用の部材は、基本的には床・壁をパネル化、屋根をトラス化したうえで現場納入となり、形鋼だけの販売は行わない。納期は三週間程度。
 道内では現在、一般住宅のほか、寮やグループホームなど共同住宅の実績も多く、今後も低層の住宅・非住宅を含め、幅広く展開したい考えだ。

今日のキーワード
 スチールハウス…ツーバイフォー工法と同じく、枠組材と面材で構成する工法。枠組材にはディメンションランバーに替わり形鋼、面材には合板類を使う。耐震性など強度面、腐れ、特にシロアリに対する強さ、軽く寸法安定性が高いなどの特徴を持っている。鋼材はレベラーなどを通り左奥の成形機へ流れる

鋼材はレベラーなどを通り左奥の成形機へ流れる


成形された形鋼はここでまとめられ、出荷に回る

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