平成13年10月15日号から
戸建てを凌駕するマンションの現状
商品力で優秀な戦い
 戸建てのマイホームは依然として低調が続いているが、分譲マンションは依然として供給量も多く、札幌ではこの秋の商戦でも多くの物件が売り出されている。二年ほど前から続くこのマンションブームは、戸建てのマイホームや土地付き一戸建て住宅の販売に大きな影響を与えていると言われるが、そこにはユーザーの嗜好を捉え、マンションの弱点を改善するために商品開発を続けているデベロッパー側の努力も見逃せない。
 今ひとつ盛り上がらない戸建て市場をよそに、健闘する分譲マンションの商品力を探ってみた。

抜群の立地環境
 分譲マンションを中心とする集合住宅物件では、中心部回帰ともいえる現象が進み、今や郊外型のマンションはほとんど影を潜めるまでに立地環境が変化した。
 大通や札幌駅付近の中心部商業地区まで、徒歩で十五分以内、地下鉄・JR利用の場合でも五分前後という利便性のよさで、3LDKタイプで1,800万円台、4LDKで2.400万円台くらいからが主力。4LDKタイプでは100平方メートルを超える戸建てと見劣りしない規模を確保している物件も多い。
 一方、高さでは14、15階建てが増えており、20階建てのツインタワー、30階建ても出現。マンションのステータスシンボル化を狙っている。環境は良くても郊外にならざるを得ない戸建てのニュータウンにとっては強力なライバルであり、実際、新規の住宅購入者だけでなく、郊外の一戸建て住宅から移り住む例も増えているという。

ハイレベルな装備
 各物件とも立地の良さや除雪負担からの解放など、マンションならではの特徴のほか、商品力アップのためにユーザーにも分かりやすい魅力付けを行っている。
 まず、バリアフリー対策はほぼ標準仕様。シックハウス症候群の原因とされている建材面に関してもホルムアルデヒドを含まない接着剤を使用するなどの配慮がなされている。空気汚染対策では、セントラル換気システムを導入し結露の抑制も図る物件も増えている。また、赤サビ問題に対応するステンレス管・樹脂管によるさや管ヘッダー工法の採用も増加しており、さらに活水器を組み込む例もある。


道内初の免震構造を謳うアイビーハイム札幌ツインタワー
高速通信など差別化
 セールスポイントでもある付加価値の部分でも注目されるものが多い。(株)タカノが販売している「ロジェ北10条サンイースト」(札幌市中央区北10条西18丁目)では、生ゴミをバクテリアの力で清潔に処理する「レビオ・システム」を共用スペースに採用。マンションでは全国初となるこのシステムは、居住者が24時間いつでも生ゴミを捨てることができるもので、ライフスタイルや生活時間帯の多様化に対応している。
 すでに標準装備となってきているインターネット接続でも、回線の高速化にいち早く対応した物件が登場。(株)宮川建設の「エクセルシオール」では、電話回線とは別にインターネット専用回線としてADSLを採用し、高速化をうち出した。また、(株)興人の「アイビーハイム札幌ツインタワー」(札幌市東区北9条東3丁目)では各戸から光ファイバーへ直接接続ができより高速大容量のインターネット接続を可能にしている。

自由設計も登場
 全室、間取りや広さを自由に変更できるという、他とは違ったセールスポイントを持つのがムービットインダストリー㈱が売り出しているオーダー型マンション「ヴィラ・クレセア北13条」(札幌市北区北13条東1丁目)。ここでは部屋の広さや間取りに加え、水回りや内装の細部まで、注文住宅と同じように設計していくことが可能。よりデザイン性の高い、自分だけの住まいを希望する最近のユーザー動向に合致した物件として注目度は高い。
 宣伝広告面でも、コンピュータグラフィックなどを使った折り込みチラシで、不特定多数の家庭へ波状攻撃をかけている。

苦戦続くニュータウン
高い・遠い・不便

アシスト企画の個性的なモデルハウス
 一方、土地付き戸建住宅については、地価下落を受けて土地価格が低下しており、一時期から見れば表示価格は500万円程度も下がっている。それでも主流となっているのは土地と建物合計で3,000万円台前半の物件が多く(参考プランによる価格も含む)、マンションとの価格差はおよそ500万円以上。
 同じ郊外型ニュータウンでも、交通の便など立地環境によって販売に大きな差が出ているといわれており、建築条件付き、つまりユーザーにとって施工業者を自由に選べないことも、不利な立地では大きなネックとなっている。おしなべて好調なマンションとは異なり、優勝劣敗のニュータウンは厳しい商戦を強いられている物件が多い。

勝ち組は独自路線
 このような中で土地価格の手頃さと建物のコストダウンによって、敷地面積200平方メートルで土地建物合計2,000万円を切る格安物件も登場している。住宅性能や外観のデザイン性にも配慮しており、「とりあえずマイホームを」というユーザーの希望を叶えて売り上げも好調だ。
 また、ハッキリとした特徴を打ち出した住宅を武器に分譲を行う中・小規模開発に成功の例もある。健康性配慮や住宅性能の高さ、木質建材の採用など流行のデザインを取り入れるなどして住宅そのものの商品力を高めており、それがユーザーの心理を捉えている。
 消費が冷え込み、地価が下落した今、勝負はいよいよ住宅の商品力にかかっている。一次取得層狙いの戸建てマイホームは、マンションがこれからの主戦場だ。マンションにない魅力、戸建ての良さを提案し、土地・建物としての不動産の資産価値を作り出すことがポイントになる。

独自工法でエコ推進
環境共生住宅で全国2位

FBソーラー工法のしくみ
 北信商建(株)(本社長野県上水内郡三水村、相澤英晴社長)は、建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が認定する環境共生住宅に積極的に取り組み、一昨年の平成11年に独自のFBソーラー工法でシステム一次認定を取得、このほどIBECが発表した環境共生住宅の平成12年度建設戸数で48戸、全国2位に食い込み、特色ある地域ビルダーとして注目を集めている。
 同社は、昭和63年にオリジナルの外張り断熱工法としてFB工法を発売、それをベースにソーラーコレクター(太陽熱集熱器)を屋根に設置、不凍液を循環させて給湯用に、空気を循環させて暖房用に使うFBS工法(住宅金融公庫ソーラーハウス認定)を平成4年に開発したが、ソーラーハウスの省エネ性を保ったままでイニシャルコストを下げる工法を研究し、平成6年にFBソーラー工法として結実、平成11年からスタートした環境共生住宅の一次認定を取得した。
 この工法では、熱交換で暖められた不凍液を給湯機に運ぶ途中で床下の放熱器に配管して放熱、床下空間を暖める。暖房はこのほか、電気蓄熱暖房器を併用して床下空間を十分に暖め、その暖気を壁体内の空気層に循環させることで穏やかな全室輻射暖房の効果が得られる。
 給湯コストは年間で約八割減、年間のCO2排出量は同社試算で約1.3トンの削減(新省エネ基準レベルの住宅比)になるという。施工コストも自社の通常の住宅に比べて100万円程度のコストアップで済む。
 同社は、「快適を極めると環境にも優しくなる」をキャッチフレーズに環境共生住宅対応を全面に打ち出し、平成12年度は施工棟数の約3分の2がFBソーラー工法だという。こうした背景には、ユーザーの環境問題への関心の高まりのほかに、オリジナルの薄型ソーラーコレクターで外観がスマートな点や、ユーザーにとっては面倒な施工後の不凍液点検をずっと無料サービスにするなど(不凍液交換は実費)、ユーザーに不便さや負担をかけない工夫がある。
 相澤英晴社長は、「当社の住宅に惚れ込んで福島県のお客様からご注文をいただいたこともあった。ハウスメーカーには真似できない施工技術の高さと、地球環境を守るための住宅づくりという一貫した企業姿勢をこれからも続けていきたい」と話している。

【環境共生住宅】…地球環境を守る観点から、環境に対し充分な配慮がなされ、自然環境に調和し、住み手が健康で快適に生活できるよう工夫された「住宅」およびその「地域環境」。
 IBECが定める省エネ・耐久性・立地環境への配慮に関する必須条件をクリアし、認定委員などによる審査を経て認定される。認定内容は、工法として受けるシステム供給型など3種類ある。平成11年度は全国で113戸だった建設戸数は12年度は348戸と3倍以上に増加。
 システム供給型での12年度の建設戸数トップはポラテック(株)(埼玉県越谷市)の133戸、2位が北信商建㈱の48戸、3位が三井ホーム(株)31戸、4位が(株)松下孝建設(鹿児島県鹿児島市)の25戸、5位が(株)細田工務店(東京都杉並区)19戸と、地域ビルダーが健闘している。

ユーザーが設計した同工法の住宅

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