5項目で“快適さ”を評価

気密・換気量測定データ添えて
  住宅性能表示制度が始まり、住宅もいよいよ性能表示の時代に入った。しかし制度そのものの普及は、少なくとも戸建ての注文住宅に関する限り、遅々として進まない。建売住宅やマンションの場合は、竣工した住宅の性能を示すという意味で建設住宅の性能表示が意味を持つが、注文住宅の場合は建設前の契約時が勝負。その時点で示せるものは設計住宅性能表示のみで、しかも単なる仕様認定となるため、説得力に欠ける。制度もわかりにくく、利用されないのは当然だ。
 しかし国の制度はあまり意味がないとしても、性能表示時代に突入したことは間違いない。
 本紙では以前から気密測定と換気風量測定によって性能表示を行う方法を提案しており、多くのビルダーが測定を実施しているが、これをさらに一歩進めて住宅性能を五つの項目で表す『住まいの快適ランク』を提案する。
 五つの項目は主に快適住宅の四要素といわれる断熱・気密・暖房・換気の4性能をベースに、シックハウス対策と間取りの可変性を加えた。

目的は2つ

1.漠然とした要望を性能に-思い違いをなくす
 『住まいの快適ランク』の使い方はこうだ。
 ユーザーの要望は漠然としており、「暖かい住宅」とか「冬でもTシャツでビールが飲める家」という言葉で暖かさを表す。また、室内で大量の洗濯物を干す習慣があっても「結露はイヤ」と答える。
 専門家はこれらの要望をあるときは真剣に聞き、ある時は聞き流しているようだが、これらユーザーの要望と専門家からみた住宅性能とはなかなか結びつかないのが現実だ。
 五項目による性能表示ランクはユーザーの要望と住宅性能を結ぶものとして考えた。例えば『暖かさ』ランクでは、ユーザーの要望が「真冬でも軽装で暮らしたい」とあり、これに対するおすすめランクは『A』となる。
 Aランクとは次世代省エネ基準を上回るスペックの住宅を指し、気密性能は相当隙間面積で1平方センチ/平方メートル以下、開口部はトリプルLow-E以上、暖房はセントラル方式とする。
 このスペックなら外気がマイナス10℃以下になっても室内は肌寒さは感じないはずだ。ランクのポイントは開口部。暖房設定温度が同じなのに厳寒期に肌寒く感じるのは主に開口部からの冷気が原因。これを極力抑えるため、開口部の断熱仕様を引き上げている。このほか、気密性能と放熱器の配置も重要だ。

2.性能比較と相互チェック-同じ土俵で評価
 『住まいの快適ランク』の狙いはもう1つある。言葉だけの高断熱・高気密と本当の高性能住宅を区別する。さらに性能比較をユーザーが自ら行うことができるという点だ。
 「クラウンとカローラを比べて『高い安い』言われてはどうしようもない」という声をよく耳にする。確かにその通り。ではどうやって同じ土俵で比べるかという点が問題だ。
 『住まいの快適ランク』では一般的な仕様と高性能仕様の2つについて、提案書に掲載した(5面参照)。一般仕様は新省エネ基準をベースにしており、この仕様でも十分に暖かさは実感できるが、高性能仕様はほとんど寒さを感じない次世代省エネ基準を上回る仕様となっている。この違いをユーザーに説明するには、熱損失係数や気密性能値を提示するより、提案書による方がわかりやすい。
 例えば結露ランク。次世代省エネ基準以上がベースとなるAランクは開口部の断熱仕様をはトリプルLow-E以上に性能を引き上げているため、マイナス15℃まではほとんど結露しない。一方、Cランクは新省エネ仕様で窓はLow-Eペア。また換気はスペックは0.5回/hとなっていても圧損抵抗などで0.3回くらいしか出ない機種を使っているケースではマイナス7、8℃で結露するだろう。
 結露の場合、性能の違いだけでなく、室内の水蒸気発生量も大きく関わってくるが、性能比較をするためには仕様を比べるだけで十分だ。
 仮に自社仕様がAランクとしよう。競合他社の仕様を直接知ることはできない。そこでユーザーに提案書を渡し、競合他社がどのランクの仕様なのか、またユーザー本人はどの程度の性能を望んでいるのか、提案書から判断してもらうと良い。ユーザーが競合他社の性能を知らない場合、「その会社に提案書を見せてどの仕様なのか教えてもらったらいかがですか」とアドバイスする。


『住まいの快適ランク』の使用方法

評価方法と基本仕様
 『住まいの快適ランク』はユーザーの住まいに対する要望と、それを満たすためのおすすめランクという構成になっている。
 おすすめランクは提案書2の通り、4~5段階評価。基本となるのはA~Dランクで、基本仕様はAが次世代省エネ基準以上、Bが次世代省エネ基準並み、Cが新省エネ基準並み、Dが新省エネ基準以下。
 次世代省エネ基準は、公庫仕様を基準として設定してある。このため、熱損失係数を計算すればほとんどの場合、基準値をかるく上回るはずだが、ギリギリで基準をクリアできる仕様では、Cランクの新省エネ基準並みとほぼ同じになってしまうことから、あえて高いレベルを設定した。具体的仕様は別表1を見てほしい。
 また、参考までに灯油消費量の概算値を見る早見表をつけたので参考にしてほしい。
 Dランクの新省エネ基準以下とは、建材の仕様は新省エネ基準と同じだが、施工レベルが低いため、新省エネ基準に達しない住宅を含む。これらをまとめて提案書2では『技術不足』と表現している。
 CランクかDランクかを見極めるのは難しい。競合他社がいる場合、評判で判断する方法もあるが、営業段階で相手の評価を低くしすぎると逆効果になる場合もある。相手を低く設定するより、自社仕様を高く設定した方が、差別化戦略としてはうまくいくケースが多いのではないか。

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