平成20年6月5日号から
新しい節目の年
新住協総会・研修会 Q1と周辺技術の開発
 NPO新住協の平成20年通常総会と全国研修会が5月23日に岩手県八幡平市のホテル安比グランドで開かれ、全国から会員など200名を超す参加者が集まり、研修と情報交換で賑わった。
 総会では、今年度事業としてQ1(キューワン)プロジェクトの推進、基本技術の普及のため大工学校の本州での開催、断熱・耐震改修の推進、関東関西地域への夏対応―などとなっており、熱損失係数・暖房エネルギー消費計算ソフト「QPEX」の改良バージョンも公開された。

講演する鎌田代表理事
 代表理事で室蘭工業大学教授の鎌田紀彦氏は「Q1を提案して3年がたった。今年になって突然補助金が出るとか、灯油がリッター100円を超え電気代も上がるなど、ある意味で追い風が吹いている。しかし一方では住宅が建たなくなり、仕事が少なくなりつつある。総会は今年で通算21回目。20回を区切りととらえ、1回目の新たなスタートとしたい」とあいさつ。その後基調講演を行った。
 講演では最新の研究として 1.木造住宅の熱容量アップ 2.新しい断熱工法―などが紹介された。
 ①の熱容量アップは、断熱性能が上がるにつれて2月ころの日差しでも簡単にオーバーヒートしてしまう問題を解決し、逆にオーバーヒート熱を蓄えることでエネルギー消費を減らすことを目指す。試算によれば、Q1レベルで札幌の場合、蓄熱容量アップで450リットルの暖房エネルギー負荷を300リットルへ3割も減らすことができる。
 住宅内で蓄熱材として効くのはコンクリート。蓄熱容量が最も大きい工法は基礎断熱工法だが、実際には土間床のほうが暖房エネルギー負荷を減らすことができる。これは基礎の熱容量を生かしきれないからだ。

展示ブースには岩手県産の木質建材なども展示され、大いににぎわった
 今後は有効な蓄熱ができる工法の研究が必要になる。例えば床断熱で熱損失を減らした上で床下地にモルタルなどの蓄熱層を設置する方法も考えられる。
 2.の断熱工法については、外壁200ミリ断熱を行う場合の100ミリ付加断熱パネルの開発などが紹介された。柱の外側に構造用合板を屋外面に張ったパネルを取りつけ、施工の省力化を目指す。構造面材としての評価が得られれば、外付加断熱の構造体と施工方法を合理化することができる。
 このほか会員からの発表や、研修会の翌日には住宅見学会と市民合同住宅セミナーも開かれた。

高性能住宅Q&A 土間床暖房の断熱
地盤への熱損失防ぐ
Q値高いほど多くの熱逃げる
Q…次の現場で土間床暖房を採用してみようと考えていますが、地盤への蓄熱と熱損失の両方を考えた場合、土間下は断熱したほうがいいのか、断熱しないほうがいいのか、決めかねています。どちらのほうがいいのでしょうか。(旭川市 工務店社長)
 A…土間コンクリートに温水パイプやスラブヒーターを埋め込む土間床暖房は、室内に放熱器などが露出しないためスペース効率が有利というメリットもあり、ここ数年徐々に採用例も目に付くようになってきました。
 土間下の断熱は、地盤の蓄熱効果を生かすためにしないほうがいいのではと考える人もいれば、地盤への熱損失を防ぐためにしたほうがいいと考える人もいますが、地盤への熱損失を抑えることを優先して、土間下は断熱することを基本とします。特にQ1.0住宅など断熱性能が高い住宅ほどしっかり断熱すべきです。

床下がない土間床(上)と床下がある土間床(下)で蓄熱暖房を行う時の土間下断熱材の位置。床下がない土間床では地盤の蓄熱容量を活かすことを考え、フーチング底面の位置で地盤全面を断熱する
 例えば土間下に断熱材がない場合、地盤から逃げる熱量は熱損失係数(Q値)1.6W(/m2K)の次世代省エネ基準レベルの住宅で全体の7~8%程度ですが、これが1.0~1.3Wクラスの高断熱住宅になると、さらに3割くらい多くなるわけです。これを無視することはできません。
 また、水位が高い土地であれば、土間下を断熱しないと地中に伝わった熱が地下水を通じてどんどん逃げてしまいます。
 土間下に施工する断熱材は地盤全面に敷き込みます。床下がない土間床、いわゆる土間コンクリート床で深夜電力を利用した蓄熱方式の暖房をする場合は、地盤の蓄熱容量を活かすため、フーチング底面の深さで断熱材を施工します。フーチングの底面部分も断熱できれば一番いいのですが、断熱材が砕石とフーチングに挟まれる形になるため、施工は困難です。蓄熱方式ではなく24時間温水を循環させたり、スラブヒーターに通電し続ける一般的な床暖房方式では、土間床直下を断熱して熱が地盤に逃げないようにします。
 床下空間を取り、防湿コンクリートや耐圧板に温水パイプやスラブヒーターを埋め込んだ場合も、断熱材は土間床直下に施工します。
 なお、基礎外周部に沿って布基礎の室内側に一定の長さだけ断熱材を施工するという方法もあります。冬期は地盤全面を断熱するよりも地中への熱損失が増えます。逆に夏期には低温の地熱を活かしたクーリング効果が期待できます。

水で“空気を洗う”

ベンチャー企業・アモウ 家庭用の空気清浄加湿器


「ほしつくんGタイプ」外観。色はオーダー可能。下部は試作品の置き台
 (株)アモウ(札幌市、天羽則博社長)は、家庭向け空気清浄・加湿器「ほしつくんGタイプ」を開発、このほど販売開始した。同社は平成10年設立のベンチャー企業で、病院や喫煙スペース用空気清浄器「すいえんくん」を開発・製造・販売している。ほしつくんGタイプは、これを小型化しコストダウンしたもの。
 空気浄化と加湿の仕組みはこうだ。水道水から直径1~10ミクロンという超微細粒子の水(クラスター水)を作り、水煙状にして室内に噴霧する。この粒子の超微細水がポイントで、室内の臭い粒子や細菌などとくっつき、それを回収することで臭いや細菌を除去し、室内はきれいな空気が残るというしくみ。フィルターを用いないので雑菌などが繁殖する心配がなく、メンテナンスも最小限で済むという。
 本体の大きさは、幅28×高さ48×奥行19?、重量10?と市販の空気清浄器と同じぐらい。使い方はスイッチを入れ、本体側面にある湿度調節で好みの湿度に設定するだけで、あとは機械が自動調節する。給水は水道直結方式で、水タンクは持たない。このため既存住宅への取り付けは給排水配管を考慮に入れる必要がある。なお、同社では給排水タンク付きの置き台も企画中で、完成すれば単独使用も可能となる。

特殊な内部構造で粒子の細かい水蒸気を出す
 発売して数年になる「すいえんくん」は、既に恵祐会札幌病院、五輪橋内科病院などの病院や、グループホーム、老人ホーム、ホテル、銀行などで使われている。病院や高齢者向け施設では、入院患者や入所者の体調管理が重要だが、冬場は室内の湿度が下がることでウイルスが活性化する恐れがあった。「すいえんくん」で40~60%にまで相対湿度を上げられることから、「風邪を引きにくくなった」という声も寄せられているという。またオフィスビルでは喫煙室用「すいえんくん」を設置することで喫煙室も効率よく空気浄化できるという。
 「ほしつくんGタイプ」は、噴霧量最大0.5リットル/時で標準価格は18万8000円(税別)。問い合わせは、同社(札幌市清田区真栄363-25札幌ハイテクヒル真栄、Tel.011・887・4520)。

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