平成20年6月25日号から
2008年上半期の動き
光熱費ゼロ住宅 続々
顧客に伝わる明快な内容
 地元大手・中堅住宅会社の経営破綻が続いた08年上半期の道内住宅業界。国の政策も住宅会社の優勝劣敗を促進しているようにも見える中で、生き残るのは容易ではない状況だ。住宅会社が想定する顧客層に商品・サービスが十分に評価されているか、社会のニーズや国の政策に対応できているかが重要な鍵となる。注目の動きをいくつか紹介する。


協栄ハウスの光熱費ゼロ住宅
物価急上昇を背景に訴求力持つ費用ゼロ
 灯油、ガソリン、食料品など生活に密着したものの価格が軒並み極端な値上がりを続けている。住宅購入を検討しているユーザーも「これから先、もっと値上げが進むのか」不安と家計の引き締めに向かう中で、道内の住宅会社数社が時をほぼ同じくして提案を開始したのが「光熱費ゼロ住宅」をメッセージとする提案だ。
 今春、「光熱費ゼロ」をコンセプトに掲げたモデルハウスをオープンさせたのが千歳市の(株)協栄ハウス(石黒浩史社長)と道南・八雲町の(有)ノースランドホーム(山野内辰男社長)。そして(株)土屋ツーバイホーム(工藤政利社長)は札幌市手稲区明日風に建設中のスーパーEネットゼロエネルギーハウスを 6月26日、27日にメディア向け公開する。石狩市の(株)丸三ホクシン建設(首藤一弘社長)も近日公開に向け工事が最終段階に入っている。
 年間に使用する暖冷房や給湯・照明・家電の光熱費を、省エネ化と自然エネルギー・省エネ家電活用、エコライフの実践などによって、収支ゼロにできる「光熱費ゼロ住宅」というメッセージは、住宅会社が注意すべき点もあるが、何と言っても消費者に分かりやすく、ユーザーの関心・共感も得られやすい。


ノースランドホームの光熱費ゼロ住宅用チラシ
各社の提案
今年4社が建設
 協栄ハウスは、06年11月に建設したモデルハウスで無暖房に近づく挑戦を実施。熱損失係数(Q値)で0.7W、光熱費の実測、検証も行った。現在は新たに建設したモデルハウスで、年間3770kWh(シミュレーション)を発電できる太陽光発電を併用した光熱費ゼロ住宅を公開中。今秋にはさらにもう一棟を建設予定。
 ノースランドホームは熱損失係数(Q値)で0.627W、太陽光発電と省エネ家電などの併用による光熱費ゼロ住宅のモデルハウスを八雲町で公開中。室温や消費エネルギーの実測を行っているほか、北海道への移住希望者などに向け宿泊体験も受けつけている。
 土屋ツーバイホームは、カナダ天然資源省のスーパーEハウス・プログラムに基づきモデルハウスを建設中で、9月には一般向けの公開を行う予定(本紙6月5日付け記事掲載)。
 真空断熱材の併用や太陽光発電、地中熱利用ヒートポンプ、排水熱回収システムなど、モデルハウス自体は様々な技術の「てんこ盛り」だが、ユーザーへの提案は現実的に手の届くところからという提案も行っている。例えば太陽光発電システムの設置はイニシャルコストが下がってから実施する「数年後に実現するネットゼロエネルギー住宅」など。

土屋ツーバイホームの光熱費ゼロ住宅概要図
 丸三ホクシン建設は8面に掲載した。
 住宅会社にとって注意しなければならない点もある。ユーザーのライフスタイルなどによって消費エネルギーは大きく変動することもあって、「本当に光熱費ゼロが達成できるのか」という面で疑問を持たれやすい側面もある。そのため断熱性能や太陽光発電の発電量などを検証したうえで、光熱費の試算と実測、モデルハウス建設、体験宿泊の実施なども積極的に行う必要がある。
 また、イニシャルコストが高くなるため、ユーザーと話し合いながら、柔軟に提案できる力も必要になる。特にユーザーが期待している環境性能や、太陽光発電など特定の機器への憧れといった希望と、現実のギャップなどを十分にコンサルできなければトラブルを招く恐れもあるようだ。
 エコ意識の高いユーザーや、光熱費高騰に不安を感じているユーザーに実現可能な提案を行い、集客に結びつけるためには、光熱費ゼロ住宅による省エネ効果やCO2削減効果、居住環境の改善、コスト計算などの情報提供が必要になる。

ホームページや雑誌で特集
参加者を募集中
 本紙は現在、住宅会社との連携をはかりながら消費者目線でわかりやすい『光熱費ゼロ住宅』に関する専用ホームページを制作しています。
 光熱費ゼロ住宅の魅力、原油高や地球環境問題、住まいの省エネ対策の重要性などを様々な側面から紹介するほか、先進的な取り組みや実測データの公開、コラム、ユーザーインタビューなど各社の取り組みを取材・撮影し、わかりやすく随時掲載していきます。 
 また、7月末発行の住宅雑誌「健康住宅づくりIesu環境特集号」では、省エネ・エコ住宅の一つとして光熱費ゼロ住宅を紹介します。さらに先進事例をマスコミ向けに情報発信するプレスリリースも実施します。
 ユーザーに向け、光熱費ゼロ住宅の信頼できる情報を、住宅会社の自画自賛ではない方法で一元的に発信できる情報源として鋭意制作中です。
 宣伝広告などに大きな予算を用意できない住宅会社でも、良い取り組みに対しては、当社の取材編集力を活かして広報・集客面で応援したいという支援事業の一つと考えています。関心のある方はご連絡お願いいたします(Tel.011・736・9811、担当栗原)。

高性能住宅Q&A 納戸の設計
頻度によって分散
床下などは年2回程度のもの

上から物件A・物件B・物件C・物件D
Q…お客さまから収納についていろいろ提案を求められます。その中で納戸については住宅会社の皆さんどうされているんでしょうか。(札幌市 工務店社長)
 A…以前は納戸と言ったものですが、最近は「クラ」とか床下とか、いろいろに名前やかたちを変えながら、納戸はやはり大切な室内の収納空間であり、消費者に対して“売り”にもなる魅力があるようです。
 ご質問があってから、いくつかの例を調べてみました。床下や階間、小屋裏は図面に現れませんが、それ以外は図面上から納戸の取り方が見えます。
 まず、納戸とそれ以外の収納について、整理します。
 各個室にはクローゼット、キッチンには食器棚や食品庫、最近はリビングに小さな収納を用意する例も増えています。玄関に下駄箱とクローク。トイレにトイレタリー収納、脱衣にリネン棚、外部物置は除雪道具など。要するに、それぞれの空間にそれぞれの収納が必要です。そしてそれらのどこにも納められないものを入れる空間が納戸です。
 納戸とは、衣類や調度品を保管する室内の物置、みたいな意味です。採光や天井高の関係で居室にならない空間が納戸として使われます。
 一般的な家庭で、どんなものが納戸に収納されるか。ちょっとまとめてみました。
 趣味:ゴルフ、釣り、スキー(スポーツ)、キャンプ(アウトドア)、大工道具等。生活用品:季節もの(冬だけ使用・夏だけ使用・正月だけ使用など)、調度品、めったに使わないが保存するもの、季節の衣類、絵画など。
 季節のものや大工道具などは納戸ではなく屋外の物置にしまうケースもあるでしょう。
 多少の違いや家族数によって必要な空間は変わってきますが、これら全部を収納するには8畳はいりそうです。しかし家が小さくなっている現状で8畳を確保するのはかなり難しい。そこで、できれば納戸は1ヵ所でまとめたいけど、次善の方法として分散収納を考えます。
 収納できる場所は、下から順に床下、階間、小屋裏ということになります。
 これらの空間は一般的に基礎断熱、屋根断熱をすることで使えるようになる場合が多いと思います。それなりのコストをかけている空間ですので、使わない手はないと思います。ただ、いずれも天井高1・4M以下、床下に至ってはまさに腹ばいの低い空間です。あまり作業性が良くない。そこでこれらの空間には年に何度も取り出す必要があるものではなく、せいぜい2回程度で済むものをイメージし、お客さまにできればイラストをまじえて提案するとわかりやすいでしょう。
 頻度の高いものは納戸、年に2回程度のものは床下。両方で必要収納スペースを満たすという考え方です。
 最後に図面から。Aは2階寝室から続くウオーク・イン・クローゼットを兼ねた小屋裏(軒先方向)の納戸です。Bは2階に独立して設置した例です。45坪の広い家で全体にゆとりがあるため、独立して確保できた面もあります。
 Cはほぼ総2階の40坪ちょっとの家です。少し余裕があるので独立しかも窓つきの納戸です。Dは大屋根で建坪が17.5坪のコンパクトプランです。納戸は2階小屋裏の軒先方向に、平面上かなり広いスペースを確保しました。
 A~Dの物件はいずれも2階に納戸を設置しています。間取り上は多くの家がこうなるでしょう。そうすると、床下を活用する場合は、収納物を明確に分ける提案があるといいですね。

クロムフリー金物
カネシン 環境に配慮した防錆処理

両側から引き寄せる「ハイパーウイング」


たる木クランプをクロムフリーにした「たる木クランプ・Ⅱ」
 (株)カネシンは、金物表面の防錆処理に六価クロムを使用しない『クロムフリー』の建築金物「ハイパーウイング」を今月2日に発売、「たる木クランプ・Ⅱ」は7月1日に発売する。
 六価クロムによる周辺土壌汚染の懸念など、環境面への配慮から『クロムフリー』金物を開発した。環境に関心のある住宅会社からの要請も強くなってきたという。
 「ハイパーウイング」は、羽子板ボルトが片方向の引きつけしかできないのに対し、M12ボルトを介して2つの金物を相互に引きつけあうことができる羽子板同等金物で、横架材相互の締め付けなどに使用する。ハウスプラス住宅保証(株)による性能試験で、短期基準接合引張耐力10・5kNを記録。告示第 1460号第2号では「へ」に該当する。金物は、日新製鋼(株)が開発した合金めっき鋼板ZAMを使用。
 「たる木クランプ・Ⅱ」は、たる木と母屋・軒桁・棟木の接合に使用するたる木止め金物。たる木のサイズや勾配に応じて9種類を用意。Z金物のひねり金物 ST-12と同等認定を受けている。本体材質はZAM。なお、従来販売していた「たる木クランプ」は6月末で廃番となる。
 価格は、ハイパーウイングが160円(税別)、たる木クランプ・Ⅱが78円(税別、38×150ミリサイズの場合)。
 問い合わせは、同社住宅資材事業部(東京都葛飾区奥戸4丁目19-12、Tel.03・3696・6781)。

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