平成20年5月25日号から
昭和の長屋再現
北一タカハシ建設 高齢者向け賃貸に参入
 2030年には道内人口は100万人減少し、当然新築住宅のニーズはますます減少する。少子高齢化社会でも必要とされる住宅会社とは何か。高齢者向け(円滑入居)賃貸住宅に独自のコンセプト提案で参入した(株)北一タカハシ建設にスポットライトを当てた。


和のテイストを重視した外観
“コミュニティ”が鍵
 社寺建築を主力業務とする札幌市白石区の建設会社、北一タカハシ建設(?橋一彦社長)が次の営業戦略として捉えたのは、自社の「宮大工による和風建築の良さ」をフルに活かすことができ、ニーズも高まる高齢者向け賃貸住宅だ。
 このほど、同社は高齢者向け賃貸住宅「コミュニティNAGAYA北郷」を白石区北郷1条1丁目に建設した。
 企画のきっかけは同社社員の経験だったという。母親が高齢者ばかりが暮らす賃貸住宅で近隣同士仲良く助け合って暮らしていて、息子としても安心できるというところからスタートした。
 和風建築、昭和の長屋のようなコミュニティづくりを高齢者向け賃貸住宅で実現する提案活動を開始。社会貢献につながる事業がしたいという地主さんの心にもその想いが響いた。


食堂。右の扉は居室


Cタイプの居室
木造・和風・庭園・昭和
 廊下は1階がかくれんぼ横町、2階が福笑い横町と昭和の遊びにちなんだ名前が付けられ、各居室には番地が付き、表札も立つので郵便は「福笑い横町2番地」で個室に届く。
 建物は木造2階建ての在来工法。延床面積は686m2で建築費は約1億1千万円。玄関にはヒノキの柱、和室の造作材はスギ、壁には和紙のクロスを採用するほか、専門技能者の集まり「和匠の会」のメンバーが建具、表札、金属製の装飾などを製作した。
 居室は10室あり、Aタイプは10帖のリビングダイニング、5帖の洋間のほかキッチン、浴室、トイレなどが付いて家賃・共益費・管理費で9万7750円。BタイプやCタイプは和室が加わる。
 共有スペースの管理室にはNPO法人「北海道たすけあいワーカーズ・むく」が入居し生活・健康相談などをサポートするほか、希望者は食堂「佳松庵」で食事の提供も受けられる。茶室、茶庭、果樹や花、樹木、家庭菜園などのスペースもある庭もある。
 省エネ性能に関しては外壁がウレタンフォーム吹きつけ70ミリ、床・天井が押出スチレンフォーム75ミリとウレタンフォーム吹きつけ50ミリ。セキュリティは静脈認証によるオートロック、セコム提携による24時間監視システムを備える。
 同社では「高齢者の孤食、独居などは大きな社会問題。他の高齢者専用賃貸住宅に多いコンクリート造や狭い空間ではなく、木をふんだんに使った住まいでコミュニティが自然に形成される仕掛けを工夫している。社内に介護福祉士などのスタッフもおり、今後も高齢者のニーズを踏まえた取り組みを行っていきたい」としている。

高齢者向け専用住宅とは?
 平成13年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が施行。満60歳以上の高齢者という理由だけで入居を拒否されない賃貸住宅で、都道府県または都道府県の指定登録機関(北海道は北海道建築指導センター)に登録されたものを高齢者円滑入居賃貸住宅という。高齢者に限らず60歳未満の人も入居できる。
 平成17年12月に法改正が行われ、高齢者だけが入居できる住宅で指定登録機関に登録されたものを高齢者専用賃貸住宅として定めた。
 登録は任意だが、助成措置として建設・改良費補助、家賃対策補助、税制・融資の優遇措置、利子補給等がある。登録物件の検索は、北海道建築指導センターホームページまで。 
 なお介護・配食サービスなどを前提とする施設は厚生労働省の管轄。国土交通省の定める上記仕組みでは登録できない。
http://www.hokkaido-ksc.or.jp/

道内 依然として多いスガモリ
全国は窓まわりなど
保証事故の傾向と来年
 来年10月から10年瑕疵(かし)保証を保険などで裏付けることを義務づけた新しい制度がスタートする。ほとんどの住宅会社は保険に加入することになると見られるが、現状で任意加入の瑕疵保証保険はどのような事故に対して保険料を支払っているのか。
 全国的には外壁の雨水浸入事故が多く、特に窓まわりや換気口まわり、バルコニーと外壁の取り合いが原因と見られる事故が多いとされる。
 窓まわりについては、北海道との施工手順の違いが事故原因の1つとなっていると指摘する専門家もいる。
 こういうことだ。北海道では通常、建て方が終わり、外壁下地の構造用合板などを張る。その後にすぐ透湿・防水シートを施工し、そののちサッシを取り付ける。このためサッシまわりの防水はツバと透湿・防水シートを上からテープ止めするかたちになる。
 一方、本州以南ではサッシと透湿・防水シートの施工順が逆、つまりサッシを取り付けてから透湿・防水シートを張る手順が多いという。そうするとサッシまわりの防水は北海道のようにツバと透湿・防水シートを上からテープ止めすることができない。
 各種仕様書でこの部分の防水が、両面テープを使ってツバの上から透湿・防水シートを密着させる納まりになっているのはこのためだ。
 しかしこの施工がなかなか現場では難しい。
 またバルコニー防水も問題が多いとされる。(株)クワザワがEPDMゴム製の防水カバーを開発・発売した(4月25日号7面で既報)のもこういった背景がある。


M型スノーダクト屋根に改質アスファルト系防水シートを使った札幌市内の現場。ただ、コストの問題もあり、普及していない
減らないスガモリ事故
 一方、北海道では屋根の防水が依然として問題となっている。北海道建築指導センターによると、細かく分析はしていないものの、事故件数としては屋根と外壁の雨水浸入が多く、次に構造関係という順。件数では屋根、金額ベースでは修理の際の施工面積の関係で外壁となる。
 屋根が多い理由は、M型またはフラットの無落雪屋根で起きるスガモリ。スガモリが雨水浸入かどうかは難しいところがあるが、住宅性能保証制度(住宅保証機構)ではスガモリも保証事故の対象としている。
 スガモリの原因は1つではないが、全体の傾向として施工ミスを防水シールでごまかす、原因を突き止められないまま改修し、事故が再発する―ケースが見られるという。釘での打ち抜きをシールでごまかし、事故につながった初歩的ミスも見られる。
 また外壁では、最近の住宅は軒がほとんどないため雨に弱く、換気口の開口部からの雨水浸入がひどくなるケースもあるようだ。

新制度で基準見直しも
 来年10月の新制度開始へ向け、瑕疵保証保険を取り扱う保険法人の指定がすでに始まっている。保険料を低く抑えるためには事故の発生を減らす必要があり、そのための図面や施工検査の態勢も決まる。

取材ノート

200年住宅狂騒曲

 昨年自民党が「200年住宅」をブチ上げてから、住宅業界が騒がしい。特に道が補助金事業の受け皿となって応募者を公募したことで、ビルダーは情報を求めて右往左往。ホンネは様子見でも、「とりあえずエントリーしないと損するのでは」という心理もある◆しかしあまりにも時間が足りなかったせいか、道の募集スケジュールは唐突で地方在住のビルダーには不評だった。また、補助金の出る時期が遅いことや金額が未定など、現状の国のやり方はお粗末◆明日が見えないビルダーが補助金の誘惑に飛びつくのは当然の心理。一方で4号物件の特例廃止や、瑕疵担保責任保険の加入など、頭の痛い問題も目前に控えており、補助金に注意がいきすぎても困る。『農業問題と同じで、経営規模の小さな会社をふるい落とそうとしている』と不信感を持つビルダーも少なくない。政策目標は壮大で素晴らしいが、地道に努力して耐久性の高い住宅を建ててきた零細ビルダーを評価できる仕組みがないことに疑問を感じる。(K)。

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