平成19年8月5日号から
建築確認・その後
増える負担、偽装抑止力は?
改正法施行から1ヵ月
 耐震強度偽装事件の再発防止を目的とした改正建築基準法の施行から1ヵ月あまりが経過した。厳しく審査されることになった建築確認は、申請量が前年同期と比べて大幅に減少。そのためか現時点で特に大きな混乱は起こっていないが、一方では今まで提出する必要がなかった書類の添付にともなう事務作業の増加などに不満をあらわにする住宅業者もいる。改正法施行からこれまでの建築確認作業の様子について、行政・住宅業者・設計事務所の声を聞いた。


札幌市における改正法施行後の確認申請等の流れ(構造計算適合判定を伴わない場合)
申請量は大幅に減少
 「これまでより申請量はかなり少なくなっている。そのためか問題が起こったという話も聞かない」(道建設部建築指導課担当者。以下道建設部)、「申請件数はかなり少なくなった印象だ。昨年の6月下旬~7月の6割程度ではないか。特に混乱や問題が生じることはなく、静かにすべり出したと言えるのでは」(札幌市建築確認担当者。以下札幌市)。
 このように改正法が施行された6月20日以降、各行政庁では確認の申請量が大きく減少。中でもマンション、木造アパートは改正法施行前に多くの駆け込みがあったため、その反動で現在はかなり少なくなっているという。改正法施行で「混乱を招くのでは」と懸念する業界関係者もいたが、今のところトラブルがあったという声は聞こえてこない。
 2階建てや平屋の木造住宅、いわゆる四号物件に関しては、実質的な審査内容は従来と同じとなったため、マンション・木造アパートほど減少していないが、それでも前年同期より落ち込んでいる。その中で今回の法改正で木造とRC造の混構造は両構造の構造計算書の提出が求められるようになったせいか、「見ている限りではまだ一つも申請がない」(札幌市)とのこと。道内のある構造設計事務所は「道内で木造とRC造の両方とも構造計算および構造チェックができる設計事務所は限られている」と話しており、住宅会社側が構造計算をどこに頼んだら良いのかわからないといったケースも考えられるだろう。

9割に軽微な不備
 木造3階建てについても札幌市ではまだ申請が出ていない模様(7月26日時点)。これは従来の国土交通大臣認定構造計算ソフトが使えなくなったことや、構造計算ルールの見直しなどが影響しているとの指摘もある。ちなみに7月下旬時点でまだ国交省大臣認定を受けた構造計算ソフトは存在しない。
 実際の確認審査の状況はと言うと、「全体の9割に軽微な不備がある」(札幌市)と言い、木造住宅では申請書の誤記や北側斜線制限の真北・角度の未記入が目立つという。軽微な不備については、申請者、つまり建主に対して補正を求める通知書が送付され、自治体によっては設計者に直接電話などで連絡することもあるようだ。
 また、業界関係者の一部では外装材の変更など着工後の仕様変更がどう取り扱われるのかを不安視する声も出ていたが、「不燃材が準不燃材になるといったように性能が変わるのであれば計画変更の申請が必要だが、そうでなければ完了検査の申請書にある軽微な変更の欄に記載してもらえればいい」(道建設部)としている。


建築物の規模による構造計算の方法と確認審査の方法(北海道の資料より)
書類増加に不満の声
 申請(代行)する側である住宅業者などは、改正法施行でどのような影響を受けているのか。最もよく聞くのは提出書類の増加にともない準備に手間暇がかかるようになったという話だ。「建築士免許や外装材の防火認定書のコピーなど、提出書類をいろいろ用意しなければならなくなったが、ここまで本当に必要なのか」(札幌・工務店)、「コピー代だけでもけっこうな費用になるし、日本全体で見れば巨大な資源の無駄づかいにも思える」(道南・設計事務所)など、疑問の声は多い。
 さらに「民間の確認検査機関の1社に審査期間を問い合わせたところ、事前審査に1週間、本申請に1~2週間と言われた」(札幌・工務店)、「受付時の記載事項チェックに1時間近くかかるようになった」(道東・工務店)など、時間的なロスが増えたことに不満を持つ業者もいるほか、「構造計算適合性判定が必要な大型物件では、法定審査期間が最大70日まで延長できるようになったため、当初計画していた時期に着工できない物件が出てくることも考えられる。そうなったら建主に遅延損害補償を請求されるケースも出てくるのでは」、「すべての住宅業者が今回の改正法の内容を理解し対応できるかは疑問」(いずれも札幌・設計事務所)という指摘もある。
偽装はなくなる? 建築確認にかかる負担の増加もエンドユーザーのためならいたしかたないが、最大の焦点は今回の改正法施行が耐震偽装の抑止力になるのかどうかという点だ。
 四号物件に関しては「住宅会社の負担は増えたが、少なくとも建主の知らないところで申請書類や図面が改ざんされるなどのトラブルは減ると思う」(札幌・工務店)という面もあるが、「耐震偽装防止とは直接関係ないところばかりチェックされ、実際の壁量など肝心な部分はチェックされない。これで本当に建主のためになるのか」(道南・設計事務所)など疑問の声も多い。建築士免許の写しの添付などによって誰が最終的に責任を取るのかを明確にしただけだと言う業界関係者もいる。
 改正法施行後の確認申請がこのまま大きな混乱なく定着するかどうか、耐震偽装に対し実効力を発揮するのかどうか、結論が出るのはもう少し先になりそうだ。

FSC材使用に補助
美幌町 地場の森から製材、施工の環

美幌町内の人工林の7割を占めるカラマツ。今回の助成制度で使われるFSC材はカラマツ集成材が中心になる
 道東・オホーツクに位置し農林業を基幹産業とする美幌町では、環境や経済に配慮して適切に管理されている森林を示すFSC認証を受けた町内の森林の有効活用と地元経済の活性化を目的として、町内産のFSC認証材を使った住宅の新築・増改築を町内工務店の施工で行うユーザーに対し、その費用の一部を助成する「美幌町産材活用住宅助成事業」を今年9月から開始する。
 美幌町は行政面積の約62%が森林で、早くから林業振興に力を入れていたが、安価な外材の普及などを背景に林産業の衰退と森林資源保全の危機を迎えたことから、平成16年に林業関係者や商工業者、自然保護団体などで組織する「未来を拓く森林づくり協議会」を設立し、森林を地域資源として積極的に活用する方法を検討してきた。
 その中で森林だけでなく、住宅などに至るまでFSC認証の活用を考え、平成17年には美幌町森林組合が代表となり町内の民有林約3000haのFSC認証を取得。道内では道北・下川町の森林に続き2番目の認証取得となる。さらにこのほど町内の工務店4社と製材業者2社もFSC認証材の加工・流通過程の管理認証であるCoC認証を取得したことで、地域内で循環するFSC認証材の地材地消の仕組みが完成。これを機に美幌町は住宅への助成事業の展開を本格的にスタートさせた。

1m3当たりに3万円
 助成にあたっては、美幌町に居住または居住予定のユーザーが、町内で生産されたFSC認証材を使い、CoC認証を取得した町内工務店で新築・増改築すること、FSC認証材は床面積1m2あたり0.m31以上、総使用量で10以上使っていること、延床面積70m2以上で北方型住宅レベルの良質な住環境を備えた住宅であることなどが条件。町ではFSC認証のカラマツ集成材と輸入集成材との価格差を最大2万5千円/程度と見ており、競争力を持たせるためにFSC認証材使用量1あたりの助成額を3万円に設定。総使用量25を上限とするため最高で75万円となる。
 今年度は助成額が1件60万円として、5件分を見込み、300万円を予算として計上。
 同町の試算によると、延床面積35坪程度の新築住宅を在来工法で施工した場合、木材標準使用量は1m2あたり0.18m3、全体では20.88m3となる。このうち約7割を占める構造材をすべてFSC認証のカラマツ等の集成材に置き換えた時の総使用量は約14.6m3となり、助成額は14m3に3万円をかけた金額=42万円となる(総使用量の小数点以下は切り捨て)。安定供給や認証取得も支援 美幌町内の人工林の7割がカラマツで、残りがトドマツやアカエゾマツとなっているため、FSC認証材はカラマツ集成材が中心となるが、CoC認証を取得した企業が他の樹種も含めて内装用のパネルなどを商品化すれば、助成対象として認められる。

このほどCoC認証を取得した?橋工務店では、一昨年12月に地元のカラマツ集成材を使った住宅を施工。室内には梁と火打ちを現しにした
 今後はFSC認証林の拡大や認証材の安定供給、CoC認証取得企業の増加などが課題となるが、同町では町有林の伐採・売り払い期間を現行の1年から2年に延ばすことで、冬期を含め年間を通じたFSC認証材の安定供給を考えているほか、CoC認証取得に関しても申請に必要な書類の作成などをバックアップしていくとしている。
 同町経済部の林務担当者は「町内の森林資源に付加価値を付けて有効活用することにより、地元経済を活性化できればと考えている。地元工務店にとっても差別化の手段になると思うので、モデルハウスなどを通じてカラマツなど地域材の良さを積極的にユーザーに伝えてもらいたい」と話している。
 また、このほどCoC認証を取得した同町の(株)?橋工務店(?橋文三社長)・?橋広明専務は「美幌町は北見市と網走市の間に位置していることもあって町外のハウスメーカーや工務店の進出が目立つが、今回の助成制度をきっかけにしてその流れに歯止めをかけることができればと思う。FSC認証材の使用については町民の方たちの間に浸透させるため、強度的なメリットなどカラマツの良さを積極的にアピールしていきたい」と語っている。


地場工務店が結集
e-ハウジング函館 力合わせ21区画の土地分譲

手前から渋谷建設、マルサ佐藤建設、ノースランドホームのモデルハウス
 函館とその周辺地域の地場工務店グループ「e-ハウジング函館」が宅地造成し5月から販売を開始した「追分サスティナブルビレッジ」(函館に隣接する北斗市・21区画)が好調だ。工務店が力を合わせて宅造まで手がけることで、ハウスメーカーやデベロッパーと対抗する大きな力が生まれようとしている。

過半数すでに契約
  「e-ハウジング函館」は、家づくりを地場産業として発展させ、消費者に安心して住める高性能住宅を適正価格で供給するために地場工務店が結集し活動しているグループ。共通した悩みは、一次取得者のための宅地の手配。函館市内と近郊の分譲地は多くが建築条件付で、工務店が入りこむ余地はない。だからといって1社で宅造をするにはリスクなどが大きすぎる。数社が力を合わせることで土地の分譲ができないかとアイデアを練り、メンバーがそれぞれ宅地の取得や造成、広告宣伝などを役割分担し段取りを進めてきた。

マルサ佐藤建設と渋谷建設が7宅地ずつ、ハウザー3宅地、葛西建設2宅地、ノースランドホーム2宅地で合計21区画を販売する
 建設地は北斗市追分4丁目で、周辺でもハウスメーカー各社が数多く宅地を分譲している新興住宅地。「他の分譲地では坪12万円前後の物件が多いが、今回の物件は平均では坪8万円程度。土地を安くできたのは、住宅提供が目的なので土地の販売益が不要であること、造成工事は冬場の忙しくない時期に専門工事業者に依頼しコストダウン、様々な段取りをメンバーが自ら汗を流したことによる。工務店グループとしては前例のない取り組みだと思うが、銀行融資も受けることができた。完売が早まれば地主さんにもメリットが大きく、この物件が好調なのが噂になって、次回以降のための土地情報も集まりやすくなった」と同会の渋谷旭会長(渋谷建設(株)社長)。

ハウスメーカーに対抗できる提案力
 今回は初めての取り組みということもあり、多くの制約を設けなかったが、将来まで見据えた美しい街並み作りをどのように実現させるかを大きなテーマにかかげ、道路からのセットバックを2mとしたほか、植栽・外構工事を上限15万円までe-ハウジングが負担、シンボルツリーや植栽を義務化し、インターロッキングやウッドチップで足下を統一するなどの対応を行っている。

7月28、29日に2回目のイベントを実施。道の協力を得て北方型住宅のセミナーも開いた
 その他にも全戸北方型住宅対応、オール電化住宅対応を行っている。
 (株)マルサ佐藤建設の佐藤昌博社長は「協力業者は会員各社の取引企業から見積もりを取り安値の会社に工事全量を発注してコストダウン。お客様がメンバー内の他社に関心を持った場合には商売敵とは考えず、それぞれの会社の良さ、e-ハウジング函館の特徴を伝え、他社のモデルハウスも案内することで営業的にも助け合いができている。上下関係のない社外のメンバーと議論することで社内からは出てこない様々なアイデアが実現できた」と手応えを話す。渋谷会長は「土地が割安な分、建物にお金をかけやすく街並みも良くなる。今回の実績がお客様はもちろん工務店、地主、協力会社や銀行にとっても自信になり、次回以降の取り組みに結びつくと思う」と手応えを話している。
 7月28日には渋谷建設、マルサ佐藤建設、(有)ノースランドホームのモデルハウス3棟がグランドオープン、28、29日合計で150名が来場した。29日には北斗市総合文化センター「かなでーる」で北海道建築指導センター相談員の奈良顕子さんによるセミナーなども開催された。
 同グループでは年度内に完売し次回分譲に着手する計画。
 会員は以下の通り。
 渋谷建設(株) (株)葛西建設 (有)ノースランドホーム (株)ハウザー (株)武田工房 田島木材(株) (株)マルサ佐藤建設 (有)ささや工務店 三協立山アルミ函館営業所
ホームページ:http://www.e-housing-h.com/

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