平成19年7月5日号から
住宅の温暖化対策 省エネ設備が課題
暖冷房や給湯など
2008年度から見直しへ
北海道の住宅のエネルギー消費の内訳(本紙推計)
北海道では暖房が50~60%を占めるが、給湯、その他のエネルギーも省エネを考える上で無視できない。今後は高効率給湯器や省エネ型電灯・家電なども重要になる
 5月29日に公表された日本の2005年度温室効果ガス排出量等の確報値によると、温室効果ガスの総排出量は13億6000万トンで京都議定書の基準年である1990年比で7.8%上回っている。排出量が大きく伸びている民生部門のうち、住宅についての現状と今後を、社会資本整備審議会の環境部会がとりまとめた中間素案から見ていきたい。これらは今年度中に評価を終え、2008年度から対策を実施、2010年度の目標達成を目指す。

家庭部門が37%も増加
 新築住宅の次世代省エネルギー基準達成率は、2005年度で30%。2007年度で44%と推定され、目標値である2008年度50%はおおむね達成可能としている。
 ところが家庭部門のCO2排出量は基準年に比べて36・7%も増加し、対前年比でも4%増加している。これは対策が進む一方で、大型テレビやパソコンの普及、生活の24時間化など、ライフスタイルの変化が影響していると分析。
 目標達成に向けては、利便性や快適性を追求しながらも一人一人がライフスタイルを見直し、省エネによる経済メリットやインセンティブの付与も重要としている。
 住宅分野では省エネのいっそうの強化が必要としながらも、「現状の高い断熱性・気密性の確保を要する基準は、木造軸組住宅など構法によっては、施工の手間や技術水準の確保などの課題」があり、「コスト負担に配慮し、地域の気候風土、住文化を取り入れた評価方法の開発や基準の検討が必要」としている。

給湯設備なども対象に
 さらに注目すべきはこれまで対象となっていなかった建築設備も含め、総合的に省エネを推進していこうという考え。
 躯体の断熱性能に加え、暖冷房設備、給湯設備、その他のエネルギーを総合的に評価する手法を開発・基準化するとともに、対応する技術開発を推進することになる。
 既存住宅については改修コストも大きいことから、外壁・天井・床の断熱改修、給湯システムの改修など部分ごとの改修や、主要な居室のみの改修など、取り組みやすく効果的な方法を開発するとともに、インセンティブの付与を検討する。

改正基準法施行後の声
穏やかな滑り出し
混乱はないが課題は残った

一般的な木造の2階建てについては構造計算書などの資料添付は不要になった。ただ、木造住宅でも耐震性能が不足した住宅が多数みつかっており、今回の改正でそのようなケースを防ぎきれるのか、課題が残ったとする声もある(写真はイメージです)
 先月20日から施行された改正建築基準法は、施行前は大混乱も予想されたが、木造の2階建てや平屋などいわゆる4号物件については、書類が増えるなどの様式変更はあるものの、実質的な中身は変わらなかった。書類の不備についても、当初は混乱を避けるために柔軟に解釈し、窓口側と建築士側で相談しながら徐々にルールを作っていくという流れになっているようだ。
 施行後の状況について設計者と確認窓口に話を聞いた。
 今回の建築基準法改正は、耐震強度の偽装事件に端を発し、建物の安全性を確保し事件の再発を防止する目的で行われた。このため、4号物件でも構造計算書が必要になるという憶測が飛び交ったが、そうはならなかった。
 「検査の厳格化はいいと思う。ただ、実施すれば民間の建築業界が混乱するだけでなく、行政など確認窓口側の人員、審査能力などの問題も大きかったのではないか」、と指摘するのは道内のある設計事務所。じっさい、確認担当部署の職員は施行に備えて構造の勉強を始めていたという話も聞く。
 「悪質な業者から消費者を守る仕組みは必要。しかし従来は建築士の責任で構造設計するとしていた制度をやめれば、責任はチェックする確認窓口側にもかかってくる。そういった末端現場の状況を国土交通省は把握せずに基準整備を進め、けっきょくは従来通りに落ちついたのではないか。悪質な業者はごくわずかとはいえ、課題は残ったと思う」と指摘する。
 「そもそも構造は軽く見られている。お客の要望にこたえ、期待以上の大胆な提案をするためには、構造の無理を承知で設計する。『お客のために』と構造の安定性を重視していると仕事がとりにくい。やったもの勝ち、では安全は確保できない」という声もある。

混構造が減り純木造が増える?
 構造面では、1階がRC造、2階以上が木造などの混構造で両構造の構造計算書が必要になった。今回の改正施行では唯一、厳しくなった点だ。
 札幌などでは混構造の3階建て、あるいはそれに近い3層構造がたくさんある。そしてほぼすべての物件で接道に面して車庫用の大きな開口がある。
 札幌の例では、1階の開口が特別に大きいとき以外は、これからはなるべく混構造を避けて純木造で提案するという声も聞く。
 大きな関心を集めた書類の不備についての取り扱いだが、現状では柔軟に対応する方向で、事前に確認窓口と建築士が打ち合わせをしながら進めているようだ。また、確認を差し戻すときも費用負担が少ないように配慮する、という窓口もあるという。この点については実務経過の中で徐々にルールが作られていくことになりそう。
 なお、軽微な不備については補正が認められているが、窓口担当者によると当初の予想以上に軽微な不備が多いという。
 今回のごたごたは、改正基準の細目が発表されたのが施行日当日、という準備期間のなさに原因があった。細目がわからないため、いろいろな憶測が飛び、窓口も施行日まで身動きできなくなるという状況になった。逆に施行日までに確認がおりるよう、駆け込みも発生し、大混乱に拍車をかけた。
 施行から約1週間が過ぎた段階で、審査はいままでより時間がかかっている。
 「もう少し準備期間を持ってスムーズな施行を指導してほしい」これはすべての関係者の声だ。

TJIにサイズ追加
ウェアーハウザー・ジャパン 標準設計施工仕様書も改訂

改訂された標準設計施工仕様書
 ウェアーハウザー・ジャパン(株)トラス・ジョイスト部門は、木製I型梁「TJI」に梁せい241ミリと同302ミリを追加した。また合わせて、標準設計施工仕様書も改訂版を作成した。今後、時間をかけて主力品にしたい考え。
 TJIは、LVLの角材の間にウェブと呼ばれるOSBを挟み込んで一体化した剛性の高いI型複合梁で、梁せい235ミリや286ミリの製品は210や212サイズのツーバイフォー材の代わりとして床や屋根組みに使う。軽量で寸法安定性にも優れているため、採用する会社が増えてきている。
 今回追加された梁せい241ミリと302ミリの製品は、アメリカでの主力商品で、今後は日本向け商品もこのサイズを中心に販売したい考え。これまでは、日本のツーバイフォー製材に合わせた梁せい235ミリや286ミリサイズをアメリカの工場で生産していたが、アメリカ向け製品と生産ラインをいったん切り替える必要があったため、価格や安定供給の面でより有利になるアメリカ向けサイズの供給も決めた。

軽量で寸法安定性の良さなどが評価されて床組みに使用するビルダーが増えている
 また、梁せいがアメリカサイズになることで、現地の豊富な梁受金物も使えるメリットがあるという。日本で在来軸組用にZ金物同等品が多数販売されているのと同様、アメリカでも施工性などを考えてさまざまな梁受金物が販売されているからだ。
 さらに梁せい302ミリの製品は、床根太として使い455ミリピッチで2間半スパンを実現でき、配管用のダクト穴も直径225ミリまで開けられる。
 問い合わせは、同社(Tel.03・5772・4761)へ。

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