平成19年5月25日号から
自然塗料も使用時の養生が大切
東京都のテストでホルムアルデヒド
 多くの人が安全だと思っている自然塗料からも乾燥中の化学変化によってホルムアルデヒドが発生することを、このほど東京都が確認・発表した。それによると自然塗料7製品のホルムアルデヒド放散量をテストした結果、5つの製品がF☆☆相当、1つの製品がF☆☆☆相当であったことが判明。塗布中・塗布後の十分な換気や使用方法・使用量の遵守を呼びかけている。

東京都がテストした自然塗料とJISのデシケータ法によるホルムアルデヒド放散量の試験結果(東京都の参考資料を一部改編)
検体名 用途 ホルムアルデヒド放散量
平均値(mg/リットル)
試験結果に基づく
放散等級分類
メーカーが行って
いた任意表示
自然塗料1 屋内用 0.10 F☆☆☆☆相当 記載なし
自然塗料2 屋外用 0.14 F☆☆☆相当 記載なし
自然塗料3 屋内・屋外用 0.85 F☆☆相当 記載なし
自然塗料4 屋内・屋外用 0.79 F☆☆相当 F☆☆☆☆
自然塗料5 屋内木製品用 0.98 F☆☆相当 F☆☆☆☆
自然塗料6 屋内木製品用 1.8 F☆☆相当 記載なし
自然塗料7 屋内用 1.1 F☆☆相当 記載なし
※ホルムアルデヒド放散等級は、F☆☆☆☆=0.12mg/以下、F☆☆☆=0.35mg/以下、F☆☆=1.8mg/以下
・自然塗料1…植物油、溶剤(非石油系)からなるもの ・自然塗料2…植物油、溶剤(非石油系)、顔料からなるもの ・自然塗料3…樹脂、植物油、ワックス、顔料などからなるもの ・自然塗料4…植物油、植物アルコールなどからなるもの ・自然塗料5…樹脂、植物油、顔料、溶剤(非石油系)からなるもの ・自然塗料6…亜麻仁油100%(油脂塗料) ・自然塗料7…荏油100%(油脂塗料)
乾燥中に化学変化
  自然塗料は植物性油脂や天然樹脂などを主原料として作られている塗料。天然素材だけを原材料に使っているので平成15年7月に施行された改正建築基準法、いわゆるシックハウス新法の適用対象外であり、Fと☆による等級表示の義務や使用制限はない。
 ただ、自然塗料は乾燥過程で植物性油中の成分が化学変化を起こし、微量だがホルムアルデヒドが発生することもあるため、東京都では自然塗料から発生するホルムアルデヒドについて、一般消費者へ情報提供を行うことを目的にテストを実施した。
 テストは市販されている屋内(木製品)用6製品、屋外用1製品、合計7製品のホルムアルデヒド放散量をJISに定められた試験方法で測定。その結果、5つの製品がF☆☆相当、1つの製品がF☆☆☆相当のホルムアルデヒドを放散することがわかった。F☆☆相当となった5製品のうち2つの製品は、自主的にF☆☆☆☆の表示を行っており、日本塗料工業会が独自にホルムアルデヒド放散量をF☆☆~F☆☆☆☆で表示するホルムアルデヒド自主管理登録商品でもあった。

※木材に塗った自然塗料からのホルムアルデヒド放散速度の試験結果(東京都の参考資料より)
 また、7製品をそれぞれ木材に塗布し、1日後、3日後、7日後、21日後に塗布面からのホルムアルデヒド放散速度を調べたところ、いずれもホルムアルデヒド放散量は1日後が最も大きく、3日後には大幅に低下。7日後にはさらに低下し、21日後にはほとんど放散がなくなるという傾向にあった。

自社測定・表示も問題
 この結果について、外国の自然塗料を扱っている国内輸入販売代理店の一社は「自然塗料でも合成塗料でも乾燥過程でホルムアルデヒドが出ないものはないと思う。当社では第3者機関に測定を依頼し、F☆☆☆☆相当であることを確認・表示しているので問題はないが、他社の自然塗料の中には自社測定の結果をもとに等級表示を行っていたものもあり、表示の信頼性が担保されていないという問題もあった」と話す。
 なお、日本塗料工業会では東京都のテスト結果を受けて、4月27日にホルムアルデヒド自主管理要領を改正。登録塗料分類に「天然系塗料」を新たに設け、登録・更新時には第3者機関による試験証明書の提出を義務化するとともに、年1回全商品の測定データを含む資料提出などを定めた。

乾燥が遅いので換気を十分行う
 道立林産試験場性能部接着塗装科の秋津裕志課長は「自然塗料は何十種類という自然由来の成分を使用しているので、それらを一つ一つ問題があるかどうかをチェックするのは難しい。例えば亜麻仁油100%だとしても、実際に植物などから抽出する時にいろんな不純物が混ざっていたり、加工過程で変質しているかもしれない。使用するうえでは合成塗料と同じく換気をすることが大切。特に自然塗料は乾燥が遅いので、塗布後の換気期間を長く取りたい」と話している。

ホームページ:http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2007/04/60h4o101.htm

高性能住宅Q&A 冬季竣工でVOC濃度が高い3
トルエンは下がる
ベイクアウトを1週間程度

赤ちゃん用の塗装品木製おもちゃにトルエンやキシレンを放散するものもあるといわれる
 前号ではアセトアルデヒドの原因と対策についてまとめました。今回はトルエンです。
 アセトアルデヒドよりトルエンのほうが原因がわかりにくいようです。冬場は低温のため工事中はやはり蒸発しにくいのですが、引き渡し間際に暖房を入れて温度が上がり、トルエンの蒸発が進むからと考えるのが妥当なようです。
 またノントルエンの塗料を使っても溶剤として現場でトルエンを混ぜてしまうケースがあるようです。これも1つには寒さの影響でしょう。ただ、トルエンはベイクアウトがよくきくので、1週間程度のベイクアウトで濃度は低下するケースがほとんどのようです。

ベイクアウトについて
 条件として高断熱・高気密で機械換気0.5回/h以上を確保できること。室内温度は30℃程度(それ以上温度を上げると建具の狂いやクロスのしわなどが心配)。換気能力については、0.6回程度まで増やすと期間短縮できるといい、急ぐ場合はセントラル換気と同時にレンジフードを回すとよい。
なお夏場は施工中の室温も高いので、化学物質の抜けが速いといわれている。
 このほか、冬場の現場ではジェットヒーターなど暖房器具を使用しますが、燃料の灯油からはテトラデカンが発生すると言われています。テトラデカンは厚生労働省が指針値を定める化学物質の1つで、指針値は0・04ppmです。
 アセトアルデヒドもトルエンも共通して大切なのは、現場管理です。設計仕様では問題なくても、化学反応や現場作業で濃度が高まることがあるからです。現場でVOC対策を徹底するとともに、竣工後に化学物質の濃度測定を実施することが、改善への重要な取り組みと言えます。
(終)

〔参考〕
アセトアルデヒド:低温では無色透明の液体(沸点:21℃)で、引火性がきわめて高い物質です。水、アルコール、エーテル、有機溶剤に溶けやすく、多くは、塗料、印刷インキなどの溶剤に使われる酢酸エチルの原料として使われています。この他、酢酸、過酢酸、無水酢酸などをつくる原料として使われたり、防腐剤や防かび剤、写真現像用の薬品などとしても使われています。最近では、合板の接着剤など、ホルムアルデヒドの代替品としての需要が増えています。
 また、アセトアルデヒドは果実などに含まれており、天然にも存在する物質です。低濃度ではフルーツのような香りがあることから、香料としても使われています。欧米では清涼飲料、キャンディなどに添加されています。日本でも、香料として食品に添加した際の安全性が審議され、2006年5月から、香りをつける目的で食品へ添加することが認められました。
 なお、アセトアルデヒドは車の排気ガスやたばこの煙にも含まれているほか、アルコールが体内で代謝されるとアセトアルデヒドが生成し、二日酔いの原因物質と考えられています。

トルエン:
トリレンジイソシアネート(ポリウレタンの原料)、フェノール(染料や農薬などの原料)、クレゾールなどの多種多様な化学物質を合成する原料として使われています。原料としての需要が多いベンゼンやキシレンに変換されてから使われる場合もあります。
 また、トルエンは水に溶けにくく、油などを溶かす性質があります。同じような性質があるベンゼンに比べて毒性が低く、安価なことから、油性塗料や印刷インキ、油性接着剤などの溶剤としても幅広く使われています。接着剤や塗料のうすめ液などに使用されるシンナーはトルエンを主成分としているほか、油性のペンキ、ニス・ラッカー、マニキュアなど、身のまわりにもトルエンを含む製品があります。
 なお、ガソリン等にはもともと微量のトルエンが混じっていますが、性能を高めるプレミアムガソリンは、トルエンの含有量が多くなっています。また、たばこの煙にもトルエンは含まれています。
(環境省・化学物質ファクトシートから)

汚れず場所取らず
ペラの木製サッシ 窓ガラス間にブラインド

内蔵式だとブラインドやプリーツシェードを汚したり壊す心配がない
 アメリカの木製窓や玄関ドアを取り扱うペラインターナショナルジャパンは、ペアガラスの間にブラインドや格子を内蔵できるアルミクラッド木製サッシ「デザイナーシリーズ」を輸入販売しているが、このほど帯広市内で開かれたNPO法人新木造住宅技術研究協議会(新住協)の通常総会会場で同製品に使用できるファブリックプリーツシェード見本を展示し、参加者から注目を集めた。
 ブラインドは、夏は日中の日射遮へい、冬は夜に窓からの熱損失低減に役立つ部材として注目されているが、構造上ホコリが溜まりやすく、またヒモを引っ張る操作方法が面倒だというエンドユーザーの声もあった。
 同社のアルミクラッド木製サッシ「デザイナーシリーズ」にオプション設定されるファブリックプリーツシェードは、ペアガラスの空気層にきれいに納められており、障子に設けられたコンパクトなツマミを動かすだけでシェードをセットしたり解除できる操作性の良さがポイント。ペアガラスの間は密閉された空間のためホコリが入り込む心配がほとんどなく、掃除の必要性がない。

ペアガラス間には格子もおさまる
 このほかデザイナーシリーズには、オプションとして通常のブラインド、装飾ガラスパネルを内蔵できる。なお、アルミクラッド部分は同社独自の「エンデュラクラッド加工」を施すことで耐久性を向上させ手入れをほとんど不要にした。
 ペラ社の木製窓は独自の遮熱Low-Eガラスの採用など高性能に加え、折りたたみ式窓ハンドル、防犯性の高いダブルロックの採用、未使用時は隠れる巻き上げ式網戸、日本の防火認定の取得などデザインと機能性が特徴。日本では商社ルートなどで販売されているが、同社では高機能タイプのデザイナーシリーズに力を入れ、マーケットシェアの拡大に努める。
 価格など問い合わせは、同社(神奈川県横浜市中区南仲通3-26カーニープレイス横浜関内2階、Tel.045・662・5934)へ。

合板や外壁材OK
カネシン 簡単施工のHD同等金物

上から合板が貼れるDP-2マスタープレート
 (株)カネシンは、1日から建築金物の新製品として、DP-2マスタープレート、コーナープレート・Ⅱ、合板コーナー・Ⅱを発売した。ビス規格の共通化を進め、CPQ-45のみで施工できる。合板コーナー・Ⅱのみ、床合板の上から接合するビス5本分についてCPQ-75を使う。
 DP-2マスタープレートは、柱と土台、柱と横架材の接合に使う金物で、短期基準接合引抜耐力が10・3kNあるため10kNホールダウン金物と同様に使うことができる。高強度ステンレスを採用してわずか0・6ミリの薄さを実現、構造用合板や外壁材を金物の上からそのまま貼ることができる。梁せいが180ミリ以上ならば、上下階の管柱と横架材の接合にもDP-2を2枚使いで対応できる。

真壁でも使いやすいL字金物のハイパースリム合板タイプ
 コーナープレート・Ⅱは、短期基準接合引抜耐力が6・2kNでかど金物と同様に使用できる。柱と土台、柱と横架材の接合に使用する。合板コーナー・Ⅱは床合板対応タイプ。いずれも粘りのある新素材・微細粒熱延鋼板((株)中山製鋼所製)を採用して1・2ミリまで薄くし、ビスの本数を減らすことができたため施工性が向上した。

6月発売
30ミリ幅のスリムなL字金物
 このほか、同社では6月1日から本体の幅が30ミリと細く、少ないビスで施工できる10kN用のL字型金物「ハイパースリム」、「ハイパースリム合板タイプ」を発売する。本体幅が30ミリとスリムなため、真壁で45ミリ筋かいを施工する取り合いでも30ミリの余裕ができ、またビスの本数が5本で済むため施工性が向上している。「ハイパースリム合板タイプ」は、床合板施工時に金物用のかき込みが不要で床合板の上から接合できる。材質は、いずれも日新製鋼(株)が開発したZAM鋼板を採用、耐食性などに優れている。
 問い合わせは、同社営業開発部販売促進課(東京都葛飾区奥戸4丁目19-12、Tel.03・3696・6781)まで。

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