平成19年4月25日号から
“薪エコ”ブーム広がる
 

薪を始めとする木質燃料が再び脚光を浴びつつある(写真はダッチウエスト社の薪ストーブ)
 地球環境問題への関心の高まりや灯油価格の高騰などを背景に、木質バイオマスによる暖房が注目を集めつつある。これまで薪ストーブは趣味性が高く、自宅に設置するのは一部の愛好者に限られていたが、最近では環境に対する意識が高いユーザーを中心に新築住宅への設置が増えるなど、いわゆる薪エコが一つのブームになりつつある。それと連動して薪ストーブを取り巻く環境に新たな動きも出てきた。

部材や燃料に新動向
 薪ストーブは、形を変えながら不規則に揺らぐ自然の炎を家の中で楽しめるのが大きな特徴だが、それ以外に計画植林によって燃焼時に薪から発生するCO2を吸収すれば、地球全体のCO2を増やすことがないこと、エネルギー自給や地域産業の活性化につながることなどから、幅広いユーザー層に支持されるようになってきた。昔の主熱源だった木質燃料が、この時代に新たに見直されているわけだ。
 ただ、薪ストーブへの支持が広がる一方で、実際に設置しようとしても、周辺部材まで含めた価格がわかりにくかったり、薪をどのように入手すればよいのかがわからないという声も聞く。新築時に薪ストーブの設置を考えていたユーザーが、予想以上にコストや手間が必要になるとわかり、あきらめてしまったこともあるという。
 このような状況を改善しつつ、さらに市場を拡大させていこうと、関連業界の動きも活発。特にユーザーの立場に立った情報提供や新しい楽しみ方の提案が見られるようになってきたのは、いい意味で火遊び好きのユーザーに朗報と言える。

 ダッチウエスト  断熱煙突の情報充実
 一般に、薪ストーブの燃焼効率を上げ、安全に使用するには排気温度を上げることでドラフト力を最大限に高めることが重要。そのためには、煙道温度を高く保つ必要があり、低温の外気にさらされる屋外では、断熱二重煙突を採用して外気の影響を遮断することが重要となる。そこで登場したのが断熱二重煙突。煙突外管の温度が低く保たれるため、煙突と木材など可燃物との離隔距離を50ミリまで縮められるメリットもある。

煙突回りの部材の納まりや見積り価格がわかりやすく示されている「ダッチウエスト煙突プラン集」
 その中で、煙突工事の内容や価格などの情報をよりわかりやすく提供することで、住宅会社やエンドユーザーの薪ストーブ設置をサポートしようというのがダッチウエストジャパン(株)。同社では輸入販売を行っているイギリス・パワーマチック社の断熱二重煙突カタログを改訂するとともに、煙突部材の概算費用と納まりの目安を知ってもらうための煙突プラン集を新たに製作し、現在希望者に配布している。
 パワーマチック社の断熱二重煙突「SM250」は、高品質を売りにしており、外管に一般的なSUS304ステンレスを、内管はススなどが付着する可能性があり高温にさらされることから、耐食性に特に優れたSUS3 6ステンレスを採用、その間に高性能断熱材25ミリを充てんしている。ステンレス管は、最新鋭のレーザー溶接を使ってシームレス溶接しているため継ぎ目がなく、雨や結露水が内部の断熱材に浸入する心配がない。
 ダッチウエストジャパンでは、このパワーマチックSM250を使った煙突計画と費用見積が適正にできるよう、「ダッチウエスト煙突プラン集」を新たに製作した。プラン集は、2階建て住宅への設置を前提として7プラン掲載しており、一般的な吹き抜け設置の場合、集合煙突などへの設置を想定した場合、瓦屋根の場合など、それぞれについて部材ひとつひとつを拾い出して合計価格を掲載。設置した状態の矩計図や部材の取付方法をイラストで説明することで、住宅会社や暖房設備業者の「薪ストーブの工事内容や工事コストがイメージしづらい」という声に応えた。
 カタログ、プラン集の問い合わせはダッチウエストジャパン(帯広市大通南28丁目、Tel.0155・24・6085)へ。
ダッチウエストホームページ:http://www.dutchwest.co.jp/

 庭田工業  薪の代わりに古新聞

レンガとほぼ同じ大きさのペーパーログ

濡らした古新聞を固めるペーパーログメーカーグ
 薪ストーブの新たな楽しみ方として、愛好者の間で話題になっている製品もある。手軽に古新聞を薪と同じ燃料に加工できる「ペーパーログメーカー」がそれだ。
 道南・七飯町の工務店・(有)庭田工業では、庭田謙社長が海外の友人から教えてもらって60個取り寄せ、昨年12月に販売価格1台4830円(税込・送料別途)で販売開始したところ、新聞やテレビ、ラジオなどで紹介され、注文が殺到し売り切れになった。現在は販売を再開している。
 ペーパーログは古新聞を原料とした固形燃料で、濡れた新聞紙が乾くと固まる性質を利用して造ったもの。薪と同じように燃やすことができ、ヨーロッパでは広く利用されているというが、日本ではほとんど知られていない。
 ペーパーログの作り方は、古新聞34ページ(17枚)程度を、水の入ったバケツに入れ、柔らかくなるまで濡らし、1枚ずつ軽く水を切ってペーパーログメーカーに隅まで詰め込む。それから押し型を乗せ、ハンドルを使ってプレスすると水が押し出されて、取り出した時にはレンガ大程度の塊になる。その後、1週間以上かけて乾かせば完成する。
 薪ストーブに投入すると、表面が黒く炭化し、しばらくすると薪とほとんど見分けがつかなくなり、約2時間ほど燃え続ける。
同社の庭田社長は「ペーパーログは薪より軽くてよく燃えるし、作るのが楽しいと喜ばれている。新聞社から新聞は燃やしても有害物質を発生しないという報告をもらっているので安心して使える。1日に家庭で出る古新聞の量には限りがあるので、補助燃料として使ってほしい」と話している。
問い合わせは庭田工業(亀田郡七飯町字大沼町780-5、Tel.0138・67・2134)へ。
庭田工業ホームページ:http://www2u.biglobe.ne.jp/~niwata/

シックハウスに警鐘
NEWソトダン研修会 法改正後も要注意と川本氏

シックハウスについて実例を交えながら説明する川本会長
 NEWソトダン住宅研究会(川本清司会長、(有)北欧住宅研究所所長)では12日午後から札幌市内で定例の研修会を開催。シックハウス対策の改正建築基準法施行から丸4年になろうとしているが、シックハウスに関する相談や裁判が増えていることから、改めて適切な建材の選択・施工と換気などシックハウス対策を中心に勉強した。

アセトアルデヒド濃度の低減に成功した例
 講師は会長の川本氏。これまでに数多くの住宅の室内化学物質濃度調査などを行ってきた経験から、改正基準法の施行後は、規制が始まったホルムアルデヒドについては指針値をオーバーする住宅がほとんどなくなったが、代わりにアセトアルデヒドが指針値をオーバーするケースが増えている、アセトアルデヒドの放散源として根太ボンド類が疑われるなどを紹介した上で、ボンドの成分チェックや使用量を抑えるなど、現場での対策も重要になることを紹介した。
 また入居後に住人が化学物質過敏症にかかってしまった家の例から「アセトアルデヒドはベイクアウトを実施してもなかなか濃度が下がらない場合が多い。そういうときは換気量を1.5回/h程度にして1週間ほど運転すると指針値以下まで低下し、その後換気量を0.5回/hに戻しても指針値を大きくオーバーすることはなかった。通常の換気設備では対応できないので、レンジフードを回すとよい。ただ、指針値以下に抑えても、患者は症状こそ改善したがまだ過敏症に悩んでいる」と対応の難しさを説明した。
 最後に、「ホルムアルデヒド対策ができたからシックハウス対策ができたと考えるのは間違い。ほかの化学物質の濃度が高くないか、十分注意する必要がある。換気については、適切な設計・施工と、換気風量の測定による確認が大切」であることを改めて強調していた。

住民に倉庫を開放
ホームテクト佐藤 日曜大工や木工作業用に

現在は同社が住宅建築に使用するカラマツ材が多数置かれているが、もうすぐスペースが空く予定
 (有)ホームテクト佐藤(十勝・幕別町)は、カラマツ柱や梁の刻み加工を行い材料をストックする自社倉庫を地域住民の希望者に「カラマツFACTORY」として無料開放し、木工作業などを行う場所として貸し出す。カラマツ端材の格安販売なども行うことで、カラマツ住宅に取り組む同社の姿勢を幅広くPRする効果も狙っている。
 同社では、これまで使っていた土場が手狭になったため、会社事務所近くに3月から倉庫を借り、カラマツ材の刻み加工や木材のストック場所として使っているが、住宅建築が本格化すると現場作業が増えるため倉庫内のスペースが空いてくる。そこで日曜大工や木工作業など、自宅では騒音やスペースの問題でやりづらい作業をやってもらえればと、空きスペースを作業場として無料で貸し出すことにした。
 地元紙に記事掲載したところ、さっそく木工クラフトの愛好者グループから申込みがあったという。道具や材料は借りる人が自ら調達するのが原則だが、一部の道具は貸し出しも可能で、希望者にはカラマツ材の端材を格安で販売する。
 佐藤社長は、「加工の際に出るゴミの始末と火の始末をきちんとしてもらうこと以外は、これといった決まりは考えず、自由に使ってほしい。木材に慣れ親しむ場を提供することで地元の方々にカラマツの良さを間接的にPRする効果にもなると思う」と話している。

ウレタン+真空断熱
アキレス 従来品の2倍に性能向上
 アキレス(株)は、真空断熱材を硬質ウレタン断熱ボードに挟み込むことで、従来の硬質ウレタン断熱ボードの約2倍の断熱性能を持つハイブリッド断熱ボードを開発した。2008年度からの発売を予定している。
 ハイブリッド断熱ボードは、同社の硬質ウレタン断熱ボード内に松下電器産業?が開発した真空断熱材4枚を挟みこんだ。
 真空断熱材は、内部の真空状態を保持するため釘が打てず、穴も開けられず、また屋外にさらすと真空部分を包む外装が破れる可能性があるなどデリケートな扱いが必要だった。これに対しハイブリッド断熱ボードは、3×6サイズのウレタンボードに幅290×745ミリの真空断熱材を4枚配置することで、110ミリの釘しろができ、また真空断熱材の位置を示すマーキングを表裏に印刷するなどの工夫で施工しやすくした。

ウレタン断熱材に挟まれた銀色の物体が真空断熱材
 このほか、真空断熱材部分はウレタンボードで包まれることから外張断熱の施工で外装材を貼るまでの間、養生にそれほど神経質にならずに済む。
 同断熱ボードを使用した住宅と従来の硬質ウレタン断熱ボードを使用した住宅とでそれぞれ実験住宅を建設し、近畿大学理工学部建築学科岩前篤准教授の協力を得て、断熱性能、省エネ性などを実測して比較したところ、従来のウレタンボード40ミリ分の断熱性能をハイブリッド断熱ボードは半分の20ミリ厚で実現できることがわかった。
 同社は、来年度商品化する予定で施工性の検証などを進めており、「断熱厚を薄くできるハイブリッド断熱ボードの開発で、無暖房住宅などの未来型高性能住宅実用化に大きく前進した」と自信を深めている。
 問い合わせは、同社断熱資材事業部商品開発課の大川課長(東京都新宿区大京町22、Tel.03・5379・4578)へ。

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