平成19年4月15日号から
真の健康住宅普及へ
NPO日本VOC測定協設立

「真の健康住宅を造ることが目標」と語る福井理事長
 「全国のユーザーに室内のVOC濃度測定を通じて健康性を実証した住宅を提供したい」と、北海道・オホーツク地域のビルダーなどで構成するオホーツク環境住宅研究会(O.E.H)と、全国のビルダー・建材輸入販売業者などが組織するNPO輸入建材協議会(IBMA)が中心となり、「NPO法人日本VOC測定協会」(福井政義理事長、フクイ産業(株)社長)を設立。VOC測定士の育成・認定などの本格的な活動を開始した。

北海道発の全国構想
 現在では広告宣伝で健康住宅をうたう住宅会社を目にする機会も多いが、中には健康住宅の根拠としてF☆☆☆☆の建材の使用や24時間換気システムの設置などを挙げているに過ぎず、健康住宅であるという根拠に乏しいものもある。
 また、ホルムアルデヒドを発散する建材の規制や機械換気を義務付けた平成15年の建築基準法改正後も、シックハウス症候群や化学物質過敏症はなくならず、逆にユーザーがシックハウスになったとして訴訟を起こすケースも出るなど、住宅会社としては自社物件の健康性・安全性をいかに確認・担保するかが重要になりつつある。
 そのような中、日本VOC測定協会は、シックハウス症候群などVOCを原因とする健康障害への対応として室内空気質測定・分析の重要性を説いてきた北見工業大学・坂本弘志名誉教授の提唱を受け、室内のVOCに関する調査研究を北見工大の協力により行ってきたO.E.HとIBMAが中心となって設立。 室内のVOC測定を通じて各種建材やVOCに関する情報を広く提供するとともに、VOC測定士の育成・認定とVOC測定・分析体制の構築により、信頼性のある測定データに裏付けられた健康住宅を全国のユーザーに提供することを目的としている。

ホルム等8物質対象
 事業の大きな柱となるVOC測定・分析は、住宅会社やユーザーの依頼により、同協会の講習を受け、試験に合格したVOC測定士が厚生労働省の示す測定方法に則って実施する。測定物質はホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、テトラデカンの8種類。
 測定・分析結果の信頼性を担保するため、登録されたVOC測定士が自社または関連会社の物件を測定したデータは、同協会で認定しない。また、分析は公的機関である北見工大が行い、アルデヒド類は高速液体クロマトグラフ法、その他のVOCはガスクロマトグラフ法で分析。同大学・坂本名誉教授が分析・管理者となり、同協会が報告書を発行する仕組みとしている。
 同協会に測定を依頼する場合は、VOC測定士が所属する登録事業所または同協会事務局に申し込む。測定料については8~10万円で検討しているという。


網走で行われた講習会の様子。室内空気のサンプリングも実際に使用する機器を用いて解説を行った
全国に98名の測定士が誕生
 事業のもう一つの柱であるVOC測定士の育成・認定については、年1回の講習・試験を予定。すでに今年1月から3月にかけて第1回目となる講習・試験を網走、東京、群馬、岐阜、広島の5地域で開催し、全国に98名(道内22名)のVOC測定士が誕生した。将来的には1万名の測定士の登録を目標としている。
 このほか建材やVOCに関する情報を提供する講演会・セミナーなども開催する意向だ。
 同協会の福井理事長は「VOC測定が広く普及することによって住宅会社がエンドユーザーのために、本当に健康にいい住宅を造っていけるようになればいいと考えている。信頼性のある測定結果を得ることによってエンドユーザーに安心感を与えることができるし、万が一、シックハウスに関してトラブルになった時も、住宅に原因があるのか、他に原因があるのかをはっきりさせることができるので、問題解決に大きな役割を果たすはず」と話している。
 同協会に関する問い合わせは事務局(Tel.0152・43・1588〈(株)ほつけん内〉、担当/菊池)へ。

高性能住宅Q&A
札幌はプラス2℃?
秋田などは大幅に暖冬傾向!

札幌の北部や石狩市、岩見沢市などは日本海からの雪雲によって晴れたと思えば雪が降る独特の曇天が続くが、今年は2月まで冬型の気圧配置が弱く、写真のような晴れの日も多かった
 Q…この冬は全国的に暖冬でした。前の冬が寒かったので、暖房費が大幅に減るかと思いましたがさほどでもありません。どうなっているのでしょうか。
 A…この冬は暖冬だったわりに暖房費が安くならない、という話をよく耳にします。確かに暖かい冬でした。一時期ほどではないにせよ、灯油価格は高値で安定しており、暖冬の恩恵を少しでも、とみんな思っていますが、期待より減っていないのです。これは一体どうしたことでしょうか。
 この冬と前の冬の平均温度を12月から2月までの3ヵ月間、札幌の気象台データで比べてみました。どのくらい違うと思いますか。2~3℃この冬が高いのではないかと予想しましたが、結果は2℃弱しか違わない。おまけに日照時間は前の冬のほうが1日あたり20分ほど長いこともわかりました。
 これは何を意味するのでしょうか。外気温が2℃弱高いと、暖房費は10%強は節約になるはずです。ただ暖房温度を2℃上げてしまえば帳消し。去年の冬は寒かった上に本当に灯油が高くケチケチしていた人も、今年はまあいいか、と気前よく暖かくしてしまうと、帳消しになる程度しか違わないのです。おまけに日照時間が真冬の3ヵ月で1日20分少ないのですから、その分だけ灯油をたかなければなりません。結果的にはおそらく1割も減らない、という結果は、気象データから見てさほど不思議なことではないことがわかりました。
 ちなみに3月はわずかですが今年のほうが寒いです。トータルではあまり前の冬と変わらないかもしれません。
              *   *   *   *   *   *   *

5都市の暖冬傾向グラフ
 それでは札幌以外の都市はどうか。まあ似たような傾向だろうと想像したのですが、これまた大ハズレでした。結論から紹介すると、札幌程度のあまり前の冬と差のないのが帯広市、10%以上の差になりそうなのが旭川市と盛岡市、さらに大きな20%程度の差になりそうなのが秋田市です。
札幌など5都市のこの冬と前の冬の気象データ
(12月~2月の3ヵ月平均値比較)

平均気温
(℃)
平均風速
(m/s)
日照時間
(h)
平均全天日射量(MJ/㎡)全天日射量(MJ/㎡)n
札 幌
2006年
シーズン
-3.1 3.3 89.5 6.7
2007年
シーズン
-1.3 3.2 79.6 6.2
その差 1.87 △ 0.07 △ 9.93 △0.43
前のシーズンと大差なし 高いが2℃未満の違い ほとんど同じ 日照時間は約20分/日短く、
日射量も少ない
旭 川
2006年
シーズン
-7.1
2.8
77.2
6.3
2007年
シーズン
-4.6
2.9
78.5
6.4
その差 2.47
0.10
1.30
0.10
10%以上は
減りそう
けっこうな
開き
ほとんど同じ ほとんど同じ
帯 広
2006年
シーズン
-5.8 2.7 182.6 8.7
2007年
シーズン
-4.2 2.5 190.0 8.8
その差 1.57 △ 0.20 7.40 0.07
前のシーズンと大差なし 札幌よりさらに小さな開き 風はやや弱い 日照時間は15分/日程度
長いが日射量は変わりない
盛 岡
2006年
シーズン
-1.8 2.9 353.3 8.0
2007年
シーズン
0.8 2.7 387.8 7.6
その差 2.60 △ 0.20 34.50 △0.40
10%以上は
減りそう
けっこうな
開き
風はやや弱い 日照時間は長いが、
日射量は昨年より少ない
秋 田
2006年
シーズン
0.2 5.6 114.2 5.2
2007年
シーズン
3.0 4.7 219.6 6.1
その差 2.80 △ 0.90 105.40 0.90
20%くらい
減りそう
けっこうな
開き
風は
かなり弱い
日照時間が3h30min/日も長く、
日射量も多い
2℃以下=札幌・帯広<2℃以上=旭川・盛岡<2℃以上・日照も多い=秋田
 表のように、ピックアップした5都市の中で前の冬との最も大きな温度差を記録したのは秋田でした。その差は2・8℃。しかも日照時間も長く、日照条件も今年のほうがよいので、前のシーズンと比べると2割低下しても良さそうな暖かさでした。ついでに風も弱かったので体感的にもかなり暖かな冬だったと思います。
 旭川と盛岡は前のシーズンとの温度差が2・5℃程度。日射は帯広は前年並み、盛岡は減っていますが、10%以上は減るでしょう。
 旭川は最低気温は前年と同じマイナス20℃台を記録しましたが、12月、1月は平均気温で3℃前後も暖かい年でした。
 5都市の中で前のシーズンとの温度差が最も小さかったのが帯広です。12月、1月は確かに暖かかったのですが、2月はほぼ前年並み、3月は今年のほうが寒いという結果です。その差は1・6℃。ただ、最低気温がマイナス20℃に達しないなど、厳しい寒さがなかったという点では過ごしやすい冬だったと思います。そういった印象が暖冬=暖房費減少と期待する背景だと思います。
 ※ここでは5都市を選びましたが、データは気象庁のホームページに掲載されています。ほかの都市についても参照してください。
ホームページ:http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php

札幌市の主な気象台データ(この冬と前の冬の月別)

西暦 月
気温(℃)
平均風速
(m/s)
日照時間
(h)
平均全天
日射量
(MJ/㎡)
"""
降雪
(cm)
合計
平均 最高 最低
2006
シーズン
2005 12 -2.6 6.3 -9.8 2.8 112.5 5.9 147
2006 1 -4.1 3.3 -12.3 3.5 66.8 5.7 189
2006 2 -2.7 7.7 -11.0 3.6 89.3 8.4 104
2006 3 1.3 8.7 -5.8 4.3 113.0 12.2 104
2007
シーズン
2006 12 -0.5 6.8 -6.4 2.8 91.7 5.0 136
2007 1 -1.8 6.0 -9.4 3.1 71.6 5.3 134
2007 2 -1.5 8.9 -9.2 3.8 75.5 8.4 153
2007 3 0.9 13.8 -7.4 3.6 129.2 12.4 91

高耐力壁の認定取得
土屋ツーバイホーム 壁倍率5倍、住宅販価は据置
 (株)土屋ツーバイホーム(本社札幌市、工藤政利社長)は、関東地区で展開しているスチールハウスの技術を活用し、木造ツーバイフォー工法の強度を上げた高耐力壁「スチール(STEEL)プラス」の大臣認定を取得。今後、道内で施工する住宅全棟に導入する。
 耐力壁パネルの製作段階で、スタッドとOSB合板の間に厚さ1ミリの鋼鈑をはさみ、重ね張りしたもので、面材の取り付けは直径4・8ミリ、長さ51ミリのねじにより外周部を75ミリ間隔、中間部を150ミリ間隔で施工。壁倍率は5倍で、通常の壁倍率(3倍)に対し、約1・7倍の強度となる。建築基準法により5倍が最高値だが、性能数値による構造計算をする場合は、5・67倍を利用できる。
 高耐力壁は、一般の2階建住宅の場合で、1階の出隅コーナー部分などに1棟あたり8枚程度使用する。外側断熱施工部分で次世代省エネ基準をクリアできる断熱性能があり、内側にも充填断熱を施しているため、鋼鈑が熱橋になる心配もない。1枚あたりの壁パネルの重量は通常のOSB合板仕様より約20?増えるが、従来通りの現場施工が可能。

センターでの試験風景
 在来木造工法のハウスメーカー・工務店各社が、独自の技術で耐震性能を強化した提案を行っているなかで、耐震性能の高い木造ツーバイフォー工法もさらに耐震性能を強化した提案で対抗する狙い。鋼鈑やねじ、ホールダウン金物のコストアップ分は、販売価格に転嫁させず、高耐力壁を採用した新商品「新シルフ」も「シルフ」の標準坪単価42万円を維持する予定。
 今後は道内のツーバーフォー住宅全棟に高耐力壁を導入し、下期(5月~10月)の売上げアップにつなげる考え。

施工性とメンテで
八木環境衛生工業 銅管ヘッダーを標準採用

断熱材などに覆われているため、外観から銅管とは気づかない
 八木環境衛生工業(株)(安平町、八木寧秀社長)は、安平町町営住宅の施工現場で給水・給湯管にはじめて銅管ヘッダー工法を採用した。施工性、メンテナンス性の良さから今後は銅管ヘッダー工法に全面的に切り替える予定。

手で曲げられる銅管
 同社はこれまで樹脂管を標準仕様としており、銅管は使っていなかった。というのも、銅イオンが溶け出す青水の問題が発生したことがあったからだ。しかし、水が直接触れる内管に錫コーティングしたSTC銅管を使うことで問題は解決済みであることをメーカーの営業担当者から知らされ、ヘッダー工法のメリットを考え採用に踏み切った。
 銅管ヘッダー工法「水・湯・P(スイートピー)」を発売しているのは住友軽金属工業(株)の100%子会社、スミケイ銅管販売(株)(本社東京都、林建城社長)。「水・湯・P」は、ヘッダーから分かれる給水・給湯管には、10ミリ厚の保温材付き被覆STC銅管「プリゾールチューブSTC ECO-P」を使っている。先分岐式と比較して、同時に数ヵ所給水・給湯しても水量変動が少なく、快適に使うことができる。同社では、道内販売分に関しては昨年からSTC銅管に切り替え、高品質と耐久性をアピールしている。
 先分岐方式は管の曲がり箇所はエルボ継手などが数多く必要で、施工も専門的な技術が必要だった。トラブル時に点検するには、原因箇所を特定するため壁を剥がすなどの大がかりな作業も考えられる。「水・湯・P」は、差し込むだけのワンタッチ継手を採用したので施工が容易で、通常の15A管よりも細い10A管を使うため手で曲げられるほど柔軟性がある。また、分岐箇所はヘッダーだけなので、万が一トラブルがあってもほとんどヘッダーまわりを調べれば良いというメリットがある。

管が集中しているのがヘッダー部分。銅管が露出しているところは、後から配管用グラスウールで覆う
 今回採用した町営住宅はRC造2階建ての集合住宅で、1棟で3LDKと2LDK合わせて12戸。6月末完成を目指して工事が進んでいる。給水・給湯配管のヘッダーはユニットバスの真上に持ってきて、そこから各部位へ供給する天井配管。集合住宅等では階下への被害を最小限に抑えるために天井配管を採用することが多い。
 施工を担当した八木環境衛生工業(株)の坂本竜司工事課長は、「材工コストは、樹脂管やステンレス管とほぼ同じで、管の取り回しの良さや施工が簡単で専門的技術をさほど必要としないことから銅管ヘッダー工法に大きな魅力を感じている。また、銅管は水道管として長い歴史を持っている安心感もある。万が一凍結して電気解氷が必要な時も、銅管は加熱を起こさず温度が70℃ぐらいまでしか上がらないので安全性が高い」と評価している。
 問い合わせは、スミケイ銅管販売北海道支店(Tel.011・241・4653)へ。

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