平成19年3月5日号から
2007年 営業を考える・その1
「集客」
みなさん、集客に困ってませんか?

集客は営業の第一歩(写真はいずれも本文とは関係ありません)
 昨年の住宅着工は、全国で129万戸台と9年ぶりの高水準で道内も持家は4%増と好調だった。一方、今年の道内の戸建景気は、前号1面記事のように地域や人によってバラバラな答えが返ってくるなどまだら模様で先が読みづらい。地方都市では、ローコストビルダーの台頭と大手ハウスメーカーを中心とする高級注文住宅市場に挟まれる形で、これまで地場工務店が得意としてきた坪50万円台の注文住宅市場が細っているという見方も出ている。
 こうした状況を打破するために、重要なのが営業力強化。ただ、昔とは違いイベントを打って待っているだけでは成果は得られない。今号から毎月1回程度、住宅会社の営業についてさまざまな例を紹介していきたい。

第一関門は集客
 営業の第一関門は集客だ。建てた人の紹介客だけでやっていけるならばそれが一番だが、最近は生身の人間関係が希薄になり、その代わりインターネットで気軽に情報収集できる時代。都市部を中心に紹介客営業が成り立ちにくくなっている。だから、現場見学会などを通じて集客し、見込み客へとつなげることが大事となる。
 この集客も悩みは多い。「広告を出しても以前のようには集まらず、土日2日間で十数組来ればいい方だ」という工務店。「イベントで人を集めても、それだけが目当ての人が多くて受注につながらない」と自嘲気味に話す人もいる。
 イベントを通じて実のある集客を行うための知恵はさまざまだ。ある工務店では、協力業者から倉庫に眠っている住設建材や端材など売り物にならないものを出しあってもらい、チャリティバザーを開催する。売上は福祉関係に寄付し、地域に貢献している姿勢をアピール。また、こうしたチャリティーで購入した商品を据え付けるのに、大工が購入者の家まで出張指導するサービスもある。
 「自社の建てた住宅をたくさん知って欲しい」と現場公開している4ヵ所の住宅をスタンプラリー形式で回ってもらい、全部スタンプを集めると注文住宅の価格から40万円値引く工務店もある。
 OB客向けのイベントを集客に利用する工務店もある。見込み客などを招待して工務店とOB客の和気あいあいとした姿を見てもらう。楽しいアトラクションなどを催し、とにかく来場者に楽しんでもらう。そうすることで工務店と客が本音で語りやすい雰囲気が自然と生まれる。

広告の表現に工夫
 イベントを運営しなくても、工夫次第で集客はうまくいく。来場者が少数でもその工務店に興味と関心を持ってくれる人が多ければ良い、という考え方だ。そのためには広告の内容が大事となる。
 最近広告に力を入れているある工務店は、自社の魅力を分析し方向性をしっかり定めている。自社で採用している構造体の内容をわかりやすく表現し、技術系のこだわりを消費者にソフトに訴えている。また敷居を下げるために低価格の企画型住宅もPRしている。
 その会社では、魅力はデザインなのか、お客の要望に応じてどんな家でも建てられる柔軟性なのか、自然素材たっぷりの健康住宅なのか、などじっくり検討して今の形に落ち着いたそうだ。
 家を建てたいと考えている人は、モデルハウスはもちろん、雑誌・新聞の広告、折り込みチラシ、顧客のブログや住宅会社のホームページなど、いろんな情報チャンネルを通じて徐々に絞っていく。一度いいイメージを持ったり信頼するようになれば話はスムーズ。後々のトラブルも少ないという。
 別の工務店では社長の人間性と技術力両方を売り込みたい、と社長のニコニコした顔写真と技術のうんちくの詰まった長い文章を広告に載せて成功している。写真はわざと文章の中に割り込んで入っているので一見読みづらいレイアウトだが、個性的な広告で目立っている。
 フランチャイズを展開する住宅会社の中には、チラシの作り方を『塾』として加盟店に教えるところもある。何気ない文章やイラストにそれぞれ意味があるということを教え、効果的なチラシを短期間で作れるように指導していくのだ。
 このように、伝えたいことによって広告・チラシの表現方法はいろいろ考えられる。既存概念に囚われず、広告制作会社に任せっぱなしにせず自分でじっくり考える必要がある。

モルタルにも耐震性
タイガー産業 道職能大との共同試験で確認

タイガー産業と道職能開発大の共同試験で使った試験体
 古い住宅の多くで外壁モルタルが剥離・落下した阪神・淡路大震災以降、モルタルは弱いというイメージで見られることが少なくなかったが、実際にはモルタルが耐力として効いていると指摘する声もある。そのような中、(株)タイガー産業(札幌市、相庭博社長)では、北海道職業能力開発大学校建築施工システム技術科の平野彰彦教授と共同でZラス下地のセメントモルタル仕上げ壁(TZ工法)の耐震性能試験を実施。ラスモルタルそのものにも耐震性があり、壁全体の壁倍率を高める効果があることが明らかになった。
 現在の建築基準法では、土塗り壁か木摺り下地の壁は壁倍率0・5が認められているが、ラスモルタル単体での壁倍率は認められていない。しかし、モルタルそのものの剛性は建築学会でも評価されており、しっかり施工して、ラスを留める釘などの耐久性にも配慮すれば耐力として効くのではないかと言われていた。
 今年度行われた試験では、建築基準法上の壁倍率が1.5となる90ミリ×30ミリの筋交いを入れた1820ミリ×2730ミリの軸組の柱・間柱に通気胴縁を打ち、その上からアスファルトシートとZラスを施工してセメントモルタルを20ミリ厚で塗った試験体を製作。Zラスは32ミリの長いタッカー釘を使い 150ミリ以内のピッチで留めている。
 この試験体に横から力を加えた時の状態などを見たところ、壁体上部が水平に54.6~182ミリ傾くほど強い力を繰り返し加えた時は、壁体両側の柱に留め付けたタッカー釘周囲のZラスがちぎれたものの、間柱の部分ではZラスのちぎれはなく、モルタル表面のひび割れやはく離、タッカー釘の抜けや胴縁のはがれ・浮きなども見られなかった。また、壁倍率は2・2と、建築基準法より0.7高かった。

想定壁倍率は0.5
 この結果について北海道職業能力開発大学校の平野教授は「ラスの伸び縮みやちぎれによって力を吸収しているので、モルタル表面の剥がれやクラックは起きず、壁倍率の向上にもつながっていると考えられる。建築基準法上、ラスモルタル単体の壁倍率はゼロだが、今回の結果から壁倍率0.5はあると見ていいのではないか。この仕様は外力に対しねばりを発揮する優秀な工法と言え、ラスモルタルは弱いというイメージを払拭できた」と評価している。
 ただ、今回の試験で確認された耐震性能を得るためには、ラスをどう留めるかが重要なポイントとなり、平野教授は「ラスを留める部分で錆が発生しないよう溶融亜鉛メッキなど耐久性の高いタッカー釘を使い、長さとピッチに配慮することが必要」と話している。

TZ工法を採用した十勝管内の住宅


Zラスを使用したTZ工法の施工現場
 なお、今回の試験結果から得られたラスモルタル単体の壁倍率が、今後、国土交通省に建築基準法上の壁倍率として認めてもらえるかどうかについては、現状では難しい。というのもラスモルタルのねばりを簡単に数値化し、施工状況のチェックシートなどによる安全性の確保を条件した仕様規定で認めてもらうには、学識経験者の理解や耐候性などに関する試験データの蓄積が必要で、性能規定で認めてもらうにしても、構造計算にかなりの手間がかかるためだ。

ラスのねばりは驚異的
相庭社長
 タイガー産業の相庭社長は「阪神・淡路大震災では貧弱なラスの使用や釘の腐れなどによってモルタルのはく離や落下が起こっていたというが、太くて長いタッカー釘を使い、力を吸収する形状のZラスを使うTZ工法では、はく離や落下は起こらず、非常に良い結果を得ることができた。Zラスのねばりで表面にクラックも入らないのは驚異的だ。この試験データを元に、TZ工法を広くPRしていきたい」と話している。

道南スギで家造り
利用促進のPR活動展開

雨の中、スギの人工林に分け入り、見学する
 険しい山が海岸近くまで迫り、森と暮らしが一体となった地域・北海道の道南。自生種のヒバのほか、古くからスギが植林されてきた。北方系の植物が中心の北海道にあって、道南がやや印象を異にするのは、このようにスギやヒバ、ブナなど主に本州で見られる樹木が中心の森林が織りなす景色によるのかもしれない。

独特の景観をつくる道南
 渡島管内には現在、17000ヘクタールのスギ人工林があり、そのうち8~9割が成熟期を迎えた建築用材として利用可能な人工林だ。去年はおよそ1万が製材され、そのうち8割以上、8500m2あまりが東北方面へ出荷されている。
 北海道の林業経営の歴史は、本州と比べればまだ浅い。資源も豊富にあったことから、天然林の伐採が中心になってきた。その中でも道南地域は林業経営の歴史が長い。八雲町の林貞吉さんは親子3代にわたって林業経営を続け、先ごろその木材を使って家を建てた。
 道の出先機関である渡島東部森づくりセンターは山越郡森林組合と共同で昨年10月に「森づくりと森林資源の有効利用フォーラム」を開催。
 八雲町のスギ人工林や製材工場、住宅を見学したり交流懇談会などを行うことで、道南の人工スギも建築材として使えることを知ってもらおうという取り組みを紹介。林さんもこの中で基調報告を行った。


地元の木を地元で製材加工し、使用した住宅。ムクの梁や羽目板に道南スギを採用している
八雲町で人工林見学や交流会
親子3代、森づくり
 まず最初に八雲町の酒井敏男さんが所有するスギ人工林を見学。面積約1.4ヘクタール、林齢72年生、平均直径は47センチ、平均樹高が約28メートル。しっかり整備された山林に立派な立ち木が植生している。
 続いて林さんの自宅を見学した。林さんは酪農業を営みながら林業に携わり、“指導林家”という技術指導者にも認定されている。親子3代に渡って育てた85年生のスギを、マイホームの構造材や外装材、内装材に使用した。
 エゾマツ・トドマツを主体に構造用集成材を生産しているMHグルーラム協同組合では、ラミナ加工ラインから立体プレスまでの製造工程や倉庫内を視察。同組合は昨年6月にスギのJAS認定を取得し、販売体制を整えた。その後、同組合が生産した集成材やスギ無垢梁材・羽目板を使った住宅を見学。
 このあと林さんが「親子3代で築いた山の恵み」と題して、山づくりのきっかけや山林の現状、後続者対策などについて講演。最後には意見交換会を行った。
 林さんによると、先々代が大正9年(1920年)に1.5ヘクタール の森林を購入してスギを植林したのがはじまり。本格的に購入を始めたのは40年くらい前から。現在は165ヘクタールを所有し、このうち110ヘクタールが人工林。

自宅を案内しながら参加者と談笑する林さん(左から2人目)
 まわりの人から『酪農とうまく両立している』と言われるが、率直に言って林業では生計がたたないため、両立ではなく酪農という本業の合間に手入れを続けてきたというのが本当のところ。農業用の重機を転用できるのは利点だという。
 自家用材で家を建て、結果として地材地消の定着に貢献するかたちとはなったが、価格の問題などもあり、定着にはまだ時間がかかると感じているという。
 工務店や森林所有者など、130名あまりの参加者からは、このようなイベントを続けることで、消費者はもちろん、工務店や森林所有者も理解を深めるいい機会となる。今後とも続けてほしいという声も出ていた。
 主催した渡島東部森づくりセンターの橋本隆普及課長は「植林されたスギを樹齢50年ほどで伐採し、それが地元で消費されればそのお金で再び植林や整備が行える。山林を守っていくためには、地元でスギを消費してもらうことが何よりも大切」と話している。

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