平成19年2月5日号から
「保証・検査」体制を強化
国交省19年度住宅施策など
住宅保証基金拡充を踏まえた瑕疵保険・保証制度のイメージ
 平成19年度予算案が閣議決定され、国土交通省の各種事業・予算の内容が明らかになった。それによると住宅関連では住生活基本法や耐震偽装事件を背景に、住宅保証基金の拡充や検査体制の充実・強化など、ユーザーの安全・安心確保を重視している点がポイント。また、来年度の税制改正では、住宅ローン減税の適用期間選択制と、バリアフリー改修促進税制の創設がほぼ確実となっている。

 予算案 
保証利用増に対応
 国交省予算案のうち、住宅局所管事業の柱の一つが「住宅・建築物の安全・安心の確保」。この中では住宅保証基金の拡充、資力確保の義務化にともなう検査体制等の充実・強化、建築物の監督・審査機能の強化などが盛り込まれており、重点的な予算配分が行われている。
 住宅保証基金の拡充については、新築住宅の売主などが瑕疵担保責任を確実に果たすことができるよう、保険の活用等による資力確保が義務付けられるのにともない、住宅性能保証制度利用者の増加を見込んで同制度を補完する住宅保証基金を3億円増額する。
 また、保証機関の支払い能力を確保するため、住宅保証基金からの無利子貸付を可能にするとともに、新たに創設する住宅購入者等救済基金(仮称)の資金が十分な規模になるまで、住宅保証基金から無利子で資金供給する。住宅購入者等救済基金は、これまで補償対象とならなかった悪質な欠陥に対しても保険金を支払うことができるようにするための基金。

住宅の履歴わかるデータベース整備
 資力確保の義務化にともなう検査体制等の充実・強化では、住宅保証機構の検査・事故調査体制の整備や、住宅リフォーム・紛争処理支援センターが実施する紛争処理支援体制の整備などに補助を実施するため2億円を計上。建築物の監督・審査機能の強化では、建築士・建築士事務所の登録情報や、住宅の建築確認・検査の履歴などの情報を確認できるデータベースの整備に14億円、確認・審査を厳格化した改正建築基準法の運用体制整備に1億5千万円を配分している。
 このほか、耐久性・可変性に優れた住宅ストックの形成を目的として、長期固定金利住宅ローン・フラット35で一定の技術基準を満たした住宅の金利を優遇する優良住宅取得支援制度の拡充などに660億円の予算、中古住宅の流通促進や長寿命住宅の普及を目的として、住宅の新築・改修・修繕・点検などの履歴情報の蓄積・活用を可能にするための体制構築に2億5千万円の予算をそれぞれ組んでいる。

 税制改正 
 
現行の住宅ローン減税
特例措置
控除率および
控除期間
1~6年目:1.0%
7~10年目:0.5%
1~10年目:0.6%
11~15年目:0.4%
控除期間
10年間
15年間
住宅借入金等の
年末残高
(平成19年居住の者の場合)
2,500万円以下の部分
(平成20年居住の者の場合)
2,000万円以下の部分
同左
最大控除額
(平成19年居住の者の場合)
200万円
(平成20年居住の者の場合)
160万円
同左
現行の住宅ローン減税と特例措置の比較
バリアフリー減税
 来年度の税制改正では、住宅ローン減税の適用期間が選択制になり、新たにバリアフリー改修促進税制が創設されるのが大きなポイント。
 住宅ローン減税は、国から地方への税源移譲や定率減税の廃止にともない、中低所得者の中には減税額が少なくなってくる人も出てくるため、来年、再来年の対象者は減税期間を取得後10年間とした現行制度と、同15年間とした特例措置のいずれかを選択可能にした。どちらが有利になるかは、実際の所得税額によって決まる。
 バリアフリー改修促進税制は所得税と固定資産税が減税対象で、所得税は高齢者・障害者が平成20年12月31日までに手すりの設置や段差の解消などのバリアフリー改修を含む増改築工事を行った場合、その工事のローン残高(上限1000万円)の2%(バリアフリー改修工事以外の部分は1%)を所得税額から控除。ただし、現行の住宅ローン減税との選択制になる。固定資産税は平成19年1月1日以前に建設し、高齢者・障害者が居住する住宅について、平成22年 3月31日までに工事費30万円以上のバリアフリー改修を行った場合、100m2相当分まで工事翌年度分の固定資産税額を3分の1減額する。
 なお、バリアフリー改修促進税制については、与党税制改正大綱で引き続き検討を行うとしており、今後内容が変更される可能性もある。

施工性にも配慮
太陽光発電シンポ 融雪する発電パネル発売へ
 1月26日、札幌市の札幌国際ビルで寒冷地向け太陽光発電学習シンポジウム(主催・NPO法人ひまわりの種の会、後援・経済産業省北海道経済産業局)が開かれ、会場は120名以上の参加者が集まった。ひまわりの種の会は、持続可能な社会に向けて再生可能なエネルギーの普及啓発と環境教育を中心とした環境保全活動を行っている特定非営利活動法人(NPO 法人)。

飛躍する太陽光発電
 シンポジウムでは、まず最初に(株)MSK石川修副社長が「太陽光発電の現状とこれから」を発表、太陽光発電の発電量が世界的に飛躍的に伸びている現状を紹介した。
 太陽光発電システムの生産量と発電量はこれまで日本が世界をリードしてきたが、発電量の面ではドイツが1万kW級の太陽光発電所を作るなどして一昨年には日本を抜いてトップに躍り出た。一方で京都議定書によりCO2排出量削減が急務となっており、化石エネルギーを用いない太陽光発電を増やすことは、 CO2排出量削減に役立つことからさらなる普及が望まれている。
 こうした中、北海道経済産業局が地域の新産業・新事業を創出し、地域経済の活性化を図るため、地域における産学官の強固な共同研究体制(地域新生コンソーシアム)を募集し選ばれたのが、融雪機能を持った屋根材一体型多機能太陽光発電システムの開発だった。
 これまでも屋根材と太陽光発電パネルが一体化した製品はあったが冬場に雪が載ったままだと発電効率が低下するなどの問題があり、他地域に比べて太陽光発電の普及率が低かった。
 そこで伊藤組木材(株)など北海道の地元企業や北海道大学、北海道工業大学、道立北方建築総合研究所などがコンソーシアムを組織し、融雪機能付き屋根材一体型太陽光発電システムの研究開発を進めてきた。今後は太陽エネルギーを利用した暖房や給湯などとも組み合わせ、トータルで太陽エネルギーを利用する時代が来ると説明した。

寒冷地向けに開発
 続いて日本鐵板(株)CSソリューション営業部の小林晴久部長が「環境に配慮したこれからの多機能屋根システム」を発表、融雪機能付き屋根材一体型太陽光発電システムの概要について紹介した。融雪の仕組みは、融雪用電力200Vを直流に変換して太陽光発電パネルに流すことでパネルが発熱し、その熱で雪を融かすというもの。パネル1m2あたり90~120Wの電力を流す。特定の発電モジュールのみ融雪運転することも可能。ただし融雪時は発電できない。発電できる状態になれば自動的に発電モードに切り替わる。また、今後は降雪センサーにより融雪/発電モードを自動で切り替える機能を付加する予定だ。
 施工法も工夫している。クロロプレンゴム製の細長いガスケットをたる木代わりに使用し、その間に太陽電池モジュールをはめ込む施工方式とした。これにより屋根材兼用の太陽電池モジュールと下葺き材の間が通気層となり、夏は高温に弱い太陽電池モジュールを熱から保護して発電効率をアップさせ、冬はツララの防止などに役立つ。
別部屋には太陽電池モジュールも実際に展示され、参加者の関心を呼んでいた
 また、太陽電池パネルのモジュールを幅43.7×長さ62.0センチと小さくして1枚あたり3キログラムに軽量化し、モジュール同士をはめ込んでいくだけで配線も完了するため、危険な勾配屋根上での作業がやりやすく施工が省力化できる。
 モジュールの設置条件は、三寸五分以上の屋根勾配で、屋根形状は片流れや切妻、寄棟となっている。現在、発電量や融雪に使用する電力量などを道内と新潟県内で測定しており、伊藤組木材から今春発売予定で計画を進めている。価格は未定。

CO2削減が焦点
 この後、休憩を挟んで稚内で大規模太陽光発電に取り組んでいる北海道電力(株)企画本部総合研究所太陽光発電プロジェクト推進室の三輪修也室長が「稚内メガソーラー実証研究」を発表した。今年から稚内空港近くに5000kW級の国内最大級の太陽光発電所を建設、秋以降は蓄電池の併用によって電力供給量の変動を小さくするなどの課題に取り組み、大規模太陽光発電所の運営ノウハウを確立する予定だ。
 最後に北海道大学大学院工学研究科の長野克則教授が「再生可能エネルギーの利用とCO2排出量の削減」を発表した。CO2発生源で最も多い民生用エネルギーのうち、大半を占めるのは住宅用エネルギー。この対策として考えられるのが、地域の気象特性を加味しながら徹底した建物のローエネルギー化を行うこと、地域で得られる自然エネルギーやバイオマス、ヒートポンプなどの利用。
 先進的な事例として、10年ほど前に北海道大学構内に建てられた『ローエネルギーハウス』の成果を発表、家庭内での電気製品使用や照明などの電力使用量はすべて太陽光発電だけでまかなえることを示した。また、太陽光発電量については、積雪量が多くなる1月が特に低く、12~2月の平均値は、3~5月の平均値にくらべて4分の1ほどしかない。もし積雪量の影響が全くないとしてシミュレーションすれば年間発電量は十数%増えるという。
 また、暖房用エネルギーを省エネ化する1つの方策は、ヒートポンプ暖房だとした。石油温水暖房や電気ヒーター暖房に比べてエネルギー消費量が最大で4分の1に削減できる。特に地中熱ヒートポンプは効率も高く、今後普及が期待されているとした上で、北海道の建物では、CO2削減の観点から「地中熱ヒートポンプと太陽光発電の併用が理想的」と述べた。

涼しさつくる“ゆれ”
フォーラム・夏対応 日射遮へいをしっかりと

講演する石田先生
 (社)北海道建築技術協会(荒谷登会長、北大名誉教授)ではこのほど、フォーラム「北海道の特性を生かす断熱建物の夏対応」を開催。RC造の外断熱だけでなく、木造の高断熱住宅でも対応を誤れば“夏暑い”“冷房が必要な”住宅になっている現状を踏まえ、北海道という地域の恵みでもある夏の涼しさをどう生かすかについて、これまでの研究成果や実例が紹介された。
 最初に荒谷会長がなぜ夏対応なのかについて解説。この中で荒谷会長は「夏の夜の涼しさは、それを発見した人には大きな宝だ。その涼しさを生かして穏やかな環境をつくることがポイント。京都の町家を調査すると、涼しいとは言えないがムラが取り除かれ、暑さを感じなくなることがわかる。冬対応とは異なり、独自の価値基準が必要なのが夏対応だ」と解説した。
 基調講演を行ったのは北海道東海大学の石田秀樹教授。「外は涼しいのに3ヵ月くらい真夏日になるのが断熱建物」と自身の研究室を例に問題点を指摘。これまでの研究をもとに、涼しいと感じるのは、温度が下がることだけでなく微風が吹いたりやんだり反対方向から来たりという“ゆれ・ゆらぎ”や、多少の温度変化があること、などと指摘。

オーニングを設置した住宅で測定した温度データなど
(左図…オーニング開・閉時の室内上下温分布、右図…夏の換気計画(傾斜天井と高窓))
 防暑計画としては1.熱を入れない(断熱)2.日射の遮へい(窓の日よけ)3.熱を逃がす(排熱換気)4.涼しさを取り込む(夜間換気・高窓換気)5. 涼しさを保つ(熱容量)6.気流感の確保(ゆらぎを生む開口計画)7.湿気を除く(除湿涼房)8.ちょっと冷やす(低負荷冷房)9.建物まわりを涼しく(外構計画)10.涼しさの演出(音・光・景観…)―の10点を挙げ、「すべてをやるという意味ではなくアイデアが大切。特に高断熱住宅では日射熱が効いて、暑い日が続くと夜も温度が下がらなくなる。日射遮へいをしっかりやることが重要だ」と説明した。

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