改正建築基準法が施行された今年6月20日以降、全国的に確認申請に急ブレーキが掛かり、それが大幅な着工ダウンにつながっている。法施行に伴う準備不足などが招いた人為的な不況でもあり、中でも北海道はこれに引き続きシーズンオフへと不況の泥沼化が心配される。
平成19年6~8月の1~4号物件・確認申請件数
|
6月 |
7月 |
8月 |
6~8月計 |
6~8月平均 |
全
道
|
1号 |
473 |
220 |
189 |
882 |
294 |
2号 |
28 |
12 |
26 |
66 |
22 |
3号 |
325 |
121 |
144 |
590 |
197 |
1~3号計 |
826 |
353 |
359 |
1,538 |
513 |
4号 |
1,710 |
1,427 |
1,460 |
4,597 |
1,532 |
札
幌
市
|
1号 |
159 |
75 |
62 |
296 |
99 |
2号 |
22 |
12 |
21 |
55 |
18 |
3号 |
127 |
47 |
72 |
246 |
82 |
1~3号計 |
308 |
134 |
155
|
597 |
199 |
4号 |
515 |
411 |
411 |
1,337 |
446 |
|
影響小さい4号物件
「改正建築基準法の施行によって着工が減っていると言われているが、今年の2月からすでに動きがおかしかった。春の盛り上がりがなく、冬を迎える前の盛り上がりもなく1年が終わる過去に例のない激震だ」と話す建材メーカー筋もおり、一時的不振から立ち直る前に4ヵ月の長い冬を迎える北海道にとって、今回の建築不況はただごとではすまされない気配が漂っている。
全道の住宅着工数は1~6月の上期で持家が前年期比マイナス6%、貸家がマイナス9%、このうち木造アパートはマイナス15%。分譲が駆け込み着工などで75%伸びたため、総体では1%台の成長を維持したものの、木造や低層賃貸は振るわなかった。
着工は7月から全国的に大幅減。7、8月の合計では持家が約29%、総数で34%のダウン。北海道は持家に関しては下げ幅が小さく約19%、総数で37%のダウン。
数字を見る限り、北海道内では持家・戸建て系は全国平均より改正基準法による影響は小さい。その理由を推測すると、持家の多くが4号物件といわれる主に木造2階建てであり、書類と手間が増えるなどの影響はあったものの、木造3階や混構造のような審査ができず、事実上建てられないなどの物件が、首都圏などと比べ少ないからだろう。また確認申請受付窓口によっては施行日以降、国の方針がはっきりするまで、かなり柔軟な対応を行って遅れを最小限に抑えることも行われていたようだ。
ただし、木造アパートについては1層がRC造車庫、2、3層が木造という混構造が建てにくくなり大打撃。もともと供給過剰感から調整・減速局面に入っていたところへ人為的影響も加わり、7、8月合計で前年比半減だ。これまで減少した戸建てをカバーしていたアパートの急降下は、木造住宅業界全体に大きな影響を及ぼしているとする見方も強い。
|
今後について・ 19年4万戸程度か
今後についてだが、大型物件などに導入された適合判定については、早いものでも12月頃までかかるという噂や、道内ではまだ数件しか判定が出ていないという話もあり、大型物件ほど年内着工は難しいと言われている。この調子でいくと今年の住宅着工量は4万戸ぎりぎり、持家が1万2千戸割れという事態も予想される。
一時的な落ち込みならいずれ回復する。家を建てたい人がいるのに確認申請が降りないのなら、一時的な問題だ。しかし北海道についてはそうではないとみる声が強い。家を建てたい人が動いていない、つまり確認申請以前の問題なのだ。
全道の過去3年間の6、7、8月の確認申請動向を見ると、1号から3号物件の合計は800~900件で推移しているが、今年は6月こそ826件にのぼったが、7月353件、8月359件で、いずれも過去2年と比べ半分にも満たない。
一方、4号物件は過去2年が平均で1700件程度に対し、今年6月が1710件を維持、それ以降も7月1427件、8月1460件で、ダウンしてはいるが8割以上の実績を残している。
同じ住宅系でも木造3階建てはひどく影響を受けている。過去2年が80件台なのに対し、今年は6月33件、7月わずか9件、8月45件。8月に入ってようやく動き出したが、それまではまさしく改正法の施行によって審査ができなかった人為的減少だ。
これらの傾向は札幌市も全道とほぼ同じ。
木造3階と比較して4号物件を見てみると、影響は小さかったことがわかる。4号物件の確認遅れは、対応も進むことから10月中には完全になくなっているだろう。そうなると、確認申請と着工の減少は別の原因があると考えざるを得ない。
来年新規参入も
過去の例から言って、北海道では増税などが住宅購入意欲を大きく減退させる。今年は定率減税の廃止や税源の移譲に伴う増税感が影響しており、消費税率アップのスケジュールが見えにくくなったことで駆け込みマインドも全く生まれないという状況。加えて建材類の値上げや一部の地価上昇による住宅の割高感、石油価格の高止まり、世界経済の減速懸念や国内政治の不透明感なども住宅取得に悪影響を及ぼしていると考えられる。
来年道内ではTMホーム、IJ工務店に加え第3の新規参入があるともいわれる。景気が後退しても成功しているビジネスモデルを持った企業は、新規参入してくる。
「今こそ住宅政策を」という声は強い。消費者が安心して住宅を建てられる政治主導による政策が必要だ。
平成19年の地域別持家着工対前年比
|
1~6月 |
7~8月 |
東北 |
青森 |
-12.0 |
-31.1 |
岩手 |
-8.8 |
-25.6 |
秋田 |
-4.9 |
-32.8 |
宮城 |
-10.5 |
-28.0 |
山形 |
-15.6 |
-43.9 |
福島 |
-7.7 |
-21.0 |
北3県 |
-8.6 |
-29.8 |
6県 |
-9.7 |
-29.3 |
信越 |
新潟 |
-6.6 |
-22.7 |
長野 |
-5.2 |
-15.6 |
北海道 |
-6.0 |
-18.7 |
全 国 |
-6.6 |
-28.6 |
|
地域で異なる背景
厳しい北海道・東北
今回の法施行に伴う確認審査の滞りが与えた影響は、地域によって異なる。というのも、今年6月までの過去数年間の景気模様が地域によって晴天だったり曇天だったりと大きく異なるからだ。
例えば東海地域。ここまで地域経済が好調を維持しているため、7月以降の大ブレーキはもちろん痛手だが、傷はすぐに癒えそう。
北海道は事情が異なる。たくぎん(北海道拓殖銀行)の破たんから始まった10年に及ぶ泥沼の中で、これまでもたくさんの傷を負っている。古傷だらけの業界に、また大きな傷を負うことになった。しかもこれから冬に入り、年内、年度内の手当て(改善)が不可能になる。
東北地方も北3県を中心に北海道と似た傾向が見られる。この間に共通して持家が大きく減少。貸家比重が高まっている岩手や秋田、宮城はそれなりの仕事量を全体として確保できた面があるが、他地域は持家、貸家ともに大きく低下。こういった法施行前の業況がジワリときいている。 |