平成19年11月5日号から
長期・深刻化の心配も
法改正不況癒えぬまま冬へ
 改正建築基準法が施行された今年6月20日以降、全国的に確認申請に急ブレーキが掛かり、それが大幅な着工ダウンにつながっている。法施行に伴う準備不足などが招いた人為的な不況でもあり、中でも北海道はこれに引き続きシーズンオフへと不況の泥沼化が心配される。

平成19年6~8月の1~4号物件・確認申請件数
6月 7月 8月 6~8月計 6~8月平均


1号 473 220 189 882 294
2号 28 12 26 66 22
3号 325 121 144 590 197
1~3号計 826 353 359 1,538 513
4号 1,710 1,427 1,460 4,597 1,532



1号 159 75 62 296 99
2号 22 12 21 55 18
3号 127 47 72 246 82
1~3号計 308 134 155 597 199
4号 515 411 411 1,337 446
影響小さい4号物件
 「改正建築基準法の施行によって着工が減っていると言われているが、今年の2月からすでに動きがおかしかった。春の盛り上がりがなく、冬を迎える前の盛り上がりもなく1年が終わる過去に例のない激震だ」と話す建材メーカー筋もおり、一時的不振から立ち直る前に4ヵ月の長い冬を迎える北海道にとって、今回の建築不況はただごとではすまされない気配が漂っている。
 全道の住宅着工数は1~6月の上期で持家が前年期比マイナス6%、貸家がマイナス9%、このうち木造アパートはマイナス15%。分譲が駆け込み着工などで75%伸びたため、総体では1%台の成長を維持したものの、木造や低層賃貸は振るわなかった。
 着工は7月から全国的に大幅減。7、8月の合計では持家が約29%、総数で34%のダウン。北海道は持家に関しては下げ幅が小さく約19%、総数で37%のダウン。
 数字を見る限り、北海道内では持家・戸建て系は全国平均より改正基準法による影響は小さい。その理由を推測すると、持家の多くが4号物件といわれる主に木造2階建てであり、書類と手間が増えるなどの影響はあったものの、木造3階や混構造のような審査ができず、事実上建てられないなどの物件が、首都圏などと比べ少ないからだろう。また確認申請受付窓口によっては施行日以降、国の方針がはっきりするまで、かなり柔軟な対応を行って遅れを最小限に抑えることも行われていたようだ。
 ただし、木造アパートについては1層がRC造車庫、2、3層が木造という混構造が建てにくくなり大打撃。もともと供給過剰感から調整・減速局面に入っていたところへ人為的影響も加わり、7、8月合計で前年比半減だ。これまで減少した戸建てをカバーしていたアパートの急降下は、木造住宅業界全体に大きな影響を及ぼしているとする見方も強い。



今後について・ 19年4万戸程度か
 今後についてだが、大型物件などに導入された適合判定については、早いものでも12月頃までかかるという噂や、道内ではまだ数件しか判定が出ていないという話もあり、大型物件ほど年内着工は難しいと言われている。この調子でいくと今年の住宅着工量は4万戸ぎりぎり、持家が1万2千戸割れという事態も予想される。
 一時的な落ち込みならいずれ回復する。家を建てたい人がいるのに確認申請が降りないのなら、一時的な問題だ。しかし北海道についてはそうではないとみる声が強い。家を建てたい人が動いていない、つまり確認申請以前の問題なのだ。
 全道の過去3年間の6、7、8月の確認申請動向を見ると、1号から3号物件の合計は800~900件で推移しているが、今年は6月こそ826件にのぼったが、7月353件、8月359件で、いずれも過去2年と比べ半分にも満たない。
 一方、4号物件は過去2年が平均で1700件程度に対し、今年6月が1710件を維持、それ以降も7月1427件、8月1460件で、ダウンしてはいるが8割以上の実績を残している。
 同じ住宅系でも木造3階建てはひどく影響を受けている。過去2年が80件台なのに対し、今年は6月33件、7月わずか9件、8月45件。8月に入ってようやく動き出したが、それまではまさしく改正法の施行によって審査ができなかった人為的減少だ。
 これらの傾向は札幌市も全道とほぼ同じ。
 木造3階と比較して4号物件を見てみると、影響は小さかったことがわかる。4号物件の確認遅れは、対応も進むことから10月中には完全になくなっているだろう。そうなると、確認申請と着工の減少は別の原因があると考えざるを得ない。

来年新規参入も
 過去の例から言って、北海道では増税などが住宅購入意欲を大きく減退させる。今年は定率減税の廃止や税源の移譲に伴う増税感が影響しており、消費税率アップのスケジュールが見えにくくなったことで駆け込みマインドも全く生まれないという状況。加えて建材類の値上げや一部の地価上昇による住宅の割高感、石油価格の高止まり、世界経済の減速懸念や国内政治の不透明感なども住宅取得に悪影響を及ぼしていると考えられる。
 来年道内ではTMホーム、IJ工務店に加え第3の新規参入があるともいわれる。景気が後退しても成功しているビジネスモデルを持った企業は、新規参入してくる。
 「今こそ住宅政策を」という声は強い。消費者が安心して住宅を建てられる政治主導による政策が必要だ。

平成19年の地域別持家着工対前年比
1~6月 7~8月
東北 青森 -12.0 -31.1
岩手 -8.8 -25.6
秋田 -4.9 -32.8
宮城 -10.5 -28.0
山形 -15.6 -43.9
福島 -7.7 -21.0
北3県 -8.6 -29.8
6県 -9.7 -29.3
信越 新潟 -6.6 -22.7
長野 -5.2 -15.6
北海道 -6.0 -18.7
全 国 -6.6 -28.6
地域で異なる背景
厳しい北海道・東北
 今回の法施行に伴う確認審査の滞りが与えた影響は、地域によって異なる。というのも、今年6月までの過去数年間の景気模様が地域によって晴天だったり曇天だったりと大きく異なるからだ。
 例えば東海地域。ここまで地域経済が好調を維持しているため、7月以降の大ブレーキはもちろん痛手だが、傷はすぐに癒えそう。
 北海道は事情が異なる。たくぎん(北海道拓殖銀行)の破たんから始まった10年に及ぶ泥沼の中で、これまでもたくさんの傷を負っている。古傷だらけの業界に、また大きな傷を負うことになった。しかもこれから冬に入り、年内、年度内の手当て(改善)が不可能になる。
 東北地方も北3県を中心に北海道と似た傾向が見られる。この間に共通して持家が大きく減少。貸家比重が高まっている岩手や秋田、宮城はそれなりの仕事量を全体として確保できた面があるが、他地域は持家、貸家ともに大きく低下。こういった法施行前の業況がジワリときいている。

暮らし提案のタネまき2
作って飾る楽しみ
パーチメントクラフト

「作品ができる楽しみだけでなく、ストレス解消にもなりますよ」と藤部さん
 「住宅購入の決定権は女性が持つようになった」と言われ、住宅会社にとって女性が望むライフスタイルの提案力やインテリアの知識などはユーザーとの接点や共感を得るためにますます重要になっている。多様なユーザーニーズ、暮らしに関する様々な話題を紹介する新企画「暮らし提案のタネまき」の第2回は、女性に人気の趣味としては定番、クラフトの分野からグループ香穂花主宰藤部(ふじべ)志穂さんに「パーチメントクラフト」について話を伺った。

多種多様なクラフト
 手芸・クラフトの世界は、キルトやパッチワーク、刺繍など伝統的なものに加え、ビーズやエコクラフトなどホビー業界が新たに開発、輸入するものが加わって、おそらく皆さんが知っているものの20倍以上は種類があると思います。
 女性を中心に手芸を楽しむ人は非常に多く、東京で今年5月に開催された日本ホビーショーには3日間で10万人以上が訪れています。
 私は現在、押し花とパーチメントクラフトの指導を行っていて、NHK文化センターでは「パーチメントレースクラフト」の講座名で講師を月に2回担当しています。
 パーチメントクラフトのルーツは、紀元前400年ころ。修道僧が聖書に子羊の皮(パーチメント)をなめして、装飾加工を施したことから始まったといわれています。現在はトレーシングペーパーを材料として使うペーパークラフトの一種となり、特にヨーロッパや南米で人気です。クリスマスには友人から贈られた手作りのパーチメントクラフト“グリーティングカード”を部屋の壁じゅうに貼る習慣があります。日本では額に入れて飾るのが人気です。私はパーチメントクラフトの白くて繊細、綺麗な模様に強く惹かれたのが始めるきっかけでした。


藤部さん制作のパーチメントクラフト
住宅のインテリアにも
 パーチメントクラフトは、トレーシングペーパーを裏側からエンボスペンで押したり線を引いたり、穴を空けたりすることで模様を描きます。デザインはクラシカルなものもドレッシー、ポップなものもできます。
 馴れると手が覚えて、針を刺すときのプチプチという音のリズム感が心地良くなってきます。エンボスの工夫や重ね貼り、色付け、糊と粉を使ったデコレーションもできます。初級程度の技術でも大作が作れます。
 楽しさは人それぞれですが、その対象に向き合っている時間の過ごし方が好きだったり、素晴らしい作品ができあがる喜びがあります。努力や辛抱を必要としないので、最低限の自分の時間を持てる人ならできます。教室で作り方を一つ教えると、生徒さんは次回、自分の作品を持ってきて他の人の作品をほめたり比べたりして楽しんでいます。素晴らしいアイデアで作品を発展させる人も出てきます。生徒さんには、スカートの柄や洋食器の柄など参考になるモチーフがないか観察するようにアドバイスしています。
 材料費は、額縁を除けば1万円程度です。本にはコツなどはなかなか書かれていませんので教室に通うのがお勧めです。
 農家の奥様が農閑期に作ったりなど、パーチメントクラフトは道内各地で盛んです。クラフトは主に女性が楽しむ比率が高いようですが、展示してある押し花を見て、足を止めて「綺麗だねー」と感心して声をかけてくる方は男性が多い気がします。綺麗なものを好むのは男性も同じですね。
 11月1日から15日、宮田屋カフェで感性の合う様々な分野の作家さんたちとギャラリーを開催します。メンバーはカリグラフィーの天竺桂靖子さん、シャドウボックスの米澤光恵さん、イラストレーションの才桃あつこさん、パーチメントクラフトを出展する私です。
 住宅のインテリアにもパーチメントクラフトはとても良く似合います。住宅業界の方と何か一緒にできたらいいなと思っています。
 ※グリーティングカード=クリスマス・誕生日・結婚などに祝いの言葉を書いて贈るカード
 問い合わせ 藤部志穂(Tel.080・6095・7402)
 イベント「Four Hands CARAMEL 贈り物-このときこの思いをあなたに」
 日時=11月1日から15日、10時から24時(最終日17時まで)、
 場所=宮田屋カフェ 豊平ギャラリー(札幌市豊平区平岸4条1丁目4-4、011・817・3930)

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