平成19年10月15日号から
高性能住宅Q&A
どう納得してもらう?
防湿・気密シートの重ね 施主からテープ使用の指示
 Q…当社はJIS適合品の低密度ポリエチレンフィルムを防湿・気密層に使用した充てん断熱の高断熱・高気密工法を採用しています。いま施工中のお客さまから『防湿・気密シートの重ね合わせはすべてテープ止めしてほしい』と言われています。『木下地のある部分はテープ止めしても、テープ止めせずに重ね合わせてタッカーで止めても性能はかわりません』と説明しても理解が得られません。どうしたらいいでしょうか。(東京都 工務店社長)

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中古市場の拡大へ向けて
道の社会実験から1年

今年度の社会実験の流れ。なお、モデル住宅は募集期間を延長し、今月31日まで受付中
 これまで3回にわたって中古住宅流通の促進へ向けた社会実験に参加した企業の取り組みについて紹介してきたが、最終回の今回は、事業を推進する道の取り組みと今後についてみていきたい。

重要な住宅検査人
 道では、中古住宅流通を促進するために必要な要件として、住宅の現況調査、それに基づく適切なリフォームアドバイス、アドバイスに基づいた性能向上リフォーム、リフォーム履歴の保存、北海道独自の性能・品質表示、中古住宅向け性能保証の充実、品質保証や融資、税制の優遇、リノベーションの価値を加味した価格査定、住宅情報の提供などを挙げている。
 新築注文住宅の場合、顧客の要望とプランがまとまれば住宅価格の見積はそう難しいことではない。しかし、中古住宅のリノベーションの場合、構造体の腐朽状況や断熱材の状態、気密性能、断熱性能など、プランや見積を考える前に住宅の状態を的確に把握する必要がある。古い住宅ほど図面が残っていない場合も多く、それが性能向上リフォームの足かせになることがある。
 これに対して道では、中古住宅の状態を的確に把握できる「住宅検査人」を資格制度として設けることを検討している。18年度の社会実験では、道が指名した住宅検査人が各3物件の検査を行った。構造体の腐朽状況を見るために各種検査機器を使いながら壁を剥がすなど手間や費用がかかった。このため、検査に要する日数と費用はどれくらいが適正かという問題があった。今年度はその結果を踏まえて検査項目を整理し、住宅検査人も公募、16人の応募があり、2人1組で社会実験に参加する物件の検査にあたる予定だ。
 技術手法については、昨年末に道が耐震改修や断熱改修をローコストで行う手法を解説した「住宅の性能向上リフォームマニュアル」を制作している。リフォーム履歴の保存については、北方型住宅サポートシステムを中古住宅向けに手直ししたものを作る予定だ。
 品質保証については、(株)日本住宅保証検査機構(JIO)が築年数に関係なく、新築用と同額の検査費用で最長10年保証できる『リノベーション検査保証制度』(案)を提案している。税制優遇については、提案型リノベーション住宅の場合、業者が物件入手時に道税である不動産取得税がかかるが、その費用は最終的に物件の購入価格に転嫁されることになるため、実質的には消費者が二重に不動産取得税を負担することになる。これについて道では、リノベーション物件の取得にかかわる不動産取得税の適正化を検討するとしている。

流通促進に突きつけられた現実
 道の取り組みに対し、社会実験に参加した業者や有識者委員会からはさまざまな意見が出ている。「現状では中古住宅は、新築と比べた価格の割安感で売れる傾向にあり、リノベーション住宅を売るのは簡単ではない」、「消費者は性能だけを判断基準にしているのではなく、デザインや立地条件、価格などさまざまな要素を総合的に判断している。北方型住宅基準にこだわらない性能設定も必要」、「消費者が何を中古住宅に求めているのか、そういった議論を抜きに『流通促進』は語れないのではないか」など、現場の生の声はさまざまで、かつ厳しい。
 中古住宅の流通は、不動産業者が仲介販売という形を取ることが多いが、「彼らもリノベーション住宅に対する理解が不足しており、価値に見合った価格設定ができないため、販売に対して消極的だ」と指摘する声もある。


中古住宅の品質表示に住宅検査人の役割が重要となる
中古版北方型住宅
 先月28日に開かれた中古住宅流通促進検討委員会専門部会では、こうした声を反映した中古住宅品質表示の枠組が見えてきた。
 部会では、住宅改修の度合いによってⅠ「小規模な改修にとどめ、品質ラベルを表示した住宅」、Ⅱ「フラット35融資を受けられるレベルの住宅」、Ⅲ「中古住宅用の『北方型住宅R』マーク付きの住宅」に分け、品質ラベル表示を中古住宅販売に広く普及させようと議論が行われた。
 品質ラベルは、新築用の北方型住宅基準にある「長寿命」、「安心・健康」、「環境との共生」、「地域らしさ」の4項目に瑕疵保証の有無などを加えて表示する。住宅検査時、リフォーム工事後それぞれ判定、先の4項目については達成度を最高で★★★で表示し、リフォーム後にすべての項目について★1つ以上満たせば『北方型住宅R』として表示できる。ちなみに、新築の北方型住宅基準には全項目で★★★が必要だ。この品質表示に必要な検査を住宅検査人が行う。
 このように、埋もれている住宅ストックに光を当てて有効活用するには、現実にはクリアしなくてはならない問題がいくつか残っている。
 旧・住宅金融公庫の調査によると、中古住宅を購入する人は、新築住宅を購入する人に比べて平均年収が低い半面、平均年齢はやや高めという結果が出ており、新築とは客層が違っていることがわかる。新築の顧客層と比べて年収が低く平均年齢が高ければ、ローンの年間返済額は低く、返済年数が短くなり、融資額は少なくならざるを得ない。これが「中古住宅は新築価格の7~8割でないと売れない」1つの根拠だろう。
 アクシエのようにリノベーション住宅が従来の住宅市場とは違う新しい市場と捉える会社もあり、価格設定に囚われない大胆なリノベーション工事をした住宅が売れる可能性もある。


新築並みの空間を提案((株)アクシエ)
既存ストックの質向上は?
 一方で、予算のない消費者は水回りだけ更新した寒い中古住宅を買うしかないのか、という問題もある。性能向上をデザイン性と同じように付加価値として捉えるのか、新築に限らずすべての住宅に最低限一定レベル以上をクリアすることが必要と捉えるのか。
 来年度に道がどんな施策を具体的に示してくるのか、景気低迷や道の財政状態など厳しい現実の中で、どこまで理念を貫けるか。かつては北方型住宅基準の制定によって道内の新築住宅の質が上がったと言われているが、中古住宅の質向上を伴った流通促進策も同様に、道のイニシアティブが発揮できるか注目したい。

200ミリ断熱に鋼板外装
猿払・小山内建設 維持費負担を極力少なく

施工中のQ1.0・200ミリ断熱住宅の外観。外装材は1階から2階まで一発張りできるガルバリウム鋼板で仕上げている
 宗谷管内のオホーツク海側にある日本最北端の村・猿払村の小山内建設(株)(小山内浩一社長)では、ユーザーの“建てた後にコストがかからない住まい”という要望に対し、外壁200ミリ断熱や1階から2階まで一発で張れる長尺の縦張りガルバリウム鋼板外装によって、暖房エネルギー消費量の削減と外装材のメンテナンス費用の軽減と同時に、融雪水や雨水の壁体内浸入による躯体劣化防止にも配慮したQ1.0住宅を同村内で建設中だ。
 この住宅は新在来木造構法による延床面積約32坪の2階建て。ユーザーの「暖房費や維持管理費がかからない家を」という要望を受けて、同社では以前から快適性・省エネ性の向上を考えて採用を検討していた外壁200ミリ断熱とともに、上下方向に継ぎ目がなく、融雪水や雨水等の浸入防止効果が高い1~2階一発張りのガルバリウム鋼板の外装を提案した。

灯油消費1千リットル切る
 外壁200ミリ断熱の施工手順は、構造軸組の屋外側に耐力用面材としてOSB9・5ミリを張り、その上から付加断熱下地となる105×30ミリ(一部105×45ミリ)の間柱材を横使いで455ミリピッチで施工。その後、出隅や開口部回りなど要所に転び止めを入れてから、構造軸組の間と付加断熱下地の横桟間柱材の間に高性能グラスウール 6K100ミリを充てん、屋外側は透湿防水シートを施工して外装仕上げ、室内側は防湿気密シートと石こうボードを張って内装仕上げを行った。

付加断熱用下地材としてOSBの屋外側に455ミリピッチで取り付けた間柱材の間に付加断熱のグラスウール100ミリを充てんする
 付加断熱下地を横使いとしたのは、外装材のガルバリウム鋼板を通気胴縁なしで縦張りするため。OSBの上に墨出しして付加断熱下地材を屋外側からビスで仮止めした後、室内側から釘を150ミリピッチで打って留めている。
 他の部位の断熱仕様は、基礎が押出スチレンフォーム外側50ミリ+内側50ミリ、天井がブローイング300ミリ、窓がPVCサッシ・アルゴンガス入りLow-Eペアガラス。暖房はFFストーブ、換気は第1種熱交換換気システム。

出隅は付加断熱下地材の間柱材を互い違いに壁から突き出し、その間に転び止めを施工した
 Q値計算ソフト「QPex」によると、換気回数0.2回/h、室温20℃の設定でQ値=熱損失係数は1.09W/m2K。年間暖房エネルギー消費は灯油換算で946リットルとなり、次世代省エネ基準比で665リットルの減少。繊維系ボード状断熱材による従来の付加断熱仕様と比べて外壁の断熱にかかるコストアップは坪あたり5千円弱となっており、灯油価格を70円/リットルとすると3~4年でコストアップ分を回収できる計算になる。

ガルバを縦一発張り
 外装材のガルバリウム鋼板は、働き幅178ミリ、山高さ15ミリ。冬期に強い風雪に見舞われる猿払村では、1階と2階の外装材の取り合いから通気層内に入った融雪水や雨水が通気胴縁の釘回りから壁体内に浸入することも考えられるため、継ぎ目なく1階から2階まで一発で張れる長尺板金加工とした。山の裏側の空間をそのまま通気層として利用することで通気胴縁を省略し、付加断熱下地材への直張りを可能にしている。軽量で外壁にかかる負担も少ないため、200ミリ断熱との相性もいい。
 同社の小山内社長は「200ミリ断熱でどれだけ快適性・省エネ性を高めることができるのか、以前から実際に施工して検証したいと考えていた。付加断熱下地材の施工の簡略化などが課題と言えるが、今後も省エネ意識の高いユーザーを中心に積極的に200ミリ断熱を勧めていきたい」と話している。

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