平成18年4月15日号から
地場のエネルギー
地中熱暖房を推進
富良野・軽米組

昨年、地中熱ヒートポンプ暖房システムを採用した住宅。建物左側で採熱管のボーリングを行っている
 (株)軽米組(富良野市、軽米達也社長)では、山に囲まれ伏流水が豊かな富良野の地域特性を利用した地中熱ヒートポンプ暖房システムに一昨年から取り組み、これまでCOP(投入したエネルギーに対して得られるエネルギーの比率)で安定して3.0を上回るなど、良好な成果を収めている。

豊富な伏流水利用
 地中熱ヒートポンプ暖房システムは、不凍液で回収した地中の熱を冷媒に受け渡して圧縮し、高温高圧のガスにした後、暖房用温水と熱交換する仕組み。年間を通じて温度が安定している地中熱を利用するため寒冷地でも効率が良く、CO2の排出量も抑えられるというメリットがある。
 同社では、道立北方建築総合研究所などを通じてこのシステムが国内でも実用段階に入っていると知り、周りの山々の雪解け水が地中に入って温度が安定した伏流水として流れている富良野に適したシステムであること、そして地場にあるエネルギーを暖房に利用できることに魅力を感じて一昨年から採用を開始したという。

不凍液を入れて地中熱を回収する採熱管。ボーリングした穴に設置する
 使っているシステムはサンポット製で、暖房能力は6.2kW(採熱温度0℃、暖房温水温度35度時)。地中50メートルの穴に採熱管のUチューブを入れ、不凍液で地熱を回収しており、バックアップボイラーは設置していない。電気料金はホットタイム22ロングで、15分断続遮断で2時間の通電カットを行っている。
 最初に店舗、次に35坪の戸建住宅に導入して1年間様子を見たところ、外気温がマイナス25℃でも順調に稼働しトラブルもなかったことから、昨年には 40坪の戸建住宅にも採用し、現在、店舗を含めて採用実績は3軒を数える。低温暖房となるため、いずれも次世代省エネ基準以上の断熱性能としている。


半地下の車庫内に設置したヒートポンプ本体
COP3以上で安定
 昨年採用した住宅でデータ取りを行っており、熱損失係数(Q値)1.4W/m2・kで1万4000kWhの暖房負荷に対し、システムの電力消費量は1週間で100kW程度、電気代にして1000円位。このペースで行くと、この冬の電気代は4~5万円に収まり、灯油セントラルと比べて8~9万程度の暖房費削減になる計算だ(灯油170円の場合)。
 また、COPは当初送水温度を50℃以上と高めにし、パネルラジエーターで放熱量を絞って使っていたのを、送水温度を45℃程度と低めにしてパネルの放熱量を全開にしたところ、安定して3以上を得られるようになった。室内は外気がマイナス20℃前後でも22℃をキープし、運転音については気にならないレベルという。
 コストに関しては、ボーリング費用のウェートが大きく、ユーザーへの見積もり価格で灯油温水セントラルより200万円程度割高になるが、設置費用の3分の1を補助する独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業に当選すれば、10年以内にコストアップ分は回収可能になる。
 同社の軽米社長は「最初は手探り状態だったが、この冬のデータを見ると予測した数値とほとんど誤差はなく、これからはユーザーにも自信をもって積極的に提案していける。今後は採熱管の本数や運転方法などを検証し、最も費用対効果が高いシステムも考えていきたい」と話している。


屋根防水の普及へ
苫小牧・ナラサキ産業 優れた防水・止水材も紹介

上/手に盛ったKD2をコンクリートの漏水部分に当てて止水するデモンストレーションの様子
右/手KD2によってわずか数秒で止水されたサンプル
 ナラサキ産業(株)苫小牧営業所では、7日、苫小牧市内のホテルで、ドイツ・カスター社が製造している高耐久屋上防水シート「O.C.PLAN(オーシープラン)」と、コンクリートの漏水を防ぐカスター防水・止水材の商品説明会を開催し、大勢の建設関係者らが参加した。カスター社の製品については、サンエナジー㈱が国内正規代理店として取り扱っているが、道南地区の販売についてはナラサキ産業が行うことになる。
 最初に説明されたのはドイツで40年の歴史があるカスター防水・止水材。コンクリートのクラックを防止し、すでに発生しているクラックを埋める。また、住宅の基礎・地下室の防水や漏水にも対応できる製品が揃っている。
 圧縮強度に優れた補修モルタルとして機能するウォーターストップ、コンクリートに浸透して漏水とクラックを防ぐ止水セメント・NB1スラリー、NB1スラリーに混和することで接着力・弾性・耐凍害性などを向上させるSBボンディング、漏水箇所に10~20秒ほど押し付けるだけで止水できる瞬間止水モルタル・KD2などのラインナップが紹介された。


会場は多くの建設関係者で埋め尽くされた
道内で採用増える
 最後に紹介されたオーシープランはすでに道内での採用実績があり、防水性の信頼から屋上緑化の屋根防水にも採用されたシステム。主原料となるエチレンコポリマー瀝青をシート状に加工した熱可塑性防水シート材。 特徴として紫外線、熱、水の影響を受けないほか、コンクリート並みの引張強度や、4.5倍までの変形に耐える柔軟性をマイナス25℃まで維持する高い寸法安定性などにより、優れた耐久性を発揮する。水にさらされても毒性の物質が放散される心配がない。予想耐用年数は30年以上といい、カスター社は25年保証を行っている。
 説明会の終了間際には、コンクリートの漏水を実際に処理するデモンストレーションが行われ、担当者が瞬間止水モルタル・KD2を使って瞬間的に止水する様子を参加者は熱心に見学していた。
 問い合わせ先は同社苫小牧営業所(苫小牧市若草町2丁目1-2、Tel.0144・34・4117)へ。



木造戸建住宅復活の道・その2
「e-家」に住みたい-に込めた思い
(株)北海道住宅新聞社 会長 白井 丞

木造住宅の解体現場。築後20数年で建て替えられてきた
多様化するニーズ
 国土交通省が5年に一度行っている住まいに対する満足度の調査では、近年の傾向として、「非常に不満」は減っており、代わって「多少不満」が増えています。高断熱・高気密な住まいが実現し、冬の生活はそれまでの暖房用灯油消費量を増やさずに家中暖かく過ごせるようになったことに対して一定の評価をする一方、灯油の高騰や地球環境を意識したトータルな高省エネ性・ユニバーサルな快適性・ライフスタイルの変化にフレキシブルに対応できる機能性などの向上を求めるニーズが高まってきたことを示唆しています。
 また、これまで進めてきた住まいの大型化も、多様化してきた家族形態を踏まえてどのように修正していくかが課題です。
 これからはこうした要素を配慮した次世代デザインの具体化と技術力・施工力を住まいづくりの新機軸に据え、ユーザーに提案することが大切になってきました。

先進国の住宅の耐久性・新設住宅の周期と新設戸数・ストック住宅の規模
 
1
2
3
4
5
6
日本
26年
30年
23年
120万戸
122m2
45m2
アメリカ
44年
103年
38年
160万戸
168m2
118m2
イギリス
75年
141年
73年
18万戸
87m2
76m2
フランス
85年
59年
28万戸
101m2
68m2
ドイツ
79年
56年
32万戸
111m2
68m2
※ 1 住宅の平均滅失年数(老朽化・増改築・火災・風水害・震災などで失われた住宅)
 出典:平成8年度建設白書
2 新設住宅の周期(新設住宅が総建て替えられる時期)
 出典:住宅金融公庫の月刊ハウジングDATA(2001.2)
3 新設住宅の投資周期(新設住宅戸数が全世帯数に達する時期)
 出典:2に同じ
4 先進国の年間新設住宅戸数(1998年前後のデータ)
 出典:住宅金融公庫の海外住宅DATA-NOW(1998)
5 先進国のストック住宅の持家の床面積(1993~1996)
 出典:4と同じ
6 先進国のストック宅の借家の床面積(1993~1996)
 出典:4と同じ

世界で群を抜く日本・建替え速度3倍強
 本論に入る前に、日本と欧米先進国の住宅状況を比較してみます。
 耐久性、建て替え周期、ストック状況などの各種データを表とグラフにまとめました。
 住宅の平均滅失年数は日本は26年。耐久性はアメリカのおよそ2分の1、イギリスの3分の1です。
 新設住宅の周期を見ますと、日本は30年。先進国であるドイツの2.6倍、イギリスの4.7倍、平均3.3倍のスピードで建て替えています。
 新設住宅の投資周期・新設住宅戸数が全世帯数に達する時期は日本は23年、先進国の中で最も投資が活発なアメリカよりさらに15年、イギリスよりは50年も短いサイクルになっています。日本は短期間に大量の住宅を新築していることを示しています。
 各国の年間の新設住宅戸数は、8年ほど前のデータですがアメリカと日本が100万戸を超えて他を大きく引き離しています。西欧トップのドイツは東京・千葉・神奈川・埼玉の都県の合計、フランスはそこから埼玉を除いた合計、イギリスはさらに神奈川を除いた合計に匹敵する戸数です。この表にはありませんが、新築住宅を人口比で見ますと、日本はアメリカの1・5倍、フランスの2倍、ドイツの2・3倍、イギリスの3倍です。
 ストック住宅の持家の床面積は、10年ほど前のデータですが、日本(北海道)はアメリカに次いで2番目に大きい122m2(現在は道内140m2、全国150m2)、西欧先進国を上回っています。
 一方、借家は45m2とまだかなり開きがあります。しかし、最近では当時と比べて3割増加しており、かなり改善してきました。

持家は兎小屋から脱皮
 これまでの日本はいかに住宅投資が群を抜いて活発だったかがわかります。
 また、この当時、欧米の3分の1程度だった住宅寿命も平成年代に入ってからは木造の構造材を腐らせない技術が確立し、耐久性は50年以上、100年住宅も可能といわれるまでになりました。
 その昔、「兎小屋」といわれて何となく悔しい思いをしたものでしたが、最近の持家は規模については西欧先進国を越え、高断熱・高気密工法の技術も遜色のないところまできました。
 ここにきて、日本の住宅水準は持家については外見上は先進国水準に達したといえます。(続く)

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