昨年、地中熱ヒートポンプ暖房システムを採用した住宅。建物左側で採熱管のボーリングを行っている |
(株)軽米組(富良野市、軽米達也社長)では、山に囲まれ伏流水が豊かな富良野の地域特性を利用した地中熱ヒートポンプ暖房システムに一昨年から取り組み、これまでCOP(投入したエネルギーに対して得られるエネルギーの比率)で安定して3.0を上回るなど、良好な成果を収めている。
豊富な伏流水利用
地中熱ヒートポンプ暖房システムは、不凍液で回収した地中の熱を冷媒に受け渡して圧縮し、高温高圧のガスにした後、暖房用温水と熱交換する仕組み。年間を通じて温度が安定している地中熱を利用するため寒冷地でも効率が良く、CO2の排出量も抑えられるというメリットがある。
同社では、道立北方建築総合研究所などを通じてこのシステムが国内でも実用段階に入っていると知り、周りの山々の雪解け水が地中に入って温度が安定した伏流水として流れている富良野に適したシステムであること、そして地場にあるエネルギーを暖房に利用できることに魅力を感じて一昨年から採用を開始したという。
不凍液を入れて地中熱を回収する採熱管。ボーリングした穴に設置する |
使っているシステムはサンポット製で、暖房能力は6.2kW(採熱温度0℃、暖房温水温度35度時)。地中50メートルの穴に採熱管のUチューブを入れ、不凍液で地熱を回収しており、バックアップボイラーは設置していない。電気料金はホットタイム22ロングで、15分断続遮断で2時間の通電カットを行っている。
最初に店舗、次に35坪の戸建住宅に導入して1年間様子を見たところ、外気温がマイナス25℃でも順調に稼働しトラブルもなかったことから、昨年には
40坪の戸建住宅にも採用し、現在、店舗を含めて採用実績は3軒を数える。低温暖房となるため、いずれも次世代省エネ基準以上の断熱性能としている。
半地下の車庫内に設置したヒートポンプ本体
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COP3以上で安定
昨年採用した住宅でデータ取りを行っており、熱損失係数(Q値)1.4W/m2・kで1万4000kWhの暖房負荷に対し、システムの電力消費量は1週間で100kW程度、電気代にして1000円位。このペースで行くと、この冬の電気代は4~5万円に収まり、灯油セントラルと比べて8~9万程度の暖房費削減になる計算だ(灯油170円の場合)。
また、COPは当初送水温度を50℃以上と高めにし、パネルラジエーターで放熱量を絞って使っていたのを、送水温度を45℃程度と低めにしてパネルの放熱量を全開にしたところ、安定して3以上を得られるようになった。室内は外気がマイナス20℃前後でも22℃をキープし、運転音については気にならないレベルという。
コストに関しては、ボーリング費用のウェートが大きく、ユーザーへの見積もり価格で灯油温水セントラルより200万円程度割高になるが、設置費用の3分の1を補助する独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業に当選すれば、10年以内にコストアップ分は回収可能になる。
同社の軽米社長は「最初は手探り状態だったが、この冬のデータを見ると予測した数値とほとんど誤差はなく、これからはユーザーにも自信をもって積極的に提案していける。今後は採熱管の本数や運転方法などを検証し、最も費用対効果が高いシステムも考えていきたい」と話している。 |