IBECの研究で横浜市内の住宅に設置された住宅用燃料電池システムの燃料電池ユニット(左)と貯湯ユニット(右) |
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(財)建築環境・省エネルギー機構(IBEC)では10日、札幌市内のホテルポールスター札幌で同機構が研究を進めている住宅用燃料電池の市場導入についての情報提供を目的とした「住宅用燃料電池の導入に関する技術研究成果報告会」を開催。同機構住宅研究部長由本達雄氏、日本環境技研環境計画室青笹健氏及び須田禮二氏が既存住宅に設置した燃料電池の運転状況等の分析結果を報告したほか、北海道ガス(株)の担当者が研究・開発の現状と今後の課題について講演した。
全国8ヵ所で試験
今回の研究では道内を含む様々な世帯で電力・給湯需要の実測を行ったほか、全国8ヵ所(このうち道内2ヵ所)の既存戸建住宅に開発途上の燃料電池を設置してモデル運転を行い、運転状況や導入効果などを1年間にわたって調査。データを分析したところ、燃料電池の運転状況は概ね良好であることが確認された。発電機の定格出力は700~1000W、貯湯槽の容量は150~200リットル。
住宅用燃料電池コージェネレーションシステムの仕組み
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燃料電池の種類は「固体高分子型」と呼ばれるタイプ。作動温度が低いために大量生産が可能で、コンパクト化しやすいことが特長だ。さらに高効率な「固体酸化物型」も実証段階に進みつつある。これらがシステムとして完成し、本格的な市場導入が行われるようになれば、CO2削減に大きく貢献することが予想される。
起動時間短縮が必要
研究・開発の現状と課題についての報告を行った北海道ガスの担当者は「最新式の燃料電池は発電効率や廃熱回収効率がかなり高いレベルに達しているが、解決すべき問題も山積している。まず起動に時間がかかる。スイッチを入れてから発電開始まで約45分、機種によっては1時間かかることもある。これは改質装置が燃料から水素を作り出す準備をするのに時間がかかるためだ。エネルギーをたくさん投入すれば起動時間を短縮できるが、それでは省エネシステムとしての意味がなくなる。
耐用年数は現時点では3~5年程度とされているが、最低でも10年はもってほしいところだ。価格についてもメーカーは120万円を目標として掲げているが、現実的に考えるなら40~60万円くらいが妥当ではないかと思う。寒冷地バージョンの最適運転制御システムも必要だろう」と話し、普及に至るまでには多くの課題が残されていることを指摘した。
会場は大勢の参加者で埋まり、燃料電池に対する関心の高さを窺わせた
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設置スペースは2.0~2.4m2くらいが目安といい、燃料電池本体はそれほど大きくないが、付属機器や配管・メンテナンスのためのスペースを確保するとコンパクトとは言えなくなること、寒冷地では保温材や保温ヒーターなどの凍結防止措置が必要になることが報告された。
施工日数は基礎工事・養生に7~8日、搬入・設置に2~3日、配管に2~3日、配線に2~3日、試運転に3~5日かかり、今回のモデル運転では燃料電池の発注から製作・搬入まで5~6ヵ月、電力会社との協議や契約準備手続き等に2~3ヵ月を要したという。 |