平成18年2月15日号から
新しい可能性示唆
建築フォーラム 門型ラーメンに鎌田先生
 (有)グランドワークスは先月28日、札幌市内の札幌サンプラザで「21世紀建築フォーラム」を開催、全道からホームビルダー約180名が集まり、会場はイスが足りなくなるほどの盛況だった。
 フォーラムは前半が室蘭工業大学建設システム工学科教授の鎌田紀彦先生が「木造住宅耐震構造の革新」をテーマに講演、後半は大倉憲峰(有)グランドワークス社長が同社のフレームシステム門型ラーメン構法とHS金物工法について詳しく説明した。


室蘭工業大学教授鎌田紀彦先生
木造の可能性広がる…鎌田先生
 鎌田先生は、講演の中で「在来木造住宅は、近年の建築基準法改正でホールダウン金物使用が義務化されるなど金物をたくさん使うようになったが、金物の正しい使用を徹底するのはなかなか難しい。設計から見積、施工までをトータルに管理するシステムが必要だが、現状ではうまくいっていない」と問題点を指摘した。
 一方で「軸組金物工法は本州ではプレカット工場でプレカット材に金物をセットして販売されることが多く、金物の取り付け忘れなどがなくなり構造安全性を間違いなく実現しやすいメリットがある。金物の取り付け手間などを考えれば材工コストは在来工法とほぼ同等」と金物工法のメリットを述べた。

会場は200名近い参加者で熱気に溢れていた
 門型ラーメン構法については、「今までの3寸5分角を使う在来軸組にとって代わるものではなく、鉄骨建築などに限られていた中規模建築にも進出する際に利用するいわばオプション構法だ。工務店は高断熱・高気密の技術を武器に仕事の可能性が広がる」とし、「間口の狭い家でも大開口空間が実現できたり、スパンを飛ばせるので100年住宅に必要とされるスケルトン・インフィル構造も実現が可能」と語った。
 さらに今後Q1.0住宅を上回る超高断熱住宅に取り組むとき、「断面が105×300ミリなど平角材を使う門型ラーメン構法ならば200ミリ、300ミリ厚の断熱材を充てんできるので相性が良いと思う」との見解を示した。


フォーラム終了後も門型ラーメン構法への問い合わせが相次いだ
金物工法が主流に…グランドワークス
 大倉社長は、金物工法が本州で普及してきた背景も言及し、「現在金物工法の比率はだいたい16%ぐらいだが、今後は3~4割まで上昇し、当社では最大8割まで上がるのではないかと見ている」と爆発的に普及する可能性を示唆した。そのために同社では「金物工法をオープン化して門戸を広げ、金物自体のコストダウンも進めて普及に努めたい。まず3月からHS金物の半数について2割前後値下げしたい」と述べた。最後に、フォーラム事務局を務めた昭和木材(株)の高橋秀樹社長が3月1日からスタートするHS金物に対応した最新鋭のプレカット工場について、本州からプレカットやプレカットCADの専門家も招いて高品質のシステム供給を行える体制にあることをPRした。
 問い合わせは、グランドワークス(Tel.076・471・2021)か、昭和木材札幌支店(Tel.0133・64・3188)へ。


道内市場分析・予測
厳しさ増す注文住宅
賃貸系とMSが持家侵食
 昨年の全道新設住宅着工戸数は5年ぶりに5万戸の大台をクリアしたが、一方で注文戸建住宅は減少の一途をたどり、市場は賃貸住宅を中心とした構造に変化するなど、戸建ては依然として混迷の時代にいる。ここでは過去のデータを参考に現在の住宅市場を分析するとともに、今年の着工量も占ってみたい。
 道内の過去10年間の住宅着工量を見ると、平成8年の7万4千戸をピークに、その後2年間は消費税率アップの影響などで連続して2割減となり、10年には4万7000戸まで落ち込んだ。11・12年は5万戸台をキープしたものの、13年から16年までは4万8000~4万9000戸で推移し、17年になって再び5万戸台に復帰した。
 全体の数字の上では明るい兆しが見えてきたが、実はこの10年間に市場構造は大きく変化。平成8年には戸建注文住宅を表す持家が着工全体の41%を占め、以下、木造アパートや賃貸マンションを表す貸家が36%、分譲マンションや建売住宅を表す分譲が20%だったが、9年に持家と貸家の比率が逆転。17 年は貸家が59%、持家が25%、分譲が16%と、完全に貸家中心となっている。
 また、平成17年の着工量を見ても持家は8年の3万戸から1万3000戸へと半分以下になり、逆に貸家は2万7000戸から3万戸へと増加。ここ数年、木造アパートが1万2000戸台で安定しており、賃貸マンションも着実に増加するなど、好調な動きを示している。
 分譲も平成8・9年当時の水準には及ばないが、17年の着工量は8000戸台に達し、10年以降で最も多くなっている。札幌中心部のマンション建設が活発なことに加え、建売住宅もここ2年は、規模の小さい開発・分譲が成果を挙げ、着工量が増加している。

18年予測は5万戸強
 それでは平成18年はどうなるのか。住宅業界にとってプラスになる要素としては、消費税率アップが既定路線になったこと、そして札幌市のみの話になるが、郊外住宅地の容積率緩和などが挙げられる。 消費税率については、3%から現在の5%になる前の年である平成8年に、持家が前年比16%増を記録、分譲マンションも14%増、貸家は2%増となっている。現在は当時よりも景気の停滞感が強いとは言え、もし消費税率アップが平成19年度から行われるとしたら、今年の着工量は増加も期待できる。
 また、札幌郊外の住宅地で現在容積率60%指定となっている第1種低層住居専用地域に限り、容積率を80%に緩和する措置は、着工を後押しする要因ともなりそうで、札幌市のみとはいえ道内最大市場だけに全体の実績を底上げしそう。これらを考えると、持家については前年比最大で10%増加、1万4000戸という強気の見方もできる。
 分譲に関しては、この3月から札幌市で地域に応じ建築物の高さを24~60メートルに制限する一方、都心東側の区域で、良好な複合市街地の形成に貢献する建築物に関しては、容積率を最大100%上乗せするという都市計画の見直しがマンション着工にどう影響するかがポイントになる。
 規制の強化と緩和両方行われることになるわけだが、依然としてデベロッパーのマンション着工意欲は旺盛で、消費税率アップを意識した駆け込み需要も考えると、マンションは少なくとも昨年並みの6000戸は確保するだろう。
 建売住宅はここ2年は好調に推移していることもあり、前年比で微増の2500戸は手堅いところ。
 貸家は駆け込み需要が戸建てや分譲マンションほど期待できず、頭打ち感も強い。昨年大幅増となった反動も考慮すると、前年比2千戸程度の減少で2万8000戸程度に落ち着きそうだ。  これら各部門の数字をまとめると5万戸強。昨年に続いて5万戸台に達する可能性は十分あると言える。

住宅着工統計 時系列表 道内詳細
単位 戸数:戸.前年比:%

 
総 計
持 家
公 庫
貸 家
木造アパート
マンション
給 与
分 譲
マンション
建売
戸数
前年比
戸数
前年比
戸数
前年比
戸数
前年比
戸数
前年比
戸数
前年比
戸数
前年比
戸数
前年比
戸数
前年比
戸数
前年比
8
74,904
8.4
30,410
15.6
23,826
17.2
26,804
1.7
12,904
-5.6
12,266
11.7
2,661
11.3
15,029
7.0
9,868
13.5
5,161
-3.6
9
59,826
-20.1
20,866
-31.4
14,971
-37.2
26,071
-2.7
13,011
0.8
11,762
-4.1
1,984
-25.4
10,905
-27.4
7,003
-29.0
3,902
-24.4
10
47,317
-20.9
18,582
-10.9
13,237
-11.6
20,453
-21.5
10,017
-23.0
9,130
-22.4
2,261
14.0
6,021
-44.8
3,268
-53.3
2,739
-29.8
11
51,052
7.9
21,060
13.3
16,298
23.1
20,903
2.2
8,824
-11.9
10,892
19.3
1,909
-15.6
7,180
19.2
4,604
40.9
2,576
-6.0
12
50,380
-1.3
19,417
-7.8
13,092
-19.7
21,263
1.7
9,205
4.3
10,782
-1.0
1,813
-5.0
7,887
9.8
5,437
18.1
2,450
-4.9
13
48,791
-3.2
16,038
-17.4
6,891
-47.4
24,739
16.3
10,950
19.0
12,387
14.9
975
-46.2
7,039
-10.8
4,888
-10.1
2,151
-12.2
14
48,187
-1.2
14,610
-8.9
2,630
-61.8
26,572
7.4
12,047
10.0
12,873
3.9
965
-1.0
6,040
-14.2
4,050
-17.1
1,990
-7.5
15
49,806
3.4
14,351
-1.8
1,291
-50.9
27,579
3.8
12,015
-0.3
14,122
9.7
560
-42.0
7,316
21.1
5,384
32.9
1,932
-2.9
16
49,183
-1.3
13,998
-2.5
659
-49.0
27,170
-1.5
12,176
1.3
13,684
-3.1
621
10.9
7,394
1.1
5,234
-2.8
2,160
11.8
17
52,317
6.4
12,948
-7.5
268
-59.3
30,657
12.8
12,698
4.3
16,229
18.6
345
-44.4
8,367
13.2
5,938
13.5
2,429
12.5
マンション貸家(賃貸)とは利用別貸家、構造別SRC、RC、S造の共同住宅を言う マンション分譲とは利用別分譲、構造別SRC、RC、S造の共同住宅を言う



コストアップ防ぐ
恵庭・キクザワ 施工手間増やさない工夫

1階天井はTJIを採用、配線の穴開け加工がしやすい
 (株)キクザワ(恵庭市、菊澤里志社長)は、NPO法人新木造住宅技術研究協議会北海道ブロック(新住協北海道ブロック)が提唱するQ1.0住宅プロジェクトに参加、恵庭市内に1棟目の住宅をこのほど完成させた。
 同社では次世代省エネレベルの断熱・気密仕様を標準化しているが、建築主の暖房費負担を抑え、地球環境にもやさしい住宅を造るためさらなる高断熱化を目指したQ1.0プロジェクトに参加した。今回は建築主に省エネ化の提案としてQ1.0プロジェクト参加を勧め、受け入れられた。
 2階建てでツーバイシックス工法を採用し、延床面積は約45坪。壁の充てん断熱材が140ミリ入るため、付加断熱材の厚みを抑えられるなど施工手間は従来とあまり変わらない。付加断熱材はフェノールフォーム25ミリ。基礎の部分は押出スチレンフォームB3種で基礎外側100ミリ+基礎内側100ミリの 200ミリ断熱。さらに土間下には20ミリの押出ポリスチレンフォームB3種を敷いている。これは熱損失の軽減とともに、初冬の基礎工事時にコンクリートを養生しやすく工期を短縮するためにも役立つという。天井はブローイング500ミリと厚くした。

付加断熱材としてフェノールフォームを施工中の現場
 窓を樹脂ペアガラスにしたため窓からの熱損失が多めとなり、その分、基礎と天井の断熱材が厚くなっている。建築主は、メンテナンスコストなどを考えて手入れの楽な樹脂サッシを強く望んだという。

今後は標準仕様に
 換気は日本スティーベルの熱交換換気システム。暖房は温水セントラル方式。これらの仕様で熱交換効率80%、換気回数0.1回/h相当として試算した暖房用灯油消費量は532リットルとなり、次世代省エネ仕様で試算した場合の1156リットルを大きく下回る。
 天井のブローイングが厚いためその重みに耐えられるよう吊木を多くし、ビス止めのピッチも85~100ミリにしている。また、熱交換換気システムの設置スペースを1階天井ふところに確保するため、ハイスタッドにした。

施主の意向でシンプルに仕上げた外観
 菊澤里志社長は、「換気システムの変更を別にすると、今回の断熱仕様でコストアップは坪単価1.5万円程度におさまっている。今後はQ1.0レベルの高断熱仕様を標準化していきたい」と話している。同社では、Q1.0レベルの性能を持ったモデルハウスも計画中で、5月までに公開したいと意欲を見せている。

主な断熱仕様とQ値

基礎 押出スチレンフォーム、外100ミリ+内100ミリ 土間下に押出スチレンフォーム20ミリ
高性能グラスウール140ミリ+フェノールフォーム25ミリ
屋根 ブローイング500ミリ
樹脂サッシ・Low-Eアルゴンペア
換気 熱交換換気(顕熱90%)
暖房 灯油温水セントラルヒーティング
Q値 0.997W/m2・K
暖房エネルギー試算 532リットル

現場にライブカメラ
北見・エボホーム ホームページ上で誰でも閲覧可能

電気の臨時塔に取り付けたライブカメラ。防犯対策としてセンサー灯を一緒に設置している
 エボホームオオヒラ(有)(北見市、大平邦夫社長)では、施工現場に設置したライブカメラ(ウェブカメラ)から定期的に送られてくる写真を自社のホームページに掲載して現場の状況をリアルタイムで公開。「今、現場で何をしているのかを知りたい」というユーザーの意向に応えると同時に、離れた場所からでも現場の状況を見て大工や協力業者に指示を出せるメリットを活かし、現場管理の合理化にも成果を挙げている

ホームページ:http://www.evohome.com/


虫、冷気対策を徹底
AWエモト 熱交換換気モデルチェンジ

換気ユニット。下面左が点検用の開口
 エア・ウォーター・エモト(株)は熱交換型換気システム「ホーム・エアラング」をモデルチェンジ、4月から新発売する。防虫ネットで虫の侵入を防ぐとともに360度回転型の給気グリルを新開発、冷気感を抑える工夫と同時にコスト圧縮にも配慮した。
 新型のTVS-100は天井埋め込み型の全熱交換タイプ。フィルターの清掃からファン本体の脱着まですべてのメンテ・点検を点検開口部から行う。
 今回の改良点はユーザーの不快感解消に絞り、導入外気が熱交換素子に入る前に虫取りネットを設置。ここにたまった虫を手を汚さずに捨てられるように配慮した。外気用フィルターは別についており、ホコリなどは外気フィルターで止める。
 また、給気グリルは部屋の中から吹き出し口を360度回転させられる新型を開発。個室はドア付近に給気グリルを設置して対角線方向に吹き出す標準設計とすることで、配管距離の短縮による材工コストの圧縮と冷気対策を行った。厳寒期に給気が冷たく感じるときは、ユーザーが簡単に吹き出し方向を変えることができる。
 1台の換気対象面積は23坪程度。40坪の住宅では1階と2にそれぞれ1台ずつ取り付ける。熱交換効率は50ヘルツ強運転で60%。
 設計価格は換気ユニットとスイッチ、3芯ケーブルのセットで13万8000円。販売地域は当面札幌以南とする。なおファンユニットとエレメントユニットを分離した露出設置型AVR-150に変更はないが、360度回転する新しい給気グリルをセットすることもできる。
 問い合わせは同社札幌支店または最寄りの支店・営業所へ(札幌=白石区本通14丁目北1-26、Tel.011・863・1451)。

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