昨年の全道新設住宅着工戸数は5年ぶりに5万戸の大台をクリアしたが、一方で注文戸建住宅は減少の一途をたどり、市場は賃貸住宅を中心とした構造に変化するなど、戸建ては依然として混迷の時代にいる。ここでは過去のデータを参考に現在の住宅市場を分析するとともに、今年の着工量も占ってみたい。
道内の過去10年間の住宅着工量を見ると、平成8年の7万4千戸をピークに、その後2年間は消費税率アップの影響などで連続して2割減となり、10年には4万7000戸まで落ち込んだ。11・12年は5万戸台をキープしたものの、13年から16年までは4万8000~4万9000戸で推移し、17年になって再び5万戸台に復帰した。
全体の数字の上では明るい兆しが見えてきたが、実はこの10年間に市場構造は大きく変化。平成8年には戸建注文住宅を表す持家が着工全体の41%を占め、以下、木造アパートや賃貸マンションを表す貸家が36%、分譲マンションや建売住宅を表す分譲が20%だったが、9年に持家と貸家の比率が逆転。17
年は貸家が59%、持家が25%、分譲が16%と、完全に貸家中心となっている。
また、平成17年の着工量を見ても持家は8年の3万戸から1万3000戸へと半分以下になり、逆に貸家は2万7000戸から3万戸へと増加。ここ数年、木造アパートが1万2000戸台で安定しており、賃貸マンションも着実に増加するなど、好調な動きを示している。
分譲も平成8・9年当時の水準には及ばないが、17年の着工量は8000戸台に達し、10年以降で最も多くなっている。札幌中心部のマンション建設が活発なことに加え、建売住宅もここ2年は、規模の小さい開発・分譲が成果を挙げ、着工量が増加している。
18年予測は5万戸強
それでは平成18年はどうなるのか。住宅業界にとってプラスになる要素としては、消費税率アップが既定路線になったこと、そして札幌市のみの話になるが、郊外住宅地の容積率緩和などが挙げられる。 消費税率については、3%から現在の5%になる前の年である平成8年に、持家が前年比16%増を記録、分譲マンションも14%増、貸家は2%増となっている。現在は当時よりも景気の停滞感が強いとは言え、もし消費税率アップが平成19年度から行われるとしたら、今年の着工量は増加も期待できる。
また、札幌郊外の住宅地で現在容積率60%指定となっている第1種低層住居専用地域に限り、容積率を80%に緩和する措置は、着工を後押しする要因ともなりそうで、札幌市のみとはいえ道内最大市場だけに全体の実績を底上げしそう。これらを考えると、持家については前年比最大で10%増加、1万4000戸という強気の見方もできる。
分譲に関しては、この3月から札幌市で地域に応じ建築物の高さを24~60メートルに制限する一方、都心東側の区域で、良好な複合市街地の形成に貢献する建築物に関しては、容積率を最大100%上乗せするという都市計画の見直しがマンション着工にどう影響するかがポイントになる。
規制の強化と緩和両方行われることになるわけだが、依然としてデベロッパーのマンション着工意欲は旺盛で、消費税率アップを意識した駆け込み需要も考えると、マンションは少なくとも昨年並みの6000戸は確保するだろう。
建売住宅はここ2年は好調に推移していることもあり、前年比で微増の2500戸は手堅いところ。
貸家は駆け込み需要が戸建てや分譲マンションほど期待できず、頭打ち感も強い。昨年大幅増となった反動も考慮すると、前年比2千戸程度の減少で2万8000戸程度に落ち着きそうだ。
これら各部門の数字をまとめると5万戸強。昨年に続いて5万戸台に達する可能性は十分あると言える。
住宅着工統計 時系列表 道内詳細
単位 戸数:戸.前年比:%
|
総 計
|
持 家
|
公 庫
|
貸 家
|
木造アパート
|
マンション
|
給 与
|
分 譲
|
マンション
|
建売
|
戸数
|
前年比
|
戸数
|
前年比
|
戸数
|
前年比
|
戸数
|
前年比
|
戸数
|
前年比
|
戸数
|
前年比
|
戸数
|
前年比
|
戸数
|
前年比
|
戸数
|
前年比
|
戸数
|
前年比
|
8
年
|
74,904
|
8.4
|
30,410
|
15.6
|
23,826
|
17.2
|
26,804
|
1.7
|
12,904
|
-5.6
|
12,266
|
11.7
|
2,661
|
11.3
|
15,029
|
7.0
|
9,868
|
13.5
|
5,161
|
-3.6
|
9
年
|
59,826
|
-20.1
|
20,866
|
-31.4
|
14,971
|
-37.2
|
26,071
|
-2.7
|
13,011
|
0.8
|
11,762
|
-4.1
|
1,984
|
-25.4
|
10,905
|
-27.4
|
7,003
|
-29.0
|
3,902
|
-24.4
|
10
年
|
47,317
|
-20.9
|
18,582
|
-10.9
|
13,237
|
-11.6
|
20,453
|
-21.5
|
10,017
|
-23.0
|
9,130
|
-22.4
|
2,261
|
14.0
|
6,021
|
-44.8
|
3,268
|
-53.3
|
2,739
|
-29.8
|
11
年
|
51,052
|
7.9
|
21,060
|
13.3
|
16,298
|
23.1
|
20,903
|
2.2
|
8,824
|
-11.9
|
10,892
|
19.3
|
1,909
|
-15.6
|
7,180
|
19.2
|
4,604
|
40.9
|
2,576
|
-6.0
|
12
年
|
50,380
|
-1.3
|
19,417
|
-7.8
|
13,092
|
-19.7
|
21,263
|
1.7
|
9,205
|
4.3
|
10,782
|
-1.0
|
1,813
|
-5.0
|
7,887
|
9.8
|
5,437
|
18.1
|
2,450
|
-4.9
|
13
年
|
48,791
|
-3.2
|
16,038
|
-17.4
|
6,891
|
-47.4
|
24,739
|
16.3
|
10,950
|
19.0
|
12,387
|
14.9
|
975
|
-46.2
|
7,039
|
-10.8
|
4,888
|
-10.1
|
2,151
|
-12.2
|
14
年
|
48,187
|
-1.2
|
14,610
|
-8.9
|
2,630
|
-61.8
|
26,572
|
7.4
|
12,047
|
10.0
|
12,873
|
3.9
|
965
|
-1.0
|
6,040
|
-14.2
|
4,050
|
-17.1
|
1,990
|
-7.5
|
15
年
|
49,806
|
3.4
|
14,351
|
-1.8
|
1,291
|
-50.9
|
27,579
|
3.8
|
12,015
|
-0.3
|
14,122
|
9.7
|
560
|
-42.0
|
7,316
|
21.1
|
5,384
|
32.9
|
1,932
|
-2.9
|
16
年
|
49,183
|
-1.3
|
13,998
|
-2.5
|
659
|
-49.0
|
27,170
|
-1.5
|
12,176
|
1.3
|
13,684
|
-3.1
|
621
|
10.9
|
7,394
|
1.1
|
5,234
|
-2.8
|
2,160
|
11.8
|
17
年
|
52,317
|
6.4
|
12,948
|
-7.5
|
268
|
-59.3
|
30,657
|
12.8
|
12,698
|
4.3
|
16,229
|
18.6
|
345
|
-44.4
|
8,367
|
13.2
|
5,938
|
13.5
|
2,429
|
12.5
|
マンション貸家(賃貸)とは利用別貸家、構造別SRC、RC、S造の共同住宅を言う マンション分譲とは利用別分譲、構造別SRC、RC、S造の共同住宅を言う
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